第二十二話 日記
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みんなが出ていってしばらく。ようやく解放してもらうことができた。
優姉はまだ残ってやることがあるそうなので「先に帰ってていいわよ」と言われたので遠慮なんてせず、お言葉に甘えてに帰らしてもらうことにした。
色々と精神的に来るものばかりやらされたので、俺の体力(精神力)がほとんど限界に近かった。正直最後の方は何されたか覚えてない。一体これの何がいいことなのだろうか……
俺は優姉に何をされても逆らうことなどできやしなかった。なんといえばいいのだろうか……オーラ的な?そんなものが優姉の全身から出ていて……思いだすだけで恐ろしくなってきそうだ。この出来事は頭から切り離しておこう。きっとそれが自分の為、そう思い込んだ。
とにかく寮に帰って休みたいのでよたよたとなりながらも歩き、玄関へと向かった。
「あ、哲也! 大丈夫だった!?」
俺が数分かけてようやく二階から一階へとつながる階段を降り切ったところで玄関の方から俺を心配する声がかかり、赤い短めの髪揺らしながら駆け足で寄ってくる。
「美佳か……心配してくれたのか?」
俺は少し疲れたような調子になりながらもそう聞いてみた。
「そ、そうよ。わるい!? だってお姉ちゃんのことだから哲也相手だと何をやらかすか分かったもんじゃないし! それに哲也がいなくなってから地味にストレス溜めてたからね。今回そのストレスが爆発したって考えたら哲也の身が本当に危ないと思ったんだもん!」
「そこまで自分の姉の危険性が分かってるなら出来たら止めてほしかったもんだよ……」
「うぅ…………」
無理だってことは分かっているけど、やっぱり言わずにはいられない本音がポロリとこぼれてしまった。
そんな俺の呟きを聞いて美佳は俯いてしょんぼりしてしまった。何もできなくてごめんなさいとばかりに。
「まぁ優姉相手じゃ、しょうがないよな。それに過ぎたことだし、気にすんな」
「あっ……」
そう言ってポンと手を頭に置き優しく撫でてやる。すると美佳はさっきまでの悲しそうな表情から穏やかになっていき、やがて気持ちよさそうに目を細めていく。俺は美佳の悲しい顔と穏やかな顔を見て、なにか胸に来るものがあった。こんな子に心配をかけさせていたんだな、悲しませていたんだな、と改めて実感してしまったからだ。俺はこいつが悲しい思いをした時や辛い思いをした時、内容や事情は何であれ、その時くらいは美佳の兄として助けてやろう、そう思った。自分勝手な、何を今さら。そんな風に思われても構わない。俺が手にした力は守るために使おう。俺は心の中でそう誓った。
「……いつまでこうしてるつもり?」
そんな俺の決意など他所に美佳がそんなことを言ってくるが気にせずに撫で続ける。さっきまでは気持ちを切り替えさせるために撫でていたが、今は撫でてるこっちが心地よくなってきたからだ。とりあえず今はこの感触を堪能していたい。
「ねぇ?」
髪はサラサラしていて美佳がいつも使っているだろうと思われるシャンプーの柑橘系の良い香りが漂ってくる。あっ、なんか美佳がプルプルと震え出してきた。
「いい加減に、しろー!!」
「ぐふっ」
どうやら怒ってしまったようで美佳のグーのパンチが綺麗に俺の顔面に入ってしまい、俺はたまらずぶっ飛んで倒れてしまった。美佳はそんな俺の様子を一瞥し、ふんと鼻を鳴らして先に玄関から学園の外へと出ていった。
美佳と会話しているうちにだいぶ精神力の方は回復した(逆に肉体的ダメージを受けたが)ので、さっきよりは軽い足取りで寮へと歩いて行き、自分の部屋へと入った。
そしてそのまますぐにシャワーを浴びて汗を流す。
長くは浴びず、いつもより早めに出て自分の寝間着に着替えるたところに、
ドン、ドン
「遊びに来たぞー。入っていいか?」
二回のノックの後にトシの声が聞こえてきた。
「ああ、いいぞ」
俺はいつものようにトシを招き入れるよう声をかける。いつものようというのも、学校から帰ってきた後のこの時間帯に、トシが来るのがこの学園での生活の日課的なものとなっているのだ。
トシは入ってきてそのまま俺のベットに座りぐったりと仰向けに倒れ寝転がる。
「あー疲れたー」
体を伸ばしながらトシは言葉を発する。
「ホント、疲れたな」
俺はそれに応え、トシと同じようにベットに倒れこんだ。
しばしの沈黙が俺の部屋に流れる。
「「……」」
どれくらい部屋が沈黙に支配されたのだろうか。俺はトシの方に顔を向ける。するとそれと同時、トシもこちらに顔を向けてきた。つまりは自然と向き合う形となった。
理由があるのかは分からない。
何が楽しいのか分からない。
何がおかしいのか分からない。
それなのに俺たちは笑いあった。
「じゃあ今日はもう戻るわ」
「おう、また明日な」
一頻り笑った後、少し今日あったこととかを話をしてからトシは自分の部屋へと戻っていった。
俺はその姿を見送った後自分の机に向かいノートを開く。
今日を振り返ってみると、結構密度の濃い一日だったと思う。
まずは岡嶋先生との模擬戦。そして学年でのチーム戦の模擬戦。最後には生徒会。
ここに来てまだ少ししか日にちはそんなに経ってはいないけど、充実感をすごく感じる。
この学園に来た時、心のどこかで不安や心配もあったけど、いつの間にかそういうものはなくなっていた。
それもこの学園で最初にあった舞さんの存在や、トシや朱里という友達という存在。それにこれから関わっていくことが増えていく生徒会の人達。
人という存在の温かさはすごい良いものだということが分かってくる。
きっとこの温かさを姉さんは経験してほしかったのだろう。
確かにこれを知らずに過ごしていたら、俺はこんなにも良いものを知らずに自分の人生を終えてしまっていたに違いない。姉さんに会えずに片隅でずっと独りぼっちだったのなら、人を憎んで生きていたかもしれない。それはあまりにも悲しい。
それを思うと姉さんには感謝してもし足りない。
俺は少しでも多くの、この学園でしか味わえない、この瞬間でしか味わえない経験を得ていきたい。
そしてここを卒業した時に、この学園で起きたたくさんの出来事を姉さんと笑い合いながら話したい。
面白くて、楽しいここで体験した話を……
これで一章は終了です。
一章の目的は主なキャラの紹介のつもりだったので、それは果たせたかなと思います。