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Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
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第六十八話 ブレイクボール

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 開会式は何事もなく終了し、俺はトシと一緒に最初に行われる競技、的当てが行われる会場に向かっていた。


「なんというか、すごい人がいたもんだな」

「すごいつーか、めっちゃゴツかった……それになんか偉そうだし、怖いし」

「怖かったという部分では、激しく同意する」


 思わず冷や汗が出てきたくらいだし……


「さすがは六家の人ってところか」

「同じ六家でも子供とは纏っているオーラが違ったもんな。きっとあれは、何回も死線を潜ってると思う」

「確かに、言葉に説得力があったもんな」


 うんうんと独りでに頷くトシ。きっと今頭のなかで、その時のことを振り返ってみているのだろう。

 そんな風に話しているうちに、観客席にたどり着いていた。


「うわ、すげぇ熱気」

「観客の数、すごいな……」


 まだ競技が始まるまでに時間があるのにも関わらず、観客席はほとんど埋まっていたのだ。その観客数に、思わず圧倒されそうになった。

 よく見てみれば、学園の生徒たちの集まりもできていて、俺たち第六学園の集まりも見てとれたので、そこに向かうことにした。


 そこについて分かったのだが、どうやら、学園ごとの応援席として、それなりのスペースが儲けられているようだった。ちなみに、生徒たちは応援席以外の場所で観ても良いことになっているが、応援席の方が空いていることが多いため、ほとんどの生徒は応援席にいる。

 まだ空いていた席に、俺とトシは並んで席につく。


「お、哲也くん」


 やっと席について落ち着いたと思ったら、後ろから声をかけられる。

 誰だろうかと思いつつ席についたまま、体を捻って後ろを振り替えると、そこには美月さんがいた。視線をすこし横にずらしてみると、鷹已さんも見受けられた。

 とりあえず二人に向かってペコリとお辞儀をいれる。


「哲也くんも応援?」

「まぁ、そんなところですね。二人もですか?」

「もちろん。この競技には会長がでるからね。生徒会役員としては見逃せないよ! そうよね、百花?」

「うん……」


 そういえば、優姉って『的当て』に出場するんだったっけ? 

 すっかり忘れてた……

 

「それにしても、すごい人の数ですね。毎年こんなもんですか?」

「……会長が出場するときは、いつもこうだよ」

「六家としての、その実力を見に来る人も多いけど、そのルックスを見に来る人も少なくないからね。ま、開会式を経て分かってるかもだけど、元々の観客も多いんだけど」


 なるほど……確かに優姉ってきれいだからな。あの凛々しい姿を見に行きたくなるのも、男としてはよくわかる。

 観客席を見てみると、優姉の名前の『優奈』という文字が色鮮やかに書かれた布を掲げているファンと思わしき人が見受けられた。


『まもなく、ブレイクボールの予選を行います』


 どこからか流れたアナウンスの声に、会場が「わー!」と一気にわき出す。

 思わず顔をしかめたくなるような声の大きさだった。

 横を見れば先輩たちも歓声なのか分からない雄たけびのような声をあげていた。


『まずは女子の予選会を始めます』



――――――――




「思ってた以上に難しそうだし、きつそうだな、これ」


 一番最初に競技をこなした第三学園の生徒の様子を見た後、俺はそんな感想をこぼした。

 各辺に四つずつ、計十六個の発射台から発射される球は、結構な速さをもっていた。下手なやつなら、まず当たらないだろう、そんなスピード。発射する一秒前に、発射台についているランプが点滅するという補助が付いているとはいえ、十分な難易度を誇っていた。

 結果、最初に競技を行った子は、青二十五個、赤十五個、黄十個、最高点五十五点という中で、二十八点という記録だった。


「今の記録ってどんなもんなんですか?」

「はっきり言ってビミョー。たぶん予選落ちかな。せめて三十点は取らないと」


 どうやらあまり良い記録ではなかったようだ。

 よく観れば、トボトボと会場を後にしている選手が目に写った。

 もしかしたら、緊張でうまくいかなかったのかもしれない。

 普段ならばあり得ない観客の数、期待のこもった仲間からの眼差し。

 それによって生まれる緊張。

 乗り越えられない人にとっては、重荷にしかならない。


『続いて、第六学園、火神優奈』


 お、優姉の出番――


「うおおおお!」


 再び雄叫びのような声が……

 鼓膜破れそう……


 そんな凄まじい声が飛び交う中を、優姉は悠々とした感じで歩いていく。その表情からは余裕が伺えた。こういう風に注目されることには、きっと慣れているのだろう。

 六家は名前だけで注目を集めるのだから。

 観客からの視線を集めている優姉は正方形の中の中心で足を止めた。そして、落ち着いた雰囲気で、いつも通りに後ろで縛っている髪を左右に揺らしながら、発射台を見回す。

 さっきまでとは一転、静まり返った空気が流れ出す。どこからか息を呑む音が聞こえてきそうだ。

 

『それでは、開始します』 


 発射台に付いているライトが点滅した。

 きっちり一秒。球が発射した。

 斜め上に発射されたのは、青い球。

 何の迷いもなく発動された火の玉が、放物線を描こうとする青い球を的確に捉える。

 少し間が空き、さっきとは逆側の発射台のライトが点滅。

 次は赤い球が発射し、さっきと同じように火の玉がそれを捉える。

 空く間の感覚は違うが、それが二十球ほど続く中、優姉は得点となる青球十二個、赤球四個をすべて捉えていた。つまり現在のポイント数は二十点。

 しかし問題はこれから。

 優姉の右手側のライトが点滅する。そして、その発射台から球が発射される前に、優姉の背後の発射台のライトが点滅を開始する。

 そう、ここからはこのようにして連続で球が発射していくのだ。

 さっき競技を行った人はこの連続に放たれるところで慌ててしまい、精度が乱れだして、得点が伸びなかった。

 だが優姉は余裕だった。

 放たれた赤と青の球を何の問題もなく、火の玉が捉える。

 次は三連続。青、黄、青の順で放たれた球は、得点となる青球二つのみを撃つ。

 優姉はそれから順調にパーフェクトで球を破壊していく。

 迎えた最後は明らかに製作者からの悪意を感じるようなパーフェクト潰しと思われる五ヵ所同時の発射。

 優姉はそれを四個の火の玉で、五個すべてを破壊してしまった(・・・・)

 一個の火の玉で、たまたま重なった赤と黄の球を両方とも破壊してしまったのだ。

 会場から「あー」という残念がる声が聞こえてきた。

 優姉を見れば「やっちゃった」とでも言いたげな顔をしている。というか呟いていたかもしれない。距離があるため聞こえていないだけで。

 結果、優姉の得点は五十四点。

 パーフェクトを逃したとはいえ、十分すぎる高得点だった優姉は、この予選会をトップで通過した。

  

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