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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第五十八話 思い出作り

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 食堂に入った俺はお盆を手に取り、皿に料理を取った後、歩きながら見知った人影がいないかを探す。

 さすがに一人で飯を食べるのは悲しいから、出来れば誰かと一緒に食べたいのだ。

 そんな俺の思いが通じなかったのか、なかなか見つからなかったので、もしかしたらすでに食べ終えて部屋に戻ったのかと思い始めたころ、


「てつやー」


 どこからか声がかかる。

 その声の主を探すために足を一旦止めて、顔だけを動かして周りを見渡す。


「こっちこっち」


 さっきとはまた別の人物の声が聞こえてくる。およその位置はつかめたのでそこを見てみると、俺の方に向かって手を上げている人たちを発見できた。

 俺はそっちに向かって歩いて行く。

 そこには丸いテーブルの周りにトシ、美佳、朱里、葵、新谷、美波(座っている順番は空席があって右回りに美佳、葵、新谷、美波、朱里、トシ)という、山菜探しをした時のメンバーが全員そろって座っていた。

 ちなみに最初に声を掛けてくれたのがトシで、その後に声を掛けてくれたのが朱里だったりする。


「先生達に頼まれた作業の途中で気絶したって聞いたけど、もう大丈夫なのか?」

「普通に動く分には問題はない」


 俺はトシの質問に答えながら空いている席に座り、早速ご飯を食べさせてもらう。みんなはすでに食べ終えていたので、ちょっとだけ急いで食べることにする。


「なーんだ、心配して損した」

「とか言ってるけど、こいつめっちゃ心配して――」

「殴るわよ!」

「……っぅ……てめぇ、すでに殴ってんじゃねえか!」

「うるさい! あんたが余計なことを言うからよ」

「まぁまぁ、二人とも」


 いつものように二人が始める喧嘩を葵が宥めてくれたお陰で、それはすぐに収まった。


「てかよ、一体何をしたら気を失うことになるんだ?」

「先生たちからは、ちょっとした手伝いを頼んだとか言われて、結局内容まで聞けなかったし」

「美佳ちゃんも教えてくれないし」


 新谷が疑問を口にして、矢継ぎ早に葵、朱里と愚痴らしきことを言ってくる。

 朱里についてはブーブーといって、不満を表している。


「仕方ないでしょ。口止めされてるんだから」

「別にばれやしないって。話しちゃいなよ」

「嫌よ。そんなに知りたきゃ先生に直接聞けばいいじゃない。きっと岡嶋先生あたりなら教えてくれる、というより口を滑らせるかもしれないわよ」


 美波の誘いも敢えなく断られてしまい、美佳が出した先生に聞くという提案は、面倒くさいからいいということで、結局追求はここで終わった。


「全員、聞けー」


 そんな感じで話が一区切りついたところで、先生から声がかかる。

 全員の意識がそちらに向いたことを確認した先生は、話を始める。


「8時過ぎに山の麓の場所に集合。別に授業とか勉強をする訳じゃないから安心しろ。たぶん楽しいことをするはずだから、遅れてきたりサボったりするなよ。気分が悪いやつは無理してこなくていいからな。後、風呂の貸し出しは今日だけ特別に一日中やってるもらうことになってるから、無理して今から入らなくても大丈夫だからな。連絡は以上だ」


