第21話 誰が為に・・・
誰もいない家で電話が鳴りだす・・・
・・・ここはどこなんだ?
鳴った電話はすぐ音が止む。
・・・電話が切れたのか?
いや違う、あの子が取ったのだ。
何かを話しているが何を話しているのかは所々にしか聞こえない。
『・・・ということで、少し遅くなるかもしれないんだ』
「そうなんだ、わかったよ!」
『その代わりにお土産を買っていくから』
「ありがとう、楽しみにしてるよ」
『ああ、楽しみにしていておくれ』
さっきの子がソファに座っている。
もうずっと待っている。
彼らが・・・両親が帰ってくるのをずっと待っている。
それは何時間?
いや何日?
いや何週間?
結局帰ってくる事はなく、次の瞬間には変わり果てた彼らの姿を目にしているあの子だ。
その傍らには、あの子に買ったのであろうお土産が置いてある。
・・・
あの時、言えなかった。
彼らは息子の事を思い、息子の為に懸命に動き回っていた。
息子が外でも毎日笑って過ごせるようにする為に。
彼らはそれを隠していたが、その子はそのことを知っていた。
一生懸命に自分の事を思ってくれていることが嬉しかった。
自分の為にしてくれているのに、自分の我がままを言って困らせる事なんて出来はしなかった。
だから言えなかった。
お土産なんていらない!
それよりも早く帰ってきて!と。
彼らはお土産を買った直後に事故にあった。
あの時、自分の我がままを言っていれば・・・
一言、帰って来てと言っていれば・・・
大切な物を守れなかった・・・
守れたはずの大切な物を守れなかった・・・
目の前のあの子は自分を責めて泣いている。
誰も見ていない所でずっと泣いている。
俺は今その子が泣いているのを、黙ってずっと見続けている。
その子を慰めるつもりもない。
なぜなら、その子は・・・
俺なのだから・・・
・・・貴方には誰も守れない!
◇
!!
俺は目が覚めた。
見たこと有るような無いような天井が目に入った。
体は汗が酷く来ている服が濡れている。
頭が上手く働かない。
ここはどこだ?
と頭が混乱しているが、まだ答えはでない。
-貴方には誰も守れない!-
!!
頭の中に残っていた言葉がリフレインした事で、意識が覚醒した!
そうだ!
クラウンと戦って、俺はその後どうした!?
タマモは?リーエは?ガブリエルは?
それからユーリは!?
俺はガバッと布団から体を起こした。
俺はベッドに寝ていたようだ。
さっきのは夢だったのか・・・
何か懐かしい夢、忘れてはならない夢だった気がする・・・
それよりもと頭を奮い立たせ、周りを確認する。
そのベッドの脇には、俺を看病してくれていたのだろうか、タマモとリーエがベッドに突っ伏して寝ていた。
その姿を見て、とりあえずホッと胸をなでおろし、二人の頭を軽く撫でてやる。
二人そろって「「ふにゃ~っ」」とどこから出したのかわからない声を上げる。
・・・ガブリエルはどうした!?
そう思いキョロキョロと辺りを見渡すと、フワフワ浮かびながら俺の顔を心配そうに覗き込んでいるのが目に入った。
(あ~!やっと目が覚めた~!よかった~!心配したよ~)
ガブリエルは涙目になりながら喜んでくれている。
「ああ、心配かけたな。ここはどこだ?俺はあれからどうなった?ユーリはどうした!?」
(もう~、まだ寝ぼけているね~。ここは王宮の宿舎だよ~・・・あれからね~・・・)
あの後どうなったのかガブリエルが詳しく教えてくれた。
俺がクラウンと戦って勝ち、クラウンを逃がしてしまった後、奴の魔力を感じなくなったガブリエルは俺達がいた洞窟の部屋に入ってきた。
すると俺は意識を失い、タマモとリーエに支えられていたらしい。
