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第14話 ユリエスの部屋にて


で、どうしてこうなった!



「これはどういうことですか?」


ここはユーリの自室内。

昨日約束していた通り昼過ぎに王宮を尋ねて、ユーリの部屋へと通されている。


ユーリは怒っているというよりも、理由を教えて欲しいと訴えてくる。


「なぜここに歌姫様がいらっしゃるのですか?」


そう、何を隠そう、俺の隣にはリーエがニコニコと笑顔で座っていた。


「しかもその歌姫様であるリューンエルス様はエルフだったなんて」


ユーリには魔眼があるため直接対峙すれば変化は効果を成さない。

それはすでにリーエには教えてあるので、見破られてもリーエが動じる事はない。


リーエはばれた後のことを懸念していたが、それは大丈夫だと言っておいた。


そして今は俺の正面で、ユーリは俺が言葉を発するのをだまって待っている。

リーエは隣でニコニコ笑っている。

タマモは俺の膝で狐の姿で眠っている。

ガブリエルは話を聞く気はなくイタズラしようとしている。


(・・・・・ガブリエル君?後でお話しようか?)

(ひぃ~!ごめんなさい~!)


ったく。

ガブリエルに注意をして、ユーリに意識を向きなおす。


なぜこんな事になってしまったのかというと・・・




――――――――――――






リーエのライブが終わった後の事。

空き部屋に移り、リーエが遮音魔法と認識阻害の魔法をかけ、続きを話し始めた。


「私を一緒に連れて行ってください!」

「・・・・・・はっ?」


リーエのお願いを半ば強制されてしまったのだが、そのお願いというのがこれだった。

俺はその言葉が聞き間違いかと、頭の中でリフレインさせる。


「俺の聞き間違いか?もう一度言ってくれ」


何度かリフレインさせた後、俺の聞き間違いだろうと決め付け再び問いかける。


「私を一緒に連れて行ってください!」


どうやら聞き間違いではなかったようだ。


「・・・・・どういうことだ?リーエは争いを無くそうと、各地に歌を届けていたのだろう?」


広場にいた男にはそう聞かされた。

だからこれからも他の場所で歌を歌い続けるのだろうと。


「はい。でもとりあえず、この街で一段落つきます。これ以降の予定はまだ決まっていませんので」

「しかし・・・」


「・・・キョウヤさんの言うとおり、私はこれまで争いを無くしたいと各地を回り歌い続けてきました。・・・確かに皆さん私の歌を喜んでくれます。聞いてくださっている間は争いが起こりません。ですが、私の歌の内容を・・歌っている本当の意味を理解してもらう事ができませんでした。私がしている事は、一時的に争いが止まる、という事だけです。私のしている事は、あまり意味のない事なのではと疑問に思い始めてしまいました」

「いや、一時的にでも争いが止まるのなら、意味のない事では・・・」


「気休めはよしてください!」

「・・・」


「私が願っているのは、真の平和。それは種族間の争いだけでなく、同種族での争いも含めてです。もちろん夢見事である事は理解してます。それでも・・・それならせめて、種族間でのわだかまりだけでも拭えればと考えていたんです」

「・・・」


俺は浅はかな考えで気休めを言った自分に恥じた。


(ははっ、なんだよ)

