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Dropbehind  作者: ziure
――序章――
2/128

第二話 姉さん

開いてくださりありがとうございます。


誤字脱字あったら報告お願いします。


 あれからしばらくのこと……



 俺は今15歳になり、背も伸びて身長は170前後。髪は赤色のショートで目は茶色っぽい。顔は姉さん曰く「まぁかっこいいんじゃない?」と言う評価だ。身体は自分で言うのもなんだが、かなり筋肉は付いていると思う。修業の成果だ。見た目は細く見えるんだけどね……

 あれから俺はずっと姉さんこと楠木香織に森の中でずっと鍛えてもらっていた。まさか一度森に入ってからそのままずっと森を出ることなく、修行漬けの日々だったのは予想外だった……


それはそれ。


 俺は今、王国に向かって歩いている。なんでかと聞かれれば、それは昨日の朝にさかのぼるのが一番分かりやすいだろう。




――――――――




 俺はいつものように姉さんと朝食を食べていた。朝食時の団らんというように、他愛もない会話を重ねながら食べていく。その会話中で今日の修行の内容を聞いてみたら、


「今日は私との1対1よ」

「マジ?」


 しばらく時間もたってからねえさんとの会話には敬語はほとんど使わないようになった。俺からすれば本当の姉のようだったし、姉さんは姉さんで敬語を使われるのはあまり好きではないらしいからだ。

 それはそれとして、俺がなぜ1対1というよくある手合わせの形式の鍛錬内容に一言目で頷かないのかと言うと、力に差がありすぎるからである。姉さんはマジで強い。だから今の俺ではまったく相手にならないと思う。

 確かに強い相手との戦いは学ぶことも多いのかもしれないが、差がありすぎてはどうなんだろうと考えたからだ。


「マジよ。ルールは……なんでもありでいっか」


 そして軽いノリで言われた言葉に俺は冗談抜きでビビる。なんでもありとか俺死ぬかも……

「いやいやいや。よくないから! 明らかに絶望という文字が目の前に見えるから! せめて少しでもいいからハンデつけてよ!」


 だから、必死になってしまうのもしょうがないんだよ。


「ちなみに拒否権はなしだし、ハンデもなし。これは私があなたの師として課す最終試験だから。これ食べ終わったら早速始めるからね」


 拒否権なし。そしてハンデなしという言葉に俺は意気消沈してしまったが、ともに言われた最終試験という言葉に自分のさっきまでの考えを無理矢理にでも切り替えさせた。


 そして朝食を食べ終え、食器を片づけた後外に出た……




「さっきも言ったけどこれは私との修行の最終試験だから、当たり前だけど手を抜くなんて考えないでね」


 その言葉を最後に姉さんから感じる殺気によって……俺は自然と身構えた。身体からは冷や汗が拭き出てくる。


「始める前に言っておくけどマジでやるから。死なないように気を付けてね?」


 最後の言葉はおどけるような口調で言われたけが、放たれている殺気が和らぐことはない。


「そういうわけだから、真面目にね。じゃないと……ホントに死ぬよ?」


 姉さんから出ている殺気がさらに膨れ上がる。その殺気に震えている自分を自覚しつつ、そんな自分に喝を入れるため頬を両手で一回パンと少し強めに叩き気合いを入れ改めて構える。


「じゃ、始めるよ? このコインが地面に落ちたらスタートね」

「わかった」


 姉さんはそのコインを俺に見せてから、親指に乗っけて、弾く。

 チンッという音を立ててコインは上に舞い上がり、そして重力により地面へと落ちていく。そして落ちた瞬間、同時に動き出した……











 目を覚ましたら、俺は仰向けに倒れていた。

 数分の攻防の後、俺の精一杯の一撃を与えた後は防戦一方となってしまいすぐやられてしまった……しかし、よくあの一撃が当たったもんだと思う。わざと避けずに受けてくれただけかもしれないが。実際俺の一撃を受けた後、姉さんが満足そうな笑みが見えたような気がするし。

 もしそうだとしても一撃を与えたことは嬉しかった。あの姉さんに一撃を与えられたことに。負けたのは悔しいけど……まだまだ自分には修行が必要だということが分かった。

 思考するのをやめ、顔を動かして前を見てみると、姉さんは俺の目の前で身体がボロボロ・・・・になりながらも笑顔でそこに立っていた。

なんなんだ? と思いながらも無理矢理体を起こそうとする。俺が体を起こそうとしている様子を見て姉さんは手を貸してくれる。そして、近くにあった木に背を預けさして俺を座れせた後、一呼吸置いて言ってきた。


