武器が消失
はじめに言う。
この話は「戦闘モノ」だ。
…そうだと、信じたい。
「あれ、何でだろう…バグか?」
いつものように学校から帰ると、PSPでモンスターを狩る。部活もせずにゲームだけが生き甲斐の俺は「非リア充ライフ」を一応満喫しているのだ。物語の中では美少女にあんな事やこんな事をされて嫌らしい笑みを浮かべるのだろうが、俺にそんな事はあり得ないのだ。
自慢じゃないが俺は全くモテない。
自慢じゃないが俺はスポーツが出来ない。
自慢じゃないが――――…、
自分で泣きたくなってきた。大好きな女の子にイケメンの彼氏が出来たのを知り、俺だってやる気を出せばモテると思っていた高校二年生の春…約一年前だ。そんなリア充ライフが来る筈もなく高校生三年生現在。
今日もいつもどおり虚しい日々。女の子達には避けられ、…でもいいんだ。そんな「非リア充ライフ」も慣れてしまえれば問題ない。こうやってPSP片手に生きていくのも悪くは無いと思う。
だが。
おかしいのだ。
いつもならボタンを押せば武器が出てくる筈なのに、武器が出てこない。それも「武器を使うのは禁止だよ?」と意味不明のアイコンが出てくる。…おかしい。
俺は説明書を見直すが、そんな設定は無いようだ。じゃあ一体これは何なんだ?俺を苛めようってか?俺の人生を支えるのはこれだけなんだよ。
「くそっ!」
俺は全力でモンスターから逃げた。武器が出ないんじゃしょうがない。だが当たり前だがライフは減っていく。…泣きそうだ。
折角ここまでしたのに、セーブしてないじゃないか。
『牡牛座のあなた!嫌な事から逃げないで。そうすれば良いことがあるでしょう。ラッキーカラーは赤です。』
丁度毎日朝チェックしているニュース占いを思い出す。嫌な事から逃げないでってそういう事ですか!?俺はじっと考える。
ここは一か八か賭けるべきなのか?
…そうだ。逃げてばかりじゃ駄目なのか。
どうせ逃げてもライフは着実に減っているんだ。
「非リア充ライフ」から抜け出せる気がする。
…そんな訳、無いけどさ。
ゲームごとき、買っても負けても変わらない。俺のリアルに影響する筈がない。分かっている。分かっているけど…
「どりゃああああ!」
俺はモンスターに激突した。