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第26話 聖域を守る為に・・・



映像を見た俺達は、燃えている森をただ呆然と見つめていた。


燃えていたのは聖域の外であり、結界により聖域の森は守られていたようだ。


しかし、明らかに自然災害で燃えているわけではない。


所々で不自然に火の気が上がっているからだ。


しかもそれは、結界に向けて放った火だということがわかる。


ということは、誰かに攻撃を受けているという事なのだ。


あのままだとニウギス大森林に多大な被害を及ぼす上に、いつ結界を破られるかわからないだろう。



「なんとういう不覚!攻撃されるまでわからなかったとは・・・」


アールヴァス達も、攻撃している奴らの接近に気づいていなかったようだ。


「今攻撃してきているのは誰だ?攻撃される心辺りは!?」

「わからん、わかるとすれば敵の姿を確認することだけだ」


そういって、燃えている映像を攻撃してきている奴らへと視点を切り替えた。


「――!!火蜥蜴(サラマンダー)10体に地獄犬(ヘルハウンド)が4体だと!?なぜ奴らが!!森を燃やし尽くすつもりか!!」

「どういう事だ?あいつらは一体・・・」


二足歩行をし、蜥蜴姿の火を吐く魔物であるサラマンダー 。

精霊種ではなく実体を伴った魔物であり、武器なども扱えるようだ。

普通の蜥蜴の魔物と比べると、皮膚が硬く刃物や魔法が効きにくいらしい。


そしてさらに厄介なのがヘルハウンド 。

“業火の”地獄犬とも言われる程、放つ炎に絶大な威力があるようだ。

集団での戦闘にも特化しており、複数いる事でさらに厄介度が増すらしい。


「奴らは本来なら魔大陸に住んでいる魔物だ。こんな所にいるはずがない!奴らは魔王の命令以外で動くはずがない!」


魔大陸、ここから遥か南に海に囲まれた孤島の事であり、魔王が支配していると言われている場所らしい。


この世界に呼ばれた原因であるはずの魔王。

今まで脅威になっている様子がなかったのだが、ここに来てようやく名前が挙がったな。


「ならば、魔王がここを攻撃しようとしているという事か?」

「それはありえない・・・いや、本当の所はわからないのかもしれないな・・・」


何か訳ありのようだ。

アールヴァスも何か知っているような感じはするが・・・


しかし、今はそれを追及している暇はない。


「とりあえず俺は行く。ユーリの件も含めて、話は戻ってきてからだ」

「童、其方が行くというのか?」


「ああ」

「なぜだ?其方には関係なかろう?」


「・・・さっき俺に聞いたよな?見ず知らずの者を助ける事が出来るのかと」

「確かに聞いた」


「もちろん、さっきも言ったがその答えは“出来ない”だ。それは見知らぬ誰かの話。だが今は、こうして聖域に住む民と出会った。その彼らが危機に瀕しているのに、俺に出来る事をやらないなんて選択肢はない!」

「・・・・」


「という事で俺は行く」

「あたしも行くよ~!」

「もちろん私も行きます!」

(私も行って応援してるよ~!)


タマモもリーエもやる気満々らしい。


ガブリエルは・・・


いや、なんでもない。


それよりも気になることが・・・


「タマモは大丈夫か?相手の属性は火なんから、相性が悪いんじゃないか?」

「きょうやはわかってないな~。あたしは別に、狐火しか使えないわけじゃないんだからね」


まあ、それもそうか。


それに二人ともここにいるように言っても聞くはずがないしな。


「そうか、わかった。タマモもリーエも無理だけはするなよ?」

「うん、わかったよ!」

「ええ、わかりました。でも、それはキョウヤさんも同じ事ですよ?」


リーエに釘を刺されてしまった。


以前無茶をして怒られた事だし、素直に頷いておこう。


「よし、じゃあ行くぞ」

「待ちなさい」


「なんだ?話なら後で・・・」

「これを着ていくといい。防刃・防魔に優れている為、多少は攻撃を防いでくれるだろう」


そう言われ、渡されたのは3人分のローブだった。


「それは、プリズムローブ !!よろしいのですか?」

「ああ、その代わり聖域を守って欲しい。勝手な事を言っていることはわかっているが、我等はここを離れるわけにはいかないのでな。万が一聖樹にまで来た場合は出向く事になるが」


