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第9話 フランブールでの一日


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


少し息苦しく感じ少しずつ意識が覚醒してきた。

何か顔の辺りが柔らかい物で包まれているような感覚がある。


目はまだ開かないが、寝ぼけながら手を動かす。

狐と一緒に寝ていたからモフモフをしようとしていた。


しかし、動かした手には柔らかくすべすべとした感触がある。


ん?


すべすべ?

おかしいと思いつつも手を下のほうに動かす。


さらに柔らかい二つの双丘がある。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・はっ?


完全に意識を取り戻し目を開けるとそこにも双丘に包まれている事に気が付いた。

さらにその丘の先には蕾もあった。


「%&$*%#!?」


あまりにビックリしすぎて声にならない声をあげる。


それに気が付いた目の前の人らしき者が目を覚ます。


ちょ、ちょっとまて!今起きられると・・・


「・・・ふわぁあ・・・おはよう、きょうや」

「あ、ああ、おはよう・・・」


目の前の少女 (少女と言っても見た目は15歳くらいだが)が目をこすりながら俺に声をかけてくる。


「ちょ、ちょっと待て!お前は誰だ!?」

「ふわぁ・・きょうやぁ何言ってるの」


「何言ってるのはお前だ!そして何で俺の名前を知っている!」

「きょうやぁ、寝ぼけてるの?昨日はあんなに激しかったのにぃ」


「はあ!?俺が何をしたって言うんだ!」

「もう、私の隅から隅までまさぐってたくせにぃ」


「!人聞き悪い事いうな!」

(キョウヤ~、その子は昨日の狐ちゃんだよ~)

「そうそう、あたしだよ」


埒の明かないやりとりをしていると、ガブリエルが俺の疑問に答えてくれた。


(はあ!?これが昨日の狐?どういうことだ?)


とガブリエルに聞いたとき違和感を感じた。


「ちょっと待て、お前ガブリエルが見えて声まで聞こえるのか?」

「そこに浮いている人?うん、見えてるし聞こえるよ。だからきょうやの名前知ってるじゃん」


「そうなのか・・つーか、その前に前を隠せ!服を着ろ!」

「え~?だって服持って無いもん」


そう、起き上がって前も隠そうとしていなかったのだ。


「これをやるから取り敢えず着てろ!」


ストレージから自分の服を渡して無理矢理着させる。


「で、どういうことなんだ?」

「どういうことって?」

「なんで人の姿になってるんだ?」


とはいえ、完全な人の姿ではなかった。

頭には狐耳があり、お尻の辺りには尻尾が生えていた。


「その前に、あたしはタマモだよ。よろしくね」

「タマモ?ああ、名前の事か?」


「うん、そう!で、あたしは妖狐だよ。なんで人の姿になってるのかって質問だけど、人化を使っているからだよ」

「妖狐なのか。だったら確かに人化はできそうだな・・・じゃあ、何で昨日はならなかったんだ?」


「あたしはまだ転生して妖力が完全には戻ってないんだ。その上、恥ずかしながら罠にかかっちゃって体力も奪われちゃって、人化を使えなかったんだよね」

「転生した?」


さらにタマモの話を聞いていくと、前世では人化して人間と一緒に暮らしていたのだが妖狐だとばれて、人間に追い詰められギリギリのところで転生の秘術を行使したとの事。


それが約30年前のことである。転生はすぐに出来るわけではなく、ある程度時間がかかってしまう事もあるため5年ほど前に生まれ変わったようだ。


そして、もともと妖狐には寿命というものはないのだが、傷や病気などにより命を落としてしまう事もあるため、転生の秘術を編み出したらしい。

ただ秘術を使うためには妖力が最大までないと使うことが出来ないそうだ。


生まれ変わると天性的なものや、ある程度の知識に関しては覚えているのだが、記憶に関しては欠如してしまう部分もあるとの事。


そのため、人間に恨みがあるのではないのか?と聞いたところ、人間に追い詰められた事はおぼろげ覚えている上、自分の不注意とは言え罠にかけられたことで、多少は恨んでいるがそれほど憎いとは思っていないらしい。


