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Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
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第二十八話 思い出話

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 放課後になって数分。

 俺はすでに生徒会室に来ていた。

 俺らのクラスでの班決めは、岡嶋先生の所為おかげで思った以上に早く終わったのだ。

 どのような感じだったかというと……



「お前らー、紙をちゃんと確認して班のメンバーとかちゃんと決めたよな? 決まってない奴は三分待ってやるからさっさと決めろ。それで決まらなかったら俺が余った奴らで適当にグループ作るからな」



 という感じだった。あまりに適当な言い分に批判の声も上がったが全く意に介した様子もなく「うるせーよ。たく、めんどくせえ」とぼやくだけで、何かしらの対応を取る様子など見せなかった。

 必死でグループを決めようとしている生徒たちの様子を見ていて俺は少々酷だなと思った。

 特にその必死に決めようとしてた人たちが結局決め終わらず班のメンバーを岡嶋先生から宣告された時は。



「哲也くんの班のメンバーは誰がいるの?」


 時期も時期ということで、合宿を話題として、生徒会のメンバーの人たちと雑談をしていた。今、俺に質問してきたのは美月さんである。


「えっとですね……俺の男友達のトシってやつと、美佳と美佳の女友達の朱里って人です」

「……男子二人に女子二人ね。いけないことしちゃダメだよ?」

「しませんよ!」


 クスクスと笑いながらからかうように言ってきた美月さんに、速攻で否定の言葉を述べる。


「火神の妹のような美少女だけではなく、さらにもう一人の女子と一緒に行動なんて、羨ましいぞ哲也ぁ!」

「野田さん、黙ってください」


 心底羨ましそうに叫ぶ野田さんには黙るように言う。


「合宿……楽しくなると、良いですね」

「……はい」


 鷹已さんは二人とは違いまともな言葉を言ってきてくれたので、俺は素直に頷く。


「ふーん……美佳と一緒……それに女子がもう一人か……」

「会長?」


 いつもより低めのトーンでボソボソと呟いている優姉に俺は声をかける。


「どうせ女子二人に『俺についてこい。可愛がってやんよ』とか言ってキャッキャ、ウフフなことでもするのよね……」

「そんなこと言いませんし、しませんよ」


 確かに声をかけたのだが優姉は聞こえなかったかのように、ボヤキを止ようとはしない。

 俺は優姉の妄想の中に変なところがあったので否定の言葉は一応言っておく。


「かわいそうな私を置いて一人で楽しんでくるのよね……はぁー……」

「一人で行く訳じゃないですけど……なんか、ごめんなさい」


 優姉はわざとらしい大きめなため息をつく。その優姉の様子が怖く見えたので、俺は謝罪の言葉を述べたが生徒会室に気まずい空気が流れ始める。


「ごめんなさい。遅れちゃいました! ……ってあれ何この空気?」


 そんな中美佳が勢いよく扉を開いて登場し、不穏な空気を感じ取り、疑問を口に出していた。


「いや優姉がさあ……」

「実は美佳ちゃんが来るまで合宿の話をしてたんだけどね、今さっき哲也くんが『合宿では美佳と二人っきりになってキャッキャ、ウフフなことしてーなー』とか言い出したからみんなで引いてたところよ」


 俺がこんな空気になっている理由を話そうとしたら、突然割りこむように美月さんが美佳に嘘っぱちの事情を説明し始める。てか優姉の妄想より進化してる!?


「いや、俺はそんなこt――――」


 その嘘の内容がひどすぎるので否定しようとするも、


「最低よね! ほら美佳ちゃん。こんな哲也くんどう思う?」


 言葉を遮られるように、美月さんから追撃をくらう。

 美佳は美月さんの言葉の言葉を聞いて、ゆっくりと俺のいる方へと寄ってくる。

 

「あの……? 美佳…さん?」


 俺はなんかものすごいものを後ろに纏わせながら近づいてくる美佳に、戸惑いながらも声をかけるが、その歩みは止まらない。


「そんなこと考えてたんだね~」

「とにかく聞いてくれ! 話せばわかる!」


 そして笑顔(目は笑ってない)でそう言ってくる美佳が俺の目の前にまで来ていたので、俺は後ずさりながら弁明の時間がほしいとばかりに叫ぶ。


「ほら逃げなくていいわよ? 一瞬でむから」

「いや、怖いから! って漢字おかしかったよね!? ……ってやべ」


 つっこみを入れている間に、気付いた時には後ろは壁で逃げる場を失う。


「マジで誤解だって!」

「この――」


 最後の弁明の言葉もむなしく、美佳は手を振り上げて、


「へんたーーい!!」

 

