第二十五話 豹変
開いてくださりありがとうございます。
予定通り王様ゲームは終了します。
誤字脱字あったら報告お願いします。
「それじゃあ、第三回戦いくわよ!」
優姉の気合いが入った声が俺の部屋に響き、三回戦目の合図を告げる。
二回の経過を経て、特にさっきのポッキーゲームのおかげで、みんなのノリも上々といった感じになってきていた。
こういうゲームはノリが大切なのは確かなので、良い傾向ではあると思う。
ただ、ここの人たちにとっては非常に危険な、何をさせられるかわからなくなってしまう状況ということで、場が変にピリピリしていた
「「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」」
緊張がこの場に漂うなか、みんなが一斉に割り箸を確認する。
「お、当たりじゃん!」
俺は自分の割り箸に書いてある☆マークを確認した後、みんなにそれを見せつける。
「今度は哲也くんか……」
「何が来るか少し楽しみですね」
「ちょっと、プレッシャーかけないでくださいよ」
美月さんがボソッと俺が王様ということを確認するように呟き、夏目さんが少し期待のこもった声音でそう言ってきたことに俺はプレッシャーを感じてしまった。
「私は楠木くんが王様ならどんな命令でも聞いちゃうわよ~」
「お姉ちゃんにその命令がいくとは限らないってことを忘れないでよね……」
「てか……同じ男なのに、俺が王様になったときとまるで違うじゃないか……この扱いの差はなんなんだ……?」
優姉が妖艶な発言をしてくるが、美佳が冷静にそれを咎める。
野田さんは……青春の汗を目から流していた。
そんな様子を見て笑いながら、何か面白そうなのがないかと探していると……なんであるんだ? と思えるものが置いてあった。俺はこれを使おうと思い、
「それでは……」
前置きのようにそう言うと視線が俺の方へと集まるのを感じた。そしてそのままそれを手に取ってから命令を下す。
「一番の人はこれを頭に着けて『にゃあ』と可愛らしく鳴く」
俺が命令を言った後みんなの注目は俺の手に集まり、反応はそれを持ってきたであろう一人を除いて唖然としていた。
「それって……ネコミミ……? なんでそんなのが、ここに……?」
その中でいち早く我に戻った美佳が俺の持っているものを解説してくれた。そう、俺が持っている物はネコミミである。
「ふえぇぇ!? 私が、それを……つけるん、ですか?」
鷹已さんは顔を赤くしながら命令の確認をしてきた。
「着けるだけじゃなくて、それを着けた状態で『にゃあ』って鳴いてください」
俺がそう告げると赤い顔がさらに赤くなる。
「……やらないと、ダメなんですよね……」
「まぁ、罰ゲームですからね」
「…わ、わかり、ました……それ、貸してください」
意を決した鷹已さんに俺は手に持っているネコミミを渡した。
鷹已さんは俺からネコミミを受け取ると、すぐには着けずに自分の手に持ったネコミミをジッと見つめる。次にふさふさしてそうな毛でできている耳の部分を指先でちょんちょん触りだした。
「あ…ふさふさだぁ……うっとり……」
そして耳の部分で頬をこすりだした。
なんかこれ見てると和んでくるわ……じゃなくて!
「自分の世界に入ってるところ悪いんだけど、そろっとそれ着けてくれない?」
俺が何かを言う前に美月さんが鷹已さんにネコミミを着けるように促す。
しかし反応がなかなか返ってこない。
「あの、鷹已さん?」
「……はい?」
「はい? じゃなくて早くやってくれないかな」
美月さんの声に反応しなかったので俺が声をかけるとようやく自分の世界から抜けだしたようで、返事が返ってきた。あまりの反応の遅さに優姉は呆れていた。
「は、はいっ……すいませんです。では……」
鷹已さんは、はぁ……ふぅ……と深呼吸を一回した後にゆっくりと頭にネコミミを近づけていく。
みんなの視線を感じ取ったのか顔が赤くなるが、その動きは止まることなく動き続ける。
そして……ネコミミが、鷹已さんの頭に装着された!
「鷹已さん、お願いします」
俺は期待がこもった声音で鷹已さんに向けて言うと、鷹已さんは俺が何を言いたいか分かったようで、恥ずかしさからか顔を下に向けて俯く。
少し間が空いたが覚悟を決めたのようで顔を上げ、手の形をまねき猫のようにかたどって、
「に、に、……にゃー…?」
戸惑いながらではあるが猫の鳴き声を演じてくれた。
戸惑いながら言ったことによってなんかこう、なんとも言えない破壊力がその言葉にはあった。
それにこうやって改めて見てみると、鷹已さんのネコミミはすごく似合っていた。元々の小動物的な雰囲気のおかげだろう。
これは自分でやらしておいてなんだけど、マジでやばいわ……
野田さんなんて興奮のあまり鷹已さんに抱きつこうと……したところで夏目さんに腹を殴られていた。自業自得だろうと思い特に気にかけることはしないけど。
「楠木くん、良いもの見せてもらったよ」
そんな一幕を見ていた俺に美月さんがにっこり笑顔を浮かべ、そう囁いてきた。この人が恐らくネコミミを持ってきた張本人なのだろう。
それにしてもこの人は自分にこれがきた場合どうするつもりだったのだろうか?
