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第4話 ギルド登録しました!


さて、後はハンターギルドに行って登録してこよう。


ルチはハンターギルドの場所を教えてくれた以外は何も話さない。

さっきから俺を不安げに見たりするだけだ。


ハンターギルドに到着すると、意外と大きく圧倒された。

酒場もあるし、素材の買取もしている訳だから保管する為にはこれくらいの大きさは必要か。


ルチは入り口で待っていると言っていたが無理矢理連れて中に入る。俺はかなりウキウキしていた。


ギルドの中は入ってすぐに酒場があるようで、昼間にも関わらず結構な人数が酒を飲んで騒いでいる。


俺たちが中に入ると、数人がこっちをみてニヤニヤしている。

酒場で飲んでいるやつは入ってくる人をいちいち品定めでもしてんのか?


折角のウキウキ感に水を差されたようで若干不快に思い横目に通り過ぎ、ハンターギルドのカウンターだと思われる場所に向かう。


カウンターには真ん中に俺より少し年上くらいの美人のお姉さんとガタイがよく顎鬚を生やしたおっさんの二人がいる。


このおっさん・・・いや、まあいいか。右側には見た目は秘書のような感じの女性が一人、左側には見た感じ幼そうな女性がいた。


まあ、受付はだいたい真ん中だろうと思い向かう。


もちろん美人さんの方に。


「いらっしゃいませ」


飛び切りの笑顔で対応してくれる。


「ハンター登録したいんだがここでいいのか?」

「はい!こちらで承っております。お一人様のご登録ですか?」


「いや、こいつの分も頼む」

「!?」


ルチは驚いて俺のほうを見る。


「ちょっ、ちょちょちょ、ちょっと待ってよ!」


どもりすぎだろう。


「あんたいきなり何言ってんの!」

「何ってハンター登録したいって言っただけだが?」


「それはわかってるけど!なんであたしの分まで」

「まあまあ、いいじゃねえか」


「よくないわよ!・・・はあ・・・もう、あんたに関わったのが間違いだった・・・」


ルチは何やらブツブツ言っているが、俺は気にせず二人分の登録をお願いする。


「身分証カードの提示をお願いします」

「これか?ルチは持ってるか?」


ルチは首を振る。


「ああ~、こいつは訳あって無くしちまったんだが登録は無理か?」


適当にそれらしく言ってみた。


「それでしたら、こちらに必要事項を記入していただければ登録可能です」


案外厳しくないんだな。


後で聞いたところ、ハンターになることそのものに犯罪者だとかは関係ないそうだ。


というのも、どういう訳か本名を偽る事はできず全てのハンターギルドに名前が残る為、名前の割れた犯罪者が登録・もしくは登録した後に犯罪をしてしまう方がデメリットは大きいとの事だ。


それ以上詳しくは教えてはもらえなかったが。


「登録料にはお一人様500Gです」


ルチに無理矢理記入させて登録料二人分を払う。


「はい、ありがとうございます。ハンターカードが出来るまでもうしばらくかかりますので、その間に説明をさせていただきますね」


まずはハントするにあたって自己責任である事。

ただ、ギルドとしてはなるべく死人は出したくないので、身の丈にあったハントをする事。

自身の手に負えない魔物と遭遇した場合は命を第一優先とし、必ずギルドに戻って報告する事。

ハントした魔物は場合によって買取できない時もある事。

ギルドは犯罪と疑わしき事に関しては一切関与しない事。

もしくはそれが発覚した場合罪を問う場合がある事。


などの説明を受けた後、ハンターカードの見本を見せてくれた。


そこには名前とレベル、合計Pt、中の色が塗られていない10個の星マーク、称号欄が書かれている。


説明によると、レベルというのはハンターギルドで定められた魔物のハントポイントが一定数に達するとレベルが上がり、星マークは討伐した魔物のランク(10段階の危険度)で色が付くようで、称号は危険認定された魔物を討伐したときに付くらしい。


ハントした魔物・もしくは一部をギルドに見せるとカードに反映してくれるようだ。


異世界だしレベルといえば魔物を倒したら上がるのかと思ったが、確かにゲームのように魔物を倒した時点でレベルUP・能力が上がるって言われても、実際には意味もメカニズムもわからないもんな。


そもそも、それを誰が統計しているんだか。


ここでのレベルは言ってみれば、俺の世界の級や段などと考えて差し支えなさそうだ。


ちなみにハンターカードは身分証明書の代わりにもなるみたいだから、ルチにもメリットはありそうだ。


「と、ここまでで何か質問はありますか?」

「いや、大丈夫だ」


「ありがとうございます。では次に魔物の買取はキョウヤ様とルチ様から向かって右側のカウンターでお願いします。魔物だけでなく野生動物や野草・鉱石など様々なものも買取していますので、その都度確認してください。そして左側のボードには討伐依頼、もしくは懸賞金のかかった魔物が貼ってあります。情報に関して詳しくは左のカウンターでお尋ねください」


