表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dropbehind  作者: ziure
第二章 合宿編
26/128

第二十六話 鍛練

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。

 『リンディル広場』

 そこは俺の鍛錬をする場所としていつも使っているところだ。

 とても広い空間で多少の衝撃ではビクともしないひんやりとしたコンクリートの地面。

 その周りを囲うように生い茂っている木々や草花。

 鍛錬する環境としては本当に良い場所である。


 俺は今日は寝不足(野田さんのせい)だけどそのリンディル広場で鍛錬をしている。

 今の俺の姿を傍から見れば一人でただ突っ立っているようにも見えるが決してそういうことはない。

 俺は今神経を集中させているのだ。

 何のためにと聞かれたら……攻撃から身を守るためと答える。つまりここにいるのは俺一人ではないのだ。

 背後から魔力の気配を察知し、俺はとっさに横にステップを踏む。

 するとハンドボールほどの黒い塊がさっき俺がいた場所を通り過ぎて、そして自然と小さくなっていき飴玉くらいの大きさになるとパッと消滅した。

 そして相手の出所を探るために攻撃が行われただろう場所から気配を感じ取ろうとするも、すでに何も残っていない。俺は再び場にとどまり気配を探るために神経を集中させる。

 さっきからこれの繰り返しである。

 しかしこれでは埒が明かないので、そろそろこっちから攻めにいこう。

 俺はそう決めると『体氣』で足を強化する。そう、俺はさっきまでは『氣』を使わずに戦っていたのだ。

 相手をなめているわけではない。自分の鍛錬のためである。戦闘ではいつまでも『氣』を使っていられるわけではない。『氣』が使えなくなった時に何もできないのでは話にならない。それに元々の身体能力を強化できるのが『氣』であり、自分の体に備わっている力が低いと『氣』を使っても強い相手には勝てなくなってしまう。つまり自分の体術に磨きをかけるための鍛錬を今日は、というより毎日しているのだ。

 まぁ最終的にはこうして『氣』を使ってしまうのだが。

 さて、今日はどう攻めていこうか……

 いつものようにこうやって戦っていると相手の手の内は分かってくる。とは言ってもさすがに殺傷能力が高すぎるものを使うわけにはいかないのでお互いにすべてを知り尽くしているわけではないだろうが。

 俺が言いたいことは、いつも同じパターンだと読まれるということだ。だから俺はどう攻めるかを考えているのだ。

 試したい技はいくつかあるのだが……よし、今回はこれを試してみるとしよう。

 俺はそう決めると一気に爆発的な力を出すために右足に内側に『体氣』を集め、外側を『土』の魔力を混ぜた『空氣』でコーティングするように包む。そしてその右足を高く振り上げて、


「喰らえ!『爆砕円塵』」


 そのまま勢いよく右足を地面に叩きつける。

 すると地面に叩きつけた右足を中心として爆発するような音とともに、同心円状に大量のビー玉くらいの土の玉がものすごいスピードで飛び散る。

 気配を消していると言っても、本体自体がいなくなっているわけではないので、避けるか防ぐかをしないと全体に向かっているこの攻撃は受けることとなるだろう。


「すべてを飲み込み消滅させる。『ダークイレイサー』」


 何もないはずの空間から声が聞こえ、その瞬間黒色の一辺2メートルほどの正方形の形をした布のような形の物体と魔法を放った相手――美月さんが現れる。

 その物体に土の玉が衝突する時、なんの音もせずに土の玉は飲み込まれていった。

 美月さんの姿が見えるようになったのはさっきまで使っていた魔法(隠蔽魔法)の効果が消えてしまったのは恐らく隠蔽魔法と連立して使うことができないくらいの大きさの魔法を使ったためだと推測する。