リーエが渡されたローブを見てかなり驚いていた。

それは普通であれば、誰かに渡すような代物ではないのだそうだ。


プリズムローブと言っても色は黒で、光を分散・屈折させ様々な色に見える物ではなく、素材となっている魔物の名前からつけられているという事らしい。


それは今話す事ではないので、追々にしよう。


ただ、今言える事はこのローブは伸縮性に優れていて体に馴染みやすく、それだけでなく先程アールヴァスが言っていたように、防刃だけでなく魔法への耐性も上がるようだ。

そしてかなり貴重な物であるという事。


「わかった、ありがたく受け取っておく。聖域を守る、と大きな事までは言わないが、出来るだけの事はするさ」

「ああ、それで構わん」


ローブは今来ている服の上からでも着られるということなので、俺達はそのまま着用した。


そして直ぐにゲートに向かって走り出す。


「・・・頼んだぞ」


俺達が部屋を出る時にアールヴァスが呟いた言葉が耳に入った。




急いでゲートを通ると、そこにはクラネイアが目を閉じ状況を把握しようとしている様子が伺えた。


「クラネイア!状況はどうなっている!?」

「戻られたのですね。・・・貴方達も戦うというのですか?」


クラネイアが訝しげな目で俺を見てきた。


「貴方達には関係のない事でしょう?なのになぜ・・・」

「そんな事はどうだっていい。今の状況を教えてくれ!」


「・・・わかりました。現時点では結界に問題はございませんが、それも時間の問題でしょう。今は結界を壊されない為に、守護隊が総出で戦っております」

「守護隊で奴らに勝てるのか?」


「・・・樹精霊(ドリュアス)も一人赴いていますが、正直・・・難しいでしょう」

「奴らはそれほどという事か・・・」


「はい、サラマンダーのみならまだしも、ヘルハウンドまでいるとなると・・・すでに負傷者も出ております」

「くそっ!俺達が前に出る!彼らを防衛に回るように伝えてくれ!」


「それはなりません。彼らには聖域を守る義務があります」


正直、義務と言う言葉にイラっとした。

しかし、それに文句を言っている場合でもない為、我慢する事にして加勢に行く事にする。


「とりあえず俺達も、そこに向かう!その樹精霊には敵を倒す事より、守護隊を守るようにさせろ!」

「・・・・・わかりました」


「行くぞ!」

「うん、わかったよ!」

「行きましょう!」

(キョウヤ~、がんば~!)


ガブリエルの気の抜ける声をスルーして、一気に駆け出す。


転移の間から出た俺は降りる時間も惜しむ為に、リーエとタマモを抱え聖樹から飛び降りた。


「ちょ、ちょっとどうするの?」


落ちながらタマモが少し焦ったように聞いてくる。

俺は身体能力強化があるし、タマモやリーエも魔法で大丈夫なはずではあるが。


「リーエ、頼む!」

「はい!」


俺の一言だけでリーエは理解してくれたようで、風の魔法を使う。

俺達の斜め下から進行方向に向かって強い風が吹き、落下速度は落ちながらも目的地へと加速する。


足元に木々が近づき、その木を(駆ける意味で)蹴りさらに加速する。


火が上がっている場所が目前に差し迫った所で地面に降り、抱えていた二人を下ろす。


それほど動き回らず攻撃していると思われる10体と、それに応戦している20体近くの反応を魔力感知で捉える。

これは多分サラマンダーと、ボルドを含めたホビット達なのだろうと思う。


それとは少し離れた場所で、素早く動きながら巧みに連携を取っているように感じる4体と、それに応戦している6体の反応を捉えた。

そしてこっちがヘルハウンドと、シュタイナー達エルフと樹精霊なのだろう。


二手に分けたほうが言いと考え、俺はタマモとリーエに話しかける。


「お前達二人でサラマンダー10体いけるか?」

「うん、サラマンダーくらいなら大丈夫だよ!」

「ええ、私も大丈夫です」


先程聞いた話からすると、サラマンダーの方がヘルハウンドよりも弱いと考えられる。

タマモもリーエも種族の中では上位の存在なのだから、サラマンダーなら大丈夫だろうと思い聞いてみた。


「よし、じゃあそっちは任せた!俺はヘルハウンドを叩く!」

「ええ~!あたしもそっちに行くよ!」

「そうですよ!ヘルハウンドはサラマンダーの比じゃないんですよ?一人では・・・」


「いや、ダメだ!サラマンダーと戦っている者もいる。二人はそいつらを守ってやれ!」

「うう~、きょうやがそう言うなら・・・」

「・・・わかりました」


タマモは膨れっ面で、リーエは暗い顔をしながら、納得はしていないが了承してくれたようだ。


「・・・サラマンダーをさっさと片付けて、そしたらその後に俺を手伝いに来てくれ」

「――うん!」

「はい!直ぐに駆けつけます!」


仕方なく告げた俺の言葉で、さっきまでの顔が嘘のように二人とも顔をパァーっと明るくさせた。


「ガブリエルは・・まあ、どっちでもいいや」

(ちょっと~!私の扱いがぞんざい~!ぞんざいだよ~!)