体中がぼろぼろでガブリエルは最初それを見て、俺が死んでしまったのかと勘違いしてしまったようだ。
とりあえず洞窟から脱出しないといけないという事で、ユーリと俺を連れて洞窟を後にした。
これは余談だが、その時にタマモとリーエはどっちが俺を運ぶかでもめていたらしい。
それを聞いて俺は、そんな時まで、と呆れてしまった。
俺が意識を失う前に、監視者に気をつけろと助言をしていた事を受けて、三人とも監視者の存在に気が付き、ちゃんと後をつけられないように気を配りながら戻ってきたようだ。
そして王宮に戻り、ユーリは自室のベッドに寝かせ、俺は借りているこの宿舎に寝かせてくれた。
他の眠らされていた連中や、操られていたアリエル達は無事に目を覚ましているとの事。
王への報告は、リーエがガブリエルから聞いた情報もあわせて伝えてくれたらしい。
王は今回の件で相当心を痛めてしまったようだ。
俺にも目が冷ましたら顔を出して欲しいと言っているそうだ。
ユーリの呪いについては、ガブリエルでも解除方法はわからないようだが、それについてはリーエが俺が起きてから話したい事があるとガブリエルに言付けしていた。
それとガブリエルには俺の称号の事も聞いておいた。
修羅については、怪我を負えば負うほど・自分がピンチになるほど力が湧き出てくるものらしい。
ただそれは短い時間しか効果はなく、その効果が切れると使った事による反動が激しいとの事。
揺るがない意思に関しては、何かしら決意を固めた時に効果があり、俺の頭の中に流れたようにこれも一時的に痛覚無効の効果があるようだ。
それによって痛みで動けないという事がなくなるそうだ。
ただこれには気をつけないといけないのは、痛覚がなくなるだけなので傷を負ってもわからないという事。
致命傷の傷を負っても動けるわけだから、そこら辺は考えどころだろう。
あと俺は丸一日以上寝ていたようだ。
俺の様子だといつ目が醒めるかわからない状態だったらしい。
外はオレンジ色になっているから、もう夕方になってしまっているようだ。
タマモとリーエは戻ってきてからずっと寝ないで看病をしていてくれたらしい。
それで今は力尽きて寝てしまったみたいだ。
とりあえずガブリエルから聞ける事は聞いたから、後は自分の目で確認していかないといけないだろう。
二人を起こしては悪いと思って、そっとベッドから出ようと布団をめくった。
すると、俺にかけていた布団が動いた事で、二人を起こしてしまった。
「う~ん・・・!!きょうや!!」
「ほぇ?・・・あ~!キョウヤさん!」
二人とも目を擦りながら、俺が起きている姿を確認し声を上げる。
「心配かけたようだな。すまなかった」
「うう~~~」
「~~~っ!」
二人とも体を起こした俺に飛びついてきた。
「うっ!ぐがっ!ちょ・・ちょっと待て!体がいてええええ」
「あ、きょうやごめ~ん!」
「ああ~、キョウヤさんごめんなさい!」
限界以上に力を使ってしまっていた為、まだ体のあちこちが痛いのに、飛びつかれたらさすがに堪えられない。
タマモとリーエは、喜びの涙なのか申し訳ない涙なのかわからない涙を目に溜めながら、すぐに離れてくれた。
二人とも今はベッドの横に立ち、俺の姿を確認して安堵の笑みを浮かべている。
正直、俺は嬉しかった。
俺はベッドから立ち上がり、行動する事にする。
「きょうや!まだダメだよ!」
「そうですよ!まだ寝ていないと!」
(キョウヤ~、無理は禁物だよ~)
三人は俺をまだ寝かせようとしているが、俺はタマモとリーエの頭に手を乗せ軽く撫でてやる。
「心配してくれて、ありがとな」
「うう~」
「はふぅ~」
(ちょっと~、キョウヤ~!私には~?)
