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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第三十話 昼食

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

「「「着いたー!」」」


 船着き場に到着すると、生徒たちからそんな声が出てくる。

 ちなみに俺もこの声を出した内の一人だ。

 船の上での三時間という時間は降りた時の喜びが大きくなるには十分な時間だった。


「哲也、もう大丈夫なのか?」

「少し酔いが残ってる感じがするけど、寝てたおかげでだいぶ良くなったよ」


 トシが俺の様子を伺ってきたので、俺がそう答えると、トシは「そうか」と言ってどこかほっとしたような面持ちだった。

 トシが俺のことを心配してるだと分かったので嬉しく思った。


「あっちにいったん集まるらしいから行こうぜ」


トシの促しの言葉に頷いて、俺はトシと一緒にクラスごとに学園の生徒が集まっているところに混じった。


そこに行くと生徒の前に先生たちが立っていて、生徒に指示を出すところだった。


「これから歩いてハイデンベルクトの町に向かうのですが、皆さん船旅で疲れていると思います。というわけでここで各自行動班に分かれて休憩してください。それと時間も良い時間帯なので昼食もここで食べてください。ここにはいろんな店があるのでいろいろ見てみるといいですよ。ああ、別に食べたくない人は食べなくていいですけど、宿で夕御飯を食べるまで何もないですからね? 一時間後にまたここに全員集まってください」


 そうして先生からの「それでは、一旦解散!」という言葉で生徒たちは動き出した。


「俺らはまず美佳と朱里を探すか」


 そんな生徒たちの様子を見て、俺は隣にいるトシに声をかける。

 トシはそれに頷いたので一緒に探し始めようとすると、


「おーい。トシに哲也くん。こっちだよー」


 すぐにどこからか朱里の俺らの名前を呼ぶ声が聞こえた。

 声が聞こえた方向を見渡してみると、俺らに向かって手を振っている朱里と隣にいる美佳の姿が見てとれた。

 俺とトシは人混みを掻き分けながら、朱里と美佳が立っている場所に小走りで向かい合流する。


「よくあの人混みの中から俺らを見つけられたな」

「考えてみると確かにすごいな」

「うちにかかればあれくらいの人混みなら、人じゃなくて犬とかでも余裕で見つけられるよ!」


 俺が感嘆するように言うと、朱里はエッヘンとでも言うように自慢気に胸を張る。その朱里の様子を見て美佳は呆れたような顔をしてこう言った。


「別に朱里は哲也とトシくんを見つけたわけじゃ無いわよ」

「ちょっと美佳!? 何言ってるの?」


美佳からの言葉に朱里は突如慌て出す。しかし美佳の攻撃は休まず続く。


「何言ってるのって言われてもね。『あそこ辺りに向かって叫んでみればきっと気付いてこっちにくるよね?』とか言ってたのはどこの誰だったかしら?」

「うっ……」

「全く。止めさせようと思った瞬間に叫ぶんだもん。周りの視線が気になってしょうがなかったわ。それにすぐ来てくれたからまだよかったけど、あれでもし哲也たちが来なかったら恥ずかし過ぎるわよ」

「うぅ……」


 美佳にしては意外な毒舌具合に朱里は何も言えずに唸るだけだった。


「結局はそういうことだったんだな」

「なーんだ。ただの嘘かよ。褒めてそんしたぜ」


俺が納得するように言うと、トシはため息交じりにそう言った。


「……べっ、別に気づいたんだから良いじゃない!」

「なんか言った?」

「すいませんでした……」


 みんなから責めらるように言われたことに縮こまっていたが、突如開き直ったように言うと、美佳からの冷たい視線と言葉が突き刺さりすぐさま謝って項垂れてしまう朱里だった。


