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Dropbehind  作者: ziure
第一章 入学編
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第九話 歓迎会(1)

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

「それでは今から、歓迎会を始めます」


 まだ静寂という空気にはなっていないが、この歓迎会の趣旨は言葉通り一年を歓迎することが目的ということなので、多少のざわめきは気に止める様子もなく教頭が歓迎会の開始を告げた。


「伝えるのが遅れましたが、この歓迎会は生徒会のみなさんに司会、進行をやってもらいますのでご了承ください。では生徒会のみなさんお願いします」


 教頭はそう告げてから生徒会の一人と司会を交代するように身を引いた。


「みなさん、おはようございます。この歓迎会の司会、進行を務めさせていただきます、生徒会書記の夏目涼華なつめすずかです。よろしくお願いします」


 生徒会の書記――夏目涼華は全校に向けて挨拶をしてぺこりと頭を下げた。お辞儀一つでもわかるくらいの美しい仕草にここにいる男子の多くは目を奪われることだろう。

 事実生徒会書記の女子に視線が釘付けになっている生徒も少なくない。


「人気高そうだな」


 俺は小声で隣に座っているトシに話しかけた。


「ん? ああ、あの人のことか? 高そうじゃなくて、ホントに高いぜ」


 それはそうだろうなと思う。

 挨拶をしたときの声はとても凛としていて、顔もそれに合っていて美少女というよりは、美人という表現の方が相応い身長と身体つきである。髪は藍色のセミロングで目付きはちょっときつく、無表情で無言で見つめられたら少し怖いかもしれない……雰囲気的にはさしずめクールビューティーといった感じだ。


「楠木君ってああいう人が好みなの?」


 隣に座っている朱里から疑問が飛んでくる。こういうことはやっぱり女子ということで喰いついてきた。

 ちなみに今の俺らの座っている順番は右から朱里、俺、トシの順である。

 俺が真ん中の理由は簡単でお互いがお互いに隣に座りたくないからだそうだ。


「うーん……まぁ、幼い感じの人よりは、ああいった大人びた人の方がいいと思ってるかな」


 姉さんといたことを考えながら、呟くように答える。


「確かにな。こいつみたいに子供の雰囲気丸出しのうるさくてやかましい奴よりは断然ああいう人の方がいいよな」


 トシは俺の答えを聞いて朱里を指さしながら俺に同調した。


「トシって反省って言葉知らないんだねー。よーく分かったよ。後でたっぷり反省させてあげるからね。感謝しなさいよ」


 やはりというかなんというか、朱里は背後にオーラを漂わせながらトシを睨みつける。


「あれれ、もしかして朱里ちゃんはあの書記の人の容姿が羨ましいのかな?」


 だが今回のトシは今までとは違い、そのオーラに負けずに朱里に目線(主に胸)を向けながら言い返す。トシが言った言葉は朱里にダメージを与えたようで、朱里はしゅんとなったようで俯く。

「うぅ、気にしていることを……後でぶっ殺す」

「ん? なんだって?」


 隣にいた俺は朱里の言った言葉が最後まで聞こえたが、トシには聞こえなかったらしい。きっと知らない方がいいことだろう。朱里の周りにどす黒いオーラが視えたような……


「なんでもない、ない。ほら、真面目にしてようよ」


 さっきの様子から一転してすぐにいつもの様子に戻る。


「お前がそれを言うかよ……」


 朱里の言った言葉につっこみのような憎まれ口をたたくトシ。

 俺はその姿に軽く苦笑しながら、再び前を向いて話を聞く体制を整える。


「……それでは、次に我が学園の生徒会長に挨拶をしてもらいましょう。ではお願いします」


 司会をしている書記の女子が生徒会長に挨拶を求めるように告げる。


「はい」


 その言葉を聞き、一人の女子の声が第一体育館に響く。

 その声を発した生徒会長だろうと思われる女子生徒がステージの上へと移動していく。男女問わず全校の生徒がその動きに釣られて視線を動かしていた。


優姉ゆうねえ……」


 俺は生徒会長を見ながら、隣にいる二人にも気付かれないような声でそう呟きを漏らす。間違いなくあそこに立っている生徒会長は優姉だろう。あの頃とほとんど変わらない赤い長い髪をひとつにまとめたポニーテール。身長は平均より少し高いくらいで、きちんとした立ち姿は体型の良さを際立たせている。顔はもちろん美少女の類。


「みなさん、おはようございます。当学園の生徒会長の火神優奈かがみゆうなです。第一部から第二部に上がってきた生徒のみなさん、それと例年より多い他校から来た生徒のみなさん、試験の合格と第二部の入学、おめでとうございます」


 それにしても相変わらず綺麗な声をしているなと思う。昔と変わらない澄み切った声。


「私たち第二部の在校生は、皆さんがこの学園に来ることを、とても楽しみにしていました。生徒会長の私も当然その中の一人です」


 どんどんと台詞を述べていく優姉は生徒会長にふさわしい堂々としたものだった。まぁ昔から人の目には強かったけど。


「ただ私たち在校生よりも、学園長が特に新入生を楽しみにしていて、前日の時にすれ違った時のあの姿は、まるで無邪気な子供のようでした」


 その姿は常日頃変わりないような……と思ってしまった俺に罪はないはずだ。優姉の言葉に笑っている生徒も少なくないし。


「そういうわけで私たち第二部の生徒、先生はあなたたちを歓迎します。短いですがこれで私からの挨拶を終わりにしたいと思います」


 そう言って、ぺこりとお辞儀する。顔を上げる瞬間、俺に向かってニヤリと笑みを見せてきたことは、気のせいであってほしいと願う……

 優姉はそのままステージから下りていった。


「会長、ありがとうございました。つづいて、新入生と在校生の親睦を深めるためのゲームに移りたいと思います。説明は副会長お願いします」


 副会長と思われる男子は、すっと立ちあがる。


「生徒会副会長の野田信二のだしんじだ。よろしく。では早速今から行うゲームの説明を始めたいと思う。ルールはかなりシンプルだ。まずはじめに各学年ごとに最低一人ずつ入ったグループを作る。ただしグループの最高人数は十人までとする。そしてグループが出来たらこの学園の様々なところに貼ってある課題や問題を書かれている紙を探し、それをクリアしてもらう。説明は以上だ。ちなみにクリアした数が一番多かったグループには会長からプレゼントがある。ほしければ頑張ることだな。それではグループを作り始めろ。できたグループから紙を探し始めても構わない」



 副会長から命令口調で述べられたその言葉がきっかけとなり、ゲームは始まった……




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