タマモもリーエも頭を撫でられた事に、顔を少し赤くしうつむき加減に目がとろんとなっている。
撫でてくれないガブリエルがそれに抗議をしている。
「いや、撫でてやりたくても、お前は無理だろう」
(う~、そんなぁ~)
ガブリエルは違う意味で涙目になっているようだ。
ユーリの事も気にはなるが体そのものは大丈夫であるならば、先に王と話をしてからにしないと。
タマモとリーエ、ガブリエルはまだ心配していたが、俺は構わずに王宮へと向かう。
王宮廷内には今までどおりメイドや騎士達が働いており、俺の顔を見ると皆頭を下げていた。
王の間の着くと、衛兵が俺達を確認し扉を開けて通してくれる。
起きてすぐ行動したので来ることを伝えてはいなかったのだが、王宮に到着した時に誰かが伝えてくれたのであろう、最初にこの部屋に来た時と同じ面子が受け入れてくれた。
王と王妃と王子、そしてアリエル王女の姿もそこにはあった。
あの時とは違うのは、唯一ジュリアンの姿だけが見当たらない。
以前と同じように王の前に並ぶ。
そのタイミングを見計らいに、王が声をかけてくる。
「キョウヤ殿、ようやく目が覚めたようだのう。見る限り体も無事な様でよかった」
「いや、そんな事よりも・・・」
「ああ、そうだな。だがそれよりも、まず先にお礼を言わせてくれ。此度は娘のユリエスを助け出してくれて、誠に、誠に有難う!」
「俺は大した事はしていない・・・それに助け出せても完全には救えてはいない・・・」
「ああ、それもわかってはおる。だがそなたが居なければ、ユリエスが此処に戻ってくる事そのものが出来なかったやもしれぬのだ。それにアリエルや他の者についてもそうだ。精神を無理矢理操られた状態から、精神を破壊されずに助ける事が出来る者がこの国にいたかどうか・・・一歩間違えば二度と元に戻らなかったやもしれぬのだ・・・」
「・・あれはたまたま上手くいっただけだ・・・」
アリエルは最初こそ笑顔でこちらを見つめていたのだが、王の話を聞いてその時の事を思い出して少し俯き顔を青ざめさせている。
「ユリエスにかけられたのは禁術の呪いだという事は聞いておる。しかし、我々を救ってくれたそなたなら、ユリエスの呪いも何とかしてくれるだろうと期待しておる。いや、ユリエスの父として救ってほしいのだ!」
王が立ち上がり頭を下げて頼み込んでいる姿を見て、ここにいる一同は驚愕していた。
俺は結局は人頼みかと内心ため息を吐きつつ、俺自身は最初からやる事は変わらない。
ただ、助けたからといって俺の様な得体の知れない相手に、頭を下げてまで助けて欲しいと言う王に可笑しくなったのだが、それと同時に娘を一心に思うが故に、此処にいる連中に今まで見せた事がないであろう姿を晒してまでお願いをする父としての姿を見て、心の奥底に根付いている部分がチクリと痛んだ。
「頭を上げてくれ。俺はあなたから頼まれなくてもやる事は決まっている。彼女の傭兵として・・・いや、ユーリの友人として絶対に救い出すと!」
「おお、有難う!誠にありがとう!」
王は目に涙を溜めながら俺の側まで来ると、俺の手を両手で握り締めた。
少しの間俺の手を握り締めた後、王座に戻り座りなおす。
「して、これからの事は何か考えがあるのか?我らが力になれる事は?」
「・・・いや今はまだ、どうしたらいいかは何も・・・」
「お話の途中、失礼致します。それについては私に考えがあります」
王にこれからどうするのかを聞かれ、俺はまだどうしたらいいのかわからずにいる事を答えると、それまでずっと隣で話を聞いていたリーエが口を挟んだ。
「私が巡業で各地を巡っていたとき、噂を小耳に挟んだことがあります」
「ほう、その噂とは?」
「はい、それはニウギス大森林の中心部、不可侵とされている聖域の森に妖精族が住んでいるという事はご存知ですよね?その長老という者は魔法の知識に関しては、他に類をみないという噂でございます。ですからもしかしたら、禁術に関しましても・・・」
リーエの正体はユーリ以外には知られていないはずなので、巡業の噂で知ったということにしているのだろう。
そしておそらくは、長老というのはリーエ以外のハーフエルフの事だと思われる。
とするとリーエは禁術の事を知らないのだろうか。
後で確認しておく必要があるな。
「しかし、ただの噂なのであろう?」
「禁術に詳しい者について他に誰か知っている方はいらっしゃいますか?いないのであれば時間もない今は、その噂にすがる方が可能性は高いと存じます」
王は人間が誰もその存在を知らない、噂でしかない、それに不可侵であり結界で守られている聖域に辿り着く事すら出来ないのでは、と考えているのだろう。
しかし、リーエもハーフエルフである。
聖域に入る事だけであれば容易なのだろうと思う。