さすがだな、もう名前覚えてくれてるんだな。


「ああ、わかった」

「ではカードが出来上がったようですので、お渡しいたします。こちらがお二人のカードです」

「ほらこっちがルチのカードだ」


ルチは恨めしそうな目で俺を睨みながら渋々受け取った。


「では何かわからない事がございましたら、何なりとお尋ねくださいね」

「ああそうだ。この辺りだとどんな魔物がいるんだ?」


「そうですねぇ、街を出て左の方にある森の中にはシルバーウルフや、一角兎、猩々(しょうじょう)、ゴブリンなどがいますね。どの魔物も一匹ではそんなに強くはないのですが、集団で行動する事が多いので気をつけてくださいね。奥の方にいくと、キングベアーやオークなど一人では倒すには困難な魔物も確認されていますので、あまり奥までは行かないようにしてください」


「わかった、ありがとう」


美人のお姉さんに礼をいい出口に向かおうとする。

すると


「おいおい、兄ちゃん。そんなヒョロヒョロで魔物なんて狩れるのか?こんな可愛らしいお嬢さんまで連れて。しかもそんな格好で行くなんて死ににいくようなもんだ。死にに行くくらいだったら、もったいねえからこのお嬢さんを俺にくれよ」


酔っ払った大男が絡んできた。これは異世界ではお決まりなんだな。

ルチは俺の背中に隠れてしまっている。


「おお、気にしてなかったが、確かにこの格好だと防御面では不安だな。教えてくれてありがとよ」


さらっと受け流す。


「ああ?誰もてめーの心配なんかしてねえよ!女を置いていけって言ってんだ!」


ベロベロに酔っ払い過ぎだろう。いくら酒場とは言え、ギルド内で犯罪に近い行為をしようなんてバカなのか?


ルチは下を向いて俺の服の裾を引っ張っている。早く行こうということなのだろう。


「まあまあ、落ち着けって。ギルドの人が見てるぞ」

「んなもん関係ねえよ!おら、女を置いててめーはさっさと消えろ!」

「はあ・・・」


酔っ払いを相手にしても仕方ないので、無視して通り過ぎようとした。


「てめー何シカトしてやがんだ!その女もすかしやがって、どうせ男を漁って***とか***みたいなことしてんだろうが!」


俺の裾を掴んだルチの手はわずかに震えている。怒っているのだろう。


「あ?」


俺はさすがに我慢できず、人を射抜くかの様な目で大男を睨んだ。


「ひっ!・・・この野郎!何にらんでやがんだ!」

俺の目に一瞬ひるんだが、さらに絡んでくる。


「なあ、身に降りかかる火の粉を振り払うのは有りなのか?」


俺は一旦気持ちを置き振り返って、カウンターにいるお姉さんに確認した。


ギルドではよくあることなのか、俺達の事を多少心配しているようではあるが慌ててはいなかった。

お姉さんの横にいる男はにやにやしながら事の成り行きを見守っている。


「・・・ええ、武器などを使って怪我をさせてしまうと問題ですが、そうでなければ多少の事であればお咎めはありません・・・」


はい、言質をとりました。


「こっちを無視して調子にのってんじゃねえ!」


大男がテレフォンパンチで殴りかかってきたが、ルチを庇いつつ軽くよける。


いやいや、いきなりテレフォンパンチって・・・こいつは本当にハンターなのだろうかと疑ってしまう。

なんか本気で相手にするのがバカらしくなってきたので、スキルを試しつつ終わらせる事にする。


もう一度殴りかかってきたところでその腕を取り


(吸収・身体能力、スキル)


とイメージしながら相手の勢いを利用して投げる。


すると『筋力・片手剣スキル奪取』と頭に流れる。


おお、成功した。身体能力を奪う事もできるようだ。


自分の中でも全体的に筋力が上がったような感覚がある。


吸収に関して少しずつわかってきた、相手の能力を奪うときは自分で加減の調整ができ、自分の能力に上乗せできるようだ。


使いこなしたら、相当ずるい能力になりそうだな。


大男は俺が投げ飛ばしたとき、受身がとれず頭を強打して気絶したらしい。


(キョウヤって普通に強いよね~♪)

(そうか?酔っ払い相手だし、こんなもんだろ?)


なんでガブリエルが嬉しそうなんだ?


大男が投げ飛ばされるのを唖然と見ていた大男の仲間と思われる男3人が立ち上がってきた。


「おう!カムダタに何してんだ!」


カムダタっていうのか。何か聞いた事あるような名前だな。


「てめえ、どうなるかわかってんだろうな?」


めんどくさいなと思いつつ、そいつらと向き合った。


「そこまでだ!」


さっきまでニヤニヤ傍観していたカウンターのおっさんが叫んだ。


「お前らその辺にしておかないと、憲兵呼んで牢屋行きにするぞ!そして金輪際、ギルドに立ち入り禁止だ!いいのか?」


おっさんがそう言い放つと、酔っ払い達は大人しくなった。


「いや、すまなかったな。早めに止めてもよかったんだが、どうせなら君の実力を見てからにしようと思ってな」


カウンターにいたおっさんがこちらに寄ってきて笑いながらそう言った。

やはり試されていたか。


さっき受付をしたときに女性の方に行ったのは、もちろん美人の方がいいに決まってるのとこのおっさんには何か品定めをされているような感じがあったからだ。


「ギルドマスター!笑い事じゃありませんよ。新人さんに何かあったらどうするつもりだったんですか!」


美人さんが俺達を心配して怒ってくれている。

このおっさん只者じゃないとは思ったがギルマスだったのか。


「俺が見る限り、大丈夫だとわかってたんだよ。実際キョウヤ君は相手を簡単に制したように見えるが、相手の攻撃を見切った上で最小限の動きでかわし相手の力を利用して投げた。ある程度の力量が無ければできない事だ。サリナも知っているようにカムダタはそれなりの経験を持つハンターだ」

