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Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
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第七十七話 新人戦開始

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 タワーズナインの本選は六家のうちの一つである風切家の長女である、愛美さんが優勝するという前評判から異変がない形で終了した。

 ちなみに愛美さんと準決勝で対戦し破れてしまった夏目さんは、順位決定戦を危なげなく勝利し、三位という成績だった。

 結果的には全くもって悪くない順位なのだが、やはり愛美さんが二つの競技で優勝をしていることが大きいこともあり、現在の順位は第三学園がトップ、次いで俺達第六学園という形で収まっている。

 今のところの競技を振り返ってみると、六家が出ている競技は、優姉にしても愛美さんにしても、すべて六家が勝利している。やはり生まれ持った才能というのは大きいということを改めて思い知らされている感じがする。実際、通りすがりの観客から、そう言った声が耳に入ってきているからそう感じているのは俺だけではない。

 正直自分にとっては耳の痛くなる声だ。六家に生まれながら魔法の才能を持たない俺にとっては。 

 

「哲也、お茶いる?」

「あ、ああ。サンキュ」


 物思いにふけっていると、横から声を掛けられた。

 呼びかけた当人であろう美佳がお茶を差し出してきていたので、いつの間にか空になっていたコップを差し出し、お礼を言って注いでもらう。

 そこで、自分がどこにいるのかを思い出す。

 今回も夏目さんと美月さんを祝うという名目で優姉の部屋に招集をかけられたのだ。当然拒否権はなし。

 美佳は俺のを注いだ後、自分のにも注ぎ終えると俺の隣に腰を下ろした。


「どうしたの? なんか変な顔してたけど」

「変な顔ってひどくね……まぁいいや。実は日が近づくにつれて緊張してきてな」

「ふーん」


 どうでもよさげに美佳は頷いた。

 話題を振ったのはあっちのはずなのに。なんか理不尽。


「ま、そんなに気負う必要はないんじゃないの」

「負けてもしょうがないってことか?」

「そんな意味で言うわけないじゃない。哲也が本気を出してその通りの力を出せれば絶対に勝てるって思っているのよ」


 俺は美佳の言葉に思わず目をぱちくりさせてしまう。

 美佳が俺の行う競技でのとある要素を忘れているのではないかと思った。

 絶対的な壁の存在のことだ。


「……風切が出ることを忘れてるわけじゃないよな?」

「そりゃあね。それでも私は勝てると思ってる」

「本当か? 相手はあの六家だぞ」

「本当よ。六家だろうがなんだろうが哲也があいつに負けるとは思ってない。というよりはそう思いたい。努力している奴をバカにするやつを私は許せないから」


 この言葉には美佳自身がそう思っている節もあるのだろうが、俺を慰めるための要素がかなり入っているようにも感じた。


 美佳、それと優姉は俺が出ていくまでの間ずっと毎日俺のことを見ていてくれた。

 検定によって自分の魔力が『火神家』というよりは『六家』として圧倒的に低かった俺は、何か別の要素があるのではないかと信じ続け、ゴールが見えない、いや、スタートすらまともに切れない努力を続けていた。魔法に関することなら何でも試し、失敗を続ける日々。

