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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第五十二話 覗き

開いてくださり、ありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 朝翔から発せられた言葉に俺は呆れのあまり固まってしまった。

 こういう考えを持ってるやつがここにも居るだなんてな……


 今俺が思い出しているのは、合宿に行く一週間前、生徒会の仕事が終わった後の出来事である。そう……それは野田さんにいい情報を教えてやると言われた時のことだ。

 半強制的に連れていかれて……


――いいか、哲也。よく聞けよ。

――聞いてませんよ。てか聞きません。後、顔近いです。

――扱いひどくね!? 泣いてもいい?

――好きにしていいですよ。俺は帰りますんで。

――ごめん。泣かないから帰らないで。これは聞いておいて損はないから。

――はぁ……

――お前らが行く宿、俺らも行った宿でだな、俺は覗きのベストスポットを見つけたのだ! って帰らないで最後まで聞いてー。


 あのときの野田さんの真剣な表情から一変して、泣きそうな顔になっていたときは、失礼ながら笑いそうになってしまった。



「覗きだとー!」


 トシから大きな声が発せられたことにより、この前のことを振り替えっていた俺は、意識を現実に戻される。


「おい! 声がでけぇよ」

「てめぇら――」


 廉からの注意に脇目も振らず、トシは何かを二人に言おうとしている。


 言ったれ、トシー! 俺は内心で叫んだ。


「最高じゃねえか! 俺も仲間にいれてくれよ」


 トシのその発言に俺は再び固まることになった。

 朝翔、廉は一瞬キョトンとしてしまっていたが、「おおー、同士よ」とかなんとか言って肩を組み合っていた。

 そして、すぐに肩を組んだ状態のまま、三人はこちらを向いてきた。


「当然、哲也もやるよな?」

「断る。三人でやってくれ」


 廉がそう尋ねてきたが、俺はそれをバッサリと断ち切りトイレから出ようとしたが、俺の前に一人の男が立ちはだかる。


「……いかせるわけにはいかない。哲也はかなり重要な情報を持っているはずだと、俺の勘が告げている」

「朝翔……」


 確かに俺は、なんやかんやで野田さんの言う覗きのスポットを教えられたので、こいつらの知りたいことを知っている(その情報が正しいかどうかは謎だが)。なので、朝翔の直感は当たっている。

 色々と謎の多いやつだが、こういう直感の良さはすごいと思う。


 だが、ここでこいつらの仲間になってはいけない。俺の勘が告げているのだ。絶対に仲間になってはダメだ。じゃないと死ぬかもしれないって。

 どうにかいいアイディアがないか考える。

 特にあせることもないので冷静に考えた結果、ひとつのいい案が浮かぶ。


「なぁ朝翔」

「……なんだ?」

「俺にひとつ考えがあるんだが」


 俺がそういうと朝翔は無言で続きを促すように待っている。


「俺はお前らの覗き部隊には入らない。ただ入らないと言って、この場を逃がしてもらえるとは思っていない。実際にお前が立ちはだかっているしな。だから俺は情報を提示する。情報源はとある先輩から。内容は覗きのベストスポットだ」

「……とある先輩とは?」


 俺があえて隠していたところをついてきたので、正直困った。副会長がそんな人物だと知れたらあまり良いことにはならないような気がする。

 そんな風に野田さんの名前を出すべきか出さないべきか考えていると、朝翔は付け加えるようにいってくる。


「……予想はついているが、確信がほしい。もしその人からの情報なら信憑性が高いから、その条件を呑もう」


 朝翔はそう言った後、俺の耳元でボソボソと名前を確認してきた。


「……!」

「……その反応を見るにあってたみたいだな。実はあの人、第一部での時に色々とやっているからな。俺らみたいな人にとっては有名なんだよ。まぁ、表向きでも副会長やってるわけだから、十分有名だけど」