「さて四回戦いきましょうか」
優姉が切り替えたように表情をキリッとさせて、今までと同様に四回戦目の開始を告げる。
鷹已さんはなんかよく分からないけど、ネコミミのふさふさ感がが気にいったのか、顔をほんのり赤くしながらも頭に着けた状態で座っている。その可愛らしい姿に誰も「それ取らないの?」と問うことなどしなかった。
「「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」」
みんなでくじを引き番号を確認。俺は六番だった。
自分の番号を確認した後いきなり、おほほほほ、という笑い声がこの部屋に響き渡った。そのお嬢様系?の笑い声の発生源を見てみて俺は愕然とした。それはネコミミを着けた鷹已さんだったのだ。
「おほほほほ、今度は私が王様、もとい王女のようね」
さっきネコミミを着けてにゃーと鳴いていた人物がこんな風に豹変したら誰だって驚くだろうと思ったが、ここにいる人たちは美佳と俺を除いて全く動じていない。
「さて、何をしてもらいましょうか……」
鷹已さんは何をさせるか、ネコミミ姿のまま唸って考えている。てか口調変わりすぎでしょ……
「そうですわ! 私の足を三番の御方に犬のように這いつくばってペロペロと舐めてもらいましょうか」
まさかの思考まで変わってるし! あの鷹已さんがSの女王的な発想をするってどうなってるんだよ! それにネコミミ着けたままその命令を下すってどうなんだ!?
つっこみどころが多すぎるがそれを言うとちょっと危なそうな気がするのでその衝動はなんとか押さえる。
「それで三番の人は?」
「……私よ。……やっぱりやんなきゃダメなんだよね……」
優姉が誰が命令に従うかを確認するように聞く。すると命令の内容が嫌すぎるせいか、美佳が涙目になりながら手をあげた。
「美佳がやるのね。それじゃあ始めちゃって」
「う、うん」
美佳は優姉にやるように言われて頷くが、その姿には少し戸惑いが見られる。
命令を下した鷹已さんはというと、俺のベットに腰を下ろしてスタンバイ状態である。
美佳はそれを見て座っている鷹已さんの近くに寄り、四つん這いの状態をとる。
「ほら、舐めなさい」
少し時間がかかったものの素直に命令に従った美佳を見て鷹已さんは満足気な様子で片足を前に出し舐めるように促す。
美佳は顔が赤くなりつつも……
ペロッと舌を出して鷹已さんの足を一回舐め、
すぐに立ち上がりさっきまで座ってた自分の席に座った。
「あれ? 終わりなの?」
美月さんが誰もが持った疑問を代弁するように美佳に対してそう言葉を投げ掛ける。それを聞いた美佳は顔を真っ赤にして立ち上がり、
「……これ以上、こんな屈辱的なことできるかー!!」
そう叫んでから俺の部屋から目にも止まらぬ速さで出ていった。その後廊下から、「王様ゲームのバカヤロー」という声が聞こえてきたが誰が言ったかは明らかだろう。
「一人かけちゃったことだしこれでお茶会はお開きにしましょうか」
「会長、ちょっと良いですか?」
美佳が飛び出していった後すぐに優姉はみんなに対して終わりを告げてこの部屋から出ようとした。
やっと解放されるのはありがたいのだが、俺は少し聞きたいことがあったので呼びとめる。
「どうしたの?」
優姉は俺の声に反応してこちらを振り返る。俺はそれを聞いても良いという合図と解釈して、
「あの今回のこれはもしかしてですけど……あの姿を見せるために行ったことなんですか?」
疲れたのか眠りについていた鷹已さん(ネコミミ装着状態)を指でさしながら優姉に問いかけた。
「ええ、そうよ」
返ってきたのは肯定の答え。そうだろうと思っていたので特に驚きはしない。優姉はそのまま説明を始めていく。
「百花ちゃんって普段はおどおどして落ち着きがない小心者なんだけど、何かしらの引き金によって女王のような感じになっちゃうのよね。私たちが知っている引き金は人の上に降臨する時。まぁ今回のような王様的な地位に立つ時くらいかな。楠木くんと美佳には仲間として一応知っておいてもらいたかったの」
「やっぱりそうですか……でもなんでわざわざこんなゲームをしてこの状態にさせたんですか? 別に口だけでの説明でも良い気がするんですけど……」
「それじゃあ説得力がないと思って」
「そうかもしれないですけど……」
確かに口だけではあの鷹已さんがあんな風になるとは思えなかっただろう。
「それに……」
「それに?」
そして何か他に理由があるようだ。
「私が楽しみたかった、ですよね」
その理由が分からない俺が首を傾げていると、それの答えと思われるものを夏目さんが言った。
「まぁ、そういうことよ」
その答えはあっているようで満更でもなさそうに優姉は頷いてから、
「とにかく、鷹已さんはこういう風になることがあるから注意してね、ということを伝えるのが今回一番の目的よ」
それで言葉を締めくくった。
「それでは私たちも部屋に戻りましょう」
夏目さんは優姉の説明が終わったことを確認してからそう告げた。
「そうね。美月さん、百花ちゃんをお願いね」
「はい。部屋近いんで問題ないです」
「じゃあ、また明日ね」
そう言って生徒会の面々は俺の部屋から出ていった。
「あれ、野田さん?」
「なんだ?」
「なんでまだ残ってるんですか?」
「お前と話をするためだ」
「一体何を話すんですか?」
「男同士で話といえばあれに決まっているだろう」
「知りませんよ、そんなの。てか知ったとしても話す気なんてないです」
「お前に拒否権はない。日が昇るまで語り明かすぞ」
「えぇーー」
こうして今日という日は過ぎていった……
いろいろとすいませんでした。
こういう話はちょっと書きたかったので、やっちゃいました。
再びそういう衝動に襲われたらこういうものを書いちゃうかもしれません……