結局ガブリエルは俺についてくることになり、直ぐに二手に分かれて敵のいる場所へと向かって行った。




―――――――――――





きょうやと分かれて、サラマンダーのいる場所へと向かっている。


まだ全盛期の力が戻っていないとはいえ、サラマンダー程度なら大した事はないはず。

それにリーエもいるんだし。


あたしには正直、聖域を守るだとか聖域に住む人達を守るとかそんなつもりはないんだ。


速くサラマンダーを倒してきょうやの所へ行き、きょうやを助け褒めてもらいたい。

目的はそれだけ。


まあ、戦いとなると血が騒ぐというのもあるけど。

これが妖狐の闘争本能ってやつなのかな?


・・・リーエの故郷の仲間を助けるとか、そんな事はこれっぽっちも思っていないんだからね!

ほんとにちょっぴり、サラマンダーを倒すちょっぴりついでになんだから。


どちらにしても、速く倒してきょうやの所へ行かないと!


「リーエあそこだよ!」

「ひどい・・・なんてことを・・・」


あれだけ緑豊かだった森が、あたり一面火に包まれてしまっているその光景にリーエが嘆いている。

何人かは負傷しているようだし


確かにあたしでも、こんな光景には腹が立つ。


「みんな下がって下さい!」

「リューンエルス様!」


リーエが魔法を使う為に、皆に下がるように伝える。

その意図を理解したように、戦っていた皆が後ろに下がってくれた。


大津波流(タイダルウェイブ)


リーエが水の魔法を使うと、あたしたちの上空からものすごい水の波が現れた。

それは何者もを押しつぶすほどの巨大な波。


おそらくリーエは、これだけ燃えている木々を何とかするよりも、他に燃え広がらないように消す事を優先したんだと思う。


その結果、この辺り一帯が木々すら残らない状態へと変わった。


リーエはそれを見ながら悲しそうにしている。


でも戦うとなると、あたしにとっては広くなったこの状態の方が戦いやすいし。


案の定、波に流されたサラマンダーは多少傷を負った程度で、何事もなく起き上がりこちらに向かってきている。


あたしもリーエも、サラマンダーに対し攻撃態勢で待ち構える。


リーエも今の攻撃で倒すつもりは無かったみたい。

あくまでも火を消すことを優先しただけ。


だからサラマンダーが、大した傷を負っていない事に動揺はしていない様子。



ふと、先程きょうやに言われた事を思い出した。


――火の属性相手なんだから、相性が悪いんじゃないか?


あたしのイタズラ心もしくは対抗心に火がついた。


本当は回りの被害と敵の耐性を考えて狐火を使わずに倒そうとしていたんだけど、リーエの魔法によって周りに燃える物がなくなったこの状況なら、あたしも遠慮なく狐火を使える。


火を操り火に耐性を持つ相手が、どれだけの火に耐えられるのかな・・・


そして、火に自信を持つ相手が火で倒された時、やつらは何を考えるのだろう?


あいつらには、その実験台となってもらおう。


あたしはついつい、にやりとしてしまった。


「リーエ、あたしが半分受け持つよ。残りの半分は任せたからね」

「わかりました。無茶はしないようにしてくださいね」


「うん、無茶はしないけど、あたしが相手をする敵の近くには寄らないようにね」

「え、ええ・・・わかり、ました・・?」


リーエはあたしが何をするのかわからず、困惑するように頷いている。


「じゃあ、行くよ~!」

「はい、こちらは任せてください!」


あたしは左側に旋回し、リーエは右側に旋回して、お互い距離をとった。


するとうまい具合にサラマンダーは半数に分かれて、あたしとリーエを目がけて進んできた。


先頭にいるサラマンダーが、あたしに向かって火を噴いてきた。


やつらもあたしと同じ事を考えたのだろうか?

