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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第四十二話 トランプ

開いてくださりありがとうございます。

 俺らのグループは結構食べ終わるのが早かったようで、俺らが来たときには、後片付けを始めているグループが数グループしかいなかったので良い感じで片付け始めることができた。

 生徒数が多いため広いところであるこの洗い場も時間が経てばすぐに埋まってしまう。だから先生からも効率良くみんながここを使えるようにと食べ終わったグループからすぐに後片付けを始め、出来る限り早く終わらせるように言われていた。

 その言葉通り俺らは今せっせと後片付けを行っている。


「ほら、早く拭いて!」


 美佳からの言葉と共に差し出されたお皿を受け取り、俺はそれをタオルで拭いていく。

 ちなみに分担は洗うのは女子と葵で、その他三人でそれらを受け取り拭いている。

 そう時間も経たないうちに空いていたこの洗い場もだいぶ埋まってきたので急いで作業を行っていく。


「片付けが終わったグループから、各自部屋に戻っていいぞ。それと風呂はこの人数だからな、各クラスごとに入ってもらう。時間帯は宿の玄関に紙を貼って置くから各自見ておけよ」


 そんな最中、先生からの指示の言葉が飛んできた。


「これでラストだよー」


 先生からの知らせからつかの間、葵からの嬉しい告知と一緒に渡されたお釜を新谷は受け取り拭いていく。


「ここ、もう使っても良いわよ」


 すべてを洗い終えたのをちゃんと確認した美佳は、待っていた次のグループにそう声をかける。声をかけられたグループは持っていた食器や調理用具などをそこに置いていた。


「それじゃ、道具を分担して置いてきて、さっさと帰るとしますか」


 俺の言葉にみんな頷き、道具を置いた後、各自部屋へと帰ることになった。



―――――――――――



 部屋に戻ると恐らく旅館の人が敷いた布団があるだけで、俺らのほかの班の面子はまだ戻ってきてはいなかった。

 トシは部屋に入って早々、布団にダイブをして、ゴロゴロと転がりだした。

俺はトシみたいにダイブはしないが、さすがにちょっと疲れていたので布団の上に寝そべった。


「やることがねー。暇だー」


 トシの言葉に俺は頷く。さすがに二人では出来ることが少なすぎるので、暇なのである。

 ちょくちょく会話をしたりはするのだが、話題が特に出ないのだ。

 ちなみに俺らの風呂の時間は大体7時30分ごろだった。現時刻は6時。後1時間半もあるので、暇でしょうがない。

 早く残りの奴らも戻ってこないかなーなんて思っていると、


「今、戻ったぜ!」

「ただいま~」


 陵と優太が戻ってきた。

 二人の姿を見た俺は身体を起こし、帰ってきた二人にお疲れと声をかけると、それぞれ返事の言葉を返した後、布団の上に座った。


「あれ、廉と朝翔はどこ行ったんだ? お前ら同じ班だろ? 一緒に帰ってきたんじゃないのか?」

「あいつらはトイレ行ってくるって言ってたから、トイレだろうな。だからすぐ戻ってくると思うぜ」


 トシの疑問に陵は簡潔に答えを述べる。


「でも、大きい方だったらちょっと遅くなるかもね~」


 俺は優太の不意を突くような発言に少し笑いをこぼしてしまう。俺以外の二人も同じような反応をしていた。


「とりあえず四人いるわけだし、なんかやんね?」

「賛成。俺も何かやりたい」


 トシはそう発案してきた。

 先ほどまで暇だったわけなので、俺も何かやりたいと思い、その言葉に賛同する。


「良いけど、何やんだ? 俺なんも遊ぶ道具なんて持ってないぜ」

「そういえば~、廉くんがトランプ持ってきてるはずだよ~」


 優太はそう言って立ち上がり、廉のバックをあさりだす。


「人のバックを勝手にあさるのは、あんまりよくないんじゃないか……?」

「いいの、いいの……ほら、あったよ~」


 トシの言葉を気にすることなくあさり続け、見つけたトランプをみんな見せつけてくる。


「じゃあ、まずはババ抜きでもやろうぜ」


 陵はみんなに自分の意見の同意をとった後、手慣れた手つきでカードをきり、みんなに配っていく。

 そして配り終えた後、それぞれ自分の手札を見て、ダブったカードを捨てていく。

 その作業を全員が終わったことを確認し、じゃんけんで回りかたを決める。


「よし、俺からだな」


 じゃんけんで勝利した陵は、隣にいる優太の手札を一枚とり、自分の手札を確認した後、それを自分の手札に加える。


「そういえば、お前らはどんな感じだった?」

「どんな感じって?」

「第五の奴らのことだよ」

「いい人たちだったよ~。ね、陵くん」


 優太は率直な感想を述べながら、隣である俺のカードを取り、ダブったカードを真ん中に出す。


「確かに良い奴等だったぜ。だから山菜集めの時も、野外炊飯の時も結構楽しくできたしな。俺らは恵まれてた面子と組めたと思うぜ」

「他の人たちから、ちょくちょく悪口を聞いたりしたしね~」


 優太の言葉にふーんと思いながら、トシのカードを一枚取り、だぶるカードがなかったので手札に加える。


「まぁ、良い奴もいれば、悪い奴もいるのは当然のことだろ」


 トシはそう言って、隣にいる陵のカードを取る。そしてそのカードを見た瞬間がっくしと肩を落とす様子を見て、ジョーカーを引いたことは明らかだった。



――――――――――



 7時20分。トランプで遊んでいる最中、ふと時計を見てみるとそんな時間だった。


「頼む、もう一回だ!」

「さすがに諦めろよ……」


 トシの必死のお願いに、俺を含めた三人は呆れていた。

 俺らは今の時間になるまでずっとババ抜きをしていた。結果はこのトシの姿を見て察している人もいるだろうが、トシの全敗である。トシの表情や視線を見ればジョーカーの位置がもろバレなので、この結果も仕方のないことだろう。

 こんなビリが決まっている勝負をしてもしょうがないので、やる種目を変えようと早い段階で言ったのだが、トシは諦めきれずに何回も何回も、勝負を挑んできて、結局今の時間までやることとなったのだ。


「そろそろ風呂にいかないとだな。行こうぜ!」

「ちょっと待て。朝翔と廉がまだだぜ? どうせなら一緒に行った方がいいよなってことでそれまで――」

「トイレって言ってたのにまだ帰ってこないっておかしいな……」

「どうする? 探しに行くか?」


 トシの言葉を途中で遮り、忘れかけていたが、二人が帰ってきてないことに気付いた。どっか他の部屋にいっている可能性もあるが、少し心配になってきたのか、陵はみんなにどうするか尋ねてくる。


「そうだね~。探しに行こっか~」


 優太の緩い調子での言葉に頷き、立ち上がった時、勢いよく扉が開いた。

そこにいたのは妙にボロボロになっている、朝翔と廉だった。


「お前らいったい何してたんだ……?」


 そんな姿になっている二人に陵は少しばかり呆れが含まれている口調で尋ねる。


「いやー、ちょっとな」

「ふふふ……男のロマンを追いかけていたのさ」


 廉は言いづらそうに言葉を濁し、朝翔は意味深な言葉を残す。


「まぁいいじゃねえか。とにかく風呂に行こうぜ!」

「それもそうだな」


 俺は明らかにごまかそうとしている廉の足を取ることはせず、素直に頷き、風呂に必要な荷物を取り出し、みんなで部屋を出た。

 頼むラストで良いから! とか言っている奴が残っていた気がしなくもないが、みんな無視していたので、たぶん気のせいだろう。




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