第四十一話 野外炊飯
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山菜採りの時間も終わり、山を降りるといくつかの長細いテーブルが並べて置いてあり、その横に先生+もう一人という形で待っていた。
「君たちはあっちに並んでくれ。あ、君たちは――」
「戻ってきた生徒たちは手が空いてる、もしくはすいている先生の所に行って自分たちが採った山菜のポイントを採点してもらえ」
採点をする先生以外は生徒たちに声をかけ、ごちゃごちゃにならないように誘導していた。
俺たちもその中の一人に声をかけられたので言われた通りに並んで待つことに。
「みんなと比べると僕たち結構イケてるんじゃないかな」
ただじっと待つのも苦痛だったようで、葵はみんなに話しかける。
先ほどからきょろきょろしているなとは思ったが、そういうことを確かめるためだったのかと納得した。
葵の言葉にトシは周りを見回すと、そうみたいだなと言葉を返していた。
「――次」
いくつかグループのメンバーで会話を交わしていると、俺らの番となった。
心なしかグループ全員の表情が期待に満ち溢れている。
俺、新谷、トシはドサッという音を立てて先生の前にあるテーブルの上に山菜が入っているかごを置いた。
「……ここのグループはたくさん採ってきたみたいじゃのお」
先生の隣にいるおじいちゃんが俺達のかごを見て賞賛するように言葉を漏らす。
「量なら見る限りダントツで多いですね」
先生も感心しているようだった。
「ほぉ、タケノコじゃないか。それにこんなにたくさん」
ガサガサとかごの中身を大まかに確認するおじいちゃん。
「それじゃあ、お願いします」
先生はおじいちゃんにそう声をかける。おじいちゃんは「うむ」と返事をする。
「まずはこれから見ていくかの……」
おじいちゃんはまずは新谷のカゴを鑑定するようだ。
まずは中身を一掴みしてテーブルの上に置き、それを慣れた手つきで左右に振り分けていく。
一掴み分を左右に分けた後、それぞれの袋に分けて入れる。
それを繰り返し繰り返し行っていく。
多い方と少ない方と別れるが、きっと多い方が食べれるので、少ない方が食べれないものと思われる。
タケノコが多い方に入っているので間違いないだろうけど。
トシと新谷のを鑑定し終え、最後に俺のへと移る。
そしてその作業中のこと。おじいちゃんは思わずといった感じで苦笑いを浮かべだした。
なぜ苦笑いを浮かべる?と不審に思ったが、理由はすぐに分かった。
「見事に毒草ばかりですね……」
理由は今先生が言った通りで、分ける作業の中でこの三、四掴みの八割が食べられない方に割り当てられているのだ。
俺はその原因であると思われる人物の方を向く。
俺以外のメンバーも同時に美佳の方向を見たせいか、自分だとは思っていなかったようである美佳はその視線に首をかしげてみせる。
だが、最初は首を傾げるだけだった美佳も、段々とその視線の意味を理解したのか慌てて否定の言葉を述べる。
「ちょ、ちょっと待ってよ!私以外にも哲也っていう可能性があるじゃない!?なんでみんな私だけを見るのよ!?」
「確かに俺も毒草を入れたかもしれないけど……俺のこのかごの中身の山菜は、八割以上お前が入れたやつだぞ?それにお前が入れる前に俺が確認した時、『全部調べた、大丈夫』とか言ってたはずだけど、あれホントなのか……?」
「あたり前じゃない!ちゃんと調べた、はず……」
「はず?」
「調べたわよ!」
「でもちゃんと調べたのにそのほとんどが毒草って逆にやばいんじゃない?」
「うぅ……」
美佳は朱里の一言によって弱弱しく項垂れることしかできないようだった。
―――――――――――
「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」
班員七名全員で手を合わせて目の前にある山菜入りカレーを食べ始める。
「うまい!」
スプーンで一口分を口に入れて飲み込んだ後、俺は自然とそう言葉を零した。
「ホントにおいしいね~」
葵も俺と同じようにそう口にしていた。
「やっぱり自分たちで作った料理はおいしいな!」
「それは同意するけど。あんた、まともになんかしてたっけ?」
「なっ……!ちゃんとやったつーの!」
「……二人とも落ち着つきなさいよ」
トシ、朱里の二人の相変わらずの口喧嘩をやや呆れた様子の美佳が止めに入る。
「二人とも仲良いよねー」
「「よくない!!」」
「いや、良いと思うぞ……」
美波の言葉にそろって否定する二人は新谷が言った通り、仲が良いとしか言えないだろう。
今俺らは野外炊飯をやり終えて、いや、食べている最中だからまだ途中だな。まぁとにかく野外炊飯をしている。
ほぼ全グループの山菜の採点と毒草分別が終わった後、先生の指示のもと、調理はすぐに始まり、いろいろ危なっかしかったりもしたけど、無事?に作り終えて今に至っている。
「それにしても美波の包丁さばきには驚かされたぜ」
「えへへ、どもども」
トシの純粋な褒め言葉に美波は照れてみせる。
トシの言うとおりあれはホントにすごかった。戦慄ものだった。一流のシェフでもあそこまで出来る人はなかなかいないと思う。といっても一流のシェフが料理を作るところなんて見たことないんだけどね。
「でも、哲也くんもなかなかに料理出来るみたいだったよね」
「……人並み程度だけどな」
そんな超人級の腕を持っている美波に褒められてもな……と思いながらも俺はそう対応する。ちなみに俺が料理をできる理由は、姉さんとの二人暮らしの際に教えてもらったからである。
「それにしても以外だったのは、美佳ちゃんだよね」
「できたらその話題を私に振らないで……」
葵からの話題振りに美佳は心から拒否の言葉を述べていた。
そうなるだけ美佳の料理の腕はひどかった。
例えば皮を剥けば残るのは、欠片だけになったり、火の調節も凄まじいことになったり、とにかくよくこれだけ美味しいカレーができたなと思えるほどだった。まぁなんだかんだでみんなでフォローをし合った結果だろう。
「ご、ごめんね?」
そんなことがあったし、山菜集めでもミスをしてしまっていたてまえだったので、葵はすぐに美佳に謝罪の言葉を述べていた。
「おい、食わねえなら全部もらっちまうぜ?」
さらっとそんなことを言いながら新谷は二杯目を盛っていた。
「あ、ずるいよ洸太!」
葵も新谷に負けたくないと思ったのか、カレーを一気にかきこんでいく。
「何がずるいって?早い者勝ちだろ?」
新谷は勝ち誇ったようにそう言ってみせると、トシもなにかに火がついたようで、葵と同じように一気にかきこんで食べていく。
「私、もういいや」
「うちも~。お腹一杯」
「……男子はよく食べるわね」
女子三人はお腹一杯のようで、食べるのをやめていた。
「これで、ラストー!」
「え、マジで?」
俺はいつの間にか三杯目を盛って、盛りきった発言をした新谷に愕然と言葉を漏らすと、新谷は先ほど葵を見たような勝ち誇ったような視線で俺を見てきた。
俺、まだ食べたかったのに!
そんなこんなでこの日の野外炊飯――夕食は終了した。