第十八話 対戦相手
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「嫉妬って素晴らしいね!」
トシが爽やかに言ったように俺らは嫉妬の視線を向けてくる男子に囲まれている。
「嫉妬? 誰が誰にそんなことしてるの?」
「美佳、お前って……いや、何でもない」
実は「鈍感なんだな」と続けようとしたのだが、美佳の何? とでも言いたげな表情を見て、言うだけきっと無駄になるだろうと思い誤魔化した。
その誤魔化しによってあやふやな雰囲気になるが、そこに朱里が俺らにとっても周りの男達とっても爆弾となる発言を投下する。
「しっかしさ、こうやって見るとさ、美佳と哲也くんってお似合いだよね~。カップルみたいだし~。周りが嫉妬するのも分かるよ」
そういって一人でうんうんと頷いている。
一方周りの男達はというと、朱里の発言を聞いた瞬間、数秒固まった後、より強い視線を俺にぶっ刺してくる。当たり前ながら、居心地は非常に悪い。
言われた本人の美佳はというと、当然のごとくそれに反論する。
「そ、そんなわけないでしょう!! 何言ってるのよ!!」
妙にテンパっているように見えるのは、気のせいということにしておきたい。てか顔を赤くしながら言っても逆効果だ!!
「それに私たちは……」
「お、おい、美佳!」
俺は美佳が続けようとした言葉をすぐさま遮る。
「どうしたの哲也くん? それで私たちは、何なの?」
「えとね……そう! 兎に角違うってことが言いたかったの!」
「そ、そうそう。そういうことだ。みんな勘違いするのよ」
美佳はさっき言おうとした言葉について、朱里から追求を受けるが、俺が遮った理由が分かったようで、誤魔化そうとする。俺もその美佳の言葉に乗るように頷いた。
「ま、いっか。美佳と哲也くんの面白い反応見れたことで大分満足できたし、深くは追求しないわよ」
明らかに怪しい様子の俺らだったのだが、朱里は何かを察してくれたようですぐに追求するのをやめてくれた。でも朱里のことだからこの場だけ一旦収めていて後でしつこいくらいに聞いてくるかもしれないので油断はできない。
とりあえず朱里が追求をやめたことにより、やっと落ち着いたと思われた空気だったが、存在が消えかけていた嫉妬する男達よって壊される。
「おい、お前ら」
一人が先陣を切って、隠すつもりもない強い敵意を出しながら呼び掛けてくる。すると次々と文句をぶつけてくる。
「そこの男二人! 火神さんと一緒にいるからって調子に乗るなよ!」
「特にお前、何仲良くしちゃってんの?」
「そうそう、お前らと火神さんじゃ釣り合わねぇんだよ」
段々と口からこぼれてくる愚痴によって無駄に盛り上がる男達。それにしても美佳ってマジで人気あるんだな……とかしみじみ思う。本人からしたら、こんなやつら迷惑だろうけど。
「いやいや、そういう君たちも合わないからね。そこのところ理解した方がいいよ。火神さんに相応しいのはこの僕のような人なんだよ」
そこにさらに面倒くさそうな金髪野郎とその仲間達が現れて、男達に告げる。
金髪男のことを説明するなら、容姿は悪くない育ちが良いお坊っちゃんのようで、格下を見下すような雰囲気を持っている。金髪男に付いている三人も同じような雰囲気を漂わせている。
実際に俺らに嫉妬の視線を向けてた男達を、ごみを見るような視線を向けている。
個人的にこういう奴らは、嫉妬の視線を向けてた男達より気に入らない。
俺のグループの面子も同じ様な感想を持っているようで、敵意の視線を金髪男とその仲間達に向ける。美佳は俺らの中で一番その男に嫌悪の視線を送っている。
しかしさっきまで俺たちに嫉妬の視線を向けてた男達が黙っていることが意外である。
「おやおや、火神さんならともかく、君達にそんな視線を向けられると吐き気がするよ。君達みたいな愚民共は、僕ら貴族を崇めていれば良いんだよ」
姉さんから聞いた知識だと、貴族とは国に対して功績をあげて王から認められ、一定以上の財力が持つとなれるものらしい。それにしても貴族はすごい存在だと思ってたのに、こういう奴らもいるんだと思うと心底がっかりだ。
