表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
66/128

第六十六話 興奮

開いていただきありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

――side風切愛美――



「どうして火神さんがあんなへんちくりんなやつと一緒にいるんだよ……くそ、ムカつくぜ……というより羨ましい。あいつを殴り飛ばして、俺が隣に……!」

「うるさいぞ、この馬鹿」


 さっきから、哲也くんを実に恨めしそうに見つめながら、ぶつぶつと呟いている雅人ばかに一発、脳天チョップをいれる。


「いってぇな! 暴力以外になんかないのかよ、このくそ姉貴」

「へぇ……よくもまぁ。いつの間に私に向かってそんなことを言えるようになったんだか」

「すいません、パーティーという場で美佳さんを見つけたことにより、興奮していたせいだと思います。ですから、許してください。お仕置きだけはやめてください」


 一丁前に生意気を言ってきたばかに、脅すように言い返すと、瞬く間に切り替わり、土下座して謝ってきた。

 そんな風になるなら、はじめから言うなってんだ。見てるこっちも恥ずかしくなる。それに周りの視線も集まっちゃってるし。


「またやってるよ……」

「実力はほんとすごいのに」

「それに比例するように馬鹿だよな、雅人って」

「誰だ! 今俺を馬鹿呼ばわりした奴は!」

「いちいち反応すんな、この馬鹿」

「おまえかぁ! ぐほぉ」


 とりあえず一撃いれて、大人しくさせる。

 気絶しているように見えるが……まぁ気にしなくていいか。どうせすぐに復活するだろうし。

 全く、いつからこんなにも馬鹿になったんだろうか? こいつは。同じ弟でも紫水のところの葵ちゃんみたいな弟がほしかったと心の底から思う。

 

「ああいう男もありかなとも思うけど」


 先程美佳ちゃんの隣にいた男子生徒を頭に浮かべながら一人呟く。 


「なあ、姉貴」

「なんだ?」


 いつの間にやら復活した、弟が呼びかけてきたので、弟の入れ替えについては一旦置いておいて、返事を返す。


「あいつが出る競技が何か分かるか?」

「私は知らんが、そうだな……」


 辺りを見回して、この手の情報は把握していると思われるあの子を探して見るが……あ、いたいた。


仁美ひとみ! 悪いけど、ちょっとこっち来てもらえる?」


 仁美、フルネームは国崎くにさき仁美。我が校の戦力の一人であり、情報屋としても名が通っている女の子。可愛らしい体つきで、小柄。黒い漆黒の髪を短く切っているショートカット。

 基本的に無口で必要最低限のことしかしゃべらない。

 少し近寄りがたい空気を纏っているが、そのかわいらしい容姿から男子生徒には人気がある。もちろん女子生徒からも。


「何が知りたいの?」


 仁美はこっちに来てすぐにそう聞いてくる。冷たく聞こえそうな声音だが、これがデフォルトだから、全く気にしない。


「第六のところの楠木哲也って子がどの競技に出るか分かる?」


 こめかみに指を当てて、考え出す仁美。一つ一つの仕草が一々可愛い。思わず抱き締めたくなる。


「……新人戦のレースと、対人」

「へぇ……」


 どうして、どうして、面白いこともあるものだ。

 まさか、この馬鹿と同じ競技に出るとは。

 

「完膚なきまでにやってやる。というか、潰す。あの顔を醜くしてやる。どんな手を使ってでもアイツにだけは勝つ。そして美佳さんと付き合う!」


 相変わらずのアホさ加減だ……


「ま、油断して足元救われるなよ。あの優奈さんが生徒会にいれる人材だ。何もないわけがない」

「油断なんてするわけがないだろ。なんせ俺の恋路がかかっているんだから。全力で勝ちに行く」


 勝っても負けてもどうせ付き合えるわけがないと思うけどな、という言葉は飲み込んでおく。なんにせよ、やる気を出してくれるのなら、なにも言わない。

 確かにこいつは馬鹿だが、実力は確かだ。

 哲也くんには気の毒だが、油断さえしなければ、こいつが負けることは恐らくないだろう。

 特にレースは、風切家のためにあるような競技だと思う程だ。


「なんか楽しそうだね、愛美」

「そうか? ま、確かに今回の大会の楽しみは増えたな」


 哲也くんの実力が如何程かはわからないが、先程口にした通り、優奈さんが選んだ人材だ。

 この馬鹿との対戦を期待するなと言う方が無理だ。

 

「他人のことを考えて楽しむのはいいけど、自分のこともしっかりしろよ」

「あんたに言われなくてもわかってるさ。自分のことはしっかりやるよ」


 そう答えつつも、興奮を押さえられない私がいた。



――side楠木哲也――



 学園長の挨拶とか、各学園の生徒会長の意気込みとか、そんなイベントも終演し、今日のパーティーは終わりとなった。

 このパーティーは疲れが溜まることばかりだった気がする。

 こういう人が多いところは、気を休めることができないために、居るだけでも疲れるのに、挨拶回りとかそういうこともしたせいだろう。人が多いところに慣れていないので余計にその色合いが濃い。

 まぁ、葵とか新谷とか友達と話せたのは楽しかったけど。

 別れ際には、お互いに戦うことになっても、手加減せずに全力でやり合おうということを話し合った。

 そんなこと言わなくても、負けるつもりなど更々ないので、最初から全力で行くつもりだったけど。

 後、どうせ当たるなら、決勝で戦いたいなぁとか思ったりもする。そう上手く行くとは、思ってないけど。

 でも当たったときのことを考えると……あー、今からでも興奮してくる!

 

 少し落ち着こう……


 それと気になるのは、風切だ。

 美佳が言うには、見た目に反して、相当やるそうだ。才能だけで言うなら、六家の中でもかなりのものらしい。ただ、明らかな天才肌であり、努力をするところはあまり見られなかったと言っていた。

 そういうタイプには負けたくないと心から思う。

 そんな感じで気合いをいれて、今日は眠りについた。

感想評価いただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