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第13話 歌姫のステージ

本日2回目の投稿でございます。

今回の話はこれまでと比べると短めになっております。



王宮を出ると日はすでに真上を過ぎ少し傾いていた。

思っていた以上に時間が過ぎていたようだ。


もう少しでリーエのライブが始まるということもあり、俺とタマモは演舞闘技場の前に臨時で出展している屋台で簡単に食事をする事にした。


闘技場前はリーエのライブを待ち望んでいる人で溢れかえっている。

やはりタマモは人混みが苦手のようでそわそわしていたので、少し離れた芝生の所で屋台で買ったヒューベル焼というお好み焼きに似たものと鳥の串焼きを食べた。


食べ終わってそのまましばらく待っていると、開演1時間前なのだけれど入場整理が始まった。


俺がリーエから貰ったチケットは主賓席 (主賓でもないのに主賓席とはこれいかに)だったので、焦る事もないだろうと少し落ち着いてから並ぶ事にした。


30分くらいたつと大分人波が減ってきたので向かおうと、暇過ぎて俺の膝で寝ていたタマモを起こし列に並ぶ。


そこからしばらくして、ようやく俺達の番になったのでもぎりにチケットを渡すと、そのもぎりは少しワタワタしだして他の人を呼んでいた。

すぐに別の係員が来ると、別の入り口へと移動させられた。

そこには関係者・主賓専用入り口と書いてある


・・・・・


これって、最初から並ばなくてもよかったんじゃ・・・


そう思ってもすでに遅し。


最初から聞いておけばよかったと後悔しつつも、その入り口から中に入る。

通路には関係者控え室などもあるようで、部屋がいくつもあった。


少し進んである部屋の前を通りかかると、中から「あ~、あ~」と発声練習の声が聞こえてきた。

入り口には、リューンエルス様と書いてあった。


ここにリーエがいるんだな?と思いノックをしようとしたのだが、さすがに開演前でナーバスになっているかもしれないしやめておくか?とか、いや、だからこそ声をかけておいた方がいいのでは?と色々と葛藤した挙句、声をかけずに通り過ぎた。


チケットは貰ったんだから、リーエも俺が来ることを知っているんだし、ならないとは思うがサプライズという意味で席から見守ろうと考えた。


会場の手前の通路を右に曲がると、各部屋への入り口があった。

ここら辺が主賓席・言わばVIP席なのだろう。


チケットにはアルファベットが書いてありそれが部屋番号になるようで、俺のチケットには主賓席Aと書かれていた。

おそらくVIPごとに各部屋を割り当てているようだ。


俺は部屋のアルファベットを確認し、Aと書かれた部屋の中に入る。


中は下が赤いカーペットで敷き詰められており、真ん中には丸テーブルとイスが備えられている。

入り口横には各種飲み物が置いてあり、自由に飲む事が出来るようになっていた。


そして真正面は窓が無く筒抜けになっており、この個室は (円形闘技場の)舞台より少し高い位置にあるためによく見ることが出来る。

そこから覗いてみると、舞台の周りには芝生が敷き詰められており、個室の周りはここがVIP席でもあるために、外からは進入しづらいように観客席が少し離れた造りになっていた。


取り敢えず開演までまだ時間があるため、タマモの分も飲み物を入れイスに座る。


ただ待っているだけなのも暇だったので、ガブリエルに聞きながら魔力を内側に押さえる練習をしていた。

最初は中々難しく、ただ魔力を内側に押し込もうとしても上手くいかなかった。

考えてみればタマモも強大な妖力 (魔力)を持っているのに、そんなには出ていない事に気づきタマモにも聞いてみたのだが、ホワッとしてギュッとする感じとか訳のわからない事を言っていた。


まあ感覚的なものだから言葉にするのは難しいのだろうと思う事にした。


ただタマモの擬音だけで、俺もなんとなく感じを掴む事ができた。

イメージとして、あふれ出ている魔力を自分ごと包み込み、それを内側へ向けて押し込んでいくような感じでやってみたのだ。

すると、完璧ではないがある程度抑えることが出来てきた。


そうこうしているうちに、開演時間が迫ってきた。

ステージ (舞台)上では準備が終り、楽器隊が並んでいる。

フルートやクラリネット、オーボエだと思われる木管楽器を持った人が数人、ハープを持つ人が2人ほどがいた。


さすがにドラムやピアノ類、バイオリン等の弦楽器は見られなかった。


楽器隊が演奏する準備をすると、一斉に曲をかなで始めた。

識者がいないにも関わらず、よく出来るなぁと感心していたが、考えてみれば魔法か何かで呼吸を合わすことも出来るのかな?と思いなおした。


そしてその曲がなっている間に、ゆっくりとリーエがステージの真ん中へと向けて足を運んでいた。


ステージの真ん中に立ち、一度軽く下を向き目を閉じてから、正面に向き直る。

色エメラルドのロングドレスがリーエにはよく似合っていた。

そしてその顔は凛としていて本当に昨日のリーエと同一人物なのかと思うほど幻想的に輝いていた。


と思ったのだが、俺に気づき俺を見ると、ニコッと安心と喜びが混じったような顔で笑った。

ああ、昨日のリーエだな、と俺は思って笑ってしまった。


ただその笑顔も一瞬の事で、すぐに最初の顔に戻る。


リーエはそのまま曲がなり終わるのを待ち、曲が終り余韻がなくなった頃を見計らい、一泊置いてから挨拶をした。


「皆さん、今日はお集まりいただきましてありがとうございます!本日、僭越ながら歌わせていただきますリューンエルスと申します。短い時間ですがお付き合いお願い致します」


