第六十三話 競技
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「メンバーは今言った通りだ。紙にも書いてあったけど、文句は言うなよ。それと今呼ばれたメンバーは今日の放課後、生徒会室の隣にある講義室に集合するらしいから、忘れずに行けよ」
最後に「それじゃ、解散」と言って岡嶋先生は教室から出ていった。それと同時に教室の中は、一瞬のうちに騒がしくなった。
騒がしくなっている理由は、当然だが今のメンバー発表についてだ。
俺の隣の奴は選ばれて嬉しくてしょうがないようで、とても騒いでいた。ぶっちゃけうるさすぎてしょうがない。
少しの間は無視を決め込むことにした。
クラスのテンションがそれから下がらないまま、迎えた放課後。
「哲也、行こうぜ!」
願った通り選ばれて、嬉しくなってとてつもなく騒がしくしていた張本人が俺に声をかけてきた。
昼休みに、うるさすぎたことを反省させたので、今はすでに無視をやめている。テンションも朝と比べて少しは下げさせたから、もう問題はない。
「りょーかい。んじゃ、行こっか」
俺はトシの言葉に応え、席を立ち、一緒に講義室に向かう。
「あら? 哲也じゃない」
教室を出てすぐに、後ろから声をかけられた。振り向けばそこには、美佳が来ていた。
「美佳もこれから講義室か?」
「ええ、そうよ」
どうやら美佳も選ばれていたようだ。考えてみれば、六家の次女なわけだから、当然のことかもしれないが。
「朱里が一緒じゃないところを見ると、あいつは選ばれなかったのか?」
「残念ながら。まぁ、あの子が選ばれなかったのは、能力が低いからと言うより、彼女の得意魔法がこの競技大会にあんまり向いていないというところが大きいと思うけどね」
どんな競技があるかは知らないけど、どうやら補助魔法を使う人はあまり競技向きではないらしい。
「なんだ? やっぱりトシは朱里と一緒がよかったのか?」
「ぶっ――」
不意打ちの一言にトシは盛大に吹き出した。
「そ、そんなわけないに決まってるだろ! 誰があいつと一緒で喜ぶか!」
「そうなの?」
「そうです、そうに決まってます。あいつといるより火神さんといられる方が
百倍くらい嬉しいです」
「ふふ、ありがとね。でも、素直になることも時には必要よ?」
「そうだぜ、トシ。素直になったときには、もう手遅れかもしれない」
俺がそう言った直後、トシは「うがーー!」と叫びながら、先に向かって走り去っていった。
その様子を見送った後、俺と美佳はお互いに悪戯な表情で顔を見合わせたが、すぐに少しばかりやり過ぎたかなと反省し、駆け足でトシのことを追いかけた。
「もう知らん。信じられるのは己だけだ」
講義室に入ってから、謝り倒しているのだが、やはりやり過ぎたせいか、今回はなかなか許してもらえない。
ちなみに、今はすでにクラス順に並ばされているので、美佳は軽い謝罪をいれた後、自分の場所に並んだ。そういうわけで、一人でとにかく頭を下げている。
「本当に、マジでごめん。もうトシに向かってこういうこと言わないから」
「……絶対だな?」
「おう、絶対だ」
心のなかで『たぶんだけどね』と付け足しておく。
このネタでトシをいじるのは楽しいからね!