というより、俺と出会ったことで人と一緒に暮らしていた事を、体が思い出したような感じだったようだ。


ガブリエルが教えてくれた事だが、タマモは白面金毛九尾らしい。


前世の名前がタマモノマエだったということから考えると、俺の世界で語り継がれてきた白面金毛九尾と同じような生活を送っていたのかもしれない。


九尾の狐はその時代の権力者のそばに現れ、憑き殺し人間に追われたと言われている。

ただ俺の見解は、妖狐は安寧を求めて権力者に近づいただけなのでは?と考えているが。


実際、このタマモを見ても自分から人間を殺そうとするようには見えないからだ。


ちなみに今タマモは九尾といいつつ尻尾は三本しかないのだが、それは妖力が完全に戻っていない事が原因だとの事。


「話は大体わかった。だが気になることがある。転生の事に気をとられていたけど、妖力がなくて人化できなかったと言っていたが、妖力は一晩である程度戻るものなのか?」

「う~ん、多分きょうやに抱いてもらったからだと思う」


「ぶっ!おい!言い方がおかしいだろ!」

「あははっ!ごめんね、きょうやは魔力がすごいし一緒にいるとあたしの回復も早いみたい。あたしは妖力って言っているけど、魔力と根本は同じ様なものだしね」


「ふーん、そんなもんなのか?ああ、それと人化した時のその耳と尻尾は消せないのか?」

「ん?あ~、これは寝ぼけて人化したから不完全なだけ。ちゃんと消せるよ」


正直言えば獣耳も個人的には悪くないが、さすがに差別があるこの世界で獣耳を出したまま歩くわけにはいかないだろう。

俺個人としては、そんな差別に反吐が出そうになるし、何とかしたいとは思う。


しかし、全ての人間・種族に差別をなくす事なんて不可能だという事は理解している。


何かしらの違いがあるからこそ、そこには羨望・憧れ・嫉み・疎みなど自分との区別が生まれ、そして差別へと変わるのだから。

しこりが残ったとしても、それでもより良い方向へと進んで欲しいとは思うが。


「そっか、じゃあ人前では消しておいてくれ。それと宿を出るときには、また狐の姿に戻っておいてくれな。ややこしくなるから」

「は~い、わかったよ。それとこれからどうするの?」


「一応、隣の国であるナルザビア王国を目指したい。ただ今日はやる事もあるから、明日向かおうと思っている」

「うん、いいよ。あたしはどこに行くにしてもきょうやに付いていくだけだから」


「ん?タマモは自分の住んでいる所に戻らなくていいのか?」

「うん、大丈夫。転生してから住む場所は固定ではないし、きょうやといる方が楽しいし」

「そうか?タマモがいいならいいが」


タマモと話を終えて朝食を取った後、服屋に寄りその後でハンターギルドに向かう事にした。


昨日の件については昼過ぎという事だったが、タマモの身分証明証が無ければ国境を越えることができないと考えたからだ。


狐の姿になっていれば問題ない話ではあるのだが。


まあ、ないよりはあった方がいいだろう。


タマモに狐の姿に戻ってもらい部屋を後にする。



宿屋の女将さんに、もう一泊する事と連れが一人増える事を伝え二人分の料金を支払っておいた。


朝飯はトーストや玉子焼きにサラダと、軽い物をだしてくれた。

この世界の食べ物は地球とほとんど変わらなくてよかったとつくづく思う。


タマモにはストレージからイシュタールで買っておいた干し肉を食べさせた。


女将さんにお礼をいい、服屋の場所を聞いて宿屋を後にする。



ハンターギルドに向かう途中で路地裏に入り、タマモに人化してもらって服を着させた。


それから女将さんに聞いた服屋に行き、タマモの服を買ってやることにする。


タマモが着ている服は俺の服なので色々と問題がありそうだったし、予備の服も必要だろうと考えてのことだ。

それにまだ小ぶりとはいえ、下着も必要だろう。


タマモに自分の気に入った物を選ばせようと思っていたのだが、俺に選んで欲しいと頼まれたので何着か見繕ってやった。


さすがに下着は俺が選んではいないぞ?


