第十九話 チーム戦
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「……ってな感じでどうだ?」
俺は自分の考えた案をみんなに伝えた。
三人とも少し黙って考えていたが、やがて美佳が口を開く。
「……別にあたしはそれでいいわよ。その代わりこれで勝てなかったら今度何か奢ってもらうわよ」
「負けたらな」
「交渉成立ね。それならいいわよ」
「火神さんがいいなら俺は別に構わないぞ」
「うちもいいよー」
美佳が条件付きだが同意するとトシ、朱里と続いた。
「今やっている模擬戦が終了したので次のグループの対戦相手と場所を発表します。右上のコート……」
作戦も伝えてみんなの同意が取れたところで、今やっていたグループの模擬戦が終り、舞さんから次のグループの対戦場所と相手が告げられ始めた。
「……左下のコート、火神さん、楠木くん、晒科くん、初音さんのグループと……」
「お、俺らの出番だな。いっちょあいつらをぶっ飛ばしにいこうぜ!」
最初に反応したのはトシだった。年頃の男子ということで血気盛んな様子だなと思う。
「そうだな。一発やっちまおう!」
そういう風に人のことをなんだかんだ思いつつも、自分も若干やる気ではある。
「ぶっ飛ばすね……その前にあんたがぶっ飛ばされないといいけどね~」
朱里はトシとは対照的で落ち着いているようで、いつも通りトシをからかっていた。
「ぶっ飛ばされるかよ! てか今回くらいはお前もやる気見せろよ」
「やる気? そんなのあいつらの前に立てば、と言うよりあいつの顔を見れば自然と出てくるわよ」
そう思っていたが、意外にも結構やる気の様子だった。
「あなたたちに緊張というものはなさそうね……」
隣で話している朱里とトシの様子を見てそんなことを呟いている。呟いている内容とは裏腹に全くもって、美佳にも緊張している様子はないのだが……
「……それじゃあ、いきますか!」
俺はそう声をかけて、みんなで戦うコートの場所へと向かった……
着いたころにはすでに金髪男とその仲間たちがすでに場に着いていた。
そんなことはどうでもいいのだが、個人的に気になってしまうことがあった。
「なんなんだ。この視線は……」
そう、今俺が呟いたように気になる正体は視線である。
金髪男とその仲間たちによる「僕たちを待たせるなんて……」とか言うような視線。なんてものはどうでもいいんだ。そんな視線なら飄々と受け流している。
とにかく多い視線。それは観客からの視線である。
他のグループの模擬戦があるというのに、俺らの所の戦いにほとんど全員の注目が集まっている。
なぜなんだ……と考えてしまうが、その答えはさっきの俺の呟きを聞いていた朱里から出てくる。
「あー、この視線のほとんどは美佳によるものだと思うよ。第一部の模擬戦の時もすごい注目集めてたしね」
それを聞いてなるほどと納得することができた。この美少女という形容から全く外れることがなく、それだけで注目を集めてしいそうな容姿。『六家』と称され、その強さは全く崩れることのないと言われる火属性最強の『火神家』の次女という事実とそれに見合うだけの強さと実績。さらにはこの学園の学年主席である。注目を集めないわけがない。
そして、朱里の言葉を聞いた美佳はというと、心底うんざりとした表情を浮かべていた。
どちらかというと社交的ではなかった美佳のことだから、こういう視線はあまり好ましくないのだろう。今さっき、「こんな視線消えてなくなればいいのに……」とか言う呟きが聞こえたような気がしたし。
それとは対照的にどっかの勘違い君はこの視線を我が物とばかりに手を振ったりしている。
「それではどちらのグループも私に代表者を伝えてください」
審判をすると思われる男性の先生から言葉が伝えられる。
「このグループの代表をするのは、世間でも有名な貴族の一つの長男のこの僕、赤江烈に決まっている」
先生からの言葉に公表する必要もないのに堂々と自分が代表者だと宣言する。こいつアホだ……
