第二十四話 王様ゲーム
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「それじゃあ、始めましょうか」
いつの間にか用意されていた割り箸のくじを片手に優姉が開始を宣言する。
「命令は基本的なんでもいいけど、限度を考えましょうね」
そして付け足すようにみんなに注意を促すが、これを聞いたとき俺は「あんたが一番考えてくださいよ!」とつっこみたかったが、俺以外のみんなも俺と同じような感じだったのに、何も言わないところを見てつっこむのをやめた。
「はい、みんな。一本ずつ選んで。残った一本を私のにするから」
一人一人真剣に慎重に選んでいく。
全員が決まったところで「せーの」という優姉の声を聞いてから、
「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」」
一斉に割り箸を引いて番号を確認する。
俺の番号は……三番だった。
「よっしゃー! 俺が王様だ!」
☆マークが書かれた割り箸をみんなに見せびらかしながら、野田さんは自分が王様ということを主張した。
野田さんのその姿を見て、みんなつまらなそうにしている。
優姉に至っては「野田くんか……つまらないの」と声に出して呟いていた。
野田さんはみんなからの不評の目線と優姉の言葉を受けて少し悔しそうにしていたが、すぐに立ち直って、
「……こうなったらスゲー命令を言って場を盛り上げてやるよ!」
「野田さん、そんな宣言はどうでもいいから、早くしてください」
「そうです。それに誰も期待なんてしてませんから」
「ここにいる人が女の子ばかりということで、自分に奉仕させるような命令ははしないでね?」
意気込みをするも美月さん、夏目さん、優姉から冷たい反応がすぐさま返ってくる。
「それくらいの常識は踏まえてるよ! じゃあまずは無難に……」
「盛り上げるーとか言っといて、結局無難にいくんじゃん」
「こういうときは無難が一番いいんだよ! いちいちつっこむな!」
「はいはい、もうつっこまないから早くしてー」
さすがに女性陣からの反応の厳しさに野田さんは軽く切れてしまったようだ。
優姉はそんなふうになった野田さん相手でも全く気にせずに受け流している。
「くそう……」
野田さんは再び項垂れるが、今回もすぐに立ち直り、そして命令を下す。
「それじゃあ四番が六番に…」
優姉と美佳が番号が当たったようでピクリと注視していなければ気付かない程度の反応をする。
「…タイキックをする」
「「タイキック?」」
そして二人して下された命令にポカンとしていた。さすが姉妹というのだろうか、よく反応が似ている。てか一緒である。
しかしこれからの反応はバラバラだった。それは仕方のないことだろう。
「……私がお姉ちゃんを蹴ればいいんだよね?」
「私が美佳に蹴られるのね……」
なにせ……蹴る側と蹴られる側に分かれるのだから。
「いったぁい……」
「ごめんね、お姉ちゃん」
美佳からの蹴りをもろに受けた尻をさすりながら優姉は唸っていた。
「美佳……日頃のストレス込めた蹴り、本当に痛かったわ」
「ごめんなさい……」
「……気にしなくていいわよ。罰ゲームだもの」
「うん……」
優姉は不意にパンッと手を一回叩き切り替えたように声を上げる。
「よしっ。それじゃあ二回戦いくわよ!」
「「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」」
一斉に割りばしを引いて番号を確認。
俺は……七番だった。
「今度は私が王様ね」
わずかではあるがはっきりと笑みを浮かべながら☆マークを見せるのは、夏目さんだった。
「涼華はこういう時妙に怖いわよね……」
「ですよね……何をするか読めないというかなんというか」
「お手柔らかに……お願い、します」
優姉の言葉に美月さんが同意し、鷹已さんが控えめに夏目さんに告げる。
「そう怖がらないでください。そんな危ない命令なんてしませんから」
そう言ってから夏目さんはお菓子の中から何かを探しだした。
「……ありました」
夏目さんが見せてきたものは……ポッキーだった。
「そうですね、距離は二センチの所まででいいです。二番と七番にお願いしましょうか」
「ポッキー? 二センチ? これって一体何をするんですか?」
ポッキーを見せられても、と思いながら、俺は七番の割り箸を見せ尋ねる。すると美佳の顔がみるみると赤くなっていく。
「わ、私が哲也とこれをやんないといけないの!?」
尋ねたのに答えは返ってこないで、代わりというように美佳の叫び声が聞こえてきた。
二番は美佳だったようだ。
「美佳、何やるのか分かるのか?」
俺は改めて何をやるのか尋ねてみた。
「解説しましょう」
それに反応したのは美佳ではなく美月さんだった。まぁ俺の問いに応えてくれるなら誰でもいいのだけれど。
「二人が向かいあって、一本のポッキーの端を互いに食べ進んでいって最終的にキスをするってものよ」
「キ、キス!?」
俺はその単語を聞いて胸がドキリとする。
「哲也くん、落ち着いて。そこで涼華さんが言った二センチってところがキーワードになるのよ。たぶんそれは二人の距離が二センチのところまででいいってことだと思う」
「美月ちゃん、解説ありがとう。まぁそんなところね」
解説を聞き終え、少しほっとした。キスなんてしたらさすがにやばいだろうと思ったからだ。
とは言ってもかなり恥ずかしいものであることに変わりはない。美佳も結構恥ずかしそうにしている。
「それじゃあ、やってもらいましょう」
優姉がそう言って俺らに始めるように促す。
「本当にやるの?」
美佳はやはり抵抗があるようで無理と分かっていたも優姉に聞いていた。
「当たり前でしょ。王様の命令、もとい罰ゲームなんだから」
「だよね……哲也、やるわよ」
「あ、ああ……」
「……始めるわよ」
「……分かった」
チョコ側の端に美佳が、その逆の持つ部分の方を俺が咥えて準備を完了させる。
優姉のスタートの合図を受けないまま目を合わせ頷きあった後、お互いかじり始める。
そんな俺らの姿を見て周りは、なにかとざわめき出す。周りの声に構うことなくちょっとずつ、ちょっとずつ進んでいく。途中美佳の吐息がかかり狼狽しそうになるのを抑えながら進んでいく。距離が近づくにつれ美佳の顔は赤くなっている。きっと俺もそうなのだろうけど。
進まなければいけない残りの距離は三センチとなった。つまりお互いの距離は五センチ。かなり近い。
少しずつ慎重に、キスをしてしまわないように気をつけながら進む。
恥ずかしさを増長しないように出来るだけ目は見ないようにしている。しかし段々と距離が近づくにつれて目のやり場に困ってくる。
ついというか俺は美佳の顔を見てしまう。それとほぼ同じタイミングでどういうわけか美佳もこちらを見てしまった。
つまりは目があってしまった。
「おわっ」「きゃっ」
不意を突かれたせいかそのままポッキーから口を離してしまった。
あーという声が周りから聞こえてきた。
「丁度二センチくらいね。こちらとしては残念だけどOKよ。もしちゃんと出来てなかったらもう一回やってもらう予定だったのに……」
優姉は俺らの齧っていたポッキーを拾いながらそう告げた。
そんな優姉の発言に俺と美佳は心底からホッとしたように息をついた。
不快に思われてる方本当に申し訳ありません。
次回でこの王様ゲームの話は終わります。