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Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
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第六十九話 タワーズナイン

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

「さすがは六家だな……」

「可愛くて、綺麗で、実力もあるとか……」

「やっぱり今年のブレイクボールも第六か」


 優姉が競技を終えて退場すると会場のざわつきはすごいものになっていた。

 

「パーフェクトは逃したけど、スゴかったな」

「そうだな。なんつうかレベルが違った。無駄が全く無いし……精度は完璧だし。とにかくスゴいとしか言えないわ」


 俺とトシがそんな風に感想を述べていると、いつの間にか戻った優姉が観客席にやって来た。

 俺の姿を見つけたからか、労いの言葉をかける人垣を抜けて一直線に向かってくる。


「お疲れ、会長」

「お疲れさまです」

「うん、ありがとう!」


 俺と美月さんの労いの言葉を受けて、爽やかな笑顔を浮かべる優姉。

 妬ましい視線が突き刺さっていることを感じたが、無視を決め込んでおく。生徒会に入ってから、こういう視線はもう慣れっこだしね。


「それにしても惜しかったですね。もう少しでパーフェクトだったのに」


 美月さんがそう言うと、優姉は、あはは……と乾いた笑いを浮かべる。


「ほんとにやっちゃったよ。最後の最後で気を抜いちゃったかな。ま、予選突破は確実だろうから良いけど」


 特に引きずっている様子もないので、明日のトーナメントもきっと、問題ないだろう。


「それにしてもあれだけ連続で魔法を使ってたのに、全く疲労を感じないですね」

「別にあれくらいなら問題ないよ。魔力は結構高い方だからね。それにできるだけ無駄はないようにしてるから」


 恐る恐るといった風にトシが思っていることを口にすると、優しく微笑みながら、優姉は答えた。

 トシは優姉の微笑みを真正面から受けたせいか、少し顔が赤くなっていた。

 

「軽く言いますけど、魔力にしても制御力にしても流石ですよね」

「一応得意分野ですから」


 美月さんが優姉の才能に呆れをなしながらそう言うと、優姉は胸を張ってそう言葉を返した。


『続いて、第六学園――』


「我が校の出番ね。話は一旦やめて、応援しましょ?」


 そう言って優姉は自分から声を出し始める。それに続いて、俺も声を出して自分の学園の応援に精を出した。



――――――――



 ブレイクボールの予選は、俺たち第六学園から優姉の他にもう一人良い結果を出して、計二人が予選を抜けた。ちなみに結果は、女子の方は第六学園以外に風切家の人が所属している第三学園が二人抜けて、それ以外は一人ずつが予選を抜けて、男子の方は第四と第五学園二人ずつ、他が一人ずつという風になった。先輩方が言うには「まぁ、妥当なところだろう」という感じだった。

 そして今、ブレイクボールの予選が終わったため、次の競技が始まろうとしているところだ。

 ブレイクボールに劣らない熱気を放っている会場。劣らないどころか、増しているかもしれない。応援しているだけのこちら側も、汗の量が半端ではない。立っているだけなのに、だらだらと垂れてくる。

 

『タワーズナイン、女子の一回戦を、始めたいと思います』


 ただひたすらに待っていたところで、ようやくアナウンスが入った。

 

『一回戦、第一試合は、第三学園、風切愛美。第五学園、金津鈴の試合です』


 そのアナウンスによって一気に盛り上がりを見せる会場。その中に二人の選手が入場する。

 第五の方はよく知らないが、第三の方はパーティーの時にあった、風切家の長女、真奈美さんだ。その表情はこういう場馴れを感じさせるものだった。

 二人の選手はそれぞれ自分のペースで階段を登り、各陣に配置された大きな柱九本――計十八本を挟んで、高さのある台に立ち、向かい合った。

 一方は緊張がにじみ出ていて、一方は余裕を感じさせる不敵な笑みを浮かべている。言わずもがな、後者が愛美さんだ。


『一回戦、第一試合――始めッ!』


 アナウンスの合図と同時に、両者は魔法の詠唱に入った。

 最初の一手が重要と言われるこの競技。

 先に動いたのは、愛美さん、ではなく第五学園の金津という人だった。

 愛美さん側に向かって大きな水の塊が飛んでいく。

 何かをする時間があったはずなのに、何もせずに無抵抗のまま、自陣の柱に水の塊がヒットする。かなりの威力だったのか、勢いよくその柱はバタンと倒れる。

 それを好機と見たのか、次々と水の塊が愛美さんの柱を襲う。

 でか過ぎる標的を逃す競技者な訳がなく、すべて柱にぶつけていく。三本目、四本目と倒れる柱。

 詠唱の早さをキープしつつ、威力もしっかりしている。

 もしかして、この第五のほうが選手が愛美さんよりこの競技では強いのか?

 脳裏に浮かんだその答えは、次の瞬間、覆させれた。

 荒れ狂う風。

 暴発した魔法が観客席に向かわないように、結界が張られているため、身で感じることはできないが、それを観たとき鳥肌が立ちそうだった。それくらい凄まじいものだった。

 それが現れた瞬間、相手はなにもできなくなった。

 いや、何もすることができなかった。

 気付けば、相手のすべての柱が別々の方向を向いて倒れていたのだから。

 これだけを見ると、大規模の魔法はこの競技に向いているのではないか? そう思う人が大半だろう思う。その通りである反面、規模が大きくなればなるほど、自陣の方にも被害が出ることが多い。事実、前の大会で両方全滅ということが起きている。余談だが、その時は勝者なしとなったが、その時から追加ルールで、そのようになった場合は、魔法を撃った方を敗者にするというのができた。

 要は大規模な魔法を使うにしても完璧な制御力が必要になるのだ。

 制御力というのは一朝一夕でつくわけはない。日頃の努力がなければ無理だ。

 その前に大きな魔法を使うには、もともとの才能も必要になってくる。

 才能と努力。

 それがなければ、この競技で大規模な魔法は使えない。

 逆にそれがあったからこそ、愛美さんはここで使えた。

 才能に溺れない、努力を欠かさない。まさに上に立つ者の鏡と言える人だと思った。


『勝者、風切愛美』


 アナウンスの声と共に沸く歓声に、応えるように手を上げるその姿は、俺には輝いているように見えた。



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