 それだけ言って、先生は食堂から出ていった。急いでる感じがあったから、すでに食べ終えて自分の部屋に戻っているやつに連絡を入れに行ったのだろう。

 分担していると考えてもかなり面倒くさそうだ。


「今度は何をやるんだろうな。しかもこんな時間帯に」

「勉強じゃないとは言ったけど、まさか戦闘とかじゃないよな?」

「暗闇のなかで? 僕たちにそんなことをさせる必要なんてないでしょ。それにもしそうだとしても、僕たち程度の技量じゃあ危なっかしすぎて見てられないと思うよ」

「だよなぁ……」


 トシの疑問に新谷が予測をたてるが、すぐに葵に否定をされる。

 その予測にそこまで自信はなかったのか、葵の否定の言葉にショックを受けた様子はなく、逆に納得しているようだった。


「どうせなにかやるなら、この合宿最後の夜なんだし、楽しいことがしたいな」


 そう言った葵の様子は、無邪気な子供のようで、とても微笑ましかった。




――――――――




 俺が夕飯を軽くたいらげた後も、そのまま食堂で時間を潰した。

 少しくらいなら飲み物とかも無料で飲めるので、会話とかそういうことをする環境としては、わりかし使い勝手が良いのだ。

 そういうこともあり、食堂に残って集合時間までの間を待つ人は結構いた。


 今、俺たちはちょっと早めに食堂を出て、集合場所である山の麓にすでに来ている。


「なんだ、ありゃ?」


 そこについて開口一番、トシが目の前にある『それ』を見てそう言った。誰もその疑問に答えれる者はいない。

 『それ』とはこの山の麓の広い空間の真ん中となる位置に置いてあるもので、木をうまく重ね合い、底面は長さ一メートル程の正方形で高さは俺の身長よりも高い。丁度井の字の形をしており、その中に木を入れ込んでいる。


「何をするためのものかは分からないけどすごそうだね!」

「確かにすごそうではあるな」


 目をキラキラさせながら言う好奇心満載の葵に、少し呆れの様子が見える新谷だが、同意の言葉を口にする。


「下の方にある木を取ったら全部崩れちゃいそうだねー」

「本当にやったりはしないでよ?」


 朱里が今にも言ったことをやってしまいそうな雰囲気を醸し出しているのが目に見えたので、美佳がすかさず止めに入る。

 朱里はそれに対して「わ、わかってるよ、それくらい……あはは……」と乾いた笑いをいれながら答えていた。

 この様子だと、もし美佳がなにも言わなかったらやってしまってたかもな……


「全く……組み立てるのも大変だったのよ?」

「……これ美佳が作ったのか?」

「私がというより私たちが、だけどね。結構な労働だったわよ」


 美佳は疲れを表すように、肩をトントンと叩いてみせる。その仕草が年寄りくさいとは口がさけても言えない。

 俺は無難に「お疲れさま」とだけ言っておいた。俺の本心を知らない美佳は「ありがとう」と微笑みを浮かべながらお礼を返す。


「でもよかったのか?」

「何が?」

「さっきまでずっと秘密だったのに、何をやったか言っちゃって」

「ここまできたら隠す必要もないかなって思ったのよ。あの先生はあれを見せて、みんなの驚く顔が見たいだけだろうし」


 確かにあの先生はそういうところがあるもんな……あそこで生徒の様子を見て笑ってるし……てかいつの間に!?

 と思ったけどもう集合時間までほとんどない。

 どうやら生徒だけではなく先生も集まってるみたいだ。


「さーて、みんな集まったかー?」


 組み立てた木のやつの前に立って、大きな声を出しながら確認を取る先生。

 どうやら始めるようだ。


「今日こんな時間にここに来てもらったのは――」


 先生は不意に手を上げる。

 それを合図とするように、先生の背後にある『それ』に火がつき、一気に燃え上がりだす。真っ赤な赤い炎が、暗い空を彩るように明かりとなる。

 周りから「おー」とか「スゲー」とかの称賛の声が上がる。


「思いで作りのためだ。合同での合宿。こんな機会はそうそうあるもんじゃない。学園が違うやつらと折角仲良くなったんだ。そんな仲間と一緒に良い思い出を、今つくろうじゃないか! 今日という日を忘れないように、みんなで盛り上がろう!」


 さっきよりも大きな歓声が響き渡る。

 先生も良いことするもんなんだなと、感心せずにはいられなかった。


「それじゃ、みんな!この火を中心に輪を作れ! 後、二人一組になっておけ! 当然男女でのペアな! 男女の人数が合わない場合は、仕方ないから同性同士で組んでおけ!」


 先生の言う言葉に軽く首をかしげるも、全員適当にペアを作っていく。ちなみに俺は美佳と組んでいたりする。


 全体の様子を見て、ペアが出来上がったことを確認した後、先生は次の指示を出した。


「それじゃあ、踊るぞ!」


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