第八話 幼馴染
開いてくださりありがとうございます。
誤字脱字あったら報告お願いします。
美佳と別れてから俺は寄り道することなく寮に戻った。
自分の部屋に入り時計を見ると、待ち合わせの時刻にはまだまだ早かったので、制服に着替えてからベットに寝転がって時間を潰すことにした。そしてさっきの出来事を振り返っていく。
――――約九年ぶりに会った妹は--美佳はとても可愛く見えた
――――髪型がおもいっきり変わっていてビックリしてしまった
――――美佳との久しぶりの会話は、なんだか楽しかった気がする
――――美佳は俺と久しぶりに会って、話してどう思ったのだろうか?
――――俺が出て行ったあの日からどんなことを思い、何を考えたのだろうか?
――――あの様子だと心配してくれたのだろうか……
――――そうだったらちょっと嬉しい
――――だが同時に自分に腹が立ってくる
――――親に出て行けと言われたといえ、何にも言わず、別れを告げずにどこかへ行ってしまった自分に
――――迷惑をかけまいと勝手に思い込んだ自分に
――――姉はどうなのだろうか?
――――美佳があの様子だと、姉はきっと……
悪寒がいきなり背筋に走ったため、そこで思考は終了した。
できることなら姉との再会は心の準備がちゃんと出来てからにしてほしいと思った。美佳のようにいきなりの再会ではたまったものではない。
再び時計を見ると時間にはまだ余裕が少しあるが、待たせるよりはいいだろうと思い、寝ころがったことにより少し乱れてしまった服を整えてから学園に向かった。
待ち合わせ場所の校門には、すでにトシが待っていた。壁に背を預けて腕を組み人を待つ姿は絵になっていて、女の子が見たら見惚れてしまうのではないのだろうか。
そんな思考を頭によぎらせながら、俺はちょっと早足になってトシに近づくと、トシは俺に気付いたようで軽く手を上げて会釈をする。
「よっ、哲也」
「おはよう、トシ。待たせちゃってごめん」
「そんなに待ってないから、気にするな。別に時間に遅れたわけじゃないんだしな。それじゃあ、行くか」
会釈を返して待たせたことを詫びると、トシは社交辞令とばかりにそう返してくれた。そして集合場所に向かうために、横に並んで歩き始めたその直後……
「とう!」
掛け声と共にトシに向かって飛び蹴りをかます一つの人影。
「ぐはぁっ」
それをくらったトシは声を上げ見事に吹っ飛び、うつ伏せの状態で倒れて動いていない。そしてその人影は蹴った反動を上手く使い着地を決める。その人影は少女だった。髪は黒色で長さは肩にかかるくらい。顔はまだ幼い感じで綺麗というよりはかわいいといった方が似つかわしい。体つきは発展途中のようで、少しの膨らみを見せる胸がなんともかわいらしく俺の目には映った。
「何しやがる!」
当然のように飛び蹴りをかました少女に向かって腰をさすりつつトシが少女に吠える。
「あははー。痛かった?」
そんな様子のトシを見てその少女は笑いながらからかい要素半分以上で心配をする。いや、もはや心配などしていないかもしれないが……
「当たり前だ!」
「そっかー。ごみんね?」
喰ってかかるトシに全く動じる様子もなく軽く謝る。
「ねぇ、トシ。この人は?」
俺はこの少女についてトシに質問をしてみた。
「ああ、こいつはだな……」
「初音朱里。それがうちの名前。こいつとは一応なぜか分からんけど幼馴染。よろしくねー、えっとぉ……」
「楠木哲也。よろしくね、初音さん」
「こちらこそ、楠木君」
起き上がりながら少女の紹介をしようとしたトシをその少女――初音さんは横取りをするように俺に向かって自己紹介をしてきた。その後俺の名前を聞こうとする様子が見て取れたので、俺は自分の紹介を軽くした
「それにしても、見事な飛び蹴りだったね……」
「あ、うち褒められちゃった? うれしいね~」
褒めているというか、軽く呆れてるんですけどね。
「誰も褒めてねぇよ! アホか!? ってアホだったな……」
トシと意見があった。しかしつっこみの切れが良い。
「あれ~トシくん。もう一発くらいたいのかな~?」
「すいませんでしたもう言いません」
面白おかしいコントを見て思わず頬が緩るむ。
「そろそろ行かないか?」
しかしこのままだと結構な長さのコントになりそう気がしたので、俺は二人にそう促し、
「おう、行くか」「そうだね、行こっか」
二人はそれに頷いた。
第一体育館は昨日と同じように綺麗に椅子が並んでいた。
違うのはその椅子の数が前の三倍ということだ。こうやって見ると相当の生徒の数だということが分かる。
まだ時間は早いので生徒の数はそこまで多くない。
「どこ座る?」
俺は二人に問いかける。
「お、あそこ空いてるぜ」
「じゃ、そこに座ろっか」
トシは座っている人の姿を見てそう言い、朱里もそれに同意した。
余談だが、この学園は一・二・三年それぞれ学年によって制服についている胸のバッチの色が違う。一年が青、二年が赤、三年が白である。
そうして俺たち前から三列目というかなり前の方の席に三人で並んで座った。
しばらく時間が経って、歓迎会が始まる時間帯になった。
そこで渋い男の教頭の声が第一体育館に響く。
「後数分で歓迎会を始めたいと思います。生徒は静かに空いている席についてください。繰り返します……」
生徒たちは教頭からの指示に反応して次々に席についていく。
「歓迎会ってなにするんだろうね。うち、楽しみでしょーがない」
朱里はこういう面白いことがありそうな行事は好きなようで、喜々な表情をしながら言ってきた。
「俺が知るか。無駄にテンション高いしうるさい。静かにしてろ」
今にも騒ぎそうな朱里に対して、慣れた調子でトシが朱里を黙らせようとする。
「へぇ~、うちに対してそういう口きくんだ。さっきの出来事を反省できてないようだね。後でどうなることやら」
だが逆効果なようで、言われた本人は気にもせずに、トシに対してそう言った。朱里の言葉にトシが冷や汗をかいていたようだったが、どうせいつものことだろうと思い特に気にすることもしなかった。
「それでは今から、歓迎会を始めます」
それから特に何か起こることもなく、教頭が歓迎会の開始を告げた。