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Dropbehind  作者: ziure
第三章 魔法大会編
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第六十二話 発表

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 今日は鍛練に夢中になったせいか、いつもよりも遅くなっての登校になった。とはいっても、いつもの時間が早いだけなので、遅刻という事態には陥ってはいない。

 普段よりも騒がしく感じる教室の中に、ガラガラと扉を横にスライドさせて入室する。


「お、哲也!」


 教室に入ると、扉が開く音に気付いてこちらを向いたトシが声をかけてきた。それにつられたのかは分からないが、クラスメイトから挨拶を受ける。

 俺はその挨拶に応えながら、トシの方に(正確には自分の席に向かってあるいているだけ。俺とトシは席が隣同士)歩み寄る。


「おはよ、トシ」

「おう!」


 気のせいかもしれないが、トシがいつもよりも興奮しているように見える。


「何かあったのか?」

「まぁ、見ての通りだな。お前も早く『あれ』見てこいよ」


 トシは前方にある黒板に貼ってある白い紙を指差して、そう言ってくる。『あれ』に何が書かれているのかは知らないが、とりあえず見てみよう。

 俺は鞄を机の上に置いてから、それを確認しにいく。



 

 ~第××回 王立魔法学園対抗魔法競技大会 選手について~


 毎年恒例、王立魔法学園対抗魔法競技大会の日が近づいてきました。それにつきまして、生徒会長と学園長で正式に話し合い、選手の選抜を行わせていただきました。

 選手の選抜は成績の良い、実力のある選手はもちろん選ばれていると思いますが、決して上から順に選んでいるわけではありません。競技の内容を確認し、この人ならばという人を選ぶようにしています。

 ですから『なんで俺が選ばれなくてあいつが選ばれているんだ?』と疑問を持つ生徒いるかもしれませんが、上記の通りですのでご了承ください。

 本日の朝に、各クラスの担当の先生から、連絡が入ります。




 なるほど。トシが妙に興奮していた理由はこれか……確かにこの紙を見れば、うずうずしたくなるだろう。

 クラスを見渡してみれば、ほとんどのやつがトシ同様に、興奮を押さえられずにいる。

 気持ちは分かるが、少しは落ち着けと思ってしまう。


「是非ともこの魔法競技大会には選手として出たいんだよ!」

「わかったから、少し落ち着け」


 目の前から迫るトシの迫力に、思うだけではなく、口にすることになった。あまり効果は得られなかったが。


「いや、哲也はわかってない。なぜ俺がここまで選手にこだわるのかを」

「普通に出たい、もしくはやりたいからじゃないのか? てかそれ以外に理由があるもんなのか?」

「確かにそれもある。同じ年代で力のある奴らと、どんな形であれ真剣勝負ができるのは自分の糧になるからな。だが、俺がほしいものは違うんだ。哲也、魔法競技大会が行われるのがいつかは知ってるよな?」

「当たり前だ。夏の長期休暇だろ」


 トシが投げ掛けてきた疑問を、何を今さらと思いながらも俺は答える。


「その通りだ。楽しい楽しい長期休暇の時期だ」

「そんな楽しみに思ってんなら、普通は出たくないと思うんじゃないか?」

「甘いな哲也。そんな長期休暇ならば、必ず出るものがあるだろう」

「……宿題か?」


 俺がそう言うと、トシは正解と言いたげに大きく頷いた。


「でも、宿題と魔法競技大会になんの関係があるんだ?」

「実はな、魔法競技大会に出ると、その宿題が免除されるんだよ」

「マジ!?」

「本気と書いてマジだ。まぁ、実際そうなるのにも、それなりの理由があるんだけどな」

「それなりの理由?」


 首をかしげて疑問符を浮かべる俺に、トシは説明を続けてくれる。


「この魔法競技大会は、どの学園もかなり本気らしくてな。それこそ大会が始まるまでずっと練習をしなくちゃいけないくらいに、勝ちにこだわるんだよ。要は『宿題を免除するから、マジで練習しろ』ってことだな」

「だけど、学園の事情なんて関係ねえ、とか言って真面目にやらないやつも出てくるんじゃないか?」


 俺の言葉に、トシはニヤリと笑みを見せてくる。


「それはないんだよなー」

「なんでだ?」

「自分が出場する競技で三位以内に入れれば、その学期の評定がかなり譲歩されるからだ」

「マジかよ……」


 俺はつい呆れてしまった。まさかそこまでするなんてと思ったからだ。学園長――舞さんも何を考えているのやら。聞いてみて、学園同士での賭けとか言われたら、どんな反応をすればいいのか困るので、あまり聞く気はないけど。


「改めてお前が、どうしてそんなに落ち着かないのかわかったよ……」

「そうか。ならいいんだ」


 新たな情報が満載の会話で驚きすぎて疲れている俺に対して、色々説明できて満足したのか、トシの顔はいつも以上に輝いていた。

 

「おらー、お前ら、席につけ。五秒以内につけなかったら、そいつの成績めちゃくちゃに落とすからなー」


 教室に入って早々、本当にこの人は教師なのだろうか? と思わせる台詞をやる気が全く感じられない声音で言う岡嶋先生。毎度のことながら、あきれてしまうが、現金なことに俺を含めたクラスの全員が、五秒以内に席についた。なにせ岡嶋先生なら本当にやりかねないということを、クラス全員がわかっているからね。

 そんな俺らの様子を見て、岡嶋先生は満足そうに笑顔を浮かべて、一人頷いている。


「さて、全員が席についてることだし、早速連絡をいくつかいれるぞ」


 そう言っていつものように連絡事項を口にしていく。

 クラスの大半が、それに対してもどかしそうにしているのは、ご愛敬と言うところだろう。


「んじゃ最後にこれについての連絡だ」


 岡嶋先生は前に貼ってある紙を指差してそう言うと、クラスの全員が次の一言に耳を傾ける。


「このクラスから出てもらうのは男子三人、女子三人、計六人だ」


 前置きのように言われたその言葉に、さまざまな呟きが漏れる。

 

「それじゃこれから発表するぞー」


 そんな呟きなど気にせず、岡嶋先生は選ばれた生徒の名前を告げていった。


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