「……分かった。本当にもう二度と言うなよ」
「分かったって」
俺の内心を知らないトシから、ようやく許しをもらえた。
「それでは、これから魔法競技大会についての詳しい説明と、それに伴ってあなた方が出る競技の発表をしたいと思います」
気づかぬ間に、前に出ていた優姉が、全体に声をかける。
どうやらこれから説明が始まるようだ。
「まずは今から配る紙に目を通してください」
そう言いながら、腕に抱えていた紙の束を、一人一枚ずつ貰えるように配っていく。
「説明と言ってもこの紙に書いてある内容を話すだけですが、我慢して聞いてください」
優姉はそう言って苦笑いとも言える笑みを浮かべる。
「始めに日程についてですが、一日目に懇親会。これは顔合わせ的なものでもあります。二日目から八日目までは競技を行い、競技が終わる八日目の夜には後夜祭のパーティー。そしてその日はホテルに泊まり、九日目の朝に帰ることになっています」
結構長丁場だなと思いつつ、続きに耳を傾ける。
「競技の日程は、一日目に的当ての予選と棒倒しの二回戦まで。二日目は的当ての決勝トーナメントと一分魔法を全試合。三日目は棒倒しの準決勝から決勝とレースを全試合。四日目からは新人戦を七日目まで行います。競技の順番は本戦と一緒です。八日目は対人の予選、決勝。それと芸術を最後まで。そんな感じの日程となっています」
つまり俺ら一年生の出番は、四日目からというわけか……
その間暇すぎじゃないかと思ったが、口には出さないで、胸の中にしまっておく。
優姉は次に競技の説明に入った。
「行われる競技の順番で説明をしたいと思います」
競技の内容をそれぞれまとめると――
ブレイクボール。通称『的当て』
競技のエリアとなる、一辺二十メートルの正方形の辺のところから、ランダムで斜め上に放たれるボールを魔法で破壊する競技。色はそれぞれ、青、赤、黄があり、青が一ポイント、赤が二ポイント、黄がマイナス一ポイントとなっている。ボールの速度は遅いものから速いものまであって、合計で五十の球が放たれる。
各校三人ずつの出場。予選は一人で競技を行い、十八人を八人に数を絞る。
決勝はトーナメント制とし、二人で競技を行い、的を取り合う。
魔法の連続的な発動と正確性が求められる競技となっている。
ポイント配点は、一位から順に、百、七十、五十、三十。ベスト八にはそれぞれ十。
新人戦はこれの半分。
タワーズナイン『棒倒し』
自陣に置いてある高さ五メートルほどあるエリアに立ち、各陣に配置されている直径二メートル、高さは五メートルある競技特性の棒九本を、どんな方法でも良いから、先にすべて倒した方が勝ち。
少しの戦略と多量の魔力が必要となる競技。
各校三人ずつ、ただし去年の棒倒しの成績上位二校は二人とする。
最初からトーナメントで試合を行う。
得点配分は的当てと同じ。
バトルレース。通称は『レース』
一周二キロのコースを二周する競技。各校走る人、妨害する人、それぞれ一人ずつが参加する。
走る人は物理的な攻撃は無しだが、下級魔法による妨害はあり。また自分自身に魔法をかけるのはいくらでも可能。
妨害する人はその名の通り、魔法で妨害を行う。妨害する人同士での攻防は禁止。あくまでも走る人の妨害のみを行う。使えるのは下級魔法のみ。
各校三ペアずつの出場。各校一ペア、つまりは六ペアで予選を行い、上位二ペアが決勝に出場。
一位から順に、百、七十、五十、三十、二十、十。
新人戦はこれの半分。
インフェニットワン。通称『一分魔法』
十五メートルの距離をとってお互いに向かい合い、一分間とにかく魔法を打ち合う競技。競技者を覆うように特殊な壁が張られていて、その壁にダメージをたくさん与えた方が勝ち。
とにかく、火力がモノを言う、力任せな競技。
出場人数、得点配分は棒倒しと同じ。
マジックバトル。通称『対人』
男子専門競技。三対三で行われる、一種の模擬戦。魔法制限はなくて、物理的な攻撃もあり。特殊な紙が配られており(合宿の時に行った鬼ごっこの時に配られた紙と思ってくれればよい)一定以上のダメージを受けると、転移魔法が発動し場外に追いやられる。
チームでの戦術が大事とのこと。
くじで三校ずつに別れて、総当たりで試合を行い、予選での一位同士、二位同士、三位同士で試合を行う。
一位から順に百二十、百、八十、五十、四十、三十。
新人戦はこれの半分。
マジックザアート。通称『芸術』
女子専門競技。演技時間三分の間に、二人で色々魔法を組み合わせて、魅せる絵を創る競技。三分以内であるなら、何回でも魔法は使ってもよい。この競技は勝敗ではなく、審査員の評価でS~Eの六段階の評価で得点を分ける。
様々なアイディアとそれを実行できる魔法の制御力が重要となる。
Sから順に、百二十、百、八十、五十、四十、三十。
新人戦はこれの半分。
ついでのように、どの競技に出るか発表が行われた。
俺は、レース(トシとペアだった)と対人に出場するらしい。
……って俺二つも競技に出るの!?
競技の日程を少し変更しました。