 美佳と優姉はそんな俺の日々を間近で観続けていた。観続けていてくれた。努力が必ず実ると信じて。 


「……ありがとな」 

「え?」


 だから俺はいつの間に囁くように口から言葉が零れおちていたようだ。

 美佳の何を言ったの? と訴えんばかりの疑問符のついた声を聞いて俺はハッとして、慌てて言葉を返す。


「いや、なんというか……元気が出たよ」


 俺がそう言うと美佳は照れくさかったのか、視線を彷徨わせてから言った。


「そんな状態のまま競技に出てダメになったら困るからね!」


 力強く言って見せた美佳だったが、その表情から照れ隠しというのが見え見えだったので、俺は思わず吹き出してしまった。


「何よ。ひどいんじゃない? いきなり笑いだすなんて。人が折角……」

「ごめんごめん。そうだよな。競技は大切だもんな」

「そ、そうよ!  競技は大切なのよ! だから負けるなんて許さないからね」

「分かってるよ。絶対に勝つさ。そういう美佳も負けるなよ」

「当然! だから約束よ。お互いの出る競技は優勝するって」

「分かった約束する」


 俺と美佳との間になんとも形容しがたい微妙な沈黙が流れ出した瞬間だった。


「――そこで指きりとかしないの?」


 背後から聞こえてきた声に反応して振り返ると、いつからそこにいたのか美月さんが後ろに立っていた。

 唖然とする俺たちに、美月さんは面白いものを見たとばかりにニヤニヤしていた。


「いやー、なんか見てて羨ましかったね! 恋人同士でやりくりしそうな言葉の応酬を次々とこなしていき」

「こ、こいびと!?」

「そしてお互いに約束を交わした後は見つめ合い」

「見つめ合ってはなかったかと思いますけど……」

「そして最後には!」

「変な事実まで作ろうとしないでください」


 俺がそう言いながら冷たい視線を送ると、美月さんはコホンとわざとらしく咳払いをした。


「……これは失礼。ちょっと暴走しちゃったかな」

「ちょっとどころではないような気がしますが。それでいつから俺らの後ろに?」

「さぁねー、面白いものを見さしてもらったよ、とだけ言っておこうかな」

「うぅ……」

「ま、誰にも言わないから、そこに関しては安心していいよ」


 そう言い残して、美月さんは軽やかな足取りで優姉たちの輪に加わっていった。


「いつからいたと思う?」

「分かるわけないじゃない。全く気付かなかったよ」

「だよな……てかさ、まさかだけど、魔法とか使ってた……?」

「……あり得るかも」


 お互いに複雑な心境のまま今日の夜は過ぎていった。

   


――――――――




 大会四日目。新人戦一日目。

 新人戦だからと言って大会のボルテージは変わらない。

 本戦の試合と比べれば荒削りな部分が多いところもあるが、この部門で出る人たちは全員一年生に属している。つまり大きな成長が期待できるわけだ。今は芽が出ているだけの人たちも、いつかは花を咲かせるということ。人によっては本戦以上に熱い視線を向けているらしい。

 それ以前に本戦と比べて、というだけであって、決してレベルが低いわけではない。

 ただでさえ毎年盛り上がりを見せるのに、今年に限っていえば、注目を集めるに値する六家の人物が三人もいるのだ。盛り下がるわけがない。むしろ上昇の傾向を見せている。


『これより、ブレイクボール新人戦、予選会を行います』


 会場が本戦に勝るとも劣らない熱気に包まれる中、アナウンスの声がかかった。


『最初に競技を行うのは、第六学園、火神美佳』


 アナウンスで名前が呼ばれると、赤い髪を風に揺らせながら、美佳は入場してきた。

 いっそう大きな声援が会場を支配する。

 身近にいると忘れそうにもなるが、やはりというか六家である美佳はかなり有名だということが分かる。

 さらにいえばあのルックスでも目を惹く優姉の妹だけあって、文句なしの美少女である。声援が凄まじいのも無理がないだろう。

 そんな声援を受けながらも、美佳は競技の場へとつき、調子を確かめるように平然と息をついている。

 こういうところも優姉と同様に場数を感じさせる。


『それでは、開始します』


 そして新人戦の幕が開けた。

遅くなってすいません……

しばらくはこんな更新速度が続くと思ってください。

小説を書く時間が短くなったこともあるのですが、内容は考えてあるのに、うまく文字で表現できなくて、筆が進まないというのが大きな要因です。要は自分の能力不足です。本当に申し訳ないです。


ただ、どんなに更新が遅かったとしてもこの小説を放棄する気は決してないので、そこは安心してください。


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