なんかボソッと「きょうやを悩殺させるんだ!」とか聞こえたような気がするがスルーする。


ガブリエルと楽しそうに選んでいるが、他の人にはガブリエルの姿は見えていないので自重してほしいのだが。



服を買い終えてハンターギルドへと向かう。


ハンターギルドでは夜中に狩りをして朝方に戻ってきたのだろうハンターが、朝から酒を飲んでいるようで意外と賑わっている。


それを横目に、昨日の受付嬢の所へと足を運ぶ。


最初は昨日の件はまだ終わってないと謝られたが、タマモのハンター登録したいと伝えるとテキパキと対応してくれている。


ルチの時の様にタマモのハンターカードを作る事は簡単だった。


ただタマモは、文字が書けないということだったので俺が代筆しておく。

こっちの世界にきて話す言葉も理解していたように、文字を書く事も特に問題なさそうだ。


ただ、妖弧にハンター登録ができるのかという心配もあったのだが、どうやらそれは杞憂だったようだ。


ついでにこの街に来る途中で狩った魔物の素材を買い取ってもらう事にした。


結構魔物を狩ったので買取受付嬢にそれを伝えると、やはり別室で仕訳することになるとの事。


狩った魔物の数もそうだが、ジャイアントスネークやブルータルワイルドボアーはやはりビックリされてしまった。


確かに全部出したわけではないとはいえ、出してみると自分でもこんなに狩ったのかと驚いてしまう。

さすがに今すぐの買取はできないという事で、金品の換金と合わせて用意してもらう事になった。


換金には予定より時間がかかりそうで、3時頃には終わるだろうとのことなので夕方くらいに顔を出すことを伝えてギルドを後にする。



さて、時間もあることだしタマモの力を確認する事にしよう。


そう考え魔物を倒しにいくことにした。


タマモに武器は必要あるのか聞いたところ、特に必要ないと言われた。

基本的には狐火や幻術といったような妖術を主として戦うとの事。


それをふまえて、早速街を出て魔物と戦うことにする。


ただ林や草原だと狐火はさすがに危険だろうと考え、北東にある渓谷へと向かう。

ここからだと走れば1時間もかからないくらいで行けそうだ。


そこには鎧サソリ(アーマースコーピオン)や戦士蟻(ソルジャーアント)がうようよいた。


これらは☆3の魔物だ。


俺は旅の途中で魔物を倒すときに色々と試したおかげで、持ってきた武器をある程度使いこなす事が出来るようになっていた。


ただ一番難しかったのは槍だ。

ある程度は使いこなせるようになっても、熟練というと中々に難しい。


っと、ここでの相手には槍は相性が良くなさそうだし、それは追々にしよう。


俺が取り出したのはダガーだ。


使っていて気が付いたのだが、魔力を通すと切れ味が鋭くなるというだけではなかった。


さらに魔力を流し込み意識する事によって、刀身を伸ばす事も出来るのだ。


それに気づいた時には、かなり感動した。

ただガブリエルによると、俺の魔力が甚大だからできる事であり、普通なら魔力を吸われて倒れてしまうらしい。


まあ俺の武器の事はその辺にしておいて、今回のメインはタマモで俺はサポートに徹する。


タマモは最初、30cmくらいの丸い狐火をだし鎧サソリに向かって放つ。


全盛期に比べて威力が落ちているると言っていたものの、簡単に鎧サソリの殻を突き破り穴をあける。


戦士蟻は数体の群れで行動する為、狐火だと効率が悪いと判断し尻尾に妖力を流し込む事で尻尾を巨大化させ纏めてなぎ払う。


全ての蟻を吹き飛ばし岩壁に叩きつけたが、絶命させる事には至らずさらに風の魔法を使う。


風が渦を巻き竜巻のように全てを巻き上げる。


ただ巻き上げるだけではなく、その風の中にかまいたちのような鋭利な風をいくつも作りあげる事により、竜巻に巻き込まれた蟻達は寸断に刻まれていく。


ものの数分でそこにいたサソリと蟻を全滅させる事ができた。


