第十四話 魔空技
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「これから哲ちゃんには岡嶋先生と模擬戦をしてもらいます」
舞さんから言われた一言。俺は当然のようにその理由を尋ねる。
「なんで岡嶋先生と模擬戦をやる必要があるんですか?」
「哲ちゃんの能力確認よ」
「能力確認、ですか?」
なぜ俺だけ? という疑問が生まれたので、そう言って俺は首をかしげる。
「そうよ。入学前に見せてもらった手紙によると哲ちゃんは『氣』を扱えるでしょ?」
「はい、一応ですけど……」
俺は控えめに頷く。後ろの方では岡嶋先生が興味を持ったような視線を俺に向けている。
「その力は結構珍しいものだからね。今日の午後の模擬戦でその力を使ったらみんなの注目の的になるわ。哲ちゃんもそれは嫌でしょ」
今日の魔法を使った授業というのは模擬戦だったのか……
確かにみんなの注目の的になるのは、あまり俺にとってうれしいことではない。
「……それは避けたいですね。とはいっても使う力を抑えればばれないようには出来ますよ」
俺のこと発言に舞さんはやれやれと言わんばかりにため息をつく。
「そういうと思った。今回の模擬戦は生徒の実力を確かめることを目的にしているのよ。だから哲ちゃんが目立つのを嫌がって本気を出さないと模擬戦をやる意味がなくなっちゃうの」
言われていることはもっともだろう。
「それと……」
「俺がお前に興味があるからだ。授業を教えているよりこっちの方がずっと面白そうだ。とにかく戦るぞ。異論は認めない。俺を退屈させないでくれ、楠木」
舞さんが何か言う前に自信に溢れたような笑みを浮かべて挑発をしてくる岡嶋先生。
「異論も何も俺も久しぶりに本気でやれるわけだし……こちらこそ楽しませてもらいますよ」
一人での修行だけじゃ腕がなまるかもしれないので、こういう模擬戦とはいえ実戦的な戦闘の機会を与えてもらえるのはありがたいのかもしれない。
そう思って俺は岡嶋先生からの挑発にありがたく乗せてもらうことにした。
「やってくれるようでホッとしたわ。じゃあ闘技場に行くわよ」
俺と岡嶋先生は舞さんの言葉に頷いた。
闘技場。
それはどこの魔法学園にも設備されているところで、授業にしろ模擬戦にしろ魔法を使うことが多い魔法学園の生徒たちが安心して使う場所として建てられた。魔法学園の生徒以外にも使う機会はあるが……
位置としては学園の一部として建てられているのですぐに着いた。
形状はスタジアムみたいな感じで観客席が設置されている。今は誰もいない。
観客席に被害が出ないように、グラウンドと観客席の境目には魔法から守るための結界が張られている。
広さはサッカーコートが余裕で10個くらいは入るだろう。
そこの真ん中辺りに俺と岡嶋先生は向かいあってその間に舞さんという形で立っていた。
「それじゃあルールの説明ね。攻撃手段はなんでもあり。殺すような所まではやらないように気を付けてね。そんなことにならないように私もそういう配慮はしておきますけどね。怪我は私の治癒魔法で治せるから安心していいわ。勝敗はどちらかが降参するか、私が戦闘不能と判断した場合のどちらかね。まぁこんなところかな」
「分かりました」「了解」
俺と岡嶋先生はその説明に頷きお互いに距離をとって戦闘態勢をとる。
俺は拳を構えて、今のうちに『体氣』で脚を強化しておく。岡嶋先生は腰にかけていた剣を鞘から取り出して構える。
「私が合図してから始めてね」
数秒間の沈黙が流れて空間を支配する。
「はじめっ!」
その空間に舞さんの気合のこもった声が響いた。先に動き、仕掛けてきたのは岡嶋先生。声が聞こえた瞬間に地面をけっていた。
……速い!!
