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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第三十三話 計画

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

「また後でね~」


 僕は走り去っていく美佳ちゃん達四人を見守りながら手を振っていた。そして横に立っている洸太に肘打ちをして、君も声をかけなよという意思を伝える。洸太は僕の意図が分かったようなんだが「俺はいい……」とだけ言ってきて何もする様子がなかった。僕はそんな洸太についため息が出てしまった。


「どうして何も言葉をかけられないかな~。友達としての礼儀でしょ?」


 美佳ちゃん達が走り去っていって、その姿が見えなくなった後、僕は洸太に話しかけた。


「いつ俺があいつらと友達になったんだ?」


 僕は洸太からの言葉に再びため息が出てしまう。


「またそういうこと言って……実は普通に話しかけてくれる人がいてくれてうれしかったくせにー」

「は? 誰がいつそんなこと言ったよ。それに今回俺に話しかけてきたのは、お前のついでがほとんどだろ。だいたいこんな無愛想な俺に対して好き好んで話しかけてくるんだよ?」


「僕!」

「……確かにその通りだけどな」


 洸太は一瞬呆けた顔をして何も言えなかった感じだったけど、立ち直ってからそう言ってきた後、


「あーあ、全員がお前みたいな奴だったらきっとこの世界はもっと平和なんだろうな」


 皮肉交じりに、ひとり言のように呟いていた。

 傍から聞いていれば軽い苦笑いで済むだろうが、洸太の親は国同士の争いが原因となって亡くなってしまっているのだ。詳しいところまでは教えてくれなかったが、自分の目の前で殺された、ということも教えてもらった。そしてそれが影響して本当に人に心を許すことができないということも。

 事実的に洸太は無愛想だし人当たりもあまり良くない。そのせいで洸太の周りには、人がほとんど集まってこない。そしてそれにより、洸太も未だに心を許せる相手がほとんど出来ていないのだ。僕はいろいろとわけありで洸太に親しみを覚える出来事があったから、洸太と仲良くしたいと思って今のような関係になっている。

 僕はこの合宿を機に、洸太に『友達』の良さをよく知ってもらう予定でいる。

 ちなみに僕がこうして宿からここに来たのも、早い段階で仲良くなれそうな人を探すためだったりするのだ。まぁ、買い物したいということも確かにあったんだけどね。

 そんな中美佳ちゃんとそのお友達に会えたのは、一種の運命的なものなのかも! とか勝手に思ってたり。

 美佳ちゃんは相変わらずいい人だったし、そのお友達の人もとても良い感じだった。

 洸太もあんな風な態度を取ってるけど、内心では美佳ちゃん達のことを悪くは思ってないはず。僕の勘では悪いどころか良いかもしれない。

 この合宿中には十分『友達』と言える関係になれるだろうと予測している。

 今までならそんな簡単にいくとは思えなかったのに、なぜかは知らないけど、今回は上手くいく気がしていた。


「それじゃ、笑顔で宿に帰ろー!」

「……いや、笑顔になる必要なくね?」


 僕はそんな期待を胸にルンルン気分で外に足を向けるのだった。



――――――――――――――



「……間に合った、かな?」

「た、たぶんね……」


 集合場所に辿り着いた俺らは、息を切らしながら周りの状況を確認してみて、なんとか間に合ったことが判ると胸を撫で下ろした。


「とりあえず、朱里には感謝しないとな」

「ホントにね。こんなところで置いて行かれちゃったら堪ったもんじゃないものね」

「一応感謝してやらんでもないな」


 俺が息を整えてから朱里に対してそう言うと、美佳も便乗するように言ってきた。朱里は満更でもなさそうに照れていたが、トシからの上から目線の一言にイラッとしたようで一発頭を叩いていた。


