第25話 管理者との対面
遅くなりました。
ようやく更新いたします。
「無事こちらに辿り着けたようですね」
シュタイナーにクラネイアの元まで連れてきてもらい、クラネイアはそう言葉を口にした。
綺麗に作られた階段を登り、途中で会うエルフ達にシュタイナーが言葉を交わしながら進む事およそ15分。
ここは聖樹の頂上付近に作られた管理者の元へと誘う転移の間。
頂上付近にある、幾重にも張り巡らされている枝の中で真上に向かって伸びる太い枝に、聖樹に入ったときと同じように、決められた者だけが通る事が出来る穴を魔法で作られている。
勘違いしないで欲しいが、聖樹の幹に作られた魔法の穴も、この穴に関しても物理的にあけているわけではないという事。
管理者達の空間魔法による効果で、すり抜けているという方が正しいのだろう。
なので本来そこには穴など存在しないのだ。
通る事を許された者・もしくはその者の近くにいる場合に限り、その空間魔法が発動し道筋を視覚的に穴として認識する事が出来るようになっているのだ。
なぜそのようにされているのか。
一つは勿論、他種族の侵入を防ぐ為。
そしてもう一つは、聖樹には決して傷をつけてはならないとされているからだ。
そのため先程見てきた家や階段などは、枝などに一切傷をつける事はせずに、他の木で作った木材を枝など避けたり上手く利用したりしながら作った物だ。
ここに来るまでシュタイナーにその話を聞かされ、気をつけるように促されてきた。
その点に関しては、シュタイナーだけでなくリーエにも言われていた。
特にタマモにはリーエから念を押されていたのだが。
「さて、ここからは関係のない者は出て行きなさい」
管理者の元へ行く事が出来るのは、限られた者だけらしい。
もしくは管理者から直接呼ばれた場合。
まあ、管理者から呼び出される事はまずないらしいので、何かあったとしてもクラネイアかエルフの族長らを通すのが常のようだが。
従って、シュタイナーとウィズリーはここで退出しなければならない。
「リューンエルス様・・・どうか御武運を・・・」
「ありがとうウィズリー」
ウィズリーはリーエに涙目で抱きつき、リーエも彼女を優しく包み込んでいた。
ウィズリーが心配しているのは、リーエの処遇についてなのだろう。
管理者だったリーエが、管理者としての立場を放棄したのだから、それ相応の処遇を受ける可能性があるのだから。
「シュタイナーも色々とありがとうございます」
「いえ、私にそのようなお言葉は・・・」
リーエはウィズリーを抱きしめたまま、顔だけをシュタイナーに向けて礼を言った。
「では、私は行ってきますね。ウィズリー心配しなくて大丈夫ですよ。きっとなんとかなりますから」
「リューンエルス様・・・」
ウィズリーを安心させるように声をかけ、その言葉を受けウィズリーも離れた。
そしてウィズリーとシュタイナーは、俺達に(特にリーエに向けて)深く礼をしてから去っていった。
「なあ、クラネイアさん」
「クラネイアで結構です。キョウヤ様」
「じゃあクラネイア。俺の事も様付けはやめてくれ」
「承知しました、キョウヤさん」
「・・・まあいいか。それでシュタイナー達を退出させたという事は、管理者に会わせてもらえるという事でいいか?」
「はい、お伺いをお立てした所、通しても構わないとの事です」
すんなり通してくれるクラネイアと管理者を訝しげに思ったのだろう。
リーエが少しだけ顔をしかめていた。
掟から反している俺達を通してもいいという事は、俺かリーエに話があるという事か。
どちらかというとリーエの方だろうな。
もしくは、掟に反している俺達を隔離する為かもしれないな。
どちらにしても用心しておくことに越した事はないだろう。
「じゃあクラネイア、宜しく頼む」
「はい、わかりました。どうぞこちらへいらしてください」
クラネイアに促され、指定された場所まで足を運ぶ。
「ガブリエル様も行かれるのですか?」
(当たり前だよ~!キョウヤのいる所に私あり~!なんてね~!)
