第三十六話 山菜探し
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「これどうかな?」
「ん……ちょっと待ってろ……」
葵は木の陰に生えていたキノコを指でさしながら新谷に尋ね、新谷は藁でできたかごを背負いながら、ポケットに入っていた植物について書いてある資料を取り出し、生えているキノコ近づいてしゃがみ、それと見比べながらペラペラとページをめくり始める。
「……お、これだな……うーむ……これはダメだな。食ったら笑うことになる」
「笑えることはいいことなんじゃないの?」
「確かに笑えることはいいことかもしれないが、これ死ぬはまで笑うことになる」
「死ぬまで笑顔!?」
「要するにすごく危k――」
「それってすごくない!? 死ぬときまで笑顔になれるんだよ!」
「そうだな……ってあれ? 言い方が悪かったのか……?」
どうやら葵と新谷が見つけたのは食べれるようなものではなかった模様。
「哲也。これ追加。ちょっと屈んで」
「おう、ってすごい量だな……」
美佳はドサドサと両手に抱えた山菜を俺の背負っているかごに入れ込む。
「ちゃんと食べれるよな?」
「当然よ。ちゃんと調べたわ」
「そうか……お疲れ様です」
美佳はそう言った後、腰を伸ばしトントンと叩いて、ふぅと一息ついていた。どうやら少々疲れたようだ。
俺らは今近くにある山で、第五・第六合同で山菜集めをしている。
レクリエーションはどうしたと言われたら、これがまさにそれなのだ。
一時間程度各学園同士での知り合いを作るための遊びをしたりした後に、山菜集めをしているわけだから、まだ続いていると言った方が良いのかもしれないが。
それとなんで山菜集め?と思っている人も多いと思うが、それは当然食材集めだ。
さらに疑問符が重なる前に答えるが、それをする理由は野外炊飯をするためらしい。
仲を深めるには料理が一番だ! ということらしい。一体誰がそんなことを言ったのやら。てかなんでわざわざ料理するのに俺らが山の中で食材集めからするんだよという質問が飛んだら『その方が楽しいでしょ?』という簡潔な答えが返ってきた。
その答えを聞いたとき、みんなが唖然としてたのは言うまでもない。とまぁそんなわけで、俺らは今山菜を集めをしているのだ。
ちなみに山菜集めを始めてから、およそ一時間くらいが経っている。
「おーい。ちょっとこっち来てくれー」
トシが興奮を隠せていない声で手招きしながら俺らを呼びかけてきた。
「どうしたんだ? 何かあったのか?」
俺の疑問にトシは「来ればわかる」とだけ言葉を残して歩き出した。俺はもちろん、美佳、葵、新谷もそのトシの後ろを追いかけた。
「朱里、美波、みんなを呼んできたぜ」
トシに名前を呼ばれた二人の少女は何かを掘り出す作業を止めて立ち上がりこちらを振り向く。そして「また発見したよー」という朱里の声が飛んできた。
「あの二人は何を掘ってたんだ?」
俺は朱里の発見したというものは、今二人で掘っているものだと思い、トシにそう尋ねてみた。
「ああ、タケノコだよ」
「タケノコ? それってあのタケノコ?」
葵はトシの答えに確認するように聞いてみている。
「そのタケノコだ。なんかここらが穴場っぽくってさっきからめっちゃ発見できんだよね。それにタケノコは今の時期が旬だからたぶんめっちゃうまいぜ!」
「いいね。夕食が楽しみになってきた! それに旬の食材なら高ポイントが貰えそうだな。ここらで一気に稼いじゃおうぜ」
「おう!」
俺の言葉にトシは強く頷いた。
説明するのを忘れていたが、このレクリエーション(山菜集め)では食材集めという意味の他に、ちょっとした勝負もかねているのだ。
俺が今さっき言った『ポイント』というのは勝負を決定付けるものだ。高ポイントやら低ポイントの判断基準は先生たちが俺らが採ってきたものを実際に見てみて決めると言っていた。
無論、勝負というわけで優勝チームには『なにか』という名の景品が出るらしい。
「トシ、早く来て。タケノコをかごに入れたいから」
喋りながら歩いていたせいか、歩くスピードが大分遅くなっていたようで、俺らが向かっている途中に見つけたタケノコを掘り出したようだ。
声をかけられたトシは急ぎ足で朱里のもとへと向かい、俺らもそれについていく。
「結構大きいの見つけたんだな」
「これは私が見つけたんだよ?」
美波はそう言って自慢気に胸を張る。
そういえば美波について紹介していなかったので今紹介しよう。
こいつは明智美波。性別は女。
葵と新谷のグループのメンバーで当然第五学園に所属。
話してみての印象は明るい感じでとてもいい奴。
腰まで届いているきれいな茶色の髪を後ろで縛る、いわゆるポニーテールという髪型をしている。目は澄みきった海のような青色、身長はそこまで高くなくて美佳や朱里とほとんど同じくらい。胸は身長に相応な大きさでしっかりと存在感を持っている。まぁ、言えば美少女だ。
「いやー、私って探す天才なのかも知れないわね!」
それとすぐに調子に乗る癖がある。後はよく新谷と喧嘩をしている。
「……アホっぽいな」
「誰がアホだっていうのよ!」
美波の自称天才発言に対して新谷がこぼした言葉に美波は反応する。
「お前」
「私のどこがアホっていうの!?」
「……全部じゃねえの?」
「怒るわよ?」
「別に怒ればいいんじゃね?」
「二人ともストップだよ」
新谷のどうでもよさげに言った言葉によって、軽く怒った様子の美波が新谷に向かっていこうとした瞬間、葵から仲裁が入る。
「葵ちゃん、ここは譲れないわ。私はこいつをとっちめる」
「正直どうでもいいが、こいつを黙らせてくれ。マジめんどくせぇ」
「なによ? やるっていうの?」
「うるせぇよ」
しかし、葵の仲裁もむなしく、二人の口喧嘩は終わる様子はない。
「ふたりとも?」
「「……ごめんなさい」」
と思われたが、葵の笑顔で出している殺気に戦慄した二人は同時に謝った。
「二人の口喧嘩も仲直りで終了したことだし、みんなでこの辺りでタケノコ探しでもしようか」
葵から出た提案にみんなは頷き、行動を始めた、