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Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
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第七十四話 バトルレース

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 三日目の朝。

 今日はタワーズナインの準決勝、決勝とバトルレースが全試合行われる。

 日程としては先にバトルレースが行われることになっている。

 俺らの学園からは美月さんが出ることになっているはずだ。他に知っていると言ったら風切家の愛美さんが出ることくらいだろうか。考えてみれば愛美さんはタワーズナインも出ることになっているはずなので、今日は丸一日動くことになる。普通の人からしたらかなりきついスケジュールと言えるだろうが、六家の風切家である愛美さんならきっと余裕でこなしてくるだろう。

 それにこれは優姉から聞いたことだが、このバトルレースという競技は、風切家のためにあるような競技と言っていた。これもまた俺が愛美さんが余裕を持ってこなすと予測している理由でもある。


 今はホテルでの朝食の真っ最中。

 大会の真っただ中ということもあり朝食の時間は、作戦会議をするとまではいかなかったが、話は自然と大会の話になっている。

 今日ある準決勝にある夏目さんと愛美さんの話でいけるかどうかとか、今日あるレースの話とか。


「今日のバトルレースは良く見ておいてね。絶対参考になるから」

「まぁ、元々そのつもりですけど……」


 優姉は俺に忠告するようにそう言ってきた。

 先輩達から少しはどういうものか教えられてるとはいえ、生で見れる機会はこれっきりしかないため、元々試合は置く見て置く予定だったが、まるで念を押すような形で言ってきた優姉に少し疑問を抱いていた。


「曖昧な頷き方ね……言いたいこと分かってるかなぁ? 特に見てほしいのは風切家の愛美の試合よ」


 風切家を妙に強調しているところから、なんとなく言いたいことが分かった気がした。


「そういえば弟もバトルレースに出るんでしたっけ?」

「そうよ。たぶん微妙に違うところはあるでしょうけど、恐らく二人とも同じ戦い方をすると思うわ。あれの対処の仕方を少しでも考えるためには、絶対に生で見ておいた方がいいわ」


 風切家しかできない何か特別な技ということだろうか? そこまで優姉が言うところを見て、俺はやや気後れしながらも、然りと頷いた。



――――――――



『これより、バトルレースを開会します』


 今日はレース専用の会場にやってきていた。

 結構距離のある直線コースのため、会場の作りもかなり変わっていた。言うなればかなり長細い長方形の会場。

 まぁ会場が変わっても、熱気の凄まじさは全く変わらないが。


『予選第一試合は第一学園――』


 予選は各学園一組ずつ、計六組で予選が行われる。決勝に進めるのは二組。そして、それが計三回行われる。美月さんは二試合目に登場となっている。


『――第三学園、風切愛美、国崎仁美』


 本命の名前が呼ばれたことで、会場はさっきよりもひと回りくらい大きい歓声が送られていた。

 それだけではなく、いつもよりも野太い野郎の声が大きいような気がする。

 大体の方向を見てみると、その正体は第三高校の連中だった。

 タワーズナインの時よりも大きいところを考えると、愛美さんではなく、そのパートナーが影響していると予測できた。

 一試合目のメンバーの紹介が終わり、そのメンバーが入場してくる。

 そこを見ると愛美さんの姿と、その隣にいる可愛らしい女子生徒の姿が見て取れた。

 やはり予測通りパートナーの影響だったようだった。


『それでは配置についてください』


 アナウンスと共に走る人はスタート地点のライン上に六人が並び、妨害する人はエリアとなっている脇のゾーンに向かっていった。

 協議をする全員が場にとどまったことを確認したようで、アナウンスがかけられる。


『バトルレース第一試合を、始めます』


 そのアナウンスが終わると、選手の近くにあった五つのランプのうちの一つが灯る。二つ目、三つ目、四つ目、そして、五つ目が光った瞬間、レースは開始された。

 同時に走りだす選手たち。だが五人のうち一人だけ明らかに遅れている選手がいた。

 それは愛美さんだった。

 だが焦っている様子は一つもなく、逆に何かを待っているかのように薄っすらとした笑みを浮かべているようにも見える。それよりも前にいる五人の方が焦っているように見えるのはなぜだろうか。

 まるで一匹の狼に逃げ惑う草食動物のようだ。

 さらに周りを見てみれば、妨害役の人は一番遅れているはずの愛美さんのみに魔法を集中してはなっていた。

 魔法が愛美さんにぶつかろうかという時、愛美さんは何かのエンジンを手に入れたかのように、急加速を始めた。

 魔法は愛美さんがこのまま走っていたらぶつかっていただろう場所を通り過ぎ、接触し爆発を起こす。

 愛美さんがいる場所は、すでに全員を追い越して一位のポジションだった。

 周りを観察すれば、愛美さん以外の全員が背中に何か強い衝撃を受けたかのようにうつぶせで倒れていた。その倒れている人たちの服を確認して俺はその正体が分かった。それは風だ。

 強烈な風を背中に受けて倒れたのだ。

 ただ愛美さんを除いて。

 愛美さんを見ればその強烈な風に気持ちよさそうに乗って、他の人たちが可哀そうになるくらい、ぶっちぎりでゴールをかけぬけた。


「圧倒的ですね……」

 

 規定として妨害側は大きな魔法を放ってはいけないということはない。

 だがそれをする選手はこれまでほとんどいなかった。

 理由としては自分の仲間も巻き込まれる可能性、つまりリスクが高すぎるのだ。

 しかし愛美さんのその方法は完全にその常識を覆していた。

 まさに攻防一体の戦術だ。


「彼女は、というより風切家は、かなり早い時期から風に慣らされるらしいのよ。親たちから訓練って事でね。その結果風上ならさっきのように風に乗り、それ以外ならば風を切るすべがあるそうよ。まさに『風切』だけにね。だから風魔法ならば彼女らの予想を超えない限り、彼女らはダメージを受けることはない」


 彼女らの予想を超える。それはつまり、六家を超えた風魔法ということではないのだろうか? 

 それは風魔法が相手ならば無敵といえるだろう。

 

「だから弟の方も当然あれをやってくると思うわ。そういうことだから頑張って対策を練ってね」

「たぶん、いけると思いますよ。あれと同じ戦法だったら」

「えっ?」


 優姉の言葉に俺は強く頷いた。 

 その言葉に優姉は意外そうに声を上げる。

 俺もこういう正面からの魔法の対策ならちゃんとある。俺だって伊達に修行を積んじゃいない。

 これは『空氣』の力を試すいい機会でもある。

 俺はそんな風に考えていた。



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