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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第四十話 夢

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 照沢先生と別れた俺ら四人は、さっきの出来事についての話をしていた。


「ホント危なかったよな……」

「そうね。もし照沢先生が来なかったら、私たちがこうなっていたのかもしれないのよね……油断をしちゃうなんて自分が情けないよ」

 

 美佳は俺の言葉に頷き、血塗れで倒れているフェンリルを見ながら、自分たちの違った未来を口にし、自分を責めるような言葉を言っていく。


「いや美佳はまだいいだろ……俺なんて――」

「ストップ」


 美佳に続いて俺も自分のことを言おうとすると、葵が止めの言葉を言ってきた。


「なんだよ、葵」

「確かに二人とも、いや、僕ら四人とも後ろめたいところやダメだったところがあって後悔を抱いていると思うけど、あの人たちを含め僕たちは助かった。それが結果なわけだよ」

「そういうこった。失敗は誰にでもあること。問題はその後のことなんじゃねえの?」


 俺と美佳は葵、新谷と続けられた言葉にハッとする。


「そうだったわね……後悔だけしたって先には結ばれないものね」

「反省をして次に活かせるようにする。当然のことだけど、なかなか難しいな……」


 俺は葵と新谷に言われるまで、自分が後悔しかしていなかったことに、少し恥ずかしさを覚える。


「でも、僕たちに言われたからとはいえ、ちゃんと気づけたんだからいいんじゃないかな」

葵の俺ら二人を気遣うような言葉に、俺は感謝したいと思った。

「それにしても今回のフェンリルとの戦いでの反省、というよりは学んだことね。それってさ……息の根までちゃんと止めることなのよね」


 そして、美佳から告げられた内容に俺らの空気は重くなる。


「魔物を相手にするときは、『倒す』じゃなくて、『殺す』じゃなきゃダメってことか……」


 俺はしみじみといった感じでそう呟く。


「まぁ、今更だな。魔物なんて害をなすことしかねえし、人をどれだけ殺してるやら分かったもんじゃないしな。生かしておいて良いことなんてないだろ」

「ホントにそうなのかな?」


 葵は新谷の言葉に首を傾げてみせる。


「ホントもなにも、今さっき俺らも被害にあったじゃん」


 新谷は嘲笑したようにさっき起きた事実を言う。


「確かにそうだけど……僕はいつか魔物と、いや、この世の全ての生き物とちゃんと共存できるようになったらいいなって思う。無駄に生き物を殺さなくて済むように」

「所詮は理想だな」

「うん、僕もそう思うよ。でも僕はその理想を、理想だからこそ叶えたいって思ってる。僕が、この手で!」


 葵の言葉はどうやら本気のようだ。口先だけじゃないと言うことが、目をみていれば分かる。目の奥から溢れている意志が伝わってくるから。


「葵ってスゴいな……今、本気でそう思ったわ」

「ホントよね……」


 俺と美佳は純粋に葵のことを尊敬するように褒め称えた。


「バッカじゃねえの」


 そこに不意をつくような発言を新谷が言う、


「と言いたいところだったが、お前のそんな顔を見てたら、なにも言えないじゃねえかよ……ま、せいぜい頑張れよ」


 と思われたが、葵から溢れているその意志はきちんと伝わっていたようで、なんだかんだ悪態をつくようなことを言いながらも、葵のことを応援しているようだった。


「どうしたんだ、葵。そんな泣きそうな顔して?」

 

 次々と言われる励ましの言葉に、葵が泣きそうな顔をしていたので、俺は戸惑いながらどうしてか聞いてみる。


「うん……だって、みんな僕の夢をバカにすると思ってたんだもん。洸太が最初言ったように、ばっかじゃねえのって。お父さんにこの夢を言ったときだって、そんなことを考えるのは止めろって一蹴されたくらいだし。なのにみんなは、応援してくれたり、励ましてくれたり……」