もちろん妖術もすごいが、ただ我武者羅に戦うのではなく的確に判断して戦う事に素直に感心した。



タマモは魔物を倒したあと、上目遣いに褒めて褒めてと訴えてくるので頭を撫でてやった。


その際に狐耳を出させ、モフモフしたのは言うまでもない。

狐耳を撫でたときタマモが「はふぅ~」と悶えたような気がするが、それは見なかった事にする。


タマモもかなり戦えるという事がわかったので、その後は倒す事よりも連携を目的とした戦いをする事にした。

タマモは頭のキレが良く察するという事に長けており、俺の合図や動きで俺の意図を完璧に理解し行動していた事には驚いた。


昼休憩を挟みつつ、ある程度魔物を倒したところで街に戻る事にした。


最後にタマモが撫でてほしそうだったので頭を撫でてやる。


さっきは耳だったが尻尾をモフモフさせて欲しいと頼んだら「し、しっぽはイヤ・・」と頬を赤くしながら悶えたので軽くスルーしてさっさと歩き出す。


その後ろを「きょうや待ってよ~」と慌てて追ってきた。



今回の戦いで鎧サソリから「鎧化」を獲得できたのはよかった。

とは言っても鎧を纏うわけではなく、魔法で行う硬化をスキルとして使用し防御力を高める事が出来るものだ。


渓谷を出て街道へと向かう途中、魔力感知に反応があった。


ガブリエルはもちろんの事、タマモにもそれは感じ取れたようだ。


それらは全て人のようだが、どうやら様子がおかしい。

ずっと同じ位置から動いてない上、数人を中心にその周りを取り囲んでいるように感じる。


嫌な予感がしたため、急いでその場所へと向かう。


一瞬、タマモを置いてきてしまった!と振り返ったのだが、辛そうにはしていたがこのスピードにちゃんと付いてこれる程早く走れるようで安心した。


感知した場所から少し離れた木の上に飛び乗り様子を伺う。


「・・はあ、はあ、き、きょうや早すぎぃ。人間なのになんでそんなに早く走れるのぉ」


と隣に来ていたタマモが嘆いていたが、何も言わず頭にポンポンと手をやるだけで視線は前を向けたままだった。


その視線の先にまず目に入ったのは幌馬車である。

アーチ状になった幌の中は見えないが魔力感知では中に3人いるようだ。


外には御者台の近くに一人が倒れ、幌馬車の周りにも守るように3人いるのだが今一人が倒された。

怪我をしているようだが、まだ死んではいないようだ。


そして後ろで倒れている人の前に剣を持った人が立っていて、幌馬車の周りにフードを被った6人が小剣 (サーベルのような物)を抜いて囲んでいる。


・・・多勢に無勢だな。


(あれは盗賊に襲われているみたいだね~)

「ああ、そうみたいだな」


暢気な声を上げるガブリエルに、普通に声を出して応える。

ここにはタマモしかいないから構わないだろう。


「きょうや、どうするの?助けるの?」

「そうだな、さすがに見てみぬふりはできないだろう」

「ふ~ん?きょうやがそういうならあたしも手伝う」


タマモも前世で人間に襲われた事があるせいなのか、人間が襲われているからといって助けるという概念は持っていないようだった。

まあ、それも仕方ないことなのだろう。それを諭したところで意味はない。


さて、どうするかな。


・・・そうだ、妖狐と言えば多分あれが使えるよな?


「なあタマモ、お前変化の術は使えるのか?」

「うん?使えるよ」


やっぱり!


「悪いけど、それ俺が貰ってもいいか?」

「え?なに?どういうこと?」


時間がないからと言って掻い摘みすぎたか。


「ああ、相手に意識して触れる事でその相手の能力を使う事ができるんだ」

「え?そんな事もできるの!?」


「ああ、タマモがよければだが。それと時間がないから出来れば早くしたい。詳しい事は後で話すから」

「うん、わかった!いいよ~!」


軽っ!そして疑いも無く即決かよ!


