ルール違反
「1人でいきなり事務所に来たんだって。この前急に電話きて、女の子が入りたいって言ってきてさ。まぁ驚くよね。」
「マジか!勇気あるなー。えっと…最近まで違う劇場に入ってたんだよね?」
「あ、はい。神奈川の方で。」
「え、神奈川の何処?」
「相模原です。」
「相模原?」
「へー、知らないな。そこにも劇場があるんだね。」
「そうですね。」
「何でやめたの?」
「え……」
「言いたくないならいいよ。無理しなくて。」
「いや、私就職先こっちにしようと思ってて、だから向こうにずっといるのは大変かなって。」
「ふーん。まぁさ、こっちは年齢関係なく、仲良くやってるからさ。よろしく!でさ、向こうだとどんな感じなの?」
私の中で必ず劇場はあった。避けられることではない。もう、身体に染み付いてる様なものだ。彼らの質問は続いて、パスタを食べるどころではない。お腹も大して空いてなかったし、頼まなければ良かったとさえ思えた。
「そんなに人数いるのか、凄いな〜。」
「よく誘えるよね、こっちは子どもから上がってきたのが青年として今残ってる感じだからさ。そうじゃないってことだよね?」
「はい。青年から入る人もいます。」
「凄いな!どうやって誘っているの?大体劇場のことどうやって説明すればいいか分からなくない?ボーイスカウトとは違うし。俺はもうボランティアって言っちゃうな。」
「保育士さん目指してる人たちに、子どもと関われるよって誘うパターンが多いかも。私が教えてもらったのだと、地域で子育てする団体だよって感じです。」
「上手い!そういう表現ね!あとはあとは?」
「聞き過ぎだって。全然食べれてないじゃん。」
「あ、そっか。じゃあこっちの話するか。ゆっくり食べてていいからね。」
私は逃げてきた。15年間の全てを投げ捨てて、居場所を求めてここに転がってきた。みんなからすれば裏切ったと思うだろう。しかし私からすると追い詰められたという表現の方が正しい。