「おいおい、泣くんじゃねえよ、こんなことくらいで。男だろうが」

「う、うん!」


 言葉を述べていくうちに、段々と言葉が続かなくなり、泣き顔になっている葵を新谷が励ます。


「それにしてもひどいわね。こんなに一生懸命な、人の夢を潰すことを言うなんて……!」

「それはしょうがないよ」


 美佳が静かに怒りを露わにすると、葵は悲しげだが割りきったように言う。


「父さんは殺されかけた経験をしてるしね。それに父さんだけに限らず、魔物に恨みを持っている人なんてたくさん居るからね」

「魔物もそうだが、人間もってことか。つうかある意味魔物の方が理性がない分、魔法とかで無理矢理という手が使えてやりやすいかもな」

「それは誰がどう言おうとダメだよ」

「分かってるてーの。なにはともあれ、夢実現のためには沢山の課題がありそうだな」

「うん。でも僕は絶対やってみせるよ!」


 葵は強い気持ちが籠っている一言を言ってみせた。



――――――――――



「大丈夫だったか!?」


 元の場所へと戻ってきた俺たちに最初に気付いたトシが焦ったような表情で聞いてくる。


「見ての通り、一応だけど全員無事」


 俺が四人を代表して言うと、トシを含めた三人は俺ら四人に大した外傷がないことを確認し、ホッとしたように息をついた。


「私すごい心配だったんだよ」

「俺も俺も。気が気じゃなかったぜ」

「わるいな、心配させて」

「ほんとよ。そのせいでこいつが何回勝手にそっちに行こうとしたか。うちら二人だけじゃ止めるの結構大変だったんだよ」


 朱里はトシを指さしながら、ため息交じりでそう言う。


「心配だったんだからしょうがないだろ。それにお前だって飛びだそうとしてたじゃないか!」


 トシは朱里の発言にムッとしたような表情で言い返す。


「私からしたら二人とも同じようなものだったけどね。結果的に私が一番大変だった」


 トシと朱里の口喧嘩が勃発しそうになったところで、美波がクールに割って入り、二人に言って聞かせる。


「それにしても、無事の報告も妙な言い回しだったよね? 『一応』って。あっちで一体何があったの?」


 美波の言葉にトシ、朱里の二人も訊かせてとせがんでくる。


「じゃあ僕から話すよ」


 葵がそう宣言し、三人にさっき起こったことを述べていった。

 相手がフェンリルだったこと、油断して殺されかけたこと、照沢先生に助けてもらったこと。

 要点だけを上手く語っていった。




「フェンリルが相手か……よく無事だったな」

「俺もそう思う。照沢先生がいなきゃ死んでたかも……いや、かもじゃなくて死んでたわ」


 葵が話し終えた後、トシは俺達の身を案じるように言ってきたので、俺は頷き、あははと苦笑いを浮かべた。


「それにしてもよく駆けつけてくれたね、照沢先生」

「そういえばさ、照沢先生って岡嶋先生と宿の方で留守番だったよね?」


 美波が感心するように言っていると、思い出すように朱里がそう言って首を傾げる。


「そう言われればそうだよな……」


 俺は朱里の発言を聞いて、出発時の光景を思い出し、ぼんやりとだがあの場にいたような気がしてきた。ちなみに宿に残る先生以外は、見張りとして山の方に先に行っているはずなのだ。つまりはあの場にいた照沢先生は、山の方へ来るはずがないのだ。


「今回の事態を何らかの形で予想してたんじゃないかな? じゃないと普通動けないでしょ」


 葵が確信に近づくような発言をする。


「それが妥当な考えだろうな。それに道中といい、今回といい、魔法の力はすごいしな」

「確かにすごかったわよね」


 俺は葵の言葉に頷き、照沢先生のことを感嘆するように言うと、美佳も俺に同意するように頷く。


「一体何者なんだろうな?」


 トシが誰もが気になっていることを口にして出すと、みんなは悩ましげに考え出す。


「細かいことは気にしなくていいんじゃね? 助かったんだから良いじゃん。それに考えるより先にまだ少し時間もあるわけだし山菜探しの続きをしようぜ」


 と思われたが新谷は違ったようで、自分の考えを言う。みんなはその新谷の発言に不意をつかれたようで、呆けたような顔をした後、くすくすと笑いだした。


「な、なんだよ?」

「気楽な考え方だな」

「……ほっとけ」


 新谷は少し恥ずかしそうにそう言って顔を反らした。


「ま、確かにその通りか……分かんないことを考えても仕方ないしな」

「そうと決まったらやろうよ。善は急げ!」


 葵は早速行動を開始した。


「あ、おい」

 

 新谷は葵を追いかけるようについて行く。


「うちらも探そっか」


 先を行った葵、新谷の二人以外の面子が朱里の言葉に頷いた。



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