それと同時に嬉しさで笑いがこみ上げてきた。


というのも、人間であるユーリとエルフであるリーエ、まあタマモはちょっと違うが、こんなにも近くに同じ願いを持っている人がいるんじゃないか、と。


なのに、その願いは叶わない。

なぜなら根幹が根深く作り上げられてしまっているのだから。

彼女達の様に考えている人は、極少数なのだろう。


その根幹を取り除かない限り、彼女達が直接訴えかけたとしても、奇異の目で見られ反逆として捕らえられてしまうはず。


リーエが人間に化けて歌い続けているのも、リーエがエルフとばれてしまえば、リーエどころかエルフそのものが糾弾の対象となってしまうからなのだろう。


糾弾されてしまうことになれば、人間とエルフの戦争が始まってしまう。

エルフは聖域の森に住んでいるらしいので、そこに住んでいる他の種族までもが争いに巻き込まれてしまうだろう。


そうなってしまえば、リーエの願いなど空しく散ってしまうことになる。


だから少しずつ少しずつと根元を掘っていたのだろう。


「だからこそ、私は歌に乗せて訴え続けてきました。でも、長い間続けてきましたが、私が考えていたよりも成果が出ないのです。段々自分に自身がなくなってきました。私のやっていた事は無意味なのでは、違う方法でないと駄目なのでは?と」


「やらないよりはやった方がいいだろう。少しずつ少しずつ、そこから・・」

「それはどのくらいやればいいのですか!?私はもうすでに何年も続けています。あと何年いや何十年、下手をすれば何百年続ければいいのですか?」


リーエに食い気味に訴えられた。


・・・また俺は・・

さっき自分の考えが浅すぎだと恥じたばかりなのに・・


「・・・すまない。リーエがどれだけの思いで、どれだけ苦しんでこれまでやってきたのか、そこを考えないといけなかったのにな」

「・・・いえ、私こそ感情的になってしまい申し訳ありません」


「いや、リーエの思いが伝わったし、そこは謝るところではない。だけど、それが何で俺と一緒に行くことに繋がるんだ?」

「はい、その前に確認させてもらいますが、そこに浮いている方、この前は深く聞いてませんが、おそらく天使様ですよね?それとタマモさん、魔力というよりは妖力に近い感じと、その内側に押さえられている甚大な妖力からすると、九尾ですよね?」


「・・・よくわかったな」

「そりゃあ、これでも何千ね・・ごほっごほっ!・・失礼いたしました。他の方よりも長生きをしていますから。タマモさんは妖力の大きさからしておそらく転生されていると思いますが、タマモノマエさんの時に会ったことありますしね」


「そんなことまでわかるんだな」

「はい、タマモさんの妖力は全盛期の時でしたら、こんなものではなかったですからね」


・・へえ、意外とタマモはすごいのかもしれないな。


「と、話がそれましたが、天使様に魅入られ、かつ妖狐と一緒に行動する。私が長年かけて出来なかった、理想とする現実が小さいながら目の前にあるんです。でしたら、私が歌い続ける事よりも、キョウヤさんと一緒に行動する事が一番の近道になると思うんです」


「なるほどな。しかし、俺に付いてきた所で何か出来るとは限らんぞ?先に言っておくが、俺は異世界人だ。意図せずにこの世界に呼ばれてしまった。だから俺自身はまずこの世界を知り、そのうえで何をするのかを決めようとしているんだからな。それはもしかして、リーエの望む結果とは逆になるかもしれないんだぞ?」


リーエになら俺が異世界人であること告げても大丈夫そうだと判断し、さらっと異世界人であることを告白した。


「・・・そう、でしたか。・・・ええ、それでも構いません。異世界人であるキョウヤさんが、この世界はおかしい、気に入らなくてこの世界の敵になるというのであれば、この世界にそれだけ価値がないということなのでしょう」

「いや、そこまで過大評価をされても困るが・・・それに世界の敵になるということも多分ない・・・とは言い切れないか。それは俺が守ろうとするものを、この世界が排除しようとしなければの話だがな」