返事を聞きすぐにタマモの腕を取り『吸収』をする。

もちろんコピーの方であり、すぐに変化の術を覚える事ができた。


タマモに簡単なレクチャーを受け、変化の術を行う。

これも魔法と同じくイメージをする事で状態変化をさせ、見た目を変える事ができるというものである。


俺は某映画俳優、ト〇・クルーズをイメージした。

すると見える範囲では元々の自分の体と変わっていくのを確認した。


顔も変わっているようだが、ガブリエルには (元のキョウヤの方がいいのに~)と言っていたが、もちろん無視である。


そうこうしている内に盗賊と戦っていた男の一人はすでに倒されており、残りの一人も切られて倒れた。


さて、可能(ミッション・)任務(ポッシブル)開始だ!


すぐに飛び出し、さらに小剣を振り下ろそうとする男に勢いのまま横っ腹に蹴りを入れる。

その盗賊はかなり吹っ飛んでいき、それを他の盗賊は何が起こったのかわからずに一瞬ぽかんとしている。


その隙を突き、近くにいた盗賊に一瞬で詰め延髄蹴りを決めて倒す。

その間、タマモが御者台の近くにいた盗賊に二人に、加減を調節した狐火を食らわせていた。


タマモに目を向けるとタマモも変化していたらしく、そこには・・・


ボン・キュッ・ボンのナイスバデーが・・・


って、おい!


それ戦闘に必要か!?必要なのか!?


と気をとられる事コンマ一秒。すぐに切り替える


タマモが倒した盗賊の生死を不安に思ったが、助けに入る前タマモに「殺すなよ?」と釘を刺しておいたので、死なないように威力は調整してあるだろうと期待しておく事にする。


残りの盗賊は事態に気が付き慌てて俺に向き直る。

が、もう遅い!


向き直ったと同時に、一瞬で詰め寄り腹に一撃入れて沈める。


残りの一人が他の仲間達が倒れていく姿をみて、かなり慌てている。

近寄る俺とタマモに怯え、交互に剣先を向けながらじりじりと後ずさる。


すると戦っても勝てないと悟ったのか、急に後ろを向き仲間を捨てて逃げ出した。


ばかか?敵に後ろを向けてどうするよ?


