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第36話 響也の決意



「俺はあんた達と一緒に、ゲートを狙う魔族と戦う事にする」


俺が魔王から話を聞いて、導き出した答えだった。


「ちょっ!」

「な、何バカなことを言っているんですか!」

「くははははっ、さすがキョウヤ。我も付き合うぞ」


俺の言葉に、今まで黙っていたタマモとリーエが驚きの声を上げ、フェンリルは俺に同調していた。


「ちょっとフェンリルさん!貴方も止めてください!」

「むっ?なんだ、お前は付き合わないのか?」


「付き合わないなんて言っていないです!いえ、付き合うと言ってもそういう付き合うとかではなくて・・・」

「ちょっと、リーエ!きょうやと付き合うのは私だよ!」


フェンリルがリーエに問いかけると、リーエは途中から可笑しな方向に話が反れていっている。

それにタマモが食いついて、訳のわからない状態だ。


「くくっ、本当に面白い奴だな。理由を問うても?」


俺の言葉を聞いて、心底面白そうに魔王が笑いながら理由を聞いてきた。


「ああ。今のままだと魔王を殴る事など出来はしない。だったら力を付けなければならない。強くなるには実戦ほど身になるものはないからな」

「そうか、なら好きにすればいい」


俺は未だ訳のわからない事で言い合っているタマモとリーエをスルーして、魔王の問いに答えると魔王はそれを承諾した。


「しばらくここにいるというのであれば、紹介をしておかねばなるまいな。まずは、もうすでに知っているとは思うが私の左側にいるのがベルゼバブ。私の片腕をになっている」


ベルゼバブは片腕を上げてこちらの挨拶をした。


「そして私の右側にいるのがアスタロト。ベルゼバブと同じく私の片腕だ」

「アスタロトです。以後お見知りおきを」


アスタロトも丁寧な動作で一礼をして挨拶をする。

アスタロトは女性の魔族で、少し背が低く魔族とは思えないような可愛らしい顔立ちをしている。


(アシュトレト・・・)

「ガブリエル、貴方はなんて顔をしているのですか。先程シャーターン様に言われたばかりでしょう」


ガブリエルが神妙な面持ちで呟いたのだが、それを見たアスタロトはガブリエルを諌めた。


「そしてそっちで控えている者が、端からベリアル、アザエル、イブリース、シェムハザ、クザファンだ」

(サタナエル・・アシエル・・ハーリス・・ウザ・・ゼフォン・・)