「いてぇよ、バカ!」


 当然トシは怒ったように朱里に罵声をぶつけるが、言われた朱里は特に気にする様子もなくスルーしていた。


「こういう時くらい素直に感謝しても良いんじゃないか?」

「絶対に嫌だ。なんか敗北した気分になる」


 俺が呆れたように言うと、トシは俺の意見を聞く気はないようだった。


「ツンデレ……?」

「美佳、それは違うと思うわよ」


 美佳はトシの様子を見てそう呟くと、朱里が苦笑しながら的確なつっこみをいれていた。


「生徒のみなさーん、クラスごとに並んでください。右手からA,B――」


 そんな風に会話していると時間になったようで先生からの声がこの場に響いてきた。


「それじゃ、また後でね」

「おう」


 俺らはそう言葉を交わした後、俺とトシ、美佳と朱里というふうに別れて各自のクラスの元へと戻った。


 各クラスごとに点呼をとり全員がここに集まっていることが確認できた後、先生が俺らの前に出て話を始める。


「これから宿舎があるハイデンベルクトに向かいたいと思います。ここに着いたときにも言いましたが徒歩で向かいます。時間は大体三十分くらいです。道中魔物が出てくることがありますが、ここ辺りにはそこまで危ない魔物が出てくることはないです。出てきたとしても私たち教師がなんとかしますので安心していいですが、魔物が出てくるかもしれない、ということは頭に入れておいてください。パニックになるということだけは避けるようにしたいので」


 先生からの話の中に出てきた『魔物』という言葉にほとんどの生徒たちが反応する。ビビって恐怖を抱いている人もいれば、強がって見せている人もいる。


「それじゃあ早速、出発したいと思います。担任の先生が前に立って先導してください。それではA組から順に出発してください。列は崩さないように!」


 先生から告げられた言葉により、A組の担任が生徒を呼び掛けてから、先頭を歩いていき、それに付いていくように生徒たちが歩き始める。B組も同じようにして出発していく。そして俺達C組も同じように……


「C組のみなさんは少し待ってください」


 行くと思ったのだがそうはいかなかった。クラスの人たちは先生からの言葉に一瞬疑問を持つが、すぐにその理由が告げられる。


「岡嶋先生がまだ戻ってきていないので、到着まで待っていてください。それではC組は飛ばしてD組のみなさん出発してください」


 いわれたD組の生徒たちはA、Bと同じように歩いて行く。


「おい、もしかして……」

「たぶんな」


 トシは岡嶋先生のいる場所を言おうとしたのだろう。俺はトシの言いたいことが分かったので、トシがそれを言い終わる前に頷いた。

「先生! 岡嶋先生を迎えにいってきても良いですか? いる場所に心当たりがあるので」


 俺は前にいる先生に大きな声で呼びかける。


「そうですね……照沢先生が同行するならいいですよ」

「分かりました」


 俺とトシは一緒に前の方に行って、照沢先生に「お願いします」とだけ声をかけて岡嶋先生がいるだろう場所に走って向かった。



――――――――――――――



「あの先生はホントに自由すぎるだろ……」

「だな。よく先生になれたと思うわ」


 俺はついそう呟くとトシも同意するように頷いてくれる。


「確かに自分勝手で自由奔放に行動して迷惑をかけているダメな先生かもしれないけど、そう言わないであげましょ?」

「……照沢先生が一番ひどいことを言ってますよ。たぶん」


 照沢先生は俺らの言葉を聞いてフォローを入れるようとしたのだろう、振り返ってから俺らにそう言ってくるが全くフォローになっていなかった。


 俺とトシはやっぱり同じように予想していたようで、おでん屋へと向かった。向かってそこに着いたんだけど、店長に話を聞くと十分前くらいに、『やべ、時間過ぎてんじゃん。しょうがないし向かうか……』と言って店から出ていったそうだ。つまりいる場所の予想は的中していたのだが、残念ながら入れ違いになってしまったのだ。まぁ遅れてしまっただけならまだ良かった。

 なのに集合場所に戻ってみるとさっきまでいた生徒たちが全員いなくなっていたのだ。なんとなく、というか確実な予想がつく。周りからの抗議にも『二人が来ないから待て? そんなんいいって、とりあえず出発~』と言っている岡嶋先生の図が目に浮かんできた。