いや、それはないね。


遠距離の攻撃手段がそれだけしかなく、あたしに火は効かないという事を知らないのだろう。


あたしは敢えて避けずに、そのまま火をくらう。


ふふん、この程度か。


貰ったローブも、思ったよりも良い仕事をしてくれているみたい。

いつも以上に、全く効く気がしない。


あたしは大きくした尻尾を、火を振り払うように振り回す。


するとサラマンダーから受けた火は簡単に消えた。


お返しとばかりに、あたしは手を高く上げその上に狐火を作り出す。

サラマンダー一体を覆うくらいの大きさだ。


まずは小手調べ。


あたしは向かってくるサラマンダー一体に向かって狐火を放った。


サラマンダーは案の定、炎などなんてことないとばかりに狐火を無視して向かってくる。


そして持っていた剣で炎をなぎ払った。


甘いよ!


サラマンダーは剣で火を退けると考えていたようだけど、あたしの狐火はそんなもので防げる程やわじゃない。


狐火は剣の筋道すら出来ずに、そのままサラマンダーに直撃する。


サラマンダーは一瞬驚いた表情になったが、別に効かないとばかりにニヤッと笑った。

それに炎は直ぐに消えるとでも思っているんだろうけど・・・


その笑みはいつまで続くのかな~?


あたしは他のサラマンダーを牽制しつつも、観察を続けていた。


いつまで経っても消えない炎に、サラマンダーが少し慌て始める。


そりゃ、当たり前だよ。

あたしの炎は、あんたらの噴く火や魔法の炎とは訳が違うからね。


炎の威力も出し入れも、あたしの自由自在。

現にサラマンダーを覆っている炎に妖力を注ぎ、少しずつ温度を高めている。


段々サラマンダーの顔が苦痛に歪んできた。


ふ~ん、この辺りが限界かぁ。


サラマンダーが持つ炎の耐性の限界がわかったので、この辺りにして仕留める事にした。


炎を竜巻状に巻き上げ一気に焼き尽くし、火柱を上げた瞬間に狐火を消す。


火が消えた跡には何も残っていなかった。



「さて、これ以上は時間を使ってられないし・・・お前達は、焼き尽くされるのと別の攻撃で倒されるのと、どっちがいい?」




――――――――――





タマモさんはこんな時だというのに何か楽しそうですね・・・


戦う事が好きなのでしょうか?


私は戦いが好きという訳ではありませんが・・・


でも、私も負けていられません。



タマモさんと分かれて、今目の前には5体のサラマンダーがいます。


先程ちらっと確認した所、怪我をしたホビット達も回復薬として着ていたエルフに治してもらったようですね。


これで私も心置きなく戦えます。



そう思っていると、タマモさんがサラマンダーの火を受けていました。


タマモさん!?


