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第百話:おさらいの、頼もしき運命共同体メンバー紹介




そんなわけでして。

早速ですがわたくしたちは、シャーさんのお力を借りまして、新たな異世界に辿り着いた所から始まります。



シャーさんは、なんて表現すればよろしいのか。

凄くSFチックというか、機械的なロボットそのものであったのですが。

わたくしたちを異世界へ運んだのは、所謂魔方陣とでも呼べそうな、とてもファンタジーらしいシロモノでした。



しかし、よくある物語のように運ばれた向こうの世界にも、陣があったり召喚を行う国の代表のような人物を見当たりません。

てっきり、ソツのない、痒いところにまでしっかり手の届くタイプのシャーさんのことですから、こちらの世界にも連絡がいっていて、てっきり案内人的ポジションの方がいらっしゃるのかと思いきや。

周りには木々森緑ばかりで、わたくしたち以外には、人っ子一人いませんでした。

のっちゃんの故郷であっても、然るべき場所にまで向かわなければ見られないロケーションです。



それでもひとつ、分かったことは。

少なくとも前の世界(通称青空世界)の、秘密の地下11階からは移動できた……

それすなわち場所を動かず未来や過去に移動したわけではない、ということで。





「シャーさんめぇ。異世界移動はやったことねぇっていってたけどうまくいったのかな? なにげにあたしたちのこと先輩呼ばわりしてたけど、もしかしなくてもものすげぇひとだったんじゃあ」

「……きっとらすぼす。時のはざまとかでたたかうかも……」

「おめぇが言うと冗談に聞こえねーんだよ」

「……ぐぅ」

「っておい、そこで寝ちゃうのかよ。なんか不安になるだろいっ」



わたくしがそう理解した以上、同じのっちゃんのしもべでありギフトそのものであり、分け身であるルプレとオーヴェ(現在トゥェルさんに絶賛なりきり中)も、移動自体がうまくいっているだろうことは確信持ってはいるようで。

いつからか、そんなふたりを生温かく見守るポジションになってしまったことに、ちょっぴり寂しい気持ちになりつつも。

いつもの微笑ましいやりとりを眺めます。



ルプレは、七色の羽を持つ小悪魔めいた見た目と、ご主人様であるのっちゃんにすらズケズケと蓮っ葉な言葉をぶつけてくる、なのに実は甘えん坊のツンデレさんです。


わたくし達三人の中では最も活動的で、引きこもりニート(自称)で人付き合いが苦手なのっちゃんに代わって、何事にも前向きでぐいぐい来る子でもあって、歯に衣を着せぬところが、のっちゃんにも好ましく思われていることでしょう。

 

彼女そのものでもある与えられしギフトは、その名も【リアル・プレイヤー】。

簡潔にまとめれば、今やのっちゃんの代名詞でもある『死に戻り』できる能力でありますが。

詳しく言うと、のっちゃんをゲーム(RPG)の喋らない主人公に見立てて。

代わりに行動、道筋を決めるための選択肢(ハズレの一つはバッドエンド)を出したり、セーブができるようになったり、のっちゃんの代わりにしゃべったり、一番槍をこなそうとしたり、やっぱり代わりに人と接したり(それがうまくいくとは限らない)、実は大分万能な子だったりします。

 


一方のオーヴェは。

元々は、印象の残らない幽鬼のようなキャラ付けでしたが。

今現在は、いつも眠たげで何だかとっても青白い天使さまな見た目をしています。

現在とつけたのは、オーヴェ自身のギフトにより、『トゥェルさん』と呼ばれるその身を武器として戦う天使さまそのものとなっているからです。


ギフト名は、【ラブシック・メイズ】。

一見すると任意の相手に変身し、その意志と能力まで引き継げる……そんな能力ですが。

のっちゃんだけでなくきっとオーヴェ自身も、オーヴェであった自覚がないくらいトゥェルさんになってしまっているのは確かで。


今はトゥェルさんであるからして。

元主にして助けうるべき存在であったよっし~さんのファミリア(使い魔)として、のっちゃんとよっし~さんの仲を取り持とうと、ぐぅぐぅ言いながら奮闘しているところです。


わたくしとしては、その名前から言ってもオーヴェのギフトの本質はただなりきるだけではなく、別のところにあるとにらんでいますが。

かといってわたくしたちからオーヴェのことを、のっちゃんやよっし~さんに話す訳にもいかず。

同じのっちゃんのギフトとしては、やきもきする感覚が続いているのは確かでありますが。



ちなみにというか、手前味噌で披露する機会がなさそうであるからしてわたくしについてもひとつ。

あえて客観的に表現するとするならば、黒髪だけれど洋風なドール。

それがわたくしマインの印象でしょうか。

性格、性質としては、ルプレとは真逆で、オーヴェほど省エネではありませんが。

地の文的な意味で、いつものっちゃんの背後にいる、といった感じです。

大人しく丁寧ではありますが、想定外のことが起こるとパニックになってやらかしてしまうのが玉に瑕で。


そんなマインのギフトは、『スターダスター・マイン』。

その名自体は結構気に入ってはいるのですが、実の所単体では外れギフトとしか表現できないでしょう。

なにせ、こうしてここにいるだけでのっちゃんの、いわゆる守備力的なものをゼロにしてしまうだけでなく、痛みすらもなくしてしまうからです。


砂糖菓子のごとく脆くなったのっちゃんの身体は、例えばマナのハグひとつで簡単に星蒔く粉となってしまうことでしょう。

なんと、普段から感情の起伏や行動に合わせて星が舞うほどなのです。



しかし、それがルプレのギフト『リアル・プレイヤー』と合わせて初めて、のっちゃんがのっちゃんたる由縁というか、『死に戻り』を誘発することができます。


ルプレとオーヴェ、そしてわたくしマインが三人揃って一人前である理由もそこにあります。

特に、ルプレの能力は、デッドオアアライブの二者択一を迫る、問題の多い力ですが。

そこに、オーヴェの生存能力を高める……保護する(周りの方々に守ってもらうという意味で)力と。

マインの痛覚と守備力を引換えに、『死』から遠ざかる力が加わることにより、無敵の勝利者になれるのです。



事実、『死に戻り』に対して確固たる記憶が残されているのは、のっちゃんのみで。

わたくしたちを含めた周りのものからすれば、どんな困難も迷うことなく一度目で突破し、乗り越えていっているように見えるでしょう。


幾度となく『死に戻り』の喪失と絶望を体験し続けているのっちゃんにしてみれば。

何もかも置いて逃げ出したくなるくらい心に負荷がかかっているわけですが。

おかげで、人ならざるほどに精神力が鍛えられているのは確かで。


繰り返すことを、理由はどうあれ止めることのない、のっちゃんの生き様は。

わたくしたちでなくとも、心を大いに揺さぶられるものがあったに違いありません。



     (第101話につづく)








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