ただ、無理に森から出てきたというリーエの話を、聞いてもらえるかどうかが問題だろうな。
それに俺(人間)も一緒に行くわけだし。
「他に可能性がない以上、俺はその可能性にかけてみる事にする」
「キョウヤさん・・・」
リーエは俺に相談する事なく勝手に方針を出した事を後で叱られるとでも思っていたのだろうか、少し潤んだ瞳で俺を見つめていた。
「・・・うむ、今はそれしかないか・・・では、その件に関してはキョウヤ殿に託すとしよう!それ以外の方法があるかどうか、我等は我等で探す事にしよう」
「ああ、それがいいだろうな」
お互いの方針が決まり早速行動に移そうと王が家臣達に命令をしている中、俺は確認する事があるためにそれが終わるのを待っている。
「・・?キョウヤ殿?どうかなされたか?」
「確認したい事があるんだ・・・人払いしてもらえるか?」
「・・・人には聞かせる事が出来ない話か?」
「ああ、ユーリが狙われた原因と言えばわかるか?」
「・・・騎士団長よ、ここにいる皆全てを部屋から下げよ!」
「し、しかし・・・」
「構わぬ!よいから命令に従え!」
「はっ!」
王は騎士団長と呼んだ男にスレイン王・ユザベル王妃・スタンリー王子・アリエル王女、そしてこちらの三人を残して全員を部屋から出した。
俺は念のため遮音結界を張り、他にもミランダのように魔眼で見られる事のないように、感知と結界を組み合わせ異変があればすぐわかるようにセンサーを張り巡らせる感知結界を張り用心する。
人払いが済み、結界を張り終わりると王が言葉をかけてくる。
「して、ユリエスが狙われた原因とは?」
「その前に、この話はあなた達も知っているのかもしれないが、これからの話を聞いてユーリが目覚めた後に態度を変えないと誓えるか?もちろんスレイン王だけでなく、ユザベル王妃もスタンリー王子もアリエル王女もだ」
俺の言葉に驚きの表情を見せ、互い同士で目を合わせたりしていたが、全員が俺の目を見て頷いた。
「よし、では話すが、そちらはユーリが目指していた事、成し遂げようとしていたことをご存知か?」
「・・・争いの無い世界にしたいという事か?」
やはり、ユーリは核心を濁していたようだ。
「・・・それは大前提だな。争いは誰と誰がしている?どうして起こっている?もちろん領地などの所有権を巡る争いもあるのだろうが、そんなものは論外だ。もっと根本の部分だな」
「・・・!!」
王は俺が言わんとしていることを理解したようだ。
「そう、ユーリの争いの無い世界というのは、人間だけが安心して暮らしていけるという事ではない。種族間の差別を無くし手を取り合っていきたいと言っているんだ」
「「「「・・・・」」」」
種族の差別をなくしたいと聞いて、4人とも少しだけ眉間に皺をよせた。
「もっと言えば他種族が仲良く暮らす事の出来る国、他種族共同国家を築きたいと願っている」
「・・・ユリエスがそんな事を・・・しかし、それが攫われた事とどう関係が!」
「それはユーリの考えがどこからか漏れてしまい、今貴方たちが思った事と同じ考えを持った奴が、それをいずれ成し遂げうる可能性のあるユーリに対し、そいつらの何かしらの計画の邪魔になったという事らしいな」
「!!我等が思った事とは、我等がユーリに何を思ったというのだ!」
図星を指され頭に血が上ったのであろう。
人前でユーリを愛称で呼んでいる事にも気づかずに、自らの考えを振り払うように王は俺に怒鳴った。
「異端児・・・」
「「「「!!」」」」
俺は怒鳴られても気にせずに言葉を発する。
俺の言葉に4人とも一瞬ハッとして、ばつが悪そうに俯いた。
「変わり者等、呼び方はまあどうでもいいが、この世界では他種族との協和を望む事は奇異の目で見られるのだろう?」
「・・・た、確かにそう・・なのだが・・・この世界・・・そなたはこの世界と言ったな?では、もしやそなたは・・・」
俺はユーリの為にばれても構わないだろうと考えた。
それに素性もわからない相手に、ユーリが何でも話しているという事も不自然だろう。
「ああ、察しの通り俺は異世界人だ。だからこそユーリは俺に打ち明けた。この世界を知らない、種族を差別していない、奇異の目を向けない異世界人にな」
「そうであったのか・・・ユリエスはそれを知っていてそなたを・・・先程、何かの計画の邪魔と言っていたが、それは何かわかっているのか?」
「クラウンという偽名をやつは使っていたが、逃げられちまったし正体も詳細もわからん。すまんな」
「いや、こちらこそすまなかった。クラウンか、こちらでも何か調べておこう」
明確にはわからないが、およその理由が思いつかなくもないとはいえ、予想の域を出ないのでここでは口をつぐんでおいた。