どうやらガブリエルは全員の事を知っているようだ。

ガブリエルが呟いている名前が全員違うようだが、その事もガブリエルにショックを与えているようだった。


「ガブリエル、お前は俺達に同情を誘っているのか?違うのだろう?だったらそんな顔をするな」


魔王やアスタロトに言われても、悲しげな顔を止めないガブリエルにアザエルと呼ばれた男が言葉を投げかけた。

アザエルはどちらかというと紳士的な雰囲気を(カモ)し出している。


「ギャハハハ、ガブリエルよぉ。まだ気にしてんのか?こっちは誰も気にしちゃいねえよ!」


綺麗な顔をしながら下品な笑い声を上げたベリアルも、ガブリエルを擁護するような発言をしていた。


アスタロト以外では唯一の女性魔族であるイブリースは、それをフッと微笑みながら見つめている。

シェムハザとクザファンは一歩下がる様に、落ち着いた様子で言葉を発することなくその光景を眺めていた。


魔族というと、勝手なイメージで肌が黒いと思っていたのだが、ベリアルとイブリース以外は肌が真っ白だった。

二人も黒いというほどではなく、健康的に日に焼けた程度の黒さだった。


「さて、これで紹介は終わったな。しかしキョウヤよ、魔界に残るのはいいがその間に泊まる場所の当てはなかろう?」

「ああ、そうだな。どこか借りられる場所はあるか?」


確かに魔族と戦うのはいいが、泊まる場所の事までは考えていなかったな。


「この王宮には、空いている部屋がいくつもあるからそこを貸してやろう。一人一人の個人部屋とお前達全員が入れる部屋とあるがどちらがいいんだ?」

「じゃあ個人・・「「大部屋で!!」」」


俺が個人部屋と言おうとすると、食い気味にタマモとリーエが俺の声を掻き消すくらいの大声で大部屋を希望した。


「くくっ、キョウヤお前は尻に敷かれそうだな」

「・・・ほっとけ」


俺としては実に遺憾である。

高校に入るまで女性との接する機会が少なかったが、真鈴や美咲と出会ってもそんな事は無かったはずだ。


真鈴に言われて放課後に無理矢理買い物に付き合わされたり、美咲に強引に遊びに連れて行かれたり・・・


・・・あれ?

・・・おかしいな。


地球にいた時から、すでに尻に敷かれていた・・のか・・?


いや、今はそんな事はどうでもいい。


とりあえず部屋を貸してくれるそうだから、遠慮なく貸してもらうことにしよう。


「じゃあ、すまないが大部屋を貸してもらえるか?」

「ああ、構わない。おお、そうだ!お前が力をつけるのに丁度良い相手がいる。今のフェンリルと同程度の強さといった所だろう。そいつの紹介がてら部屋まで案内をさせよう」


魔王がそう言うと、指をパチンと鳴らした。

すると魔王が座っている王座の後方から人影が現れた。


「お呼びか?父様」

(--!!)


・・・父様?

