第二十七話 生物
開いてくださりありがとうございます。
説明会です。とは言っても説明にすらなってないかもですが……
誤字脱字あったら報告お願いします。
「「「「「がっしゅくぅ!?」」」」」
生徒たちの叫び声が教室に響き渡った。
「うっせえな。隣の教室の人に迷惑だろうが。後で怒られるの俺なんだぞ。静かにその紙でも見てろ。てかマジで見とけよ。俺は放課後ぱっぱと決めたいんだ」
そんな生徒たちの様子に岡島先生はしかめっ面でそう言って、教室を出ていった。
「あの人……ただ自分が早く帰りたいだけなんじゃ……?」
一人の生徒がそう呟いたが、きっとそれが一番の理由だろうとこのクラスの誰もが思うのだった。
「ほら、皆さん、席についてください。授業をしますよ」
女の先生が教室に入って授業の始まりを告げると、立っていた生徒はあわてて自分の席に座った。
その先生は生徒たちのあわてた様子を見て優しそうな微笑みを浮かべている。
確か名前は照沢光子だったはず。年齢は若くて容姿は良く、マロンペーストの髪に碧眼を持っている。教えることはこの世界の地理や生物についてである。魔法技能は自称で「そんなに強くないですよ?」だそうだ。魔法を使っているところを見たことがないのでよく分からないが。ちなみにこのクラスの副担任である。
照沢先生は全員が座ったことを確認した後、起立、礼を行わせ授業を開始する。
「今日は生物について授業をしていきます。まずは、そうですね……西田くん」
「はい」
先生に名前を呼ばれた真面目そうな男子生徒が返事をして立ち上がる。
「君は生き物を大きく二つに分ける分類はなんだと思いますか」
「魔物とそれ以外でしょうか?」
「その通りです。座って良いですよ。次は……晒科くん」
「はい」
西田という男子生徒は席に座り、トシが返事をしてガタッという音をたて、勢いよく立ち上がる。
「魔物なのかそうではないのかの区別の仕方はなんだと思いますか?」
聞かれた質問に少し考えてからトシは答えた。
「……理性があるかないかだと思います」
「間違ってはいませんが、それでは正解とまではいきません。あ、晒科くん座っていいですよ」
トシは正解ではなかったのが悔しいようで、少しがっかりした様子に見えた。
「模範解答としては人だけに限らず生き物たちに害を成すものたちというべきですね。理性がないのは基本的な魔物の特徴ですが、魔物によっては理性と知性を兼ね備え、考えて悪さをしてくる性質の悪いものもいます」
トシが言った回答は誰もが正解だったと思っていたようで、先生の説明にみんなが聞く耳を立てている。
「それではなぜ魔物の大体が理性を保っていないのでしょうか? 皆さん分かりますか?」
先生は自分がかけた問いかけに答えられる人がいないことを確認し、説明の続きを述べていく。
「それは魔物になる過程に理由があります。魔物も初めのうちはただの生物と同じです。しかし何かしらの原因によって多量の魔力が体内に入っていきます。少しの魔力が体内に吸収されただけなら、その生物は魔力酔いになるだけで悪くても少し周りに被害を出す程度で済みます。体内にある魔力は一定の量しか保持することができないのです。膨大な量の魔力を取ってしまうことにより、その生物は魔力を持ち切ろうとして姿、形を変えていきます。それによってその生物は進化、というかは微妙なところですが、元の時より強くなっていき、最後には理性まで奪われてしまうのです。そして完成するのが魔物というわけです」
「先生。それだと人間も何かしらの原因によって魔物になることがあるんじゃないんですか?」
このクラスの女子生徒の一人が先生に向かって疑問を投げかけた。
「人工的に限界を超えた多量な魔力を送らない限り、人間はそういうことがないような体の構造になっているので基本的には大丈夫ですよ。この理論は元々の魔力保持量が少ない動物に当てはまる定義です」
「そうですか……」
その生徒はホッとしたような面持ちになっていた。先生はその様子を一瞥した後、一呼吸置いて話を続ける。
「次は生物の中でも特別な存在の生物について話します。それはエルフと竜と精霊です。どれも一度は聞いたことがある名前だと思います。聞いたことがない人はこれから覚えれば良いので気にすることはないですからね」
先生は少しバツが悪そうにした生徒に対してそうフォローいれて説明を続ける。
「まずはエルフからですけど、これは私たちが使っている魔法を開発したと言っても過言ではない存在です。今では絶滅したとされていますが、噂では少ないながらもどこかで集まって生活していると聞きます」
「先生はその噂を信じていますか?」
「言い方が変かもしれませんが『信じたい』といった感じです。ぜひ会ってみたいですからね!」
先生は興奮したようにそう答えると、生徒たちからの目線が恥ずかしかったようでコホンと咳払いをした後に話を続ける。
「次に竜ですが、これは今ではしっかりと存在が確認されています。基本的に人間とは関わらないようなので見たことある人はそんなに多くはないでしょうが、とにかく大きくて強いです。ほんとに強いです!最初に竜は人と関わらないと言いましたが、竜によってはなにかしらの原因で人間に憎しみを持っているために、敵対するのもいます。こういった竜は人間を襲うことがあるので、近づくのはやめておきましょう」
