第十五話 屋上
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今、俺と舞さんは2人で闘技場から出て学園に向かっている。ちなみに舞さんは未だに手を放してくれない。
恥ずかしかったので狼狽しながらも「離してください」と遠慮気味に言ったのだが、涙目でしかも上目遣い見つめてきて「……だめ?」と捨てられた子猫みたいに言われあえなく了承してしまった。
了承した瞬間輝かんばかりの笑顔を向けられたので、良しとしてしまう俺は甘すぎるのかもしれない……
閑話休題
俺はちょっと質問があったので聞いた。
「あの、俺って今日の午後にある模擬戦に参加するんですか?」
「もちろん、参加してもらうわよ!」
舞さんは俺の質問に笑顔で答えるが、俺はその答えに対して不満な顔を向ける。俺の表情から察したようで舞さんは俺に告げた。
「戦う前に言ったけどさっきのは今日の午後にある模擬戦だけだと哲ちゃんの力が測れない。だからそれを今やったってだけ。午後にある模擬戦には本気を出さなくても良いから参加してもらうわよ。なにせ授業の一環だからね。評価はさっきの模擬戦を見て決定してるし、午後の模擬戦では負けても影響はないわ。もし模擬戦をさぼったりしたら、補習として私と一緒に夜な夜な二人きりであんなことや、こんなこと、そしてさらに……ってことになるわよ? それでもいいならサボっちゃってもいいけどねー」
「一体何の補習ですか……まぁ、安心してください。ちゃんと参加しますから」
俺は舞さんから告げられた忠告? に苦笑いしながらも参加することを告げる。すると舞さんは俺の耳元に顔を近づけて
「……補習は、自主参加しても良いからね」
そう囁いて顔を離す。そして俺にウィンクしてから、「じゃーねー」と手を振り走って学園へと戻っていった。
俺はその行動に授業があるということを忘れて呆然としてしまい、その場にしばらく立ち尽くしてしまった……
結局午前中の岡嶋先生との模擬戦と舞さんの誘惑?のせいで時間を食われてしまい、学園の中に戻ってきた頃には、3限目の授業終了時間までもうすぐだった。
この学園の授業は午前3限があって、間に昼休みが入り、午後3限の6限授業となっている。つまり俺が戻ってきた頃にはすでに午前の授業がほとんど終わっている時間だった。
そんな時間帯に教室に一人で戻るのも気が引けるし面倒なので、昼休みになるまで適当に時間を潰すこと決めた。そんなわけで人のいなそうな場所に向かうことにした。上を目指して階段を上る。『立ち入り禁止』と書かれている看板を無視してそのドアに近づく。俺が来た場所は屋上。
ドアノブに手をかけて回して動かそうとすると抵抗なくすんなりと動いた。つまり鍵が掛かっていない。
これじゃあ『立ち入り禁止』の看板もあまり意味がないのではと思ってしまう。
そして、そのままドアを開く。すると風が俺の体を通り過ぎ、そしてきれいな空が目に映った。雲一つない快晴だ。
なんと心地のいいところだろうか……そんな感想を持つ。
俺は自分から出てきた衝動をそのままに地面に寝転がった。コンクリートのひんやりした温度が心地よくて、重くなってきた瞼に抵抗することなく下して目を閉じた……
「……あのー、すいません…………うーん、反応がないなぁ……」
誰かが声をかけている気がする。
「えーと。あの! ……これでもダメか……よわったなぁ……」
女の子の声だ。弱々しく、そして困惑したような声。
つん、つん。
指先で頬をつつかれる。この子は一体何がしたいのだろうか?
つん、つん。
再び頬をつつかれる。見知らぬ人なんだから気にしなきゃいいのに。屋上にいるにしても広さはあるんだから邪魔ってことはないだろうし……
少し間が空いて今度はじっと見つめるような視線を感じ始めた。
目を逸らすことなくただじっと見つめる視線を。
さすがに居心地が悪くなってきたので目を開けて声をかけようとしたのだが、俺が目を開けた瞬間に女の子は「きゃあ!」という可愛らしい声をあげて、すごい勢いで俺から距離をとった。声をかけるタイミングを逃してしまったが、その分距離をとってもらったお陰でその子の姿がよく見えた。
見た目はとても小さく可愛らしい。身長は舞さんとそう変わらない。髪は綺麗な白色で肩にギリギリかからないくらいの長さだ。こめかみの右側についている黄色い星の髪飾りがすごく似合っていて特徴的だった。
「……えーっと、あの……その……ごめんなさい……」
「こちらこそ、すいません」
女の子がいきなり頭を下げてきたので、俺も自然と謝り返してしまう。
「いえ、私が悪いんです。あなたが謝る必要はないですよ。それで、えと、何でこんなところに来ているんですか?」
所々言葉につまりながら話しかけてくた。
「……暇だったから?」
なぜに疑問系と自分でも思いながらそう答えた。
「そうですか……でも、ここ立ち入り禁止ですよ?」
「はい、そうですね」
俺は忠告にでも来たのだろうかとか考えつつ、悪びれることもなく答える。
「ここって良いところですよね、私はよくここに来ます」
女の子は俺の予想していたことと違うことを言ってきた。いきなり話が変わったので少しビックリしたが、顔には出さない。そして聞かれた質問に答える。
「俺も良いところだと思います。何でここを立ち入り禁止にするんでしょうね」
「私もよく疑問に思います。立ち入り禁止にする訳を教えてもらいたいです」
この女の子は一見気が弱そうに見えるが(実際弱いのだろうが)自分の意思というよりは気持ちをしっかりと持てる子のようだ。
「その口調からすると先輩はここの常連のようですね。立ち入り禁止と書かれているのに悪い人ですね」
「それは! ……その……ううぅ……」
俺がそう言うと、女の子は何か言い訳を言おうとしたのだろうが、何も思いつかなかったようでそのまま俯いてしまった。そういう俺も人のことを言えたもんじゃないんだけどね。
「安心してください。誰かに言ったりはしませんから」
さすがにずっと俯かれているのも困るので俺がそう言うと、とたんに女の子はパッと顔を上げる。
「本当ですか!?」
その顔はとてもうれしそうだった。ちなみに顔の距離が近かったので俺は少し困惑して答える。
「……ええ、もちろん」
「ホントにホント?」
「嘘は言わない主義です」
「そうですか……安心しました」
その言葉通り心底ホッとしたような顔を浮かべている。
「それでは、次の授業に遅れると面倒なのでお先失礼します」
昼休みも終わりそうだったので模擬戦が行われる闘技場に向かうため、屋上から出ようとした。
「あの!」
しかし、立ち去ろうとした俺を女の子が呼び止めてくる。
「何ですか?」
相手が相手なのでビビらせないようにできるだけ優しく応える。
「えっと、私は鷹已百花って言います。あなたの名前を伺ってもいいでしょうか」
「……楠木哲也です。それでは……」
俺は名乗った後すぐに今度こそ屋上から出た。そのせいか、俺の名前を聞いた時鷹已さんが驚いてた顔をしていたことに俺は気付かなかった。