003
―――えっ、えっ、そんなぁ!!う、ううう嘘嘘嘘でしょうっ!?
「いやああああああ!!!」
私は全身打撲したにも関わらず混乱して山の斜面を走り出しました。
ぺちゃんこの車に居る両親と運転手。けれど誰も動きはせず、伏せたまま呼吸一つしていなかったのです。
持ってきたバッグやリュックは全て置いてきてしまった。故に電話は出来ない、自分で山を降りて病院や警察まで行かなくてはならない、本当はそうしなければなりません。しかし私は最早自分がなにをしているのかどうすれば良いのか分からなくなっていました。
それほど自我を失っていたのです。
我を取り戻したつもりが余計に不安を煽り、錯乱状態になりました。
気づけば靴も脱げ、足や手の指先は凍傷で赤くなって感覚が薄れていきます。でも雪はおさまらず、髪についたものがとけて髪が凍ってしまいました。
「ぶっ」
すると氷の張った地面に滑り、前屈みに転んだせいで顔面を強打してしまう。しかし、痛みもあるが、突然訪れた巨大過ぎる絶望に私は起き上がる気にもなれず冷たい地面に横たわって目を瞑りました。
とても眠いのです。私はこんなときになって余裕が出てきて思いました。これが寒いときに眠くなってしまうということなのか。
だが分かったとてどうにもならず、半目を開けて力を振り絞り、動こう生きようとしました。と、半目を開けて眺めた目の前にとても美しい光景が広がっているのです。ニライカナイではないかと錯覚してしまうくらいにそれは美しく、絶景。
自然の中、眼前に並ぶ真っ赤な鳥居。怪しくも神秘的で神に近い気がした。
真っ赤というのは自分の血が目に垂れてのものなのか。もう考える思考すたままならない。ゆっくり目を閉じて私は眠りに落ちた。