「はい、キョウヤさんを見ているとそんな感じがします。だから私はそばで見させてもらいます。それがどんな結果であろうと」


リーエにとって俺の何がそんなに信用されているのかわからないが、それに応えないといけないな。


「わかったよ、じゃあ一緒に行くか!」

「はい!ありがとうございます!」


リーエはこれでもかというほどの笑顔で頭を下げてきた。


「そういえば、一緒にいた人達は大丈夫なのか?」

「はい。他の方たちは、巡演のためだけに雇った方ですので問題ありません」


そういうことなら気にする事はないだろう。


話が纏まってリーエが同行する事になり、これからどうするかを考えないと。

その前に宿屋に一人増えた事を告げ、もう一部屋借りないと行けないな。



* これは後談だが、リーエの部屋を別に借りようとしたのだが、タマモとガブリエルが俺と一緒なのに自分だけ別の部屋なんておかしい!と駄々をこねられ、結局3人部屋に移り一緒の部屋に止まる事になった。そして別々のベッドに寝ていたはずが、朝起きると全員が俺のベッドに寝ていて、全員を正座で説教をするはめになった。



そして宿屋に向かっている途中で、明日の予定を思い出しリーエに告げる。


「明日ユーリ・・王女の所に行かないといけないから、リーエは留守番しててくれな」

「・・・私も行きます!」


「・・・はっ?」




――――――――――――




という経緯があり今に至る。


元々、第二王女ユーリは変り種であるという噂があったらしい。

それは変な意味ではなく王族らしくはないということらしい。

誰彼構わず差別する事はなく、国民と積極的に接しようとし、何かあれば最前線に向かおうとしていたようだ。


その噂を聞いていたリーエも、王女に会ってみたいということだったのだ。



「・・・という事だ」

「・・・はあ、わかりました。歌姫様の存在は存じておりましたが、まさかエルフだったとは (しかもキョウヤに懐いているなんて・・)。ただ、リューンエルス様がエルフでキョウヤと共に行動するのは好都合ですね。それに貴方も私と同じ考えを持っていたなんて」


「私もユリエス王女様の噂を聞き、是非お会いしたいと常々思っておりました。ですが、おいそれと王女様にお会いするなんて事はできません。キョウヤさんのおかげでそれが叶うとは」


俺が経緯を説明すると、ユーリは途中何を言っているか聞こえなかったが歓迎してくれたようだ。

リーエも同じ思想の持ち主であろうユーリに会えて喜んでいるようだ。


タマモはやはり寝ている。


ユーリとリーエがお互いの理想やこれまでの事、その成果について等を語り合っていた。


放置プレイされた俺は・・・


・・・寂しく・・・寂しくなんてないぞ!?


とまあそれは冗談だが、寝ているタマモをモフモフしながら二人が話している姿をずっと眺めていた。

超絶美女二人が話している姿は絵になるとか、目の保養になるとか。


そんなふしだらな事を考えて・・・・なんていない、訳でもないようなあるような・・・


と、そういうことではなく、この世界に来て初めて異種族がちゃんと話をしている姿を見た。

こんな簡単な事なのに、なぜ出来ないのだろうか。


いや、原因はわかっているが、それを成すには根気が要る。

下手すると実現不可能なのかもしれない。


でも目の前の二人を見ていると、難しく考えすぎているのかもしれないと思った。

ただこれは、この二人だから大丈夫なのであって、異種族で顔を合わせるには人を選び慎重にやらないといけないだろうと固く心に誓った。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


「・・・!!あ、キョウヤごめんなさい!」

「!!キョウヤさんの事忘れてました!」


・・・くっ!・・い、いいんだ、いいんだ・・・俺なんて・・・俺なんて・・・


と、別にそこまでいじけてはいないのだが、少しすねたふりをしてみた。


「本当にごめんなさい、キョウヤさん」


とリーエがイスから立ち上がり、そっぽを向いた俺の顔に両手を沿え、自分の方に俺の顔を向けさせて顔を覗き込む。


とても綺麗な目をしており、その目が少しだけウルウルしている。

その目に吸い込まれるように見続けてしまった。


すると・・・


ピキッ!


