第四十七話 ゲーム
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部屋で準備をやり終えた後、集合場所である山のふもとまでやって来た。
眠気がある生徒が多いようで、あちらこちらに欠伸をしている生徒が目に映った。
「昨日山菜採集をした班ごとに固まって集まれ」
先生は前に出て生徒が全員いることを確認すると、指示を出し始める。生徒たちはそれを聞き、自分の班の生徒の名前を呼んでメンバーを集めている。
当然俺らもその対象者なので、同じように動き出し、班員全員を集める。
「ついにこの時間がやってきたな。楽しみであまり眠れなかったくらいだ」
集め終わって早々、新谷がうれしそうな顔をしてそう言ってきた。この時間が待ち遠しかったことが見て取れる。そういえば俺ら四人の中で唯一、俺らがやること聞いて嬉しそうにしていた気がする。
「嬉しそうだね洸太は……僕は気が進まないよ」
葵が気が進まないと言っているのは、今から行われるであろう、先生たち風に言うとレクリエーションのことだろう。俺もあまり気が進まないので葵がそう言いたくなる気持ちも良く分かる。どちらかというと新谷が例外なのだ、と俺は思っている。
「全員班ごとに分かれたな? それじゃあ今日やることを言うからよく聞けよ」
さっき指示を出した先生が周りの状況を確認した後、そう言ってから説明を始めた。
先生の話――レクリエーションの説明
まず、逃げる者(多数)と追いかける者(少数)に分かれる。
逃げる方はこの山に適当に設置されている宝箱を探す。
宝箱の中にはポイント表記がされている紙が入っていて、それが各班のポイントとなる。
追いかける方はそれを防ぐのが役割となっている。
方法としては相手のストックを無くすこと。
ストック?と思った者がいるかもしれないのでちゃんと説明すると、逃げる方にはある特殊な紙が配られ、背中に貼られている。それは魔法を喰らう瞬間に自動的に発動する、身体的ダメージを防ぐ魔法が秘められている紙だ。
自動発動するのは三回。それが今回のストックとされている。
ストックが切れた者は地獄の補習(先生が言っていた)が待っているそうだ。補習を嫌がって、ストックが切れても誤魔化してやり続ける生徒がいないように、紙にある三回分の魔法が切れると、金縛り状態になる束縛の魔法が自動的に掛けられるそうだ。そして近くにいる先生に確認された後、宿の方へと帰るようにされている。後、魔法を三回受けていなくても、追いかける方に背後に回られて紙を手でタッチされても同じように金縛りの魔法が掛かるそうだ。
それと強制地獄補習を嫌がって逃げることばかり考えて隠れる生徒が出てこないように、宝箱の中に入っている紙を一枚も取っていないグループがいた場合は、個人でストックが残っていたとしても罰ゲームが待っていると言っていた。先生曰く地獄の補習と勝るとも劣らないものらしい。
時間の終了は先生から告げられると言っていた。
「――説明は以上だ。何か分からない点はあるか?」
先生は淡々と説明をし終えた後、生徒たちに不測の点があるか聞いてきた。
生徒たちからの質問の声は出なかったが、代わりにというように補習やら罰ゲームやらに対する不満の声が上がった。当たり前のように無視されていたが。
「無いようだな。そうそう、追いかける側をやる生徒だが、昨日の山菜採りで優勝したグループの生徒にやってもらう。ちなみに優勝チームは火神と紫水がいるグループだ」
先生はそう言ってから、前に出ろと言ってきた。俺らのグループはそれに従い前に出ると、すごく目立ちそうな赤色のシャツが先生から配られて、着ることを指示された。
「全員見えるか? この赤い服を着ている奴らが、お前らを追いかける奴らだからな。それじゃあ始めるぞ? 逃げる奴らは山の中に入って行っていいぞ。追いかける奴らは俺が指示出すまでは動くなよ」
先生がそう言うと、結構な勢いで生徒たちは一斉に動き出した。気が早っていた新谷も動き出そうとしていたが、先生からの言葉に釘を刺されたため、一歩踏み出したところで止まった。
「ホント嫌だな……」
俺はぼそりとそう言ってため息をついた。どうしてこんなに嫌がっているのか。その理由はこの役目が確実な憎まれ役であるからだ。まず補習や罰ゲームがないこと。どんな風にやってもこっちにはデメリットとなる要素が無いように見られている。要はこの役目についた時点でなんで? という不服な視線で見られることだろう。そしてさらにはつぶす役目を請け負っていることで、生徒を一人退治するたびにいやーな視線を浴びそうだからだ。
細かいことが他にもあるが大体似たことなので省くとして、これらのことから俺はあまりこの役目をやることに乗り気ではないのだ。
「どうした楠木? ずいぶん顔が暗いじゃん。もっと楽しんでやろうぜ」
「そうだぜ哲也。そんな顔してたら楽しいことまでつまらなくなるぞ?」
「……そうだな」
それを知ってか知らずか、俺のため息が聞こえたのだろう、新谷とトシが俺にそう話しかけてきた。俺は内心まったくこいつらは……と思ったが、俺もこういう風になれたらいいのにな、とも思った。なので俺は暗かった顔を少しでも明るく見えるように明るく笑顔をつくってみせた。心はまだ重いけど。
「そろそろいいかな……よし、お前ら行っていいぞ」
先生からの言葉を聞いた俺らは、山の中に走って入って行った。