逃げ出した盗賊に駆け出し、そのまま後ろから蹴りを入れると前のめりに吹っ飛んだ。


ふぅ~、と一息漏らし状況を確認する。

盗賊は全て意識を失っているようだ。見る限り、盗賊も含めて誰も死んでいないようだな。


やはりタマモは褒めて褒めてと寄って来る。

今は尻尾を消して見えないはずなのに、尻尾を振っている情景が目に浮かぶ。


ん?狐は嬉しいとき尻尾を振るんだっけか?まあ、それはどうでもいいや。


ただ、ナイスバデーに変化した状態で両腕を前に寄せ、前屈みになるのは止めてほしい。


大きな双丘が目に毒である。

決して喜んでなどいない。喜んでなど・・・


という心の葛藤を表情には出さずにタマモの頭を撫でてやる。



そしてタマモをその場に残して御者台の近くを確認する。


倒れているのは、幌馬車の御者のようだ。

傷はそんなに深くないようなので治しておいた。


幌の近くで倒れていたのは、おそらく護衛だったのであろう。

とりあえず、その三人も治しておく。


御者も護衛の三人もまだ目を覚ましていない。


その間に盗賊から力を奪い取って、傍の林の方へ投げ捨てておいた。

直接殺しはしないが、盗賊がその後どうなろうと知ったことではない。


全てが終わり安全も確認できたところで、幌の中を覗いた。

そこには男性が二人とヒジャブ (頭に巻く布)のような物を被った、おそらく女性だろうと思われる人が身を小さくしていた。


「ひぃっ!」


俺が覗き込んだ事で盗賊と勘違いし、そしてよほど怖かったのだろう、一人の男が悲鳴をあげ自分を包み込むように手を腕に当てて震えていた。


「俺は盗賊じゃない、安心してくれ」


自分で言った安心してくれという言葉に、さすがにいきなりそれは無理があるだろうなと苦笑する


「・・・あ、あなたは本当に盗賊ではないのですか?で、では、盗賊はどうなったんですか?」

「ああ、盗賊は全て片付けた」


まだ怯えながら疑いの目で見てきていたが、俺が何もしない事で少し安心したのか二人の男が外に出てきた。


「・・・!!」

「この方たちは殺されてしまったんですか!?」


倒れている護衛らしき三人を見て殺されてしまったと勘違いしているようだ。


「いや、盗賊に倒されたようだが死んではいない。気絶しているだけだろう。御者も無事だ」


その言葉に二人ともホッと安心したようだった。


そのやり取りを見ていた幌の中に残っていた女性らしき人も顔を出し、


「皆さん無事なんですね!よかったぁ」


と安心して息を吐き出していた。


話を聞くと急いでナルザビア王国へ向かっている途中に、盗賊に襲われてしまったのだという。


戦っていた三人はやはり護衛で、ハンターギルドで以来を受けたハンターらしい。

三人ともそれなりに腕は立つらしいのだが、急に襲われた事で対応が遅れてしまい、さらに相手の方が人数多かったことで焦ってやられたようだ。


その事を聞いている内に気絶していた者達が目を覚ましだした。


次々に口々にお礼を言われたが、正直俺はこういう時どうしていいのかわからない。


だから本当なら彼らが目を覚ます前には立ち去りたかったのだが、また盗賊が来ないとも限らないので警戒するために仕方なく残っていたのだ。


きちんとしたお礼がしたいと申しだされた事に関しては、丁重にお断りをしておいた。

そして助けた女性には、報酬を出すので護衛として付いてきて欲しいと言われたが、やる事があるからと言ってそれも断った。


安全に関してはガブリエルに街道の先を確認させると、今の所は襲ってきそうなものはいないようだと言っていたので、俺が付いて護衛する必要はないだろうと判断した上での事である。


女性は残念そうにしていたが、急いでいるという事ですぐに幌馬車を出すように御者に指示した。


動き出す馬車の幌から顔を覗かせた女性は、ヒジャブを取って深々とお辞儀をした。

そして上げた顔にはこれでもかというくらいの笑顔を見せていた。


それは人を惹きつけるような整った顔立ちの白金髪の美人であった。


しかしその姿を見て、ん?と一瞬違和感を覚えたが別に不安な類ではなかったので気にはしなかった。


幌馬車が去っていくのを見送っていると彼らは全員、見えなくなるまで手を振っていた。


俺は自分がした事でこんなにも喜んでもらい、そしてお礼まで言われるなんて事が今まで無かったのだが、こういうのも良いもんだなと少し嬉しくなった。


完全に見えなくなったことを確認し、周囲にも魔力感知に反応がないことから、俺とタマモは変化をといて元の姿に戻る。


街へと帰る途中、タマモには戦闘前に約束しておいた『吸収』の力について全部ではないが簡単に教えておく事にした。


魔眼を使うまでも無く直感で、タマモならある程度は離しておいても大丈夫だろうと考えてのことだ。


タマモは前世からの覚えている記憶の中でも、そんな能力は聞いた事がないと最初は驚いていたようだが「まあ、きょうやはきょうやだから」と訳のわからない事を言っていた。


何が言いたいのかはわからなかったが、その言葉に少し嬉しく思ったのはここだけの話だ。

最後には他言無用だという事に念を押しておく。


軽く走りながら説明をしていたので、話が終わる頃にはフランブールの門が見えてきた。

走りから歩きに変えて門へと近づき、そこにいた門兵にハンターカードを見せると中へと通される。


調度いい時間だったので、そのままハンターギルドへと向へと向かった。


ハンターギルド内の酒場は、いつ来てもそれなりに賑わっているようだ。


素材買取の受付嬢の前に行きハンターカードを見せると、すでに金品類と素材の換金は終わっていたようで目の前にドサッと袋に入れた現金が置かれる。

全部でおよそ100万Gちょっとになったようだ。


おおう!一晩で大金持ちになってしまった。


袋に入っている現金が多いのには、10万G硬貨だとあまり使い勝手がよくないとの事で、ギルドが気を使って50万Gを10万G硬貨で、40万を1万G、残りの10万を千G硬貨にしてくれたからだそうだ。