何か音がしたような気がした。それは実際に聞こえているわけではなく、何かがそのような音を立てたような感じというべきか。

その音がしたような方向を見ると、ユーリが笑顔でこちらを見つめていた。


・・・笑顔・・・笑顔なんだが、目の辺りは陰があり、後ろに黒いオーラが見えている。


いや、正確にはそんなものは見えてないはずなのに、俺には確かにそう見える。


そして、膝で眠っていたはずのタマモが目を覚まし、自分の上の光景を見てうなっている。


ちょ、ちょっとまて。

さっきまでほのぼのとしてたはず!

その空気はどこへいった!?


俺の心とは裏腹にユーリが口を開いた。


「・・・ちょっと、リーエさん?何をしているんですか?キョウヤが迷惑がっていますよ?」

「ガルルルッ!」

「・・・あら、ユーリさん?キョウヤさんは喜んでいるようですよ?ねえ、キョウヤさん!」

「あ!」「ガルッ!」


ユーリに合わせてタマモがリーエに威嚇する。

意にも介さず、リーエは応え俺をふんわりと包み込むように抱擁してきた。


お、おい!抱きつくんじゃない!そして俺に同意を求めないでくれ!


心の叫びは声にならず、心の叫びとして人知れずかき消されていく。


そしてユーリが近づいてきて、今度はユーリが俺の頭を抱え自分の方にひっぱりだした。

タマモは人型になり、俺に抱きつき俺の胸に顔をうずめている。


「そんなことはありません。リーエさん、キョウヤが困っております。お放しなさい?」

「いいえ、喜んでいますよ?ユーリさんこそキョウヤさんが困っているみたいですし、放したらどうですか?」

「きょうやはあたしのもの~!!」

(違うよ~キョウヤは私のものだよ~)


ああ、いつの間にかユーリとリーエは愛称で呼び合っているみたいだ。

いつの間にか仲良くなったんだなぁ。

ああ、よかったよかった・・・


・・・って、おい!俺はタマモのものじゃねえええ!!


そしていつの間にかガブリエルも参戦してやがる!


俺はガブリエルのものでもねええええええええ!!


俺は現実逃避に全力を注いでいたのだが、タマモとガブリエルの一言により現実へと戻された。

しかし心の叫びは心の叫びにしかならない。


俺が現実逃避している間にも何か二人の攻防が続き、このままじゃ埒が明かないと思い俺も重い口を開く。


「・・・こらこら、君達!?いつまでやっているのかな?」


ビクゥ!!


俺がこの優しい口調になった時はタマモとガブリエルは条件反射でビクッとなる。

俺の教育の賜物かな?


いやいや、おかしいぞ?

俺は優しく優しく諭しているというのに心外だ。


ユーリとリーエはこんなに優しい俺は初めてなので、感動 (?)で固まっている。

その顔がひきつっているように見えたのは気のせいである。


「おほほほほっ、そ、そうですわね。そろそろ真面目にお話いたしますわよ」

と今まで聞いた事ない笑いと口調で応えるユーリ。


「うふふっ、そ、そうでございまするね。話し合いをはじめまして」

訳のわからない敬語と、語尾がめちゃくちゃになっているリーエ。


狐の姿に戻りプルプル震えながら丸くなっているタマモ。

(私関係ないし~)とか言って、震えながら鳴らない口笛を吹く真似をするガブリエル。


・・・優しく諭したはずなのに、皆どうしたというのだ。


ったく、まあいいや。これで話が進むだろう。



二人が席に着きなおして落ち着いた頃を見計らって。


「それで、傭兵として手伝うとは言ったが、俺はどうすればいいんだ?」

「はい、キョウヤにお願いしたいのは昨日も申し上げた通り、私に付き添って身辺警護がメインとなるでしょう。他にも私自身の稽古と、近辺の魔物を狩りに行く時に同行してもらいたいのです。本来ならキョウヤに頼らずに出来なければならないのでしょうが、まだ私では力不足ですので・・・」


「そうか、わかった。という事だが、二人はどうするんだ?」


俺はユーリからの話を聞き、タマモとリーエに尋ねる。


「あたしは最初からきょうやと一緒にいるつもりだし」

「私もキョウヤさんと共にすると決めたので、キョウヤさんのお力になりますよ」

(私はキョウヤと運命共同体~!)


