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Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
78/128

第七十八話 緊張

開いていただきありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。


美佳の出番は飛ばさしてもらいました。

少し日が経ってますので注意。

「新人戦も六家が独占か……」

「六家の戦いって迫力があってすごいんだけど、結果が判っちゃうって言う意味では、なんかつまんないところがあるよね」

「たまーに展開的にいい勝負だと思ってわくわくしても、結局は六家が勝つから冷めちゃうし」

「もう戦う前から六家が出てたら一位にしちゃっていいんじゃないの?」

「てか六家が負けるって言う展開も見てみたいもんだよな……」


 愚痴のような言葉の応酬が傍から聞こえてくる。

 試合を目前にしている俺としては、闘志を燃やしたくなるような言葉だった。

 

 今日は大会六日目であり、新人戦三日目。

 つまりはレースがある日であり、俺の出番でもある。

 今のところの新人戦の結果を振りかえると、聞こえてきた会話で分かるところもあるだろうが、ブレイクボール女子は圧倒的な力の差を見せつけた美佳が、予選をパーフェクトという結果で抜け、トーナメントも相手を全く寄せ付けない魔法の早さと精度で、圧巻の優勝だった。

 ちなみにブレイクボールの男子には六家の一人である葵が出場していた。美佳ほどの火力がないので迫力はそこまでないが、六家の看板に相応した、有り余るほどの精度の良さと無駄のない魔法の構築力で、優勝を収めていた。

 そんな背景があっての今日のレース。

 前評判からすでに圧倒的な支持がある六家の風切雅人の優勝は、確定事項的な扱いになっていた。


「……押し黙っちゃってるけど、緊張のせい? 二日、三日前から緊張してるって言ってたけど」

「いや、俺はそうでもないけどな」

「俺は?」

「どっちかと言ったらあっちの方がすごいと思うぞ」


 俺が親指を後ろに向け、それに合わせて美佳が視線を移す。そこからは慌てたようにしながら走ってきたトシの姿があった。


「わりぃ、待たせたか? なんかもう落ち付かなくてな。トイレに行ってたわ。てかもう少しで始まるんだよな。そう思うともう、あーやべー! なんか腹痛くなってきた!」

「とりあえず落ち着け。その痛みは気のせいだ」


 俺がそう声をかけてやると、それはそうだけどよーと落ち付かないトシ。


「大丈夫よトシくん。いつも通りにやれば勝てるから!」


 その姿を見て、さっきの俺の言葉に納得したように頷いていた美佳が、声をかけたが逆効果だった。


「わりぃけどもう一回行ってくる! もしだったら先行ってていいから!」


 そう言って立ち去っていく姿を見て、俺と美佳は共に呆れた笑いをこぼしてしまっていた。



―――――――― 



 トシが用を足している間に、競技の時間が近くなってきたので、美佳は観客席で応援してるからねと言ってその場を去っていった。

 近くなってきたと言ってもそこまで慌てるほどの時間ではない。と思っていたのだが、トシが思っていた以上に遅れてきてしまったせいで、結局駆け足でやってくる結果となってしまった。

 時期が時期だけに、控室まで駆け足で行くというそれだけの運動で汗が出てきた。控室の中は結構涼しいということもあり、汗を流しながらやってきた俺とトシは嫌に目立っていた。

 特にそれを気にすることなく、服を前後に動かして涼しい風を身体に浴びせながら、アナウンスが掛かるのを待つ。


「第一試合の選手は入口に集合してください」


 競技の委員会と思われる人から声がかけられた。

 集中していたせいなのか、傍からの声によって選手の何人かはビクッと反応していた。


「ほら行くぞ、トシ」

「あ、ああ」


 挙動不審気味のトシに声をかけると、曖昧な返事だけが返ってきた。

 なんというかかなり緊張しているのが見て取れる。

 ちょっと呆れたような様子を作って俺はトシに続けて言葉を掛ける。


「全く、無理に格好つける必要はないんだからな。いくら朱里に良い報告したいからって」

「……なんでそこで朱里が出てくる」

「いやーなんとなく?」

「おい、哲也?」

「わるいわるい、なんとなくからかいたくなっただけだ」


 俺が平然と言いきると、トシは呆気にとられたようにした後、すぐにはぁ……と一つ大きなため息をついた。


「俺と朱里はそんなんじゃないからな?」

「念を押さなくても分かってるって。今さっき言ったけど、からかいたくなっただけだ」

「なら良いんだけどな……」

「よし、行こうぜ!」


 うまくいくかどうか微妙なところだったが、トシの緊張がある程度解けたことを確認できたので、俺はそう言って外に出るように促した。


『これより、新人戦、バトルレースを開会します。予選第一試合は――』


 丁度入口に着くころに、お決まりの文句となっているアナウンスが掛かり、選手がぞろぞろと自分の場に向かって歩き出していく。


「それじゃ、勝ちに行こうぜ!」

「おう!」



――――――――



「なんというか、観客席と違って殺伐としてるなー」


 俺が競技の場、スタートラインに着いて思ったことはこれだった。

 選手同士が無駄にピリピリしているのだ。

 トシの奴呑まれてないかな? なんて思って視線を向ければ、意外にも無事だった。

 無事どころか親指を立ててサムズアップをしてくる余裕まであるようだった。

 朱里の名前を出したのは当たりだったなと思い、内心で感謝をする。

 まぁ今回に限っていえばトシの出番はないだろうと思っている。

 この予選は余裕を持って勝つつもりではいるが、全力を出すつもりはない。

 正直言って緊張する要素はあまりない。どっちかと言えば他の人の試合を見てた方が緊張してたと思う。


『それでは配置についてください』


 走る人はスタートラインにきっちり並び、妨害する人も定位置に着く。


『バトルレース第一試合を、始めます』


 アナウンスと共に脇にあるランプが一つ、また一つと灯り始める。

 そしてランプがすべてともったと同時に、俺は体氣を使って強化された足で地面を蹴り駆け出した。

 コースはほぼ一直線。

 邪魔するものはない。

 身体を駆け巡っていく風が気持ちがいい。って邪魔するものがない? 何事もなく走れてる?

 駆け出して数秒。足を止めずに振り返ってみれば唖然とした面持ちの人たちが見て取れた。

 魔法は俺がコンマ数秒前にいたであろう場所を次々と通り過ぎていく。

 最初からゴールの近くにいた人が俺目がけて火の玉三つを放つが、特に問題もなく前に走る力をそのままに左右に上体を振り余裕を持ってかわす。

 少しやってしまった感がないわけではないが、俺は最後まで緩めずにぶっちぎりでゴールラインを通る。

 ふうと息をついて振り返ろうとした瞬間だった。


「危ない!」


 誰かしらからの叫びが聞こえたと思った頃には、俺の背中には衝撃が走っていた。

 ゴール直前で放たれていた魔法は、どうやらホーミング型の魔法だったらしい。

 そんなことを思いながら俺は成すすべもなくうつ伏せに、まるでヘッドスライディングのように倒れこんだ。

 俺はゴールした後に魔法を受けるという格好がつかない形で、予選を突破した。



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