「ああ、頼む。だが気をつけてくれ。奴の力の一部を奪ったとはいえ、やつは尋常じゃないからな」
「有難う、気をつけるように言っておくとしよう」
ついでに監視者の事も伝えておき、探知魔法や魔力感知に優れている者に、常に警戒させるように伝えた。
それから、ジュリアンの事について教えてくれた。
ジュリアンは唆されたとはいえ、国の一大事の発端となってしまったために、今は幽閉しているのだそうだ。
まだ全部は聞き出せていないそうだが、ジュリアンと接触を図ったのは懇意にしている商人だったとの事。
その商人についてジュリアンは、西から来たとしかわからないらしい。
ジュリアンの今後の処遇については、俺自身が狙われた事については特に気にしていないので、後の裁量はこの国に任せる事にする。
「あと、最後にもう一度確認しておくが、ユーリの目を覚ますことが出来た後、普段どおりに接する事はできるんだな?」
俺がそう聞くと、4人とも一度目を閉じ考え込むような仕草をした後に大きく目を開き、俺の目をしっかりと力強い目で見てにっこりと笑った。
「ああ、もちろんだ。確かに我等も今すぐに他種族を受け入れろというのは無理だが、娘のユーリを父である私が受け入れないでどうするのだ」
王のその言葉に、他の3人も大きく頷いた。
俺は全員の目を見て確認し、本当の事を言っているとわかり安心した。
「そっか。じゃあ俺はユーリの姿を確認したら、すぐにでも出発するわ」
「こんな時間にか?明日にしたほうがいいのではないのか?」
「丸一日以上寝ちまったからな。時間がないから、そんな事も言ってられない」
「そうか、わかった。・・・おっと忘れておった。このカードを持っていくがよい。これを見せれば国境でもすぐに出国できるし、何かあったときにも役立つだろう」
受け取ったカードは少し高級そうな素材で出来ており、恐らく王国のマークと思われるエンブレムと、スレイン・ヒューベルとサインが施されてあった。
「ありがたく受け取っておく」
「ああ、そうしてくれ。それとキョウヤ殿が戻りユーリの目が覚めたら褒美をつかわそう」
「そういうのは俺はいらん。さっきも言ったが友達の為に、俺が勝手にやっている事だ」
「そういうな。ユリエスが友人なら、このアリエルを嫁にどうだ?」
「まあ、お父様ったら!」
いきなり話がおかしくなってきたぞ?
何を言っているんだ、この王様は?
アリエルはアリエルで、なんで顔を真っ赤にして体をクネクネさせてるんだ?
「いや、アリエル姫が俺の嫁になる意味がわからん」
「アリエルもそなたのことが気になっていた上に、さらに助けられたとあって感謝どころではなくなっているようなのだよ」
「ええ、キョウヤ様。アリエル姫なんて他人行儀じゃなくてアリーで結構ですわ。今回は助けていただき本当に有難うございました。これ以上キョウヤ様に頼りきりになってしまうのも気が引けますが、ユーリの事どうぞよろしくお願いします」
王は変なフォローを入れていたが、アリエルは今話す事ではないと考えたようで真面目な顔に戻り、助けられた礼とユーリを救って欲しいとお願いをしてきた。
「ああ、わかってる」
そういい残し、俺達は王の間を後にする。
俺達は王の間をでてすぐにユーリの部屋に行った。
ノックをすると中から「どうぞ」と声が聞こえる。
ドアを開けるとメイドが寝たきりのユーリのお世話をしているようだった。
メイドに促されて、俺達はユーリの寝ているベッドの側に腰をかけた。
「少しだけ待っていてくれ。なんとか目を覚ませる方法を見つけて帰ってくるから」
俺はそう言いながらユーリの頭をなでてやった。
「そうだよ!いつまでも寝てたらつまらないじゃん!」
「そうです!いつまでも寝てたらキョウヤさんは私の物になりますよ!」
「ちょ!リーエの物じゃなくてあたしの物だよ!」
タマモとリーエは、ここ数日ユーリと一緒に過ごした事でかけがえの無い存在になったのだな、と思うと嬉しくなった。
・・・ってちょっと待て!
誰がリーエの物だって?
そしてタマモよ!
俺は誰のものでもねえええええ!
と心の中でツッコミを入れつつユーリの安らかな寝顔を後にして、俺達はリーエの故郷である聖域の森へと向けて旅立つのだった。
前話を載せてから気づきました。
そこで区切りSSを載せればよかったのでは?と。
しかし色々と考えた上で、予定通り本編を更新する事にしました。
それと今回の話はもしかしたら修正する部分があるかもしれません。
ないかもしれませんが。
次回からはSSを多分3話ほど載せる予定です。
本編に直接関係の無い話もございますが
お付き合いいただければ幸いです。
あと、やはり更新は週1~2回位になると思います。
SSは早めに終わらせるつもりですが。




