第四話 部屋での会談
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ドアノブを押してドアを開けたその時……
「てーつちゃん」
とベットに座りながら言ってきた学園長に少し困惑する。俺は学園長の方へ歩み寄りながら、疑問をぶつける。
「学園長どうしたんですか!? なんでここにいるんですか!? てかどうやって俺より早くここに来たんですか!?」
どうやら俺は相当テンパっているようだ。そんな俺の状態を気にすることもなく学園長はマイペースに、その疑問に答える。
「どうしてって言われたら哲ちゃんに会いたかったから。なんでって言われたら哲ちゃんに会いたかったから。どうやってって言われたら哲ちゃんに会いたかったから~。それと学園の中以外の時は私のことは舞って名前で呼んで?」
それは疑問に答えているのだろうか? と思うような答えになってない答えを返し、さらには自分のことを名前で呼んで発言……これでいいのかよ、学園長!!
とりあえず俺は今の答えの意味のわからなさに心の中だけでなく、言葉としてつっこめるだけつっこむ。
「いやいやいや。どれ一つとして答えになってないですよ! 特に最後の質問に対しては! しかもなんで学園長が俺に会いたくなるんですか!? てかなんで学園長のことを名前で呼ばなければならないんですか!? 学園長はどの生徒に対してもそんなことを要求するんですかー!?」
なんだかつっこみ疲れて息が切れる。しかしそんな俺のつっこみに対しても学園長のマイペース加減は崩れることはなかった。いや、むしろ悪化してきて、
「なんでって言われてもね……人が人に会いたくなる衝動に理由なんてないよ。それと他の生徒にはそんなことさせないよ。哲ちゃんだけ、だよ。ね? だから名前で呼んで?」
と上目遣いで俺のことを見ながらおねだり。
こういうかわいらしい容姿をして華奢な人の上目遣いはどうしても邪険には扱えない存在感というか破壊力が存在する。それは俺にも効果が抜群に発揮されるようだった。それにここまで頼まれたという事を考えると、そう呼ばないわけにはいかない気がした。
「分かりましたよ……舞さん」
そう呼んだ瞬間学園長――舞さんはしてやったりというような笑顔をこちらに向けてきた。きっとこの人は自分の容姿を誰よりも理解しているのだろう。そしてその利用方法も。今それを確信した。
そんないたずらな笑顔でも可愛いと思うのは俺だけではないだろう。
「呼び捨てはさすがに無理があったか……じゃ改めて、ここに来た理由は聞きたいことと、伝え忘れたことがあったからなの」
最初にボソッと言った言葉は聞こえなかったことにしたい。てか結局はちゃんとした理由があるんじゃないですか! とつっこみたかったがこれは自分の喉の辺りでとどめることに成功した。
「聞きたいこと、ですか?」
なんだろうと思う。仮にも学園長なわけだから、少しばかりは俺の個人の情報を知っておきたいというところだろうか? 口調もさっきまでとはうって変わったように丁寧なものとなっているところをみると、興味本意で聞く内容ではないのだろう。
冷静に舞さんが聞きたいこと考えてみるが、分からない。とりあえず俺は「別にいいですよ」と質問を促す。
「うん。じゃあ単刀直入に聞くけど……哲ちゃんって火神家の一人なのよね?」
舞さんから重々しく言われたその言葉を聞いた瞬間、俺の表情は凍りついてしまっていたと思う。なぜ知っている? どうして? と頭のなかでは疑問が飛び交っている。口にした訳じゃないが顔に出てしまっていたのだろう。付け足すように舞さんは言ってくる。
「これは哲ちゃんが渡してくれた手紙の一文に書いてあったことなの」
その言葉を聞き余計に分からなくなる。
「えっ、ってことは……」
「そうよ。これは香織の推測、だったのだけどその様子を見ると推測は正しかったみたいね。なんでも、哲ちゃんが魔法を使うときの魔力の波動が現火神家当主の魔力の波動とほぼ一緒だったんだって。それにそのキレイな赤い髪。他にもいくつか理由が書いてあったけど、言う必要は無さそうね」
俺は舞さんから伝えられえた言葉に相当な動揺を強いられた。
でも、その言葉を飲み込むことができるとだんだんと姉さんのやさしさを感じ取ることができた。ほとんど確信していただろうに、その事に関して一度も聞いてこなかったやさしさを。
それに姉さんはこの学園に俺の事情を知っておいてもらうことが必要と考えたのだろう。きっとこれ以外にも俺の情報は舞さんは知っているだろうと考えた。
俺は自分の気持ちに整理をつけ、心を落ち着かせてから、
「そうです。僕は火神家の一人です。正確には一人でした。もう僕は火神家の人間ではありません。それとできたらこの事は舞さん以外には内密にお願いしたいんですけど……」
姉さんも信用している舞さんを信用して正直にそして正確に俺の事情について答え、他言無用にしてもらうことをお願いする。
「手紙にも書かれてなかったことについてまでは、聞かないでおきます。それとこの件について他の人には語らないことを約束しますので安心してください」
俺は舞さんの学園長としての器の大きさに感謝の示しとして「ありがとうございます」とお礼を述べる。
「お礼なんていいのよ。でも困ったわね……」
「何がですか?」
ぼそりと呟かれた舞さんの困った発言を俺は追求するように尋ねる。
「実はこの学園にはその火神家の姉妹がいるのよね……」
「……マジですか」
一体今日何回驚けばいいのだろうか。もう疲れてしまったと、ついそんなことを考えてしまう。それを表すように俺の驚きにはキレがなくなっていた。
「ええ、だからもしかしたらすぐにばれて、あなたの事情が広がってしまうかもしれないわ……」
別に舞さんが悪いわけではないのに、力になれなくてごめんなさいとでも言うようにショボンとなり、すまなそうに言ってきた。
「それはこっちでなんとかするので心配しないでください。それで伝え忘れたことって何ですか?」
俺は今この話を続けてもどちらにとってもあまり良いことにはならないと思い、これでこの話はおしまいと言うようにうち切り、次の話題へと促す。その俺の意志を感じ取ったように舞さんは俺の疑問に答えてくれる。
「あ、その事なんだけどこの学園の第二部の入学式の日程が急に変わっちゃって明日になったのよ。当たり前だけどこの学園の制服持ってないでしょ? だから明日までに制服を用意するから、学園に来たら職員室に行く前にまず学園長室に来て頂戴」
「……はい、分かりました」
なんか姉さんといい、舞さんといい、なんで重要なことを伝えるのがこんなに急になるのだろうか。つっこむ気力はすでになかったので内心呆れながらも頷く。
「じゃ、伝えることも伝えたしもう暗くなってきたから今日はもう帰るね」
『今日は』の所が妙に強調されていたが気にしないでおこう。きっと気にしても良いことなどないはずなのだから。
舞さんはそういった後「哲ちゃんおやすみ。また明日ねー」と言い残し部屋を出た。廊下からスキップのような足音が聞こえた時は思わず頬が緩んでしまったのは内緒にしておくとしよう。
舞さんが部屋から出た後、俺はシャワーを浴びてから明日の準備(ほとんどすることはなかったが)をしてベットに入り横になった。
そしてさっきの会話の中で出た火神家の姉妹について頭の中で思考を巡らせる。
(舞さんに迷惑をかけるわけにはいかないからああは言ったけど、実際ノープランだからな……。もし気付かれたらどうしようか……。もし火神家に戻ってきてなんて言われたら、俺は……)
俺は長旅で少なからず疲れていたようで思考の途中でいつの間にか瞼の重さに負けて目を閉じてしまい、夢の中へと堕ちていくのだった……