そう考えつつも油断はしない。『赤江家』と言えば『火神家』がいなければ『六家』の一つとなってもおかしくないと謳われている一家だ。
俺らのグループはあいつらと違って堂々と公表することはなく、ばれないように密かに審判の先生に代表者を伝えた。
「両者の代表者を確認しました。私が合図してから始めてください」
先生からそう告げられて、グループ同士お互いに真ん中に約十メートルの距離をあけて隊形を作り向かい合う。
この場が沈黙に染まる……観客は息を呑み場を見守っている……
「始めッ」
審判の先生の合図が沈黙を破り、それと同時にこの場にいる俺たちを動かす。
「炎よ、弓矢のごとく我が敵に降り注げ。フレイムアロー」
美佳が呪文の詠唱を開始早々に終えると、美佳の真上に小さな火の球体が七個出現し、その球は七本の矢へと形を変えていく。そして、相手に向かって七本の火の矢が同時に、一直線に赤江に放たれる。さすが『火神家』の者というべきか。詠唱が本当に早い。
赤江の仲間の三人は全く対応ができずに赤江に向かっている火の矢を見て表情がひきつっている。
しかし、赤江はというと全く慌てている様子がない。そのまま悠然と手を前に出す。
するとその動作に連動したように、大きな火の壁が赤江の前に現れる。その魔法名は『ファイアウォール』。
その火の壁は矢をすべて飲み込むように防いだ。恐らく先制攻撃を読んでいて最初から防御に回る予定だったのだろう。どちらにしろ詠唱の早さでは勝てないことを分かっていたようだ。自分の力量をしっかり理解しているところはさすがというべきだろう。
まぁ、こっちとしては防がれることは予想していたことなので、驚くことはせず次の行動に移っていた。
さっきの美佳の先制攻撃は相手の動きを視るためのものである。結果はやはり赤江と周りの三人の力の差は結構ありそうだった。
「味方に更なる力を与えよ、シャープネス」
朱里の魔法によって俺の体が青白いオーラで覆われる。それと同時に段々と体に力が宿り漲ってくる。
これは光属性による補助魔法で、身体を強化することができるというものだ。とはいってもこれを使ってもらったのは『氣』を使っていることを誤魔化すためのカモフラージュでしかない。
みんなには身体能力が高い奴という印象を植え付けておこう。
そんなことを頭の片隅で考えながら脚と眼を『体氣』で強化する。朱里の魔法と俺が身体強化している間に赤江の仲間AとBが俺に魔法を放ってくる。
「我が身に迫る災いを撃ち破れ。アースブレイク」
相手の魔法の火の玉と水の球はトシから放たれた無数の土の粒子に包まれ破裂する。二人もの魔法を防げたのは予め準備していたので魔力をより込めれたお陰だろう。
そして、俺は少し遅れてさっきの二人より強めの魔法を放とうとしていた、赤江の仲間Cとの距離を一瞬と言える時間で詰めて、その勢いのまま鳩尾に拳を叩き込み気絶させる。
赤江はというと、一人が倒されたことに少し動揺する様子を見せたが、さっきまでと変わらず美佳と魔法を打ち合っている。ほぼ互角に打ち合っているようなので美佳にも赤江にも余裕は無さそうにみえた。
そんな中不意に赤江がニヤリと笑う。
その表情を浮かべるが早いか、美佳の目の前から迫る大きい火の塊以外に水の球が脇からそれぞれ向かってきていた。
美佳は火の塊は防ぐも脇からの水の球は避けることができずにそれをまともに受けたようで、倒れてしまう。
観客から少なくない悲鳴が聞こえてくる。
「はーはっは。これで僕らの勝ちだ!」
赤江は美佳の倒れた姿を見ると勝ち誇ったように高笑いをして勝利宣言。
「お前ってマジでアホだな」
俺は笑い転げそうになっている赤江の前に移動して、そう言いながら、赤江の仲間Cと同じように赤江の鳩尾に拳を叩き込んだ。
赤江はそのまま膝から崩れ落ちてうつ伏せ状態で倒れた。
審判の先生はその様子を確認して、声を張り上げて宣言する。
「勝者、火神のグループ!」