・・・・・
敢えてツッコミはせず、放置プレイを決め込む。
(ちょ、ちょっと~!誰か何か反応してよ~!)
ガブリエルのせいで緊張感がなくなるなと内心で笑う。
いつでもどこでも、ガブリエルは変わらない。
まあ、そのおかげで皆救われている部分もある。
しかしそれはそれ、これはこれ。
ガブリエルをスルーしてタマモに話しかける。
「この先どうなるかわからないが、タマモも一緒に来るのか?残っててもいいんだぞ?」
「うん、もちろんだよ!キョウヤのいる所にあたしあり~!だもん」
・・・・
いかん!
タマモにまでガブリエルの悪影響が移ってきてしまっている。
(うう~、タマモは良い子ちゃんだね~!大好きだよ~!)
「あたしもガブリエルは好きだよ!」
(がび~ん!)
なんか変な茶番になっているし。
しかも密かにガブリエルがショックを受けて、擬音を口にしているし。
ガブリエルが“大”好きと言った事に対し、好きと返された事がショックだった様だ。
うん、まあどうでもいい。
「あ、あの・・・そろそろよろしいでしょうか?」
シリアスな雰囲気を台無しにされて、クラネイアは困っていた。
「ああ、すまないな。始めてくれ」
「ええ、わかりました。では空間扉を開きますが、ガブリエル様は空間扉を通れないでしょう。ですので空間扉から転移先を読み取り直接“飛んで”ください」
管理者の居る場所へは、先程の魔法陣による転移ではなく、ゲートと呼ばれる扉を開く事により行く事が可能なようだ。
そしてその扉から通れるのは、“物質”を構成している物に限られるとの事。
精神体や幽体などの肉体を持たない者は通る事が出来ないそうだ。
それは悪意を持ったそれらが万が一結界を素通りできたとしても、管理者の元まで辿り着けないようにするためだとか。
まあそもそもゲートを通れたとしても、虚空間へと繋がるゲートな訳だから、物質を伴っていないと存在確率が危ぶまれるらしいが。
じゃあクラネイアは?と思ったが、どうやら管理者と魔力回路が繋がっているらしく、ゲートを開けさえすれば管理者の元に行く事が可能なのだそうだ。
クラネイアが何もない空間に手を翳すと、そこには扉が現れた。
そして、徐々に扉が開いていく。
「リューンエルス様は指輪をお持ちですね?では、彼らと一緒にそのままお通りください」
クラネイアはリーエの指を見て、指輪を持っていることを確認していた。
その言葉を聞き、リーエは俺とタマモの手を握った。
「私が良いと言うまで手を離さないでくださいね」
指輪を持っているリーエと繋がる事で、俺とタマモも管理者の元へといけるようだ。
途中で離しまうと、下手をすると二度と戻って来られないとの事。
リーエが歩き出しそれに連なって俺たちも歩き出す。
ゲートを潜る直前、クラネイアとすれ違いざまに声をかけてきた。
「決して失礼なきようお願い致します。では、どうぞご幸運を」
クラネイアはウィズリーと違って武運ではなく幸運をと言った。
管理者は俺達に危害を加える気はないという事だろうか。
そう言って、軽く頭を下げるクラネイアに手を乗せてしまった。
・・・・・
なんだろう、周りに頭を撫でて欲しがる奴が増えてきたせいなのか?
