第十七話 再び嫉妬
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俺らのグループが決まって十数分が経ち、ようやく他の人達もグループも決まったのか、舞さんが説明を再開する。
「全員グループが決まったので説明を再開します」
ここにいる生徒たちの意識は自然と舞さんの方へと向いていく。
舞さんもその視線を感じ取り、満足気に頷いた後、そのまま説明を述べていく。
「まず四人組を作った理由はさっきも言ったように今日の模擬戦はチーム戦でやるためです」
舞さんのこの言葉に、ここにいるほぼ全員がチーム戦という言葉に反応する。反応は様々見られ安堵したり喜んだりしている人がいれば、片や不満を隠せない者やがっかりしている者もいる。
「なんでチーム戦? と疑問を持っている人も少なくないと思うので、その理由は今からきちんと説明するので、安心してください」
不満がある人のために舞さんは丁寧に説明を始めた。
「まず個人の模擬戦にしてしまうと、もし魔法の打ち合いになるとしたら確実に両者とも呪文の短いものを選ぶことになるでしょう。そうすると魔法技能の中の詠唱の早さが勝者を分けることになると思われます。確かに詠唱の早さは重要です。ですがそれでは自分の持ち味が出せずに終わる人が続出してしまうことになります。それ以前にまだまだ未熟なあなたたちでは、詠唱している間に武力的な行動を起こされれば、それだけで慌ててしまい結局何もできないままやられてしまう、ということが十分に考えられます。どちらにしろあなたたちの力を見るとしても、それではあなたたちの力を把握できないまま終わってしまいます」
舞さんのこの説明に、なるほど、という呟きも聞こえれば、まだ納得できないという表情を見せる者もいるようだった。
「今回の模擬戦のこちら側の目的は、あなたたちの総合的な力を見ることにあるのです。詠唱がすこしばかり遅くても威力が持ち味という人がスピードがある人と対決し何もできないこともあれば、肉弾戦になってしまい全く魔法技能について評価できないという可能性がでてきてしまいます。しかしチーム戦ならば肉弾戦だけになるという可能性がだいぶ下がります。少なくとも全員が魔法を使わないという事態は避けられると思われます」
続けられたこの説明には、さっきまで納得できていなかった者たちも渋々とだが引き下がったようだった。
「それにチーム戦ならば全員が大なり小なり何かしらの役目を持つこととなるので、何もできずに、何もせずにということもだいぶ減ると考えられるからです。チーム戦にした理由はこんな感じです。続いてはチーム戦のルール説明をしたいと思います」
ここで舞さんはここを一区切りとして少し間を置いてから、説明を続けて述べていく。
「最初に攻撃についてですが、基本的何でもありです。物理的に攻撃を仕掛けてもいいし、魔法を行使するのも問題ありません。ただ人を殺すような殺傷能力の高いものは禁止します。もしそのような魔法を使ってしまった場合は審判をする先生が止めに入ります。当然使ってしまったチームは負けとなります」
これについてはみんなが、当然だろうとばかりに頷いている。
「次にこのチーム戦の勝敗の条件ですが、まずチーム内で代表を一人決めてもらいます。そして相手チームに分からないように、その試合を管理する審判にだけその代表者の名前を報告してください。もう分かった人もいるかと思いますが、その代表者がやられたらチームの負けとなります。もちろん降参しても負けとなります。ここまでの説明で分からないところがある人はいますか? もし分からないようならチーム内の人か近くの人にでも聞いてください。それでも分からないことがあった場合はこちらに質問に来てください」
こんなシンプルな説明で分からない奴なんていないだろ……と考えていたが、舞さんの言葉をきっかけに周りがざわつきだす。
どんだけ馬鹿ばっかりだよと思ったら大体の人は、チーム内で代表者を決めているようだった。
だが本当に馬鹿な奴もいたようで、恥を忍んで聞いている人もいるようだった。
数分が経ち、初めは相談だったものが説明途中ということも忘れて、段々と周りとのおしゃべりとなってしまっていた。そこに「静かに」という声が先生がいる観客席のところから注意の声がとんできて、ようやく場が鎮まり、説明が再開される。
「戦闘する場所と対戦する相手についてですが、場所については、闘技場丸々一つを4対4に当ててしまうと午後の授業3限分を使っても足りなくなってしまうので、闘技場を四等分してそれをひとつの戦闘場所とします。対戦している他のグループからの余波は私の結界でしっかりと守るので安心して戦えると思います。安心できねぇよ!! という風に思っている人もいるかもなので少し私の力を見せておきます」
そういうと周りの先生が舞さんに向かって魔法を放っていく。その様子に躊躇などない。
生徒たちはいきなりことで訳も分からないまま悲鳴を上げたり、顔をそらしている人が大体である。
しかし受けている当人――舞さんは口を動かした後(恐らく何かしらの呪文を詠唱をしたのだろう)、なんでもないとばかりに手を広げる。
すると目を凝らしてもなかなかうまく見えない薄い膜が舞さんの周りに出現する。
先生達から放たれた魔法の大体が火属性の魔法だったようで、その魔法が薄い膜に当たったことにより爆発音が鳴り、煙を辺り立たせる。
薄い膜が見えなかった生徒達は慌てだし、ざわめきが一気に広がる。
そして煙が晴れるとそこにいたのは無傷の舞さんだったので生徒達から安堵の息が漏れ、それと同時に学園長の実力に驚いている。
「これで一応信用はしてもらえるかなと思います」
その理由としては、舞さんはなんでもないようにやってしまったが、使ったと思われる結界魔法は光の上級魔法なので、こんな短時間であれだけの量の魔法を余裕で抑えているところを見ると、舞さんも学園長ということだけあって相当の実力者のようだ。それに舞さんからは雰囲気は違えど何か姉さんと似たようなものを持っている気がする……
「対戦相手についてはあなたたちで決めて、対戦相手が決まったら私に報告してください。報告された人から私がどの位置で戦うかを指示します。これで私からの説明を終わります。それでは対戦相手が決まり次第私に報告してください。最後に言い忘れましたが対戦は1チーム1試合までですので相手は考えて選んでくださいね」
舞さんの説明が終わったことで生徒たちは対戦相手を決めるために動き出す。
当然俺らもそうしようと思ったのだが……
「これは対戦相手には困らなそうだな」
俺は周りの様子を見て呆れてそう言葉をこぼしてしまった。
「なんというか、嫉妬って素晴らしいね!」
トシが爽やかに言った通り、俺らは嫉妬の視線を向けてくる男子生徒達によって囲まれているのだった。