マイクもなく声が通るもんなんだな、と声を漏らすと、ガブリエルが (声を魔力に乗せて話しているからね~)と言っていた。

要は魔力をスピーカー代わりに使う事が出来るらしい。

スピーカー代わりに出来るとは言ったが、誰にでも出来るという事でもないようだ。


リーエが挨拶を終え程なくして、リーエが目を閉じて集中している。

そしてそのまま曲が流れると、リーエも目を開けると同時に歌い始めた。


・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

これは・・・


俺は音楽を聴くほうではなかったのだが、それでも素直に素晴らしいと思った。

ソプラノの透き通るような、抑揚もつけ、それでいて声は張っているから、押さえた時でもしっかりと声を聞くことができた。


曲の音色も綺麗なのだが、まさに曲に歌を乗せているという表現が合うように、曲と歌のバランスが良かった。


それなりに長い曲だったのだが、飽きることなく最後まで聞くことができた。

それ以降も4曲ほど歌い、それでラストだったようだ。


「皆さん、本日は私の歌を最後まで聞いてくださり、誠にありがとうございました」


最後に挨拶をしてステージを降りていった。

すると・・・


「アンコール!アンコール!」


え?

異世界でもアンコールあるのか?

そもそもアンコールって言葉があること自体に驚きだ。


もう何度目かのアンコールが続いた時リーエは少し照れたように、またステージに上がってきた。


アンコールが少しずつ鳴り止んでいくと、リーエは再び口を開いた。


「ありがとうございます。ではもう一曲だけ歌います」


リーエはアンコールには慣れているのか、特に気にした様子も無く最初の歌を歌い始めた。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


全てが終わりリーエはすでにステージはいないのだが、会場には余韻が残っている。

俺も感動し、その余韻に浸っていた。


・・・のに!


スピー、スピー・・・


隣でタマモが寝息を立てていた。


最初はタマモも興味津々と聞いていたのだが、途中で飽きてしまったらしく睡魔に負けてしまったようだ。

ガブリエルは感動していたようで、最後までちゃんと聞いていた。

そもそもガブリエルは寝る必要がないから起きているしかないのだが。


まあ仕方がないと、とりあえずタマモを起こして部屋を後にする。


そして通路をあるいていると、控え室の前にリーエが立っていた。

そして俺が近づいてきた事に気づくと、笑顔のまま両手を広げていきなり飛び込んできた。


「お、おい!」と離そうとしたら、腕は俺の首に回したまま少し離れた。

そのさっきは笑顔だったはずの顔がなぜか、少し怒ったように頬を膨らませていた。


「もう!始まる前に控え室に来なかったから、来てくれてないのかと心配したじゃないですか~!」


そこかよ!とツッコミをいれるのを我慢した。


「あ、ああ、悪い悪い。始まる前は集中しているのかと思って、そっとしておいたんだ」

「むう!緊張で胸が張り裂けそうだったんですからね!」

「胸?」


思わずリーエの胸を直視してしまった。

リーエが俺の首に腕を回したまま話をしているので、ドレスの胸元から谷間が見えてしまっていた。


「ちょ!ちょっとそういうことではないです!」

「ぶっ!」


顔に張り手を食らってしまった。


「だ、だからですね、キョウヤさんが始まる前に来て緊張をほぐしてくれないと!」

「おいおい、そんなこと言われてもな・・」

「それに来てくれてないと思ったら、ショックで落ちこんだんですからね」


いつのまに俺達はそこまでの間柄になったんだ?と思ったが、顔を真っ赤にしながらプンプンと怒るリーエにそれは言うまい。


「悪かったよ・・・」

「本当に悪いと思ってますか?」

「ああ」

「だったら私のお願いを一つ聞いてもらいますね!」


なぜに開演前に控え室に行かなかっただけで、そんな事になるんだと落胆してしまった。


「ちょ、ちょっと・・・」

「で、どうでしたか?私の歌」


俺の講義の声もむなしく遮られてしまう。


「あ、ああ、かなり良かったわ。感動した」

「ありがとうございます!!そういって頂けて嬉しいです」


「きょうや~、行こうよ~!」


リーエは歌を褒められてうれしそうだった。

そこに、それまで黙って俺たちのやり取りを見ていたタマモが痺れを切らしてしまったようだ。


「あ、ごめんなさい。長々と話し込んでしまって。タマモさんも私の歌どうでした?」

「ん~、普通~」

「あ、あはは・・・そうですか」


リーエが今までタマモに構わず、俺と話をしてしまっていたので、気を使ってタマモに問いかけると、明らかに不機嫌と取れるように応えた。

それに対して苦笑いを浮かべるリーエ。


「リーエ、気にすんな。確かにこいつは、途中からは寝てしまっていたが、最初は気に入っていたみたいだから」

「ちょっと!きょうや、余計な事は言わないで!」


図星を指され焦るタマモを見て、リーエは嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ俺達はそろそろ行くわ!今日はありがとうな!」

「いえ、こちらこそ!今日はありがとうございました」

「じゃあ、またな!」


そう言って帰ろうと足を向けようとした時。


「あ、キョウヤさん!先程の私のお願いなんですが・・・」




リーエのライブでした。


次回は投稿まで少しお時間頂くと思います。


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