頭を撫でる事が癖になってしまっている。
精霊であるクラネイアも、肉体を持つわけではないが、現存はしている為に触れる事は出来るようだ。
クラネイアは無表情で下げていた顔の中に、一瞬驚いた表情を見せ少しだけ顔が赤くなったような気がした。
しかしそれも一瞬の事で、手を離した俺に何事もなかったかの様にニコッと笑顔で見送ってくれた。
ゲートを潜った瞬間、不思議な感覚に陥る。
全ての色がそこにあるように見えるのに何も見えない・・・
何もかも存在するように感じるのに、そこには何もない・・・
自分でも何を言っているのかわからなくなる・・・
そんな矛盾する感じの空間だった。
リーエが俺とタマモの手を引きながら、しばらく進むとようやく抜ける事ができた。
そして最初に目にして思った・・・
まさしく宇宙だ!と。
以前確かにガブリエルが言っていた。
宇宙空間に近いと。
ここは虚無の世界、もしくは虚空間。
まあどちらも同じようなものなのだが、先程感じたものが存在する空間。
存在するというのもおかしいのだろう。
ここには全てがあり、そして何もない空間なのだ。
先程も言ったように、俺達の世界で言う所の宇宙空間である。
宇宙には、この世の全てが成り立ち存在する。
その一方で宇宙には、物質を取り除けば何も存在することはない。
他に言い換えるのなら、夢の中の空間とでも言っておこう。
体に感じるのは、そのふわっとした感覚なのだ。
自分を強く意識していないと、自分が存在しないのではないかという不安に陥りそうになる。
タマモも同じ事を考えているのだろう、口を噛みながら意識を強く持とうとしているようだ。
この空間の把握はその辺りにしておいて・・・
・・・・・・
「なあ、リーエ?そろそろいいんじゃないのか?」
そう、リーエはまだ手を繋いだままだったのだ。
「いえ、まだダメです!」
そういいながら、普通に握っていた手を恋人繋ぎ(?)に変えて、さらに強く握ってくる。
・・・・・
あれ~?
タマモと繋いでいた手は離しているようなんだが?
「ちょっと、リーエ!いつまで繋いでるの!?」
それを見ていたタマモが文句を言いながら、俺の隣に来て空いている手を同じように握ってきた。
・・・・・
なんだろう・・・
(俺には家族はいないが)家族と遠足にでも来ている様なこの感じは・・・
(うふふ~、キョウヤは私のもの~)
そしていつの間にか来ていたガブリエルが、俺に後ろから抱き付くようにしている。
なんかもう、とりあえず色々と諦めながら回りの状況も確認する事にする。
この場所には床はあるが、壁や天井はなく見える景色というのが宇宙のような感じだ。
リーエによると、ここは結界で囲まれているらしく、自分の存在確率や、生きる為の空気なんかは問題ないらしい。
先程感じたのは、初めてここに足を踏み入れると必ず陥るものなのだとか。
前方を見ると、かなり先に大きな建物が見える。
そこに管理者がいるようだ。
周りにも何件かの建物が空中に浮いていてそれも気にはなったのだが、とりあえずは前方の建物を目指して進んでいく。
目指していた建物の前に来ると、一際大きな扉が目に入る。
その扉をリーエが引いて開けた。
中に入ると、さらに通路がありその奥にもドアがあった。
その中から強大な魔力が6つほど感じられる。
おそらく管理者6人とも中にいるのだろう。
途中、横に向ける通路や他にも部屋などもあったのだが、それらには目もくれず正面のドアへと向かう。
リーエが「お分かりでしょうけど、この先に・・・」といったので俺は頷いた。
俺が頷いた事を確認したリーエはドアを開ける。
部屋の中は近未来的な感じのする造りになっており、周りにはモニターの様にいくつもの映像が流れている。
それは聖樹や聖域周辺が主で、他にも俺が見たことのない風景や街の様子などを見る事が出来た。
後から聞いた話だが、これらは空間魔法の応用で任意の場所と空間を繋げる事でモニターが出来るそうだ。