「合格よ」

「はい?」


 いきなり言われた合格という言葉に俺の頭はついていけてなかったため素っ頓狂な返事をしてしまう。


「だから合格よ合格。あなたは私の弟子として最終試験に合格しました」


 そんな俺に再度合格という言葉をかけて拍手をしてくる。


「どうも」


 こういうときは素直にその言葉を受け取るべきだろうと思ったのでとりあえずは受け取った。しかしなんとも納得しずらい、というかよく分からない。勝てるとは思ってないけどあんなぼろ負けしたのに合格って……姉さんの基準が分からない。


「なんだよー。もっと喜んでくれて良いのに……」


 不貞腐れるように姉さんは呟く。


「まぁいいや。というわけで君にはこれから私が指定する魔法学園に行ってもらいます」

「はいはい……って、ええっ!!」


 適当に相槌をうっていたが、まさかの展開に驚いた。


「そんなに驚くことじゃないでしょ。学園なんて普通は行くところじゃない」


 しかし姉さんは何を驚いてるのと言わんばかりの表情をしていた。


「それは驚くよ。学園って普通は12歳になったら入るところじゃん。それなのに今までずっと何も言われなかったし、そのまま鍛えてもらって一人前として認めてもらったらギルドとかに登録するかと思ってた」


魔法学園とは文字通り魔法について詳しく学ぶ場所となっている。世界の状態や歴史についても学んだりする。大体は魔法について学びたい人が入るところで、入学できるのは12歳から。第一部で3年、第二部で3年の計6年間みっちりと学ぶ。

 ちなみに第一部と第二部はエスカレーター制となっていて第一部を卒業すると次の年にはそのまま第二部の一年生として勉学に勤しむ。

 ギルドについては……簡単に言うとランク付けされている自分に合った仕事の依頼を受け、それをこなすところ。まぁそのうち詳しく説明しよう。


「ギルドって言うのも考えたけど、哲也には世間についてもっとよく知ってほしいからね。後は人との交流の楽しさも」

「15歳になって今まで学園に行ってなかった俺が入ってもやっていけるの? てかまず入れるの?」


 自分の思うもっともな疑問を問いかけてみた。


「入れるよ。試験とか少しあるかもだけどなんとかなるレベルには魔法について教えてるし。もしダメだったとしても私が無理矢理入れるようにするから安心して♪」


 全然安心できないじゃん! というつっこみはなんとか押さえ、その代わりとでも言うように仮に試験があったとしても絶対合格してやると言う意思が生まれた。


「姉さんって、そんなに権力ある人なの?」

「さぁどうでしょうね。私の素姓なんて探らなくていいから! てな訳で入ってもらうからね」


 何が「てな訳で」なのかよく分からないが……


「こんな俺でも大丈夫なの?」


 落ちこぼれだった俺は姉さんに鍛えられて強くなったのかもしれない。けど、あらためてそういう環境に行くのは腰が引ける。それに親からの言葉を思い出すとどうしても自分がダメに思えてくる。そう考えるとだんだんと落ち込んでくる……自信が失われていく……


「何を恐れているのよ! 大丈夫だから魔法学園行きを勧めてるんでしょうが! 私の弟子としての合格をあなたに出したんでしょうが! もっと自分に自信を持ちなさい! 哲也ならやれるわ。あなたは私の、この楠木香織の一番弟子なんだから」


 そんな俺を見かねた姉さんは最初は少し怒ったような、そしてだんだんと元気づけるような口調で言ってきた。姉さんの心配する気持ちが俺はうれしく思えた。

 それに一番弟子という言葉が俺の心にすごい響いた。不思議と自信がこみ上げてくる感じだった。その気持ちを胸に俺は決意した。


「そうだよね! 俺、行くよ……学園に!」

「それでこそ我が一番弟子!」


 姉さんはそう言ってバシッと俺の背中を叩いてくる。いつもならなんでもない力加減だったが、戦闘後だったので全身に痛みが走り、俺は思わずうずくまった。


「……姉さん、痛い……」

「あっ、ごめんね。大丈夫?」

「大丈夫だけどさ……たぶん……」

「そう、じゃあ学園に行くための準備をしましょう。明日の朝にはここを出発してもらいます」


 姉さんは自分の行った行為は軽く謝ってすぐに流した。

 というか明日にはここを出発するのか………明日の朝ねぇ………………明日?