タマモは人化して隣のイスに座りなおして答え、リーエも俺を手伝うと答えた。

うん、いや、ガブリエルは何言ってんの?


「って事なんだが、こいつらが一緒でも大丈夫か?」

「はい、そうお二人共そう仰ると思っておりましたので。そのように手配を致します」


「ああ、すまないな」

「いえ、ではお二人もキョウヤのお連れの傭兵として、周知させておきますので。ただくれぐれも、妖狐とエルフだということがばれないようお願い致します。私以外の者には、やはり偏見と差別がございますので」


「あたしがそんなに簡単にばれるわけないよ」

「私もハーフエルフの端くれ。そうそうばれるようなヘマはしませんよ」

「へっ?ハーフエルフ・・・?」


タマモとリーエが大丈夫だと胸を張って答えたのだが、リーエがハーフエルフと言った事にユーリは驚きを隠せないようだ。

そういえば、エルフとは言ったがハーフエルフである事は言ってなかったっけ?


「そうか、言っていいものかどうかわからなかったから黙っていたが、リーエはハーフエルフらしい」

「あっ!」


俺がリーエの言った事のフォローをしたのだが、リーエは自分で言った事に後から気づいたようだ。


驚きの声を上げたあと、テヘペロッとした時には、可愛いとは思いつつ(ハタ)きたくなった。


さすがに叩くのはかわいそうなので、鼻を軽くデコピンして許してやった。

リーエは鼻を押さえて「いた~い!女の子の鼻をなんだと思ってるんですか~!」と怒っていたが、女の子?という疑問と共に軽くスルーしておく事にした。


スルースキルが着々とレベルアップ中だ!


「そうだったのですね、まさかハーフエルフをお目にかかる事ができるとは思いませんでした」


ユーリにもスルースキルがあるようだ。

とにかく二人は問題ないだろうと考えたが、俺を雇う事についての疑問も聞いておく事にした。


「というか俺達三人、素性もわからないような奴をこんなに簡単に、王女であるユーリの近くにおいてもいいものなのか?」

「はい、それは問題ありません!」


自信満々に答えるユーリ。

この国の王族はそういうものなのか?と疑問に思ったのだが、次の言葉でどうやら違う事がわかった。


「この王宮に住んでいる者、特に私の血縁関係に当たる者は、私の魔眼について知っております。ですから私が大丈夫だと判断した場合は、私の父であり国王であるスレイン王は異を唱える事はないでしょう。・・・ただ私の力も100%ではないので、父は用心はするかもしれませんが」

「なるほどな。ユーリを信用しつつも、俺達を信頼しないという事だな。」


「・・・その通りです」

「ま、得体の知れない奴を大事な娘のそばにおくんだから、むしろそれくらいしないと本当に娘の事を心配しているのかよと激怒するところだな」


「そういっていただけると助かります (むしろ疑われて怒るとばかり思っていたのに、この方は・・・)」


ユーリは少し暗い顔をした後、俺の言った言葉の何が嬉しかったのか笑顔になった。


「さて、私直属の傭兵とするにあたって、王宮内に部屋をご用意いたしましたので、しばらくはそちらに住んでいただきます。まずはそちらにご案内いたしますね」


そういうとユーリは俺達を促しながら部屋を後にする。

王宮内と言っていたから、同じ建物の中にあるのかと思いきや、さすがにこの建物は王族もしくは側仕えの者しか寝泊りしていないのだそうだ。

なので王宮敷地内に宿舎用の離れが作られているとの事。

そこに一般的なメイドやら近衛兵などが住んでいる。


そこに行くまでにメイドが案内すると言っていたのだが、ユーリは私が直接案内するからと突っぱねていた。

メイドが「姫様にご足労をかけるわけには・・」と食い下がっていたので、「これからは常に私と行動してもらうのですから良いのです」とユーリが折れない為、仕方が無くメイドは引き下がった。