俺にも出来るのかと考えたのだが、正確な空間座標を認識出来ないと無理との事。
空間転移はイメージでその風景を正確に出来ればいいので、その辺りが少し違うようだ。
空間転移を面として考えた場合、モニターの場合は点で認識しないといけない。
わかりやすく言うと、カメラの設置場所を決めないといけないという事だ。
そして映像から目を離し正面を見据える。
テーブルがコの字に設置されており、真正面に一人、向かって左側が3人、右側に2人座っていた。
まずはリーエが口を開く。
「お久しぶりでございます、アールヴァス 様。こうして再びお目にかかれる日が来たことを嬉しく存じます」
アールヴァスと呼ばれた正面に座っている人物。
これがおそらく管理者の長なのだろう。
いつも敬語を使っているリーエが、それ以上の敬意を払いながら話している。
かなり長い時を生き、長と呼ばれるくらいだから年寄りの姿を想像していたのだが、思っていたよりも見た目は若かった。
若いと言っても、4,50代くらいだが。
「息災のようだな、リューンエルスよ。本来なら其方はここには来られない立場なのだからな、それはわかっているな?」
「はい、承知しております」
「ハイエルフであろうとも聖域を出た者は、戻る事を許すわけにはいかないが、今回はガブリエル様がいらっしゃるといことで特別に許可を出した。リューンエルスだけでなく、人間と妖狐まで入れる事になるとは異例中の異例だがな」
「申し訳ございません。お心遣いに感謝致します」
(あれ~?私のおかげ~?キョウヤ~、私を褒めてくれていいんだよ~!)
「あ~、はいはい、お前がいて助かったよ」と場の空気を読まずに陽気な声を上げるガブリエルを褒めておいた。
「遅れましたがガブリエル様、お初にお目にかかります。私は聖樹の管理者の長であるアールヴァスでございます。以後お見知りおきを」
(うん、会ったことはないけど知ってるよ~!よろしくね~)
まあ、どこでも覗く事が出来るガブリエルなら、別の空間に居ようが見られないわけがないか。
「さて、リューンエルスよ、なぜここに戻ってきたのか、しかも人間と妖狐を連れてまで。説明してもらえるのだろうな?まあ、大体の事はわかっているが、其方の口から直接説明を聞きたい。聖域を出た後の事からな」
「はい、実は・・・」
そしてリーエが事のあらましを説明しだした。
リーエが聖域を出てから、種族間の諍いを無くす為に各地を回った事。
歌に希望を乗せて、歌い始めた事。
半ば心が折れそうになりながらも歌い続け、そのおかげで俺やタマモ、ユーリと出会い友人となった事。
その友人の一人であるユーリが禁術で眠らされてしまった事。
ユーリを助けたい為に、禁術に詳しいであろう長を頼るしかなかった事。
それらを要点だけを掻い摘んで、わかりやすく説明をしていた。
「そうか。其方が居なくなってから、監視という意味も込めて動向を見ていてある程度は知ってはいたが、やはり其方を外へ出してしまったのは間違いだったようだ」
「そんな、私は間違った事などしておりません!」
「そなたはまだ若い。何が正しく何が間違っているかを理解していない。いや、正しい事などは存在し得ない。人によっては、正しいと思ったその行いが悪となるのだからな。それは其方も各地を回って感じた事だろう?」
「そ、それは・・・」
「全ての意見を統一する事など不可能。では何が正しいかではなく、何をする事が最善かを考えなければならないのだ。その結果、犠牲にしなければならない事も当然ある。其方のやろうとした事は、どちらにも中途半端にしかならない結果となるのだ」
「・・・」
アールヴァスの言っている事は間違いではないのだろう。
リーエも押し黙ってしまった。
正直今の状態では、ユーリにかかった禁術の事を聞きだすことも難しいだろう・・・
「なあ、口を挟んで申し訳ないが、意見をさせてもらってもいいか?」
「我等ハーフエルフに対しその口の聞き方、不敬であろう!」