 なので攻撃は防がれてしまったが相手のいる場所は分かったので、そこに向かって奇襲をかけるために地面を蹴る。

 しかし美月さんが今放った魔法の効果はこれで終わりではないようで、正方形をかたどっていた布は長細い形に変化し鞭と成して美月さんの手に収まる。

 美月さんは短く息を吐き黒色の鞭をなぎ払うように右から左へと振るってきた。

 俺は腿の高さで払うように襲ってくたその鞭を自身の勢いを消さないように斜め前にジャンプして避ける。

 だが振るわれてきた鞭は、普通の鞭なら考えられない直角の動きで上に向かおうとした俺の足の腿を捉え、貫通する。


「ぐっ!」


 足に奔る痛みのせいで呻き声が漏れ、上に向かうはずだった体は地面に落ちる。そして美月さんはこのチャンスを逃すまいと俺との距離を一気に詰めて首筋に鞭から刀へと再び変化させた物を倒れている俺の首筋の数センチ手前で止める。


「……俺の負けですね」


 俺は素直に負けを認め、痛む足に鞭をうって立ち上がる。

 貫通していたはずの腿から血は出てきていない。これは闇魔法の特徴ともいえる『幻痛』といわれているものである。闇魔法は実体として存在しているものではなく、起こるほとんどの現象が幻覚なのである。しかし当たったという感触、すなわち痛みというものは体に残るためこのように痛みを感じるのだ。ただほとんどというだけ実体として存在する例外の魔法も存在するが。


「今回は私の読み勝ちといったところかしら」


 勝ったことがうれしいようで美月さんの顔から笑みが零れている。


「そうですね。完全にやられました」

「正面から行っても勝てないからね。強い相手には、ここを使わないと」


 美月さんは自分の頭を指でトントンとやりながらそう述べた。


「それじゃあ、帰ろっか。足大丈夫?」

「大丈夫ですよ。だから治療はいいです」


 美月さんの治療は闇魔法の『幻痛』の逆とも言える回復魔法である。傷口などは消えないが多少の痛みだけならすぐにとれるというものだ。


「そう。哲也くん今日も楽しかったよ。また後でね」


 こうして今日の鍛錬も終了した。






「はよっす、哲也。遅いから遅刻かと思ったぞ」

「おはよう、トシ。少し寝不足だったんでギリギリまで寝てたんだ」


 教室に入るとトシから声をかけられたので、俺はトシの席によってから挨拶を返す。

 俺は今日の登校はいつもより明らかに遅くなってしまった。理由としては昨日の所為で寝不足だったためにトシに答えたとおりギリギリまで眠っていたためだ。


「てか、朝になんかあったのか?」


 俺はトシの表情が少しばかり不機嫌そうに見えたので尋ねてみた。


「あれ、顔に出てたか? 理由はしょうもないことさ」


 トシはそう言うとため息をついた。俺はなんとなく返ってきたトシの言葉でなんとなく予想がついた。


「朱里か?」

「ああ」


俺の予想はズバリあっていたようでトシは頷き言葉を続ける。


「全く朝からあんなテンションついていけねぇぜ。俺が適当にやってると殴ったり蹴ったりしてきて無理やりにでも話を聞かせようとしやがる。ほんとたまんねえよ」


 そして再びため息。


「なんか、ごめんな」


 俺とトシと朱里でいる時は俺が朱里を咎めるという作業を行うことになっている。なので俺という枷がなくなった朱里がトシをいじりまくることは容易く想像できた。そう考えると少しばかりだけど罪悪感が生まれたので俺は謝った。


「いや、お前のせいじゃないって。気にするな、っと先生来たぜ」


 トシに言われて先生が入ってきたことに気付き俺は席に着いた。


「おら~話するから、全員座れ」


 岡嶋先生は教卓につくとクラス全体に声をかける。生徒たちはその声を聞いてガタガタと席に座っていく。

そしていつもの朝と同じように出席を取っていく。


「んじゃ、連絡するぞ。一回しか言わねぇからちゃんと聞いてろよ~」


 岡嶋先生は全員がいることを出席を取ることで確認した後、話を始める。


「今日の放課後一学年恒例の合宿について決めるから全員授業が終わっても残っておけよ。この紙は決めるべきこととか合宿の詳細とか書いてある。置いておくから放課後までには見ておけよ。今日の授業はいつも通りだ、以上」


 あれ? なんかいろいろと話が見えないのは俺だけだろうか? 周りを見回すと全員唖然としている。

 そして誰ともなしに叫んだ。



「「「「「がっしゅくぅ!?」」」」」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