「先生は竜を見たことあるんですか?」
「私は一応見たことはあります。ただ空を通り過ぎた竜を見ただけですが、その大きさと迫力は凄まじかったです」
先生の答えに今度は生徒たちがワイワイと騒ぐ。どうやら竜という存在に憧れを抱く人が多いようだ。先生は騒ぐ生徒たちに「静かに」と声をかけ説明を続ける。
「最後に精霊ですが、これは存在を認知することすら稀だと言われます。認めた者にしか姿を現さないそうです。精霊は小さいものから大きいものまで生息しています。私はやり方を知りませんが精霊は契約することが可能だそうです。知らないというのも『精霊』によって契約条件が違うからです。『六家』の各当主達が精霊の中でも一番の力を持っている『六大精霊』といわれる存在を一つずつ契約しています。『六大精霊』とは火の大精霊『イフリート』。水の大精霊『ウンディーネ』。風の大精霊『シルフ』。土の大精霊『ノーム』。光の大精霊『レム』。闇の大精霊『シャドウ』です。もし『六大精霊』が力を合わせたなら簡単に世界を制圧できるでしょう。それほど大きな力だそうです。とは言ってもその力を私は見たことないんですけどね」
「先生でも精霊を見たことないんですか?」
「残念ながらありませんね。今度火神さん宅に行って見せてもらいにいこうかしら。無理やりにでも入り込んで……ぶつぶつ……」
「せんせーい、戻ってきてくださーい!」
「はっ! ……はしたないところをお見せしちゃいましたね」
先生は少し顔を赤くしながら照れ笑いを浮かべながらそう言った。どうやらこの先生は生物についてはいろいろとおかしくなっちゃうようだった。
午前の授業が終わって昼休み。
「これって、明らかに手抜きだよな」
「誰が見てもそう思うだろ……要点のみすぎる。てか足りないか……」
俺とトシは購買で買ってきたパンを食べながら合宿の紙を改めて見直していた。
そんな中出てきた言葉がこれだった。何回見ても手抜きという言葉しか出てこない。俺らだけじゃなくてこの紙をみればこんな感想を漏らすだろう。
紙の内容が……これである。
――――――――――――――――――
合宿について
日時 三泊四日
場所 ハイデンベイグ王国の辺り
予定 いろいろとやるし、気分次第で変わるから書かないでおくわ
宿泊の班と行動の班だけ決めとけ。行動の班は別に何人でもいい。もちろん一人でも構わないぞ。宿泊の班は二人一組だから。当然男女別々。今日の放課後決めるのはこれくらいの予定だから、ちゃんと決めとけよ。
――――――――――――――――――――
これしか書いてなかった。手抜きすぎだろ?教師の自覚があるかすらあやしい。
何が詳細だ!! って言ってやりたい気分になったし……いや、紙を見た瞬間叫んだっけ?
「宿泊のペアは一緒で良いよな?」
「もちろん。行動班の方はどうする?」
そんなどうでもいい思考が頭の中で渦巻いている中、トシが俺にそう聞いてきた。俺は問題ないので頷いて、行動のグループについて相談を持ちかける。
「クラスだけで決めるなら俺らだけでも良いんじゃないか?」
「トシがそれで良いなら俺もそれで構わないよ」
「いーや、私が許さないわ!」
唐突にかけられた声だったので俺らは少しビクッとなる。そこにいたのは二人の女子生徒だった。
「……何だ朱里か。それと美佳も来てたのか」
「何? 来てちゃ悪いかしら」
「そんなことないですよ! なっ哲也?」
「そこで俺に振るなよ……」
「トシくん。何回も言うけど、私に敬語は使わなくって良いのよ?」
「なんか、どうしても抜けないんですよ。じゃなくて抜けないんだよ」
トシは出そうになった敬語を言い直していつも通りの口調で話す。初めの方と比べたらだいぶテンパらなくなったのでマシなのだが、くだけた口調で話せるようになるのはもうちょっと先になりそうだった。
「それで、どうしたんだ?」
俺は流れかけた話を戻すために朱里に問いかけた。
「いやね、そこ当りにいる男子二人がむさ苦しい青春を送ろうとしていたから、うちらのような花を届けてあげようかなーと思っただけよ」
俺達二人を指さしながら美佳はそう言ってきた。
「お前のどこが花なんだか……」
「あ゛あ゛ん?」
「すいません」
トシが朱里に対してバカにするようなことをボソッと呟く。しかしその呟きは朱里の耳にしっかりと入っていたようで、乙女ならざらぬ声でトシを威嚇すると、トシは条件反射とでもいうように速攻で頭を下げていた。蛇と蛙の図が完成。
「……で、お前らは何しに来たんだ?」
俺は改めて問いかける。当然美佳に。
「なんか私たちのクラスの先生が『行動班はどのクラスの人とでも自由で良いわよ。ただし男女混ぜてね♪別にバラバラに組んでもいいけど成績下げるわよ』とかわけのわからないことを言ってきたのよ。それでクラスの男子から話を持ちかけられたんだけど、それよりは哲也達の方がマシだと思ってね。誘いに来たのよ」
「そうか……」
美佳の言い分にとりあえずは頷く。そういえば美佳のクラスの担任は言ったことをホントに実行することが多いから恐ろしいんだよな……
「当然、私たちと組んでくれるわよね?」
「……分かったよ」
睨みつけるような視線で訪ねてこられては断れるわけがない。それにこいつら二人となら別にいいだろうということで俺は頷くのだった。
分かりずらい文章ですいません。