向かって左側の奥に座っている管理者が、俺の口の聞き方に怒りをあらわにして怒鳴ってきた。
「いや、貴方達は本来なら俺達を拒絶しているのだろう?それなのに不敬とか言われてもな」
「なんという物言い!やはり人間などここに入れるべきではなかったのだ!」
「カーディス、抑えよ。彼の者の言う事も間違ってはおらん」
俺に怒鳴ってきた管理者はカーディスというらしい。
アールヴァスに宥められ、俺を睨みながら口を閉ざした。
「で、何が言いたいのだ?人族の子よ」
「俺には難しい事はわからん。でも貴方の言葉を借りるのなら、リーエのしてきたことは正しいという事もないが、間違いだと断定出来る事でもないのだろう?」
「確かに全体で見た場合はそうだ。しかし我等には、聖樹や聖域の民より優先する事は何も無い。これらを二の次にする事などはありえないのだ」
「なるほどな。この森以外の事はどうでもいいという事なんだな?」
「その通りだ。童よ、我等がなぜ聖樹を守っているのかわかるか?」
「聖樹がこの世界を支えているという事だったか?」
「その通りだ。付け足すならば、聖樹が虚無から受けるエネルギーを大地に巡らせる事により、この世界が成り立っている。故に、聖樹が無ければ生き物すら存在できない世界となってしまう。そうなれば、自ずと守る優先順位が決まるだろう」
「だから、他の種族はどうなろうと構わないし、受け入れる事もないと・・・」
「童は自分の周りの者に危険が迫ってまで、見ず知らずの者を助け、受け入れる事が出来るのか?」
「・・・出来ないし、するつもりもないな・・」
「そうであろう?我等はそれを国として行なっているだけだ」
「しかし、本当に害のない者が、純粋に仲良くなりたいと考えていた者まで拒絶することはないんじゃないのか?」
「そう、それだ。それが拒絶する一番の理由なのだ」
「というと?」
仲良くなりたい者まで、無理矢理拒絶する理由が俺にはわからなかった。
それを拒絶する事で、相手と敵対関係になってしまうのではないかと思ったからだ。
「全ての者が仲良くなりたい、もしくは害のある者であるならば話は簡単だ。全てを受け入れるか、排除すればいいだけの話だ。
しかし実際はそうではない。純粋な者もいれば、害のある者もいる。それは意識しての者、意識してない者もいる。
もし最初に純粋に仲良くなりたい者がここを訪れ、受け入れたとしよう。民はその種族=良い者だと考えてしまう。
すると次に来た、悪意を持った同種族を受け入れてしまったらどうなる?
民を危険に晒してしまう事になるだろう。
それならば最初から排除ではなく拒絶し、いかなる者も受け入れないと認識させる事が一番いいのだ」
・・・・・
確かにそうなのかもしれない・・・
「それを見極める事は不可能なのか?」
「童よ、其方がもし魔眼を持ってなかったとしても、相手を正確に見極める事が出来るのか?」
何も言ってないはずの魔眼の事までわかっているのか。
確かに魔眼に頼らなくても、ある程度のことは相手を観察する事でわからなくはないが・・・
「・・・無理だろうな」
「相手を正確に見極める事など、誰にでも出来る事ではない。魔法で誤魔化しているのかもしれないし、本心とは裏腹に害を及ぼす者などもいるのだしな」
アールヴァスの言っている事は間違っていないし、確かに最善の方法なのかもしれない。
「童が考えている事はわかる。我等はこう見えても、童と比べ物にならぬ程の時を生きているのだからな。他種族を拒絶しているのは、嫌っているからでも友好関係を築きたくないからでもない。我等は種族を差別しているのではなく、区別しているだけなのだ。」
俺も確かに、自分とその周りさえ大丈夫であれば、見た事もない人が危険な目に合ったとしても、別に助けようとは思わないだろう。
それが大きいか小さいかでしかないのか・・・
それでも今の俺は、近寄ってくる人を邪険にするつもりはない。