「知っているから、止めるように言っていたじゃないですか!」


「はははっ、まあまあ」

「まあまあじゃありません!罰としてギルドマスターは後片付けをお願いします!」


「・・・えー?・・・そこをなんとか」

「なりません!」


ギルマスが泣きそうな顔をしている。なんかサリナさん?の方が偉い人のように見えてきた。


あんな美人な顔をして俺達の事で怒ってくれている姿を見ているとグッとくるのは俺だけだろうか?


「・・・すまなかったな・・・まあ何かあったら力になるから言ってくれ」


ガタイが良くて強そうなおっさんが目に涙を溜めて言ってくる様子は、なんだか可愛く見えるな。


「ああわかった、気にしないでくれ。サリナさんも心配してくれてありがとな」


なんか楽しそうなギルドだと思い、自然に笑顔になり二人に言った。


「っ!」


サリナさんがなぜか驚いて少し赤くなったような気がする。まあ、気のせいだろう。


-響也本人はあまり気づいていない事であるが、ずっと無愛想で元々のつり目のせいでキツイ顔に見られる事が多い為、ふと出る笑顔には破壊力があるようだ。ギャップ萌というやつだろう-


とりあえず後の事は任せてルチと外にでる。


そうそう、さっきカムダタが言っていた様に防具でも見ていくか。


「ルチ、防具屋はどこにあるんだ?」

「・・・ここから少し先に行った所にあるけど・・・」


「ん?どうかしたか?」

「キョウヤは見た目によらず強いんだな・・・あんな大男相手に・・・あんたみたいな相手から盗もうとしてたなんて・・・」


「なんだ?そんな事を気にしてたのか。その事はもう忘れておけ。それに俺は別に強くはないぞ?ただ負けたくはないだけだ」


(そうそう、キョウヤは強いよ~!それにそんな些細な事気にしないよ~♪)

(うるさい!ルチには聞こえてないのに余計な茶々入れるな!)


「なんだそれ・・・?同じ事じゃないか・・・?」


ルチは納得いっていないようだが気にせずに防具屋に向かう。


防具屋では30代位の奥様らしき人が出迎えて色々と説明をしてくれている。


俺はとりあえず、今来ている服の上から着れる薄いローブのような物を買うことにする。


このローブは見た目と薄さからは感じられないが、魔法と刃物による斬を多少防いでくれるようだ。

ある程度の強さの攻撃だとと意味ないそうだが。


まあ、安物だししかたないだろう。


他に皮の防具品を購入しておく。

合わせて1000Gかかった。


「ほい!」

「・・・?」


ルチに皮の防具を渡したのだが、何が何だかわからないという風に目が点になっている。


「これはお前の分だ」

「・・・はあ!?何で!?何言ってんの?」


「せっかくルチもハンター登録したんだから、一緒に魔物を狩りに行くぞ!」

「あんた、ばかじゃないの!?ばかじゃないの!?」


なぜ2回言ったし?


「魔物をハントするのは危険だって言ったじゃない!」

「まあまあ、ルチが危険だと思ったら俺をおいて逃げればいい」


「・・・はあ、もう!あんたには何言っても無駄だって事は理解したよ…あんたに関わったのが間違いだったあああ!」

「そんなに喜ぶなよ。照れるじゃないか」

「喜んでなあああああい!」


店員さんがそのやり取りを見てどうしていいかわからず固まっていたがはっとして、俺がルチに渡した防具をつける手伝いをしてくれた。


店を出て武器屋で買っておいた小剣もルチに渡しておく。


「さすがにナイフじゃ魔物はたおせないだろう」

「これもなんだ・・・魔物をハントしに行く事になったってのは諦めたけど、こんなにあたしの物を買ってもらっていいの?」


「ん?まあいいんじゃねえの?報酬の心配なら大丈夫だ。お前に支払う分はまだ残ってるから」

「そういうことじゃないんだけど・・・」


ルチが何を心配してるのかはわからないが、俺はもうすでに気分はハンター!

もう待てないとばかりに街の外に足を向ける。


しかし、俺にとって気がかりな事が一つあった。


実は俺・・・


結構動物が好きなんだよな。


シルバーウルフは間違いなく狼だよなあ・・・

あんな格好いい動物を殺す事が出来るのだろうか・・・


とりあえずは行ってみてからだな。




今のところ、一週間に一回ペースくらいで載せています。次回は早ければ今週末、遅くても来週には載せる事が出来るようにします。

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