現金が多くなってしまった事を申し訳なさそうに心配してくれていたが、アイテムバッグがあるから心配ないと言っておいた。


実際にはストレージにしまうわけだが。


ついでにさっき狩った魔物の判別だけをしてもらうことにした。


お金はそれなりに増えたので、それに関してはタマモのハンターレベルを上げるためなのでお金はいらないと伝えた。


買取専門の受付嬢は、お金を渡さずになんて・・・と渋っていたのだが、俺は明日の朝にはこの街を立つからと伝えると、じゃあ朝一で来て下さいと言われてしまった。


そこまで言われて断るのも申し訳ないので、それに関しては了承する事にした。


そしてもう一人の受付嬢のところまで行くと、すでに倒した魔物は伝わっていたようでハンターカードを渡すとすぐに反映してくれた。


これに関してはタマモが関わっていなかったことで、タマモのレベルは上がらない。

俺はレベル12まで上がった。

☆はすでに4まであるので、それ以上の魔物を倒していない為変わらず。


まあ、この世界ではハンターレベルを上げたところで能力が上がるわけではないが、色々と優遇される事も多いらしいのであげておく事に越した事はない。


やる事が終わって、また明日も来ないといけないのかと若干面倒くさいなと思いつつギルドを出ようと足を向ける。


「おいおい!にいちゃんよ~!」


はぁー、またか・・・


内心かなり嫌気がさした。

例によって例の如くである。


「見てたぜぇ!随分稼いでんじゃねえか!俺らにもお裾分けしてくれよー!そしてそこの姉ちゃんは俺らと一緒に来な!」


この世界の酔っ払いハンターは、バカなのか?それともバカなのか?はたまたバカなのか?

結局はバカ一択しかない。


4人ほどニヤニヤしながら近づいてきていた。

後ろでタマモが威嚇して今にも飛び掛りそうだったので手で制しておき、酔っ払いはシカトしてスタコラと出口に向かう。


「おいこら兄ちゃん!無視してんじゃねえよ!」

「おうおう!俺らを誰だと思ってんだ!?」


一人に肩をつかまれ、その他のやつらに行く手を阻まれる。

お前らが誰かなんて知らねえよと思いつつため息を吐く。


「・・・ええ、存じません。無知な私にあなた達がどなた様なのかお教え願えますか?」


ガブリエルがかなりビックリしていたようだ。


なぜなら、王様にすら敬語を使わなかった俺が敬語を使っているからだ。

血の雨が降るのではと心配しているようだが、イラついてはいるがさすがにそれはない。


「ふんっ!じゃあ教えてやろう!俺たちは何を隠そう、かの有名なワイルドキャッツだ!」


男達は変なポーズを決めながら目を閉じ、酒だけでなく自分たちにも酔いしれているようだ。


・・・・・・


いろいろと突っ込みたい事はあったのだがそれを我慢し、自分に酔いしれている間に隠密を使いタマモを引っ張って出口から出て行った。


ギルドを出てからギルドの方から「あの野郎!どこへ行きやがったぁ!」と聞こえたがそのまま立ち去る。

受付嬢がどこかに連絡をしていたようだから、あいつらはすぐに押さえつけられる事だろう。


(いや~、キョウヤが敬語なんて使ったときは、どうなる事かとさすがに焦ったよ~)

「酔っ払いを構うだけ時間の無駄だからな。逆に下手に出て煽てればそれに乗ってくるだろうと思ったんだよ」


タマモもまだ興奮しているようだったから、タマモにも聞こえるくらいの声で返した。


(へぇ~、さすがだね~)

「別に大したことじゃない。相手にしたくなかっただけだ」


「あんなの殺っちゃえば良かったのに!」

「こらこら。せめて倒したり制したりするのはいいとしても、人を殺さないようにしてくれよ」


「え~?どうして?」

「人だけじゃなくて他の種族も含めてだが、あまり遺恨を残したくはないからな」


「いこん~?」

「あー、まあ仲良くしようってことだ」

「ん~、きょうやがそう言うならそうするよ」


とは言っておいたものの、確かに種族間で仲良く出来ればと思っている事は間違いないのであるが、それ以上にタマモには出来るだけ相手を殺させたくなかった。前世ではそういうことをしていたとしてもだ。


