第灰話
とりあえず、今日は日も落ちてきたし、寝てしまおう。
そう思い真っ白なベットに横たわろうとしたところで窓の外に気配を感じた。
窓は高い位置にあり空しか窺えない。その窓から友達が来てくれたようだ。
「よう、元気か?」
綺麗な黄色と緑が入り交じった身体をしたインコがそこにはいた。ちなみに、くちばしも蛍光色のような鮮やかな黄色だ。
「ピコ!!また遊びに来てくれたんだね!」
私はそう言うと自然に笑顔が溢れでた。
「ああ、寂しいだろうと思ってネズミを捕まえてきてやったぜ」
「え・・・う、うん!ありがとう!」
あふれ出た笑顔が若干引きつったのは秘密である。
ピコと口にくわえたネズミは窓の隙間から入ってきた。
「痛たた!!ちょっと!しっぽ取れるからやめて!おろして!」
ピコにくわえられて連れられたネズミはギャーギャー騒いでいたが、床におろされると、咳払いを一つして冷静な素振りを取り繕っていた。
「コホン、私はサーカスの看板ネズミをしている、アピニスです。以後お見知りおきを。」
タキシードに身を包み頭にはシルクハットをして、手にはステッキを持ったネズミ(チャップリンの様な出で立ち)はそう答えた。
「サーカス・・・すごい!じゃぁ、色んな事出来るの?」
「ええ、玉乗りに自転車を漕いだり、タップダンスを踊ったり何でもやって見せましょう。」
と、シルクハットを取り丁寧にお辞儀した。
「じゃぁ、私をここから出して欲しいなぁ・・・なんて都合良すぎるかなぁぁ?」
私は複雑な笑顔を浮かべて、言った。するとネズミは何の迷いなく答えた。
「良いでしょう。その代わりショックを受ける世界かもしれません。失礼だが貴女の状態をピコから聞きました。何も知らないんですよね。歳も名前も・・・。」
私はうなずいた。
「だったら、このままここにいた方が幸せかも知れませんよ?」
真剣な顔をしたアピニスに私はゴクリと息を呑んだ。自分は何も知らない。名前すら分からない。自分の姿もスープに映った自分しかしらない。そんな状態で外へ出て大丈夫なのか。
答えは決まっていた。
「いくら何も知らない状態でも外に出て色んな事を知りたいんです。もしかしたらお母さんやお父さん、それから兄弟だってもいるかも知れ」「いませんよ」
アピニスは途中で女の言葉を遮る。
私は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。(∵)←こんな顔をしていた。
「人間は2年前の大洪水で絶滅しました。今生きてるのは私たち一部の動物のみですっておじょうさぁぁぁん!!!!」
私は話の途中で倒れてしまった。アピニスの心配する声が遠くから聞こえてくる感覚を残して。
ピコ
黄緑色のインコ。無口で不器用。
アピニス
紳士で器用なネズミ。