まあそれは、観察眼と魔眼により見分ける事が出来るからでもある。
そのうちの魔眼が無ければ、相手の本当の所はわからないのだろうな。
そしてこれも無理なのだろうなと思いつつも聞いてみる。
「貴方達の考えはわかった。俺達の意見を押し付けるつもりも無い。リーエがここに戻ってくる事を許してやってはもらえないだろうか?」
リーエは驚いた顔をして俺の方を見た。
もちろん俺が言ったリーエが戻ってくるというのは、リーエが戻りたくなった時という意味。
ちなみに、ガブリエルとタマモが大人しいのだが、話し合いが始まったら余計な口出しをしないように言ってあるからだ。
「それは出来ない。なぜならば、外界に出た者が何かしらに操られたりしないとも限らないからだ。それは魔法かもしれないし、童のように魔眼の類もある。それを見抜く事は困難なのだ。逆に外界へ出てはいけないというのも、ここでの知識が外に漏れない為でもある」
「そっか・・・リーエがここに戻ってくる事は出来ないという事なんだな・・・」
「そうだ。我等もただ掟だから、という理由で拒んでいるわけではないのだ」
何も考えず掟だからと言うのであれば、いくらでも付け入る隙はあったのだが、ここまできちんと考えた上の事であれば何も言う事はできないな。
「なあ、無理を承知でお願いしたい。ユーリの禁術の解除方法だけでも教えてはくれないか?」
「その人族の子がかけられた禁術か・・・実際にかけている場面を見た事と、リューンエルスから聞いた事を掛け合わせて考えると、おそらく静かな眠りだろうな」
「見て・・・いたのか!?」
「当たり前だ。大きな魔力の反応を感じれば、森に危険がないか確認するに決まっている。特に禁術の波動など、確認しないわけがないだろう」
「それなら、なんで!」
わかっている、わかってはいるのだが、口に出さずにはいられなかった。
「我等は止める為に監視をしたわけではない。危険がないかどうかが問題なのだ。本来なら禁術を根絶やしにしなければならないのだろうが、我等が赴き万が一負けたとした場合、こちらの知識が漏れる事の方が、世界を破滅に近づけてしまう可能性が高い」
先程の話からすると、そうだろうとは思っていた。
自分が助ける事が出来なかった事を、他人にぶつけるなんて最低だなと思った。
「その禁術は一定時間で解除出来ないと、永遠に目が覚めることがないというだけだから、危険はないと判断した。非人道的な為、禁術扱いとしたものだな。従って、解除そのものはそんなに難しくはないだろうが、簡単に教えていい物でもないというのが答えだ」
「・・・・・」
解除方法を教える事により、もし万が一その情報が漏れてしまったら、そこから禁術を作り出してしまうかもしれないという事か・・・
アールヴァスの言っていることがわかるだけに、何も言う事ができない悔しさを噛み締めていた。
その時・・・
ドォーン!!
ものすごい音が聞こえてきた。
正確にはこの空間からではない。
外から受けた波動が伝わってきたという感じだ。
「な、なんだ!?」
アールヴァスが何事かと驚いていると、カーディスが叫んだ。
「アールヴァス!あれを見よ!」
アールヴァスの後ろに流れていた映像を確認した。
その映像では、森がものすごい火柱を上げながら燃えていた。
「なんという事だ・・・」
アールヴァスは悲痛な声を上げ、俺達は映像を見ながら一瞬の間呆然としていた。
どうしても説明しなくてはならない部分があったため
思っていた以上に長くなってしまいました。
これでも大分カットしながら描いたつもりでした。
なので変な部分があったらすみません。
その分次回と、その後の分は短くしたいと思います。
ちなみに、響也は敬語を使わないにしても、アールヴァスに対して貴方と言っているのは
本人なりに敬意を払っているつもりです。
逆にアールヴァスが響也の事を童と言っているのも
バカにしているわけではなく、自分からするとまだ子供という意味で使っています。