離れの宿舎、といっても王宮に劣らないような綺麗な造りなのだが、それは三階建てで思っていたより大きい造りだ。


その3階の一番いい部屋を用意してくれたらしい。


3階だと何かあったとき動きづらくね?と思ったのだが、部屋が広く豪華である事、見晴らしがよくそこからの眺めも良いこと、そして何かあった時に見やすいという事でこの部屋にしたのだと言う。


「いや、3階だと降りるのに時間が・・」といいかけたら、「キョウヤなら3階の高さくらいなら飛び降りる事は簡単ですよね?」と言われてしまった。


いや、まあ確かに今の俺の能力なら大丈夫だけどさ、俺の事をなんだと思ってるんだ?


部屋に入ると、間取りが日本で言う2LDKの造りになっていて、全部合わせるとユーリの部屋並みに広い。

必要最低限のものは用意されており、かなり広い居間にはテーブルとイス、ソファーが置いてあった。

区切られた部屋には、ベッドが2つずつと机のような物が用意されている。


「ではこちらがキョウヤの部屋で、お二方はこちらの部屋でお願いしますね」


え?すでに部屋割りまで決まってるのか?

と疑問に思っていると・・


「え~?あたしはきょうやと同じ部屋で寝る!」

「わ、私もこちらの部屋がいいです!」


これこれ、タマモ君言われたとおりにしなさい?

これこれ、リーエ君何をのたまっているのですか?


「ダメです!お二人はこちらの部屋です!」

「え~?どうして勝手にそんな事決められないといけないのさ?」

「そ、そうですよ!私達にも選ぶ権利があります!」


「私がこの部屋を貸しているのです!私に決定権があります!言う事を聞けないのでしたら・・・私もここに泊まります!そして私がこちらの部屋を使います!」


ユーリが俺に寝ろといった部屋を指差して言う。


え~?この人まで何を言っちゃってんの?

この人達はバカなの?バカなんですか?いやバカですよね?


「い、いや、ユーリがこの部屋に泊まるのは問題ありすぎだろう?」

「!!キョウヤは私を追い出すのですか!?私は要らないと言うんですか?」


おーい!このお姫様どこまで飛躍するんだ?


「いや、追い出すも何もユーリは姫で部屋もちゃんとあるだろう?それに要らないなんて一言も言ってないし」

「!!キョウヤまで私を姫扱いするのですね!幻滅しました・・・!」


いや、この人何を言ってるんだ?

てんぱり過ぎて自分で何を言っているのかわかってないんじゃ?


「姫扱いっつーか・・・わかった、もういい。好きなようにしろ」

「!!いいのですね!わかりました!私も今日からこちらに住みます!」


どうせ王からの許可なんて出るわけないだろう・・・



と思っていた時期が俺にもありました・・・


その後すぐにユーリが王に願い出た所、すんなりOKが出てしまった。


この国の王族はバカなんだろうか・・・


その後の話によると、男と二人だけの同居は以ての外だが、他に二人も女性がいるのであればという事だったらしい。


いや、他に二人女性がいても・・・

俺がいるんだけど・・・

俺、男なんですけど・・・



もうこれでもかというほどのウキウキ顔で、抱き枕やら着替えやらを持って再び現れたユーリを見て、ため息を吐きつつ素直に迎え入れたのだった。




書いているとどうしても1話1万文字前後なってしまう・・・

どうしても心情やイメージ優先にすると会話が多くなってしまいます。

飛ばすところは飛ばそうと思いますので、会話が多いのは作者の作風と割り切って読んでもらえると幸いです。


あと、文脈とか誤字などおかしなところとかあれば、遠慮なく教えてください。

内容に関しては作者の独断と偏見がございますのでご了承ください。

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