「明日!? すごい急じゃん!」

「しょうがないじゃない、そうしないと哲也が行く学園の第二部の入学式に間に合わなくなるのよ」

「明日には出ないと間に合わなくなるというのはわかったけど、なんでこんなに伝えるのが遅れたの?」

「そこをつかれると痛いわね……」


 つかれないと思っていたのかよ! という再び出てきたツッコミの衝動を押さえる。


「ただ伝え忘れてただけよ」


 俺は姉さんから伝えられた事実に溜め息をつき、どうせツッコミを姉さんにいれたところで結局は流されるだろうという結論が出たので、とりあえず行動を開始することにした。


「……とりあえず準備してくる」


 背中にある木を上手く使いながら立ち自分の足だけで歩けるくらいに回復したことを確認してフラフラしながらも家へ向かった。


「はいはーい、っていろいろと私も準備しないと……!」


 姉さんも俺の後を追うように家に向かった。






 なんてそうこうしているうちに朝を迎えた……







 俺は目を覚ました後、ベッドから降りてから身支度をして、自分の部屋を出る。そしていつものような足取りで1階に下りて来てテーブルの椅子に座る。

 昨日の傷については家に戻った後すぐに治癒魔法で姉さんにほとんど完全に治してもらった。疑問として「なんですぐ治してくれなかったの?」と聞いたら「忘れてた」と言われた。いたずらに舌を出すおまけつきで。そのおどけた雰囲気のせいで気力が失われつっこみできなかった。

 姉さんはキッチンからテーブルに俺の分と自分の分の朝食を置き自分の椅子に座る。そしてお互いに合掌する。


「「いただきます」」


 ここでの最後になるかもしれない食事を口いっぱいに頬張る俺。そんな俺を見て微笑み自分のペースで食べ始める姉さん。今日は特に会話が生まれない……

 しばらく沈黙が続きそんな空気を先に破ったのは姉さんだった。


「はい、これ。私からの入学祝よ。受け取ってね?」


 俺が1階に来る前に準備してあったようでそれを取り出して俺に渡してくる。俺はその袋に入っているお金の量に驚く。それにこの剣は姉さんの愛用していた剣……


「まだ入学できるか分からないし。それにどっちにしろこんなに沢山はうけt――――」

「拒否権はないから、ね?」

「分かりました、ありがたく受け取らしてもらいます」


 姉さんは笑顔をこちらに向けた。ただその表情は何故かホントに怖くて、拒否という行動が出来なくなってしまった……


「それと……これ」


 差し出されたのは一枚の封筒だった。


「これは?」

「学校に着いたらまずは学園長室に行って、これを忘れずに渡してね。そうすればたぶん普通に入学できるわ」

「うん、分かった」

「あとは……これも。学園までの地図」

「なにからなにまでありがとう」


 ホントに心の底から思った感情をそのまま言葉にして伝えた。


「まぁ、一番弟子のためだからね」


 姉さんはそう言って微笑んでみせた。俺はその微笑みをついじっと見つめたままになってしまう。こうやって改めて見るとホント綺麗な人だと思う。思わず、


「ほら、私に見惚れてないで。そろっと出発しないといけないんじゃない?」

「そ、そうだね」


 不覚にも姉さんに見惚れてしまいそうになってしまった俺は、照れ隠しのように残った料理をすべて食べきって荷物を持ち上げて椅子から立ち上がった。


「じゃあ、行ってくるね」

「あっ、ちょっと待って。やることやってなかったわ」

「ど、どうしたの?」


 姉さんは俺を引き留めるように声をかけて、俺の目の前にまで近づき……俺の胸に手を置いた。その行動に俺は少し驚き、その意図を聞く。


「ちょっとね、お祈りみたいなものかな。すぐ済むから動かないでね」

「う、うん……」


 その瞬間何かが俺に、俺の身体に入ってくるような感覚があった。


「終わったわ。それじゃ、いってらっしゃい」


 姉さんから最後にそう告げられ、俺は家を出た……魔法学園に向かうために……





――――――――





 という感じだ。つまり俺は今魔法学園に入学するために王国へ向かっている。しかし王国までの道のりもまだまだ長い。

 魔法学園………不安も多いけどちょっとは楽しみだ。

 そんな感情を持ちながら、俺は平原が広がる大地を自然と駆け出した………



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