 叫びながら思いっきり俺の頬を引っぱたいた。




「いてぇ……」


 俺は美佳の手形がくっきりと残ったヒリヒリする頬をさすりながら、全員が集まったということでいつものように雑談しながら仕事をしていた。ちなみに誤解ということはちゃんと分かってもらえた。


「美月さんも悪ふざけはやめてくださいよ……」

「ごめんね」


 テへっと舌を出しながら謝ってくるところを見る限り、この人はいつか再びこういうことをやってくるのだろう。


「それにしても合宿なんて懐かしいわよね」


 優姉はしみじみとした感じで夏目さんに話しかけていた。


「確かにそうね」


 夏目さんは優姉の言葉に頷き、


「優奈がいろいろと伝説を作った合宿ですものね」


 そう言った瞬間、優姉の表情が固まったように見えた。


「あれか! 確かに懐かしいな。思い出すだけで笑えてくる」

「ですよね。あれはホント面白かった」

「まだ覚えていたのね……あんなの私の黒歴史よ!!」


 野田さんが固まっている優姉をよそに夏目さんとその時の思い出話を始める。それは優姉にとってはトラウマのようで覚えていることを恨めしげにしている。さらには自分で黒歴史って言ってるし……一体何があったのだろうか。


「お姉ちゃんに何があったんですか?」

「私も興味あるので教えてください!」


 興味津津の様子で美佳と美月さんは夏目さんに問い詰めるように聞いていた。


「それはね――」

「わーー! わーー! 涼華、何も言わないで! お願い! 拝むから!」


 夏目さんは二人に教えようとするが、優姉は騒がしくして聞かせようとしない。最終的には夏目さんに懇願するように頼んでいた。


「一体何があったんですか?」


 これは聞かないわけにはいかないということで俺はこっそりと野田さんに聞いてみた。


「それはだな――ぶふぁ!!」

「言ったら殺すわよ! 聞こうとした人もそれと同じ目に合わせるから」


 しかし、野田さんが俺に答えようとした瞬間、野田さんに火の玉が直撃してぶっとばされていた。間違いなく優姉による火の魔法だろう。そして冷徹とも言える視線で焦げている野田さんを指でさしながらここにいる人たちに対して釘をさしてきた。これには全員頷くしかなかった。


「まぁ私たちの話は置いておくとして二年生はどんな感じだったの?」


 優姉は空気を切り替えさせるような話題転換で二年生に尋ねていた。


「私たちですか? 特にすごい出来事があったわけでないですけど、とても楽しかったですよ。ねっ? 百花ちゃん」

「うん。楽しかった……でも、他校との交流……すごく緊張した」


 鷹已さんが言った言葉に俺は疑問を持つところがあったので首をかしげる。


「交流ですか?」

「あれ、哲也知らないの?」

「しょうがないだろ。俺らの担任、詳しいこと全く教えてくれないだよ」


 なんで知らないの? と言わんばかりに美佳は言ってきたので、俺はそのわけを簡潔に答えた。


「実は、この時期に合宿をするのは私たちの学園だけじゃないのよ。王立魔法学園がここ以外にもいくつかあるのは分かるわよね?」

「はい。実際ここが第六ですし……」

「まぁ魔法学園は第八まであるの。それで、王国側から『魔法学園同士で交流を深めようじゃないか!』とか言ってきて、生まれたのがこの合宿での交流なの。でもさすがに全部の王立魔法学園が来たら交流もくそもないから、二つで一つのペアにしようとなったのよ。ちなみに私たちは第五とペアよ」

「この合宿にはそんな目的があったんですね」


 少しばかりどんな人がいるのか楽しみだと思う。


「そういえばよ、合宿の場所って俺らと同じで、あの旅館だよな?」


 野田さんが突然、自分にはどうでも良さそうなことを尋ねてくる。


「ええ、たぶんそうよ」

「そうかそうか。哲也今日の仕事が終わったらちょっと俺と一緒に来い。言いこと教えてやる」

「はいはい……分かりました」

「なんだその返事は。ホントに良い情報なんだぞ!」

「まぁ、ろくでもない情報だと思うので、期待はしないでおきます」


 優姉が疑問に答えると、野田さんは満足そうに頷いてからそう言ってきた。こういうときの野田さんは無駄にしつこいと知っているのでめんどくさいなと思いながら頷く。

 野田さんが周りから訝しげな視線を浴びているのは当然のことだろう。


「何を教えるつもりなんでしょうかね……」


 夏目さんが野田さんに対して呆れたように呟く。


「ほら、仕事進めるわよ!」


 優姉の喝によって生徒会のメンバーは仕事に精を出すのだった。






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