「ま、まぁ、とりあえず行こうぜ」


 トシが気まずくなりかけている空気の中そう声をかけた。




「昼御飯何か希望ある?」


 歩き始めてすぐに美佳がみんなに尋ねる。


「いろんな店があるって言ってたし、テキトーにぶらついて旨そうな料理がありそうな店に入れば良いんじゃないか?」

「俺もそんな感じで良いや。別にこれが食べたい! みたいな希望はないし」

「うちもなんでもいいですよ。美佳さんが好きに決めるといいんじゃないでしょうか?」

「みんながなんでもいいならちょっと行きたいところがあるんだけど……」


 トシが美佳の疑問にそう答えたので俺もそれに賛成の言葉を述べる。朱里はさっきの名残?で敬語になりながらそう言った。

 自分以外の要望を聞いた後、美佳が遠慮気味に言ってきた言葉にみんなは了承の意を込めて頷く。


「前にここに来た時に、屋台なんだけどおいしい料理が出たところがあったから、またそこに行きたいなーって思ったんだけどどうかな?」

「へぇー、屋台か……なんか面白そうだな。俺はそれで良いぞ」

「良いんじゃないか」

「良いと思います」


 美佳が出した屋台という提案はトシの興味を惹き付けたようで、トシは美佳の提案に賛同する。俺と朱里もそれに継いで頷く。


「それじゃあ、行きましょうか」


 美佳はみんなの了承が取れたことに嬉しそうな笑顔を浮かべながら「あっちだよ」と前に立って俺らを先導しだす。


「それで、どんな感じの料理がある場所なんだ?」


 俺は美佳がおいしいと言った料理がどんなものなのか聞いてみる。


「おでんだよ」

「「「おでん?」」」


 美佳の答えた料理名に三人同時に首を傾げた。


「……もしかして嫌いな人とかいた?」


 その様子を見て恐る恐るといった感じで美佳が尋ねてきたので、これまた同時に首を振る。


「じゃあ、何?」


美佳は訝しげな様子で聞いてくる。


「うーん……」

「なんて言うか……」

「……意外?」


 見事な連係プレーで繋げた俺らの言葉に軽く呆れながらも、美佳は「そうかしら?」と首を傾げてから、


「でもホントにおいしいんだよ! 食べれば誰だってそう思うよ!」


 興奮気味にその店のおでんについて話しだす。


「美佳がそれだけ推す店ならきっとマジでおいしいんだろうな」

「楽しみだね~」


 そんな美佳の姿に苦笑いを浮かべながら俺がその店について期待を膨らませると、朱里がそ便乗するようにそう言った。




「あれだよ」


 その店に着いたようで、美佳はその店を指で指し示す。


「人気の店……ってわけじゃなさそうだな」


 特に人だかりどころかだれも来ていないところを見て、俺はそう感想を零した。


「私が前に来た時もこんな感じだったよ。ま、とりあえず入ろう?」

「そうだな」


 美佳がそう促してきたのでおれは頷いて屋台の中に入る。


「いらっしゃい!」


 すると中にいた目の前の男性からの元気の良い声が耳に入った。

 顔つきはは優しそうだが、肉体は鍛えられている。歳は四十代後半といったところだろうか。

 屋台の印象は中に入っても変わらないが、目の前にあるおでんを煮込んでいるところから漂う香りが凄く良い。


「おじさん、まずは大根四つお願い」


 美佳は座ってからすぐに注文をいれる。おじさんは「あいよ」という返事をして大根に串を刺して一皿一つづつ乗っけていく。


「はい、どうぞ」


 それぞれが簡単なお礼を言ってそれを受けとり、食べやすいサイズに切り取って一口食べてみる。


「う、うまい!」


 俺は口からそう感想をこぼした。いや、ほんとにうまい。まず出汁が違う感じがした。それによく煮込まれていて、味がよくしみている。あまりの美味しさに出された大根をすぐに食べきってしまった。


「美味しい……」

「これマジうまいわ!」

「でしょ?」


 朱里とトシも同じような感じで大根をすぐに食べきった。美佳は俺らの美味しいという感想に満足そうに頷いて自分も食べ始める。



「はんぺんを一つと……後玉子を一つ下さい」

「俺、がんもを一つ」

「あ、俺もがんもを一つお願いします」

「あいよ」


 とこんな感じで俺らはおでんを頼み続けていた。おじさんはニコニコとした営業スマイルで対応し続ける。


「いらっしゃい!」


 すると他のお客も来たようでおじさんは元気の良い声でそう言った。


「あれ、お前ら!?」

「岡嶋先生!?」


 そのお客の方を見てみると、そこにいたのは岡嶋先生だったので驚きの声をあげる。


「驚きたいのはこっちだよ。ここは知る人ぞ知る絶品のおでん屋だぞ。なんでお前らが知ってるんだ?」


 妙に驚いた様子の岡嶋先生に軽く困惑しながらも俺は答える。


「俺らというよりも美佳が知ってたんですよ」

「私は父に連れられてここを知ったんです」

「……火神の父さん? ……そういうことか」


 美佳の答えに岡嶋先生はボソボソと独り言を言った後、真剣な顔つきから納得したような表情に変わった。


「どうしたんですか?」

「なんでもねえよ」


 俺は気になって尋ねてみるが、軽くあしらわれてしまった。


「気にすんな。それよりもちゃんと食えよ? ここのおでんはマジ絶品なんだから」


 岡嶋先生は話を流すようにそう切り替えた。俺は詮索することでもないなと思い、そのまま昼食であるこのおでんを美味しく堪能するのだった。




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