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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第四十八話 鬼ごっこ

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 先生からの開始が告げられたので、俺は山の中の木々を掻い潜りながら走り出した。

 逃げる側からの不意打ちを受けないように、意識を周りに集中させながら駆け抜けていく。当然こちらの存在を知られないために、音も出来るだけ立てないようにする。

 こういう風に相手を追いかけるような行動は、姉さんとの鬼ごっこを思い出させる。

 鬼ごっこ……まさにあの時の追いかけてくる姉さんは鬼そのものだった。

 本当に死にもの狂いで逃げていた気がする。死にもの狂いで逃げると言ってもあの姉さん相手ではそんな俺の気力など意味もなく数分で捕まってしまい、いつの間にか気絶させられていることもあった。一番嫌だったのは気配すら感じさせずにいつの間にか背後を取られているときだ。そのあとの処理は酷すぎてあまり口に出せたものじゃない。

 逆にこちらが追いかける側だと全くもって捕まらないのでこれまた最悪である。捕まえる捕まらないの前に、姿すら見つけるのが困難だったのだ。理不尽としか思えなかった……奇跡的に見つけて追いかけても、距離は一瞬で開いてしまっていたし。結局捕まえれずに夕飯抜きということもあった。

 今日は鬼ごっこやるよと言われた日は、いつも涙を浮かべていた気がする。


 うん、嫌な思い出しか出てこない。



 そんな嫌な思い出のせいで、最悪の事態を想定してしまう。

 走り回るだけ走り回るが、誰一人見つけられないという事態を。そんな俺の考えはありがたいことにすぐに打ち消された。

 適当に走ること数分、早速逃げる側のグループの一団を見つけたのだ。

 心の底からホッとする気持ちが出てきた。それと同時に俺はどのように対応するかを考える。

 まずは、今分かる範囲で状況を整理する。人数は六人。隊列を組みながら歩き、周りを散策しているようだ。俺に気づいている様子はないが、周りを警戒していることが分かる。油断している様子は特に見られない。一人一人がちゃんと自分の役割を全うしている。

 これらの情報を踏まえてどうするかを考える。

 もし時間が無制限で、このグループだけを倒すんだったら、どんなに強かったとしても、こんなピリピリと緊張した状態を保ち続けられるわけがないので、相手の集中力が切れるのを待ち、油断した隙をついて背後を取り、一気に潰すこともありだが、無論、所詮は「もし」の話なのでそんなことが可能な時間はないし、多数の相手がいるのでこいつらだけにそんな時間をかけてられない。

 かと言って自分を顧みずに正面突撃するのは、相手の力量が分からない以上あまりよろしくないだろう。

 するにしても少しでもいいから相手の隙を突くために何かやるのが当然というもの。

 出来るだけ早く、効率良く潰す方法は無いのか……


「成るようになれば良いや」


 考えてもあまり良い案が出てこなかったので、軽くやけになっている俺は、早速行動に出ることにした。

 まずは地面にある小石をいくつか拾い、注意を俺とは別のところに引くために、木がある所に向かって投げる。


「誰だ!?」


 俺が投げた小石が木の葉に当たり、静かな空間にガサッという音が響く。その音に一団のうちの一人の男が反応して声を出し、その音を合図とするように一団の全員が音がなった方向に身構える。結構な反応の良さだし、一団としてはまとまりもとれているが、残念ながら彼らが向いた方向は俺がいる方向とは真逆の方向。つまりは彼ら一団は今まさに俺に背を向けていることになる。

 こんな単純な手に引っ掛かってくれたことに感謝しながら、俺は十数メートルという距離を一瞬で縮める。 そしてそのまま背に張ってある紙をタッチする。


「え?」「うわ!」「うそでしょ!?」「なんでよ!」


 タッチした四人は紙に付随している束縛魔法が発動したことにより、動けなくなり、それぞれ声をあげる。

 俺から六人の中でも距離があった二人は声が聞こえたことで俺に気づいたのか、こちらを向きバックステップで距離をとってきた。

 俺はいったん足を止めて、『体氣』による足の強化をしていると、その間に詠唱を終えたようで、頭上から水が、正面から火の玉が飛んできた。


「やったか?」


 一人の男子はそう呟いていた。

 俺がさっきまでいた場所には砂煙がたっていたので、倒れているのかを確認したくなってのこの呟きだろう。

 やったと思ってもそこから目を離さないでいるのは良いことだとは思うけど……


「君たち、ごめんね」

 

 すでに背後にいた俺は、補習をやることが決定したそいつらに対して何となく謝りながら、同時に二人の背中をタッチした。


「いつの間にそこに!?」


 俺がタッチした二人は俺が背後にいることに驚愕しながら、束縛魔法の餌食となっていった。

 というか最初にタッチした四人からの視線がすごい伝わってくる。

 その視線に俺が思っているような嫌な感じがあまりないのに首をかしげたが、考えても仕方がないので、次の相手を見つけるために俺は、彼らに背を向けながら走っていった。



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