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Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
79/128

第七十九話 評価

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

────side風切愛美────


「雅人くんの出番まだかな……」

「予選での出番は三レースでしょ」

「分かってるよ、それくらい。ただ待ちきれないだけ」


 楽しみにしていた新人戦のレースが今始まろうとしている。どうしてかと言ったら私が注目していた選手が出場するからだ。

 周りの女子が話している通り弟、ではない。

 家の関係上、弟の試合に全く興味がないというわけではないけど、私が興味を持っているのは、今から出番の楠木哲也という第六学園の男子生徒だ。

 まだその力を確認した訳ではないが、あの子には何か惹かれるものを感じたからだ……別に変な感情を持っているわけではないんだけど、とにかくそんな風に感じたのだ。


 選手がスタートラインに並ぶ。後はスタートの合図となるランプの点滅を待つのみ。

 一つ目、二つ目と灯っていき、そして最後のランプが光った瞬間、


「えっ!」

「はやっ!」

「何あれ!? 強化魔法?」


 周りからそんな声が聞こえてきた。

 その声につられて、雅人が出ていないがためによそ見をしていた人も、それを見てまた声を上げ驚愕する。

 その存在を知らない人はそんな感想を抱いて当然だろうと思う。あのスピードの正体は恐らく、というか確実に『氣』による強化だろう。

 まさか哲也くんにあんな隠し技があったとは……素直に驚きを感じる。それと同時に自分が彼に目が行っていた理由を悟ったような気がした。みんなからよく人を見る目があるねって言われることがあるけど、今回はそれを自分自身に言ってやりたい気分だ。

 もしこのレースを雅人が見ているなら、今頃何かと嘆いていることだろう。


「見てよ、愛美ちゃん。全く魔法が当たってないよ!」

「あんなの反則でしょ!」


 周りの人が言うように、氣は習得してしまえば反則と言える代物。それ故に習得には膨大な時間と才能、そして根性が必要だ、と言われている。それを私たちと変わらない歳でもう身につけているなんて、本当にすごい。

 正面から来た火の魔法もスピードを殺さずに余裕で避けた。完璧に使いこなしていることが目に見えて分かる。


「うわぁ……単独トップじゃん」

「圧倒的だね……」

「雅人くん、あの人に勝てるかな……」

「どう思う、愛美ちゃん?」


 でもね哲也くん。確かに圧倒的だし、すごいと思うけど、


「多分勝てると思うよ」


 それが君の本気だったら、間違いなくうちの弟が勝つよ。

 




────side楠木哲也────



「なぁ、一ついいか?」


 控室に戻ってきてダメージを受けた背中をさすりながら一息ついた頃、トシは真剣な眼差しを俺に向けてきた。


「どうした、トシ」

「哲也のその力を使ってのスピードを見てから思ってたんだけどさ、ぶっちゃけた話、俺って必要だったか?」


 どうやらトシは出番がなかったことが少し悲しかったようだ。

 俺はそんなトシに正直なことを告げてやる。


「……予選のレースでは必要はなかったな」

「本当にぶっちゃけたよ……こういうときって何かしらにこぎつけてでも、慰めるもんじゃないのか?」

「トシがいたおかげで、緊張がほぐれた」

「棒読みだし、緊張してる様子全くなかったし、逆に俺がほぐされたぐらいだし。てか最初に必要なかったって言ってる時点で遅いし!」


 結構な勢いでつっこまれたことで軽く身を引くが、その内容の一部に俺は少し首を傾げる。


「あれ? からかってたのは緊張をほぐすためって分かってたのか?」

「……なんとなくだけどな」


 自分自身ではなかなかに上手く話を持っていったつもりだったが……俺もまだまだだな。


「まぁ、そんなことより」

「そんなことじゃねーよ! 必要じゃないって言われたんだぞ!? 面と向かって言われると結構ショックなんだぞ!」

「まぁ、落ちつけ」


 言いたいことを言いたいだけ言って、暴れる寸前の馬のようにふーふーと呼吸を荒げているトシに、俺は宥めるように声をかけてから続きを話す。


「予選ではって言っただろ。本戦ではあの風切が出てくるんだぞ。たぶんそこでお前の力は必要になると思う」

「本当か? 予選じゃあ全力でやってなかったのにあんなに差がついてたんだぜ。本戦もお前一人でどうにかなるんじゃないのか?」


 トシが言うように俺は予選を全力でこなしていない。

 ちなみにトシが俺が全力を出していないことが分かるのは、俺の全力を目の前で一度見せたことがあるからだ。


「おいおい、忘れたのか? 決勝の相手はあの六家の風切だぞ?」

「知ってるぞ。それが何かあんのか?」


 六家が相手だと分かった上で、俺が勝てると確信したような口を叩くのか……

 俺もずいぶん過大評価されているもんだな。


「そこは何かあると言ってくれ……」

「どうしてだ?」

「出番がなくて空しかったんじゃないのか?」

「空しいというか、まぁ確かに空しかったんだけど、どちらかというと何もしなかったことを馬鹿にされたくないからだな」

「……なるほど。やっぱり朱里なんだな」


 俺がうんうんと一人で頷いているとトシまずったとばかりに焦ったようにして俺に詰めかかってくる。


「違うぞ! マジで違うから!」

「はいはい」

「お前……絶対信じてないよな?」


 どうだろうねと表現するように、肩をすくめてみせる。


「とにかく、決勝のレースはトシの協力が必要になるから、よろしく頼むぜ」

「そう言うことなら任せとけ!」


 ドンと自分の胸を叩いてそう宣言するトシを見て、ホント単純だなと思いつつ、俺は決勝のレースの作戦をトシに伝えた。


 

もう一話くらいはこのペースで更新できそうです。

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