魔王と父様と呼んだという事は・・・


ガブリエルを見ると、先程までと違う驚きを表し (え?リュシフェル様の・・・?)と小声で呟いていた。

どうやら、ガブリエルも初めて知ったらしい。


「ああ。ルクス、お前にそこの人間達の世話(・・)を頼もうと思ってな」


ルクス と呼ばれた女性魔族は黒髪のショートボブで、肌は透き通るように白く整った顔の美人だった。

ただ、顔と体に似合わない大鎌を携えているのが印象的だった。


「人間・・?」


人間という単語を聞いた時、ルクスの眉がピクッと動いた。


「ああ、頼んだぞ。互いの紹介は案内の途中で勝手にやってくれ」


魔王はルクスが何か言いたそうなのを無視して、そのまま話を進めている。


「父様の頼みなら仕方がないからやるが・・・」


渋々といった表情だが、案内を引き受けてくれたようだ。


そのまま俺達に向かって歩いてきて、目の前で立ち止まり俺の目を見つめる。

俺よりも10cmくらい背が低いので、少し見上げる形になっている。


少しの間見つめていたと思うと、俺を避けて歩き出して言葉を投げかけてきた。


「ふん、さっさとついて来い」


ルクスに続いて、俺達も踵を返そうとした時。


「何か用がある時は、私達に直接用が無い限りはルクスに頼むがいい」


魔王が自分達ではなく、ルクスを頼るように言ってきた。

俺はルクスの後について行こうと反転しかけた体を魔王に向き直した。


「ああ、わかった。色々とすまないな」


俺は一言だけ礼を言うと、魔王はフッと笑顔を見せるだけだった。

それを最後の言葉と受け取り、俺達はルクスの後を追った。




―――――




「シャーターン様、連れてきた私が言うのもなんだが・・・よかったのか?」


キョウヤ達が部屋を去った後、ベルゼバブがシャーターンに問いかける。


「ああ、構わんさ。ああ見えてガブリエルは見る目は信用できる。それに私自身も彼に興味を持ってしまったようだ」

「そうか。まあ、あんたならそう言うと思ったけどな」


シャーターンの言葉に満足したようにガブリエルは頷いていた。


「見た所、彼は自分の正義に従って行動をしているようですね。その彼がこの世界・ブリューエンガルドの本質を知った時、どのような行動を起こすのでしょうね?」


横に控えていたアスタロトが、シャーターンに向けて疑問を口にする。


「さあな、しかしキョウヤがどのような選択をするにしても面白い事にはなりそうだし、我々のする事は何らかわらんよ」

「そうですね。もし彼が敵に回ったとしても、私達には支障はないでしょうね」


「今はな・・・」

「というと?」


「キョウヤから感じられる雰囲気から察するに、おそらく異世界から召喚されたのだろう。であれば、何かしらの恩恵を受けているはずだからな」

「なるほど。もしかしたら化けるかも知れないという事ですね」


「今はまだ可能性の域を出ないがな」

「ぎゃははははっ、いいじゃねえか!俺としては敵に回ってくれたほうがありがたいぜ!ただ今のままじゃ面白くねえから少しでも強くなってもらわなきゃな」

「ベリアル!いつもいつも、シャーターン様への口の聞き方をわきまえなさい!」


「まあよい。お前達は私の部下でありながら部下ではない関係なのだからな。アスタロトも普通に接してくれて構わんぞ?」

「いえ、私はこのままで結構です」


「そうか、では好きな様にするがいい」



シャーターン達から少し距離を取った場所で話を聞いていたイブリースが口を開く。


「確かに皆が言う様に、面白そうな子なのよねぇ」

「面白そうかはわからんが、数奇な運命を辿っているようだ。俺は、人間の男には興味はないからどうでもいいが」


イブリースの言葉に、さも興味なさげとシェムハザが答える。


「まあ、確かに貴方ならそうよねぇ。クザファンにはどう映ったぁ?」

「我もシャーターン様以外に興味はない」


クザファンも、全く興味なしと切り捨てる。


「はあ、貴方達に聞いたのが間違いだったわぁ。そんな事で面白おかしく過ごせるのかしらぁ?」

「俺は別に面白さを求めてはいないから問題はない」

「我も右に同じ。全てはシャーターン様に優先する」


「・・・まあいいけどぉ。(じゃあ、私は私で勝手に楽しませてもらおうかしらぁ)」


皆が話し合っている中アザエルだけが、ただ黙ってその様子を眺めていた。


「人間よ、じっくりと見極めさせてもらうぞ」


ボソリと一言だけを呟いて。




―――――





俺達が泊まる部屋へ案内をしてくれている途中に、簡単に自己紹介をする事にした。


「俺はキョウヤだ。こっちはタマモとリーエ、そしてフェンリルと、あそこに浮いているのがガブリエルだ」

「・・・私は魔王シャーターンの娘、ルクスだ。父様の頼みだから聞いてやるが、私は人間と馴れ合うつもりはない!」


・・・どうやらルクスは人間が嫌いなようだな。


とりあえず紹介だけは済ませたのだが、それ以外は特に何も話すことなく俺達に貸してくれる部屋の前まで辿り着いた。


「ここがお前達の泊まる部屋だ。後は勝手にするがいい」

「ちょっと待ってくれ。何か用事とか聞きたい事がある時はどうすればいい?」


ルクスが部屋を案内してくれたのはいいのだが、それ以上関わりたくないとばかりにすぐ去ろうとしていた。


しかし俺達は右も左もわからない状態での放置プレイはさすがに困る。

せめて何かあった時に会う事が出来るようにはしておきたい。


「・・・お互いの魔力回路を繋ぎ念話を使えるようにすれば簡単だが、正直私はお前達を信用はしていないからな。何か用事があれば、そこの突き当たりの部屋が私の部屋だから直接訪ねて来い」

「ああ、わかった」


ルクスはそれだけを言い残し、自分の部屋へと向かっていった。


彼女が部屋に入るのを見届けた後、俺達も部屋へ入り一息つくことにした。



貸してくれた部屋は思っていた以上に広々としていて、長方形のテーブルに3人が腰をかける事が出来るソファーが対面に設置されており、化粧台の様な物まで置いてあった。


トイレやシャワールームも完備されていてありがたいとは思うのだが、ここまで家具やらなにやらまでしっかり備え付けておくほど、この部屋を利用する者がいるのだろうかと疑問に思った。


ベッドはツインが二つ置いてあり、4人までは寝る事が出来るようだ。


・・・え?