いや、意外と平気そうです。


しかもその後に、タマモさんも狐火で攻撃をしているようですし。


火に耐性を持つ相手に、火で攻撃してどうするんでしょう。



まあ、彼女には彼女なりの考えがあるのでしょうね。


私はこちらに集中しないと。


さて、この森を焼け野原にしてくれた罪を償わせないといけませんね。


取って置きの一つでもお見せいたしましょうか。


ここは幸いにも精霊が活発となる場所。

私はエルフ語で呪文を唱え、精霊に呼びかけます。



「――お願い鎌鼬(カマイタチ) !私に力を貸してください!」


すると、私の周りを幾重もの風が纏わり尽きます。

そこに現れたのは、イタチのような姿をした3体の風の精霊。


私に体をこすり付けるように寄ってくる姿はかわいいです。


と、今はそんな事を考えている場合ではありません。


カマイタチもサラマンダーを睨むように見つめています。


そりゃそうでしょう。


この森をこんな風にしてしまったのだから・・・


サラマンダーには、もう退場していただきましょう。


「では、お願いしますね」


そういって私はサラマンダーを指差した。

すると3体のカマイタチは、5体のサラマンダーに向かって飛んでいきます。


サラマンダーにはカマイタチの姿は見えていません。

精霊の姿は普通なら見る事が出来ないのだから。


きっと何が起こったのかわからないうちに終わるでしょう。


そう考えているうちに、まずは1体が切り刻まれ、そして2体目・・・



なぜ私が精霊魔法でカマイタチを呼んだのか。


それには二つほど理由があります。


まずはカマイタチに切れない物は無いに等しいという事。

まあ中にはカマイタチでも切れない物もありますが、普通ではほとんど皆無に近いのです。


皮膚の硬いサラマンダーでも、カマイタチにとっては関係ありません。



そしてもう一つが、この森を彼らの汚らわしい血で汚したくはないという事。


というのも、カマイタチというのは先ほど現れたように、常に3体で一つの存在となります。


最初の1体が足を引っ掛けバランスを崩し、次の2体目が体を斬り魔力を奪い、最後の3体目が血を飛ばさないように傷口を止血するのです。


最後の一体は止血するだけで、傷口を塞ぐという回復をさせるわけではありません。


なので傍目(ハタメ)には、いきなり傷口がパカッと開いたようにしか見えません。


もちろん2体目の斬る役目の子も、程度を調節出来ます。


今回は加減をする必要がないので、遠慮なく切り刻んでいるようです。



そして最後の1体も、カマイタチに斬られたようですね。


サラマンダーは素材として高値で取引されるはずですから、後でキョウヤさんに回収してもらいましょう。



どうやらタマモさんも終わったようです。


最初の一体は火耐性をどのように突破したのか狐火で倒したようですし、他の3体を倒した所は見ていませんでしたが、最後の1体を巨大化した尻尾によって叩きつけて倒したようですね。


あら?

尻尾が1本しかありません。


4本を一つに纏めた事で巨大化させたのでしょうか?

それとも3本を変化で消しただけなのでしょうか?


まあそれは兎も角、怪我人の様子を見てからタマモさんと合流して、一刻でも早くキョウヤさんの元に向かうとしましょう。




―――――――――





残りは4体。


それなら・・・



「クズハ、ホウジュ、ハクコ !あの3体は任せたよ!」

「「「かしこまりました。タマモ様」」」


あたしは眷属を呼び出す事にした。


尻尾を媒体とするため、尻尾の数だけ呼び出せる眷族。


あたしは今4本尻尾があるから、呼び出せる眷族は4体。


1体はあたしが倒すとして・・・


だったら3体呼び出そう。


と考えて、集中し妖力を練り上げ眷属へ呼びかけて顕現したのが、先のクズハとホウジュとハクコの3体。



サラマンダー3体を任せて、あたしは残りの1体に向き合う。


熱への耐性はわかったけど、じゃあ皮膚の強さはどうなのかな?


あたしの尻尾も自由自在に出来る。


尻尾を巨大化させた上に、硬質化させる。


その尻尾をサラマンダーに向けて思いっきり叩きつけるように振り下ろす。


サラマンダーは剣の腹で受け止めようとしていたみたい。


だけど、あたしの尻尾の威力を殺しきれるわけもなく、そのまま押しつぶす。


あたしは反撃に備えて攻撃体勢を取っていたんだけど、待っていても起き上がってこないから見に行くと、一発で終わっていた。


なんだ、これなら眷属を呼ぶまでも無かったなぁ、と思いながら眷属たちを見ると、そちらもすでに終わっていた。


すると彼女らは一礼をして姿を消すと、あたしの尻尾は4本に戻った。


気がついて見ると、リーエの方もすでに終わっていたみたい。


リーエは怪我人に治療をしながら、あたしを待っていてくれている。



リーエの所まで足を運び声をかける。


「リーエの方も終わっていたみたいだね」

「ええ、タマモさんも無事に倒したようですね」


リーエは話しながらも回復の手を緩めていない。


さすがだなぁ・・・と関心していると、あたしが急かしていると勘違いしたのかリーエが口を開いた。


「もう少しだけ待ってくださいね。あと少しで全ての怪我人の治療が終わりますから」

「うん、早くきょうやの所に行きたいけど、それはリーエも同じだもんね。大丈夫だよ、待ってるから一緒に行こう」


あたしのその言葉が嬉しかったのか、リーエは笑顔で頷いてくれた。


その後、あたしも手伝いつつ何人かの治療を終えてきょうやの元へと向かった。



きょうや、すぐに行くから待っててね!





ここまで読んでくださり有難うございます。


そしてごめんなさい。

出来もしない事を後書きで言うのをやめます。


前話の後書きで言っていた、今話を短めにするという事。


短く出来ませんでした。

今の展開をあと何話でというのも、予定が狂う可能性の方が高そうなのでいいません。


今話の視点の変化ですが

響也→タマモ→リーエ→タマモです。

(これが長くなってしまった原因ですが・・・)

話の都合上、この方がいいかなと考えました。


特に最近タマモの出番が少なかったなと思い

タマモ視点を多めにしました。


今の展開も、もう少しだけお付き合いください。

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