俺は金髪男が言ったことに対してムカついたが、気にとめることなく流そうとした。が予想外にもトシが黙ってはいなかった。
「お前さ、貴族だかなんだか知らねえけど調子に乗らないでもらいたいね」
すごい剣幕で言っているトシだが、金髪男はまるで気に介する様子がない。
「全く、貴族に向かってそんな口利くなんてねなんてね……これはお灸を据えてやらないといけないかな。火神さんが相手というのは気が引けるけどまあいい。僕達と模擬戦をしてもらうよ」
金髪男がため息混じりにそう言うと、金髪男の仲間達はその言葉を聞いてニヤニヤしていた。
「上等だ」
どう見ても何かありそうだったが、それを考察する間もなく、トシは金髪男の挑戦を勝手に受けていた。まぁ、別に受けることに関して問題はないけど。
「それじゃあ、学園長に報告をしに行こうか」
そう言って金髪男とその仲間達は先を歩いていった。俺達もそれについていく形で舞さんのところに向かった。
舞さんに戦う相手の報告をすると、戦うまで時間があると告げられた。
それを受けてその場を離れようとしたのだが、俺だけ舞さんに呼び止められる。なんだろうか? と思いながらみんなに先に行っててと促した後話を聞きに来ると「私、ああいう貴族連中嫌いなんだよね。そういうわけで、私の代わりにぶっとばしちゃって! 応援してるよ」と言われた。これは誰にも言うことなく自分の心の中にしまっておこうと思うのだった。
俺が舞さんから話を聞いて戻ってくると、金髪男達と別れ際だったようで「空いた時間にでも頑張って作戦でも考えるがいい。はーはっは」と金髪男が高笑いつきで告げた後どこかへ去っていったところだった。
みんなは俺が戻ってきたことに気付くと、何言われたの? と問い詰めるが、準備してあった言葉で適当にそれらをあしらった。
それからトシが少し言いづらそうにみんなに対して問いかけてきた。
「あのさ、勝手に決める形になっちゃったけど……その、よかったのか?」
意味はみんな理解したようで何が?とは誰も問い返さない。
「俺は別に問題ねえよ。俺もあいつ気にいらなかったし」
俺はさっき思ったことをそのまま口にする。
「決めたのがトシっていうのが正直ムカつくけど、あいつの相手をすることは反対しないよ」
ため息混じりにトシに対して悪態を告げながらも、朱里は同意の言葉を返した。
「私も良いんだけど、ただ……」
美佳は賛成はしているようだが、何やら歯切れが悪い。
「ただ、どうしたんだ?」
「……他の三人に関しては分からないけど、あの金髪男は相当強いのよね……」
「へぇー、そうなんだ」
俺は軽い感じで応えるが、美佳が強いと言うとなると、油断はできないと思われるので気を引き締める。どっちにしろ油断をするつもりなどないが。
「ええ、それと性格とかを考えて、確実に彼が代表をするでしょうね」
「だったら一気にあいつをぶっ飛ばせばいいんじゃないか?」
美佳が予測を言った後に、トシが何故か俺を見てそうみんなに言う。その視線はお前があいつの相手をしろと訴えている様に見える。もちろん無視するが。
「他の三人の実力がわからないとなると、その作戦は厳しいわね。それに逆にそれを利用される確率も少なくないわ」
しかし、きっぱりと美佳に否定されたトシは、あからさまにがっかりして項垂れる。
「じゃあ、なんかいい考えとか無いの?」
「んー……誰かがあいつを倒せなくてもいいから一人で押さえ込んで、その間に他の三人を一気に蹴散らして、最後にみんなであいつを叩くっていうのはどうかな? 労働力は多いけど一番確実だと思う」
朱里が痺れを切らしたようで、美佳に詰め寄りながら聞く。その姿に美佳は落ち着いてとばかりに、手を前に出して朱里を抑えると、少し考えた末に自分が思う作戦を伝えた。
「俺はそれでいいと思うぞ」
美佳が考えたその作戦に俺が最初に頷いて見せると、他の二人も同じように同意の意志を示す。
「決まりね。でも問題は誰があいつの相手をするかよね……後私たちの中からも代表を決めないと……」
美佳は困った表情のまま呟くと、少しの間俺らの場を沈黙が支配する。
俺は思考を深めていいアイディアが出たのでみんなに伝える。
「それじゃあ、こういうのはどうだ?」
そして俺らのグループが呼ばれる……