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第百二話:蒼く透けた出窓に示される星星に誘われ促されて




「……う~ぬ。なんだよ。近くにそれらしい気配はないぞ。でも、何て言えばいいのかな。よっし~さんの故郷よりも、気配? 魔力ってやつか? 濃い気はするな」

「今度は剣と魔法の世界なんですものね。もしかしたらわたくしたちのような存在もいるのかもしれません」


何故か、モンスターが現れない事に一番残念がっていたのはマナでしたが。

マナが期待していたように、あるいはよっし~さんの故郷のように。

いきなり戦闘が始まるようなこともなく。

わたくしたちは、前回あまり使うことのなかったルプレの能力から派生したマップ、索敵機能を使い、目的地であろう学園とやらがありそうな場所へ向かう事にしました。



どうやら、今現在わたくしたちは。

物語の始まりにありがちだという深い森の中と言うよりも。

一日や二日では回りきれないだろう大きさの島の中の……

亜熱帯から寒帯気候までが体験できてしまいそうな大きな山の、頂上の方が近いかもしれない、そんな真っ只中にいる事が分かりました。



「すごいじゃないか。ルプレ。こんな便利な力が使えたんだな」

「へへへっ。それほどでもあるぜよ~。50パーセントデッドエンドの地雷ギフトではあるけど、本来はりあるでゲームを楽しむためのギフトだかんな。実は色々と細かく設定もできちゃうんだぜ」


前の世界では、マップを広げる必要に駆られなかったというか、のっちゃん自身にそんな余裕がなかったこともあり、ルプレがドヤ顔を浮かべてない胸を反らし、そのままひっくり返る勢いで、自虐的かつ、自慢げにしているのが印象的でした。

自ら口にすると言うことは、あまり役に立てなかった……と言うより、のっちゃんに負担を強いていたことに負い目を感じていたのかもしれません。



「ゲームのようなマップなのですから……その細かい設定とやらで、敵性などの所在も分かっちゃったりするのですか?」


きっと、一つの世界をのっちゃんとともに渡り歩いて死に戻りを繰り返したおかげで。

ルプレ自身も正にレベルアップをしたのかもしれません。

思わずわたくしマインが口にしたように、もしそのマップのちからで敵性……のっちゃんの命を脅かすような……『死に戻り』をする羽目になるような存在にあらかじめ気づく事ができれば、のっちゃんは苦しく辛い思いをすることも、ぐんと減っていくことでしょう。


密かに、わたくしたち分身の身分としては、そんな命知らず(強制)なのっちゃんの『死に戻り』の回数を極力減らすことを目標にしていました。

あらかじめ敵性の存在を察知できて、罠のようなものにも気づくことができて、わたくしたちやよっし~さんやマナがそばにいてくれれば、そう何度も繰り返すことにはならないはずです。


空気を読まず、話の進まないのっちゃんにしてみれば。

それでも皆さんの目を掻い潜って、最早人生のルーティン化した『死に戻り』を繰り返すのでしょうが。

それはまぁ、させまいと努力するという、気持ちの問題なのです。




「おぉ、もちろん分かるぜ。とりあえずのっちゃんになじみ……分かりやすいのは、これかな?」

「うわっ。何これ、おびただしいくらい真っ赤っかじゃないの」

「……もしかして、この赤色が敵性、ですか?」

「あ、ああ。しかしびびった。たまたま近くにいなかっただけなんだな。どうやらこの山自体、のっちゃんに敵意満載のやつらがてんこもりのようだぜ」

「マジか。……もしかしなくても、おれが持ってる力で一番面倒臭いの、やっぱり『挑発』のスキルなんじゃあ」

「いえ。きっとこの山に住む存在は主さまどうこうではなく、足を踏み入れた者全てに敵対しているのでしょう」

「にゃむ、。がっこの……訓練場……」



薄青いウィンドウを埋め尽くすほどの、大きさ様々な赤点。

降り立ったこの場所だけいないのは、安全地帯であったからなのかもしれません。

あるいは、シャーさんが気を利かせてくれたのかもしれませんが……。


のっちゃんの規格外な『挑発』スキルにより、敵性と相対することは時間の問題ではあるのでしょうが。

よくよく見れば赤点同士が接触し、点滅したり小さくなったり消えたり……あるいは新たに発生しているのが見てとれます。


きっと、わざわざ寝言の体でオーヴェ(トゥェルさん)がフォローしてくれたように、この山自体がゲームで言うところのモンスター的な存在と、エンカウントするフィールドであると言えて。



「ふむふむ。でもよく見ると、やっぱりこの魔法陣のある場所に、敵っぽいやつらは近づいてこないみたいだな。シャーさんも一応気を使ってくれたのかも。あ、ちなみに黄色点はあたしたち(味方)で、青点が有用なアイテム、黒点がトラップだぞ」

「アイテムって、ほんとにゲームみたいねぇ。自生してる薬草とかかしら?」

「あとは、食えそうな果物とかかなぁ。トラップはなんだろ、落とし穴とかかな」



もしかしたら、敵性……モンスター的存在が仕掛けたものか。

あるいは、そんなモンスターたちを仕留めるために誰かが仕掛けた可能性もあるのでしょう。


目論見通りレベルアップしたルプレのおかげで、のっちゃんが死に戻りをする可能性をできる限り排除できる可能性が高まったのは確かなわけですが。



「でも、ずっとここにいるわけにはいかないのよね。食べ物は持ってきてるけど、そう長くは持たないだろうし。どちらにしてもこの群れを突破して山を降りないと」

「魔法学園を見つけ出して、天使ちゃん、探さなきゃだしね」

「……まぁ、そりゃそうか。とりあえずここで『セーブ』しておこう。ルプレ、頼む」

「りょーかい。さっそくもってセーブしちゃって、と。……おっと、もしかしなくてもセーブすることがスイッチになってたのかもな。これみよがしに選択肢が出てきたぞ」



この世界の敵性とやらがどれほどの力を持っているかは分かりませんが。

よっし~さんとマナ、ついでにそれなりに経験を経て戦えるようにはなっているのっちゃんならば、そう引けを取ることはないのでしょう。

事前に敵性の位置も、向かうべき方向も分かっていますし、いざとなればわたくしマインの特権でもある、禁断の緊急回避……セーブポイントに戻る『わざ』もあります。

敵性の数が多くとも、なんとななるのでは、といった空気が漂っていたのは確かではあるのですが。


それをある意味、自分で作り出し自分で壊したのは、ルプレ自身でした。



     (第103話につづく)








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