ツインだと!?


もう、嫌な予感しかしない・・・


部屋を見渡した後、ハァッと溜息を吐きながらソファーに腰を降ろした。


すると・・・



「またキョウヤさんは一人で勝手に決めて!」


ソファーに腰を落ち着かせるなり、リーエはなぜか俺の右隣に座りながら文句を口にする。


「そうだよねぇ」


さらになぜか右隣に座ったタマモも、リーエに同調している。


「我は面白ければなんでもいいぞ」


そしてフェンリルは俺の足元にお座りの状態で尻尾を振っていた。


「・・・なぜ隣に座る?つーか、俺がやろうとする事に無理してついてこなくてもいいんだぞ?今回の事は、特に危険が付きまとう訳だし」


そう、今回の事は俺が勝手に強くなる為には必要な事だと考えただけで、彼女達を巻き込む必要はまったくないのだ。


「そういう問題じゃありません!そして私がここに座るのは必然です!」


リーエが俺の腕を取り身を乗り出して、怒り顔を近づけてくる。


いや必然じゃないし・・・

色々と柔らかいやら良い匂いがするやら、危険が一杯だから離れてほしいんだけど・・・


「そうだよ!あたしはきょうやに付いていくと決めてるんだから!そして私がここに座るのは運命だよ!」


俺の隣に座るのは運命で決まっているのかよ!


タマモまでが身を乗り出しながら迫ってくる。

もちろんタマモにも、俺の腕はがっちりとホールドされている事は言うまでもない・・・


これは危険が危ない(・・・・・・)上、逃げられない・・・


てか、この部屋こんなに広いのに、ここだけ人口密度が異常に高すぎるんだけど・・・


いや、気にしたら負けだろう。


「悪かったよ。俺は別に計画を立てているわけではないからな。今は思いついたまま行動しているんだよ」

「はあ、わかりました。ではせめて、これからは前もって言える事は教えてくださいね」

「まあ、きょうやだしね~。あたしは最初から気にしてないよ」


タマモ・・・

じゃあなぜリーエに賛同したし!


「今回の件は、クラウンとフェンリルとの戦い、そして魔王と会って思い知らされたのが、俺はまだ弱いという事。今のままでは何かするにも成し遂げる事が出来ない可能性がある。だから強くならないといけないと思ったんだ」

「そうですか・・・(また貴方は一人で抱え込もうとしているんですね・・・)」

「だったらあたしも、きょうやの為に強くならなくちゃいけないね」


リーエが最後にボソッと何か言ったが聞き取る事は出来なかった。

その代わりに肩に頭を乗せてくる。


タマモは俺の為に強くなると、正直嬉しい言葉を言いながら俺の目を見つめていた。


「さあ、この話はもういいだろう。そろそろ離れてくれるか?」

「それとこれとは別です!」

「そうだよ!きょうや何言ってるのさ!」

「むう、我を仲間はずれにする気か?」


もう何を言っても無駄らしい・・・

いつの間にかフェンリルまで俺の膝に頭を乗せていたし・・・


俺は半ばうんざりとしていると、さっきまで心あらずで漂っていたガブリエルが真剣な顔で俺を見ていて・・・


(ねぇ、キョウヤ。聞いて欲しい事があるんだけど・・・)


と、いつものおちゃらけた間延びした話し方ではなく、落ち着いた口調で一言呟いた。





お読み頂きありがとうございます。


第4章までの登場人物を

本当に簡単に載せています。

登場人物が多すぎるとややこしくなると考え

極力減らして書いていましたが

思っていた以上に少なかったみたいです。


今回の話は登場人物が一気に増えてしまいましたが

なるべく少しずつ増やすようにしていきます。


良い作品になるよう、

感想やご意見はもちろんの事、

間違いや言い回しのおかしい所など

どんどん書いていただけると嬉しいです。


次話もなるべく早く書き上げるように頑張ります。


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