 今は俺とトシと照沢先生の三人でハイデンべルクトへと向かっている。当然のことながら照沢先生が前を歩いて俺らを先導している。歩き始めて十分くらい経つが、今のところ何かが起こた、という事はない。


「なんかあの鳥が岡嶋先生に見えてくるぜ」

「あー、分かる気がする……」

「あれは……」


 トシは空を見るように上を見てそう呟いた。俺も同じようにして空を見上げ、3匹でまとまって飛んでいる鳥を見ながらトシの言葉に頷く。照沢先生も空を見上げるが、俺とトシとは反応が違い険しい顔になる。


「先生、どうしたんですか?」

「あれはただの鳥じゃないわ……」


 俺はその照沢先生の変化に気付いたので、先生に問いかけると呟くように俺の疑問の答えを述べていく。


「魔物よ」


そして、最後に告げられた言葉に俺とトシは驚きを隠せない。


「落ち着きなさい。魔物、と言ってもそこまで危険じゃないわ。『ガルーダ』という鳥類の魔物よ。授業で習ったでしょう?」

「あれがガルーダですか……見た目普通の鳥ですね……」

「確か弱点は『火』だったよな?」

「正解よ、晒科くん」


 トシが確認するように呟くと、先生は授業の時に生徒を褒めるようにして微笑むようにトシに対して言う。


「それで、どうするつもりですか?」


 俺は和みそうになっている空気を現実に戻すように先生に対して聞いてみる。


「そうですね……今のところ気付いている様子はないけど時間の問題でしょうね。ガルーダは攻撃する時、ものすごいスピードで突進するのが基本でもありすべてでもあります。まずはその突進を防ぐのが先決になるでしょう。その突進は私が防ぎたいと思います。そして勢いが止まったところを楠木くんと晒科くんで倒しちゃってください」


 照沢先生からの提案に俺とトシは頷いた。


「……来た!」


ガルーダ三匹は俺らに気付いたようでこっちに向かって飛んでくる。


「速い!」


 トシはその速度に戸惑いを隠せていなかった。俺は想像以上の早さだったが特に気負うことはない。照沢先生は魔法を放つために呪文を唱えていた。


「光よ、堅固たる盾となりて主を守れ。『フォースフィールド』」


 呪文が唱え終わると薄い光の膜が俺らを包むようにして広がっていく。これは光属性の結界魔法。見たのは舞さんが模擬戦の時に見せた時以来だ。

 ガルーダはそれが見えていないのか、それとも見えていてあえてなのか、スピードを緩めることもせず俺らに向かってくる。

 バシィッという音が重なるように響き、ガルーダ達は地面にフラフラと落ちていく。

 その隙を逃すわけにはいかない!俺は『体氣』で足を強化し地面を蹴ってガルーダに向かっていきながら、火を纏わせた『空氣』で足を包みそれを横薙ぎに振るう。


「『かまいたち・火燕』」


 この技は岡嶋先生との模擬戦で使った技を改良して創った魔空技の一つである。横一線の赤色の細い線がガルーダに襲いかかる。

 それが当たったガルーダ達から苦しそうな叫び声が上がる。


「『グランドランス』」


 そしてそこにトシの土魔法が完成する。地面から先が尖がっている土の槍がガルーダを襲う。俺の魔空技によって怯んでいたのでトシの魔法は直撃して、ガルーダの体に土の槍が突き刺さった。

 俺らはガルーダが動かなくなったのを確認して安堵の息を吐いた。


「これでもあんまり危険じゃない方の魔物なんだよな……」


 トシはしみじみと言った感じで呟いていた。


「さて、三人無事だったことだし、改めてハイデンべルクトに向けて出発しましょう」


 照沢先生は張り切るような口調で出発の言葉を口にする。

 俺らはそれを聞いた後、またハイデンべルクトに向かって歩き出した……



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