 俺の反応を見て、どうして分かったのかを、他には聞こえないように解説する朝翔。

 あの人第一部の時からそんなことをしてたのかと俺が呆れているのは言うまでもないだろう。


「とにかくお前の思っている通りの人物からの情報だ。取り引きは成立と言うことでいいな?」

「……分かった。正直、哲也は仲間に入れたかったが、仕方ない」


 朝翔は承諾はしたが、顔は残念そうにしていた。どうやら、本当に俺を仲間にいれたかったらしい。


「……それで、情報は?」

「ああ、それはな――」


 俺は自分が聞いた通りの情報をそのまま朝翔に伝えるとお礼の言葉を言われた。

 そのあと、俺はトイレから出て自分の部屋へと戻っていった。

 一応友達である以上、成功することを願って。いや、違う……生きて帰ってくることを願って、だな。




――――side朝翔――――



 まさかあんなところにあるとはな……俺には全然予想がつかなかった。

 悔しいが、さすが野田先輩といったところか。

 せっかく仕入れた情報だ。これを活かさない手はない。というわけで、早速行動に移すとしよう。


「……俺に続け。わかっていると思うが、隠密に動け」


 俺の言葉にしっかりと頷いた二人を見た後、行動を開始した。




「……ここだな」


 俺は立ち止まり、場所が間違っていないかを確認する。

 周りを見回してみて、それを見つける。


「行きなり立ち止まってどうしたんだ?」

「……とりあえずの目的地はここだ」

「……何もないぞ?」


 朝翔は俺の言葉を聞いて、俺と同じように周りを見たが、何も見つけられなかったようで、訝しげな目で俺を見てくる。


「……あそこだよ」

「マジ?」


 俺が指を指してそれを指し示すと、トシが確認をとってきたので俺はそれに頷く。

 確認を取りたくなるのも分かる。何せ上にそれはあるのだから。


「周りに人はいないな。朝翔、肩を貸してくれ」

「構わないけど……」


 俺は朝翔に頼み、許可をとって肩に乗り、切れ目が入っている上のところに手をかけ、それをスライドさせる。

 すると中に入れる空間ができた。俺はそのまま、そこに入っていく。

 二人は唖然としていたが、俺が声をかけることで我に戻させ、中に入るように促すと、戸惑いながらも協力して、無事に誰にも見つからずに入ることができた。


「さすがに狭いな」

「仕方がないことだ。我慢しろ。とにかく進むぞ」


 ここまでは順調に来れたが油断はできない。俺が先頭となって、慎重に先へ先へと進んでいく。


「……止まれ」

「……どうしたんだ?」

「仕掛けがある。このまま進んだらゲームオーバーだ」


 二人から息を呑む気配が伝わっていた。


「大丈夫だ。俺でもなんとか出来る仕掛けだ」


 安心させるためにそれだけは言って、俺はしっかりとその仕掛けを確認する。これは人間を周りとの温度との差で感知して、自動で魔法を発動させる仕掛けだ。

 簡易的に作れて、順応性もいいので結構使われている仕掛けだが、俺みたいに慣れていれば突破するのは他愛もない仕掛けだ。ただ単に見つけるのが難しいだけで、発見さえできれば自分の魔法を使えば容易にクリアできる。


「俺が魔法を行使したら、すぐに通るから準備しとけよ」

「分かった」


一呼吸置いて魔法を放つ。


「『コンスタントエリア』」


 この魔法は自分が指定した空間の中の情報を一つだけ好きなように変えることが出来る。

 能力が高ければ長く続けることが出来るが、あいにく俺はそこまで魔力がないので、十数秒続けるのが限界だろう。だからこそ二人にはそういう指示を出したんだけどな。

 ちなみに今回俺が変えた情報は、発動源となる感知器の周辺の温度だ。

 これで仕掛けの発生の条件となる体温の変化を与えずに、何の問題もなく通ることが出来る。


「行くぞ……!」


 俺は魔法を発動させた直後合図を出しすぐに動き出す。廉とトシも俺に続く。時間との勝負になるため、迅速に素早く進んでいく。


「もういいぞ」

「ふー。ハラハラしたぜ」

「思った以上に怖いもんだな」


 魔法は切れたが何も起きない。つまりはちゃんと突破できたと確信したので、二人に声をかけると、一息ついて先程の感想を返してきた。


「それで、後どれくらいなんだ?」

「もう少しだと思うんだが……」


 朝翔がワクワク感を抑えれていない声音で尋ねてきたが、もうすぐというのは分かっているが、はっきりとはしていないので、曖昧に答える。


 そんな会話をしながら進んでいくと、下から光が出ている所を発見した。


(間違いない……! あれだ)


 俺は歓喜の声を上げることはせずに、そこに向かって進んでいく。そして場についた後、光が差し込む穴に目を当て、下を見てみる。


 そこには湯気が出ている大きな風呂があった。

 視界は、はっきりしている。

 だから女の子達を何の障害物もなく見ることが出来る。

 何故か服を着て、こちらを向いて、魔法を使える用意ができている女の子達を。


 あ、目が合った。



「――やばい、逃げるぞ!」


 俺が指示だしたタイミングはすでに遅く、上からの言葉にならないような衝撃を受ける。


 もしかして、仕掛けのところでしくじったのか……?

 そんなことを頭の片隅で考えているうちに、俺の意識はどこか遠くへ逝ってしまった。




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