もし・・・万が一、やむを得ない状況に陥ったとしたならば、その時は・・・


ガブリエルもそのやり取りを聞いて納得したようだし、タマモも俺の話を聞いて理解したのかしてないのかわからないが、俺が言うのであればと無理矢理納得したようだ。

ニコニコしながら頷くタマモの頭を撫でてやった。


宿に戻ると夕食の準備は出来ているという事で、連れとして紹介したタマモも今回は堂々と一緒に食事を取ることにした。

女将さんが「おやおや、隅に置けないねぇ」とか訳のわからん事を言っていたが、構わず食事をする。


今日は豚肉のしょうが焼き、麦米、コンソメスープ、ラーメンサラダ (全て、~の様なものである)が出てきた。


どれも美味しかったのだが、タマモは猫舌だったらしくスープを飲むときに火傷したらしい。


狐なのに猫舌って・・・


仕方がないので、俺がちゃんと冷ましてから飲ませてやった。

その横を「若いって良いわねぇ」とか言いながら女将さんが通りすぎたのだが、何を勘違いしているのやら。



食事を終えて部屋へと戻る。


今度は二人部屋なのでちゃんとベッドが二つある。


俺はその一つに腰をかけた。するとタマモも隣にきて、ニコッと笑う。

タマモが考えている事が手に取るようにわかる気がする。


だから先に釘を刺しておく。


「お前はそっちのベッドで寝ろよ?」

「え?ええええ?一緒に寝るんじゃないの?」


「何を言ってんだ。当たり前だろう」

「うう、昨日は一緒に寝てくれたのに・・・一緒に寝ようよ~!」


「昨日は狐の姿だったからな。そうだな、寝てる間は狐のままならいいぞ」

「え?ほんと?じゃあ一緒に寝よう!」


「ちなみに俺が眠ってる時に人化するとかは無しな」

「(ちっ!ばれてた)・・・うん、わかったよ!」


「・・・今舌打ちしなかったか?」

「ううん、きょうやの気のせいだよ!」



(いいなぁ~、仲良くて羨ましいな~。私も一緒に寝てもいい~?)


「いや、お前は何言ってんの?お前は寝る必要ないし、そもそも身体がないから布団に寝れないだろう」

(ぶぅ~!そこは気持ちの問題だよ~!)


「はいはい、じゃあ好きなようにしなさい」

(うん、キョウヤは好きだよ~!)


「ぶっ!そういうことじゃねえ!」

「ちょ、ちょっとがぶりえる!私のほうがきょうやの事好きだよ!」


「おい!張り合わなくていい!」

(ふ~んだ、私のほうが先にずっとキョウヤの事見てるんだもんね~)


ガブリエルは本当に天使なのだろうか・・・

疑問に思えてきた。


「ふん、そんな事関係ないし。あたしはこれからきょうやと寝るもんね」


俺にくっついてガブリエルに向かってニヤリと笑う。


(うう~!こうなったら~!私はキョウヤの恥ずかしい秘密だって知ってるんだからね~!)

「おいこら!何言ってやがる!」


いきなり俺に飛び火が来て焦った。

いい迷惑である。


俺に恥ずかしい秘密なんて・・・秘密なんて・・・ある・・・はずが・・・


「ガブリエル君?君、余計な事言わないよねぇ?」


優しい~、それはもう優しい~笑顔で釘を刺す。


(ひぃ~!大丈夫です~!何もいいませ~ん)


ん?おかしいな何をビビッているのだ?こんなに優しい笑顔で言っているのに。


「ちょっと、がぶりえる!教えな・・・ひぃ!」


タマモにも笑顔で釘を刺そうと振り返ると怯えてしまった。


まあいい、俺は (精神的に)疲れたから寝る。


風呂にも入りたかったが別に入らなくても、旅の途中で覚えたクリーンの魔法で体と服を綺麗にする事が出来るようになったから、今日はそれで済ませる事にする。


布団に入りながら「ちゃんと人化をとけよ」と念を押して眠りについた。



もう少し先まで進む予定が、またまた進みませんでした。

書いているうちに書く事が増えてしまいました。

次の話では先に進む事ができるかな?と思っております。

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