第七十五話 幻術
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愛美さんの試合の盛り上がりをそのままに、行われた美月さんの試合。愛美さんのように飛びぬけた人がいなかったので混戦になったが、妨害役である美月さんの好プレーにより第六学園は一位でゴールした。
「ナイスだったわよ、美月!」
「最後のプレーは流石でした」
「優奈さん、涼香さん、ありがとうございます」
「予選突破、おめでとうございます」
「美月ちゃん、おめでとう」
「決勝も頑張ってくださいね」
「みんな。うん、ありがと」
予選の三試合が終了した後、決勝までの休憩時間を利用して美月さんの所に顔を出した生徒会の面々は、美月さんのことを称えるように声をかけていく。それを受けた美月さんは照れたように笑みを浮かべる。だがここで浮かれるわけにはいかない。ここを勝ったというこは、決勝トーナメントであれだけ圧倒的に勝利した愛美さんと戦うことになるのだから。
「まぁ、称えるのもこれくらいにして、決勝の方はどう? 正直なところいけそうなの?」
誰もが思ってたこだろうとを代表して、優姉は美月さんに尋ねる。
その言葉に美月さんは悩ましげに「そうですね……」と首を傾ける。
「正直なところキツいと思いますね。ぶっちゃけ予選の相手ですらギリギリでしたし」
弱音にも聞こえることを告げ、空気が暗くなりかけたとき、美月さんは「でも」と言って言葉を続ける、
「上手くいくとは思いませんが、一つやってみたいと思っていることはありますよ」
その一言は、俺らの期待をかけさせるだけの力強さがあった。
「あ、期待をし過ぎるのはやめてくださいね。プレッシャーで百花みたいになっちゃいますから」
「美月ちゃん、ひどいよ……」
いつも通りの美月さんに、俺はどこか安心感を覚えていた。
☆ ☆ ☆
『これより、バトルレースの決勝を行います。選手は入場してください』
選手が会場に入ると、会場の熱気が一気に上がる。
「美月ちゃん、何かやる気みたいだったけど、どういうことをする気か知ってる?」
「いや、ちょっとわかんないです」
実際は、なんとなくではあるが予測はついている。それが顔に出ていたのか、優姉は訝しげな視線を俺に送ってきていた。
「何か隠してない?」
「いや、特に何も」
そう尋ねてきた優姉に、出来るだけのポーカーフェイスで俺は答える。だが、優姉の視線の鋭さは変わることはない。
「二人きりで、秘密の対談とか?」
「してないです」
「二人きりで、いけないことも?」
「してないです」
なぜ優姉はそう言う方向に話のベクトルを持って行こうとするのだろうか?
「二人きりで、ヒミツの特訓とか?」
「……してないです」
妙に的を射ているため、答えるのに一瞬詰まってしまった。そんな一瞬を優姉が見逃すはずはなく、目を細めて俺を見てくる。
「ふーん……二人ってそう言う仲なんだ~」
これから始まるだろう嫌みったらしい言葉が続くであろうと思い、俺が無言を貫こうと決めたときアナウンスがかかった。
『選手は配置についてください』
「あ、まぁいいわ。詮索はまた後でにして、今は応援に集中しましょう」
俺はその一言にホッとしながら、競技の場に目を移した。
────side美月────
なーんか妙に期待を受けている気がするけど、まぁ頑張っちゃおうかな。
そう思って私は今日の一番の敵である風切愛美に目を向ける。その立ち姿は憎いくらいに堂々としていて、まるで自分に負ける要素がないとでも伝えるかのようだった。
そしてもう一人。私は彼女のパートナーにも目を向ける。かわいい顔をしているがかなりのやり手。
今回は妨害役同士であるので戦うことはないけど、注意をする事に越したことはない。
そんな私の視線に気づいたのか、首を可愛らしく傾ける。うわー、抱きしめたくなるよ!
『バトルレース、決勝戦を開始します』
開始のアナウンスがかけられたので、すぐに切り替える。
ランプが点滅し始め、ラインに並んでいる走る側の人たちは構えをとっていた。
五つめのランプが点滅し、競技がスタートする。
私のパートナーは三位。悪くないスタート。風切愛美は相変わらずの最下位。
他の妨害役に風切愛美の妨害は任せて、私は仕掛けを開始する。
地面を小さく隆起させ、凸を作り先頭を走っていた第二学園の人を躓かせる。が躓いただけでこけるまではいたらない。それでも時間のロスを生み、何人かに抜かれ、私のパートナーは二位に浮上する。
それを確認した後、次の工程に移るために詠唱を始める。
私のその詠唱がもう少しで完成するかというとき、強烈な魔力の気配を感じた。
やはりというか、風切愛美のパートナーのかわいい子から。
そして、それが発動し、突風が巻き起こる。
それと同時に、風切愛美が急激な加速を始める。
次々と抜こうとする彼女。そこで私は魔法を放つ。
さっきの魔法とは比べものにならない、四メートル程の土の壁を作り出す。
その壁を目の前にしたとき、彼女は風を止めさせ加速を緩めて、壁の前で足を止める。
風切愛美は自分自身で上昇気流を作り出し、それに乗って壁を乗り越える。
その行動が私の台本通りとは知らずに。
彼女が乗り越える間に、私のパートナーは壁をすり抜け、一位に躍り出る。
風切愛美の愕然とした表情が目に映った。
私が作り出したのは闇の幻術魔法。
観客からは風切愛美が何もないところで足を止め、いきなり上に上昇しているように見えていることだろう。
まさか本当に上手くいくとは思わなかった。
トップを走る私のパートナー。
優勝が目に見えてきたとき、再び急加速を見せる風切愛美。
恐らく自分自身の風を使っての加速。
その表情は必死さを顕著に表していた。
結局、後少しでゴールというところで抜かれてしまい、私達は二位でゴールした。
ちょっと遅いですが明けましておめでとうございます。
これからもziureの作品をお願いします。
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