生身とは思えない速度で岡嶋先生は俺との間合いを一気に詰めて横に剣を一閃してきた。
俺はそれを後ろにステップを踏んで、避けた。
避けたはずだったが、何か強いそしてするどい衝撃を受けて後ろにぶっ飛んだ。後ろに飛んでたおかげで少しはダメージの緩和ができていたようで受けたダメージはそこまで大きくない。
俺は驚愕しながらもすぐに態勢を立て直す。俺の表情を見て岡嶋先生は嫌な笑みを浮かべて言ってきた。
「ほう、一応少しはできるようだな。雑魚なら今ので終わる威力だったんだが……よく避けた、とでも言っておくか。そのお礼に少しだけ教えてやるよ。今のは『かまいたち』。この魔法剣に備わっている一つの力だ」
「魔法剣ですか……それにしても種を明かすなんて余裕ですね」
魔法剣。
それは魔法をいくつか記憶させることのできる特別な剣。通常詠唱する必要がある魔法をイメージして剣に魔力を込めるだけで放つことができる。しかもノータイムで。詠唱をして放つ魔法より威力が劣るし、記憶させることのできる属性は一つでそんなに多く記憶させることができないという欠点があるがその力は強大なものだ。
前文に述べたように特別な剣で、世界でも数が少なく貴重な素材……ミスリルが使われている。
そのため持っている人はそう多くないはずなのだが、それをこの先生は持っていた。
「実際余裕だしなー」
肩に剣を担ぎながら挑発してくる。
こいつ、マジムカつく……絶対ぶったおす!
「それじゃ、続きだ!」
そんなことを思っていると岡嶋先生は何もない空間に剣を横に、縦に、斜めに振っていく。
俺はとっさに足と共に眼も強化する。岡嶋先生の技が魔力からなっているのならこれで!
俺の予想通り、眼を強化したことによって魔力の細い三日月状の線が視えた。
俺はそれを出来るだけ無駄のない最小限の動きでかわしていく。
後ろには放たれた『かまいたち』の衝撃によって砂煙が発っている。
「同じ技は通じないか……やるねぇ。これは退屈しなさそうだ」
俺の動きを見て岡嶋先生が感心したような視線を向けて俺に言ってきた。
「退屈なんかさせません。てか楽しませてあげますよ。まぁ楽しめる余裕があればいいですけどね」
俺は今度はこちらからということで『体氣』で強化した脚で地面を強く蹴り間合いを一気に詰めて足を相手の脇腹に向かって横に振る。
岡嶋先生はさっきの俺と同じように後ろにステップを踏んで俺の蹴りを避けた。
俺は岡嶋先生の動きを見てニヤリと笑う。
岡嶋先生は何かしらの衝撃を受けたように吹っ飛び仰向けに倒れる。その表情は驚愕に染まっている。
それも仕方がないことだろう、なにせ自分が使った技と同じようなものを今受けたのだから。
「てめぇ、今何をしやがった……」
岡嶋先生は起き上がりながら俺に問いかけてくる。
「『氣』を使った技ですよ。『空氣』と『魔力』を混合した技、通称『魔空技』というものです。今のはさっき岡嶋先生が使った『かまいたち』を参考にさせてもらって放ちました。言っておきますけどこの技はレパートリー豊富ですから、先生もたぶん退屈なんてしないで済むと思いますよ」
俺はにやにやとしながら丁寧に岡嶋先生に説明してあげた。舞さんは「やっぱり哲ちゃんも使えたんだねー」的なことをボソボソとひとりでに呟いていた。
そう、これが姉さんからの修行で体得した『氣』の利用法の一つの『魔空技』。
少ない魔力でも『氣』を利用することによって大きな力となる。
魔力が少ない俺にはピッタリというわけだ。
「それでは、今度は少し思い切りいきますからね。逆に俺を退屈させないでくださいよ、岡嶋先生」
俺は岡嶋先生の言葉を真似するように言って、次の行動――手に意識を集中する。
『空氣』を自分の手の平に触れていることを意識し、集め、小さなボールをイメージして凝縮する。
俺のそんな隙のある行動に岡嶋先生は何もしないわけがなく、切り上げるように剣を振るう。
すると先生の目の前に小さな竜巻が……だんだん大きくなって大きな竜巻が発生する。それが出来たことを確認した岡嶋先生は剣を突き出す。すると俺に向かって竜巻は迫ってくる。
俺は構わずに『空氣』の凝縮を続ける。
俺はぶつかるギリギリの所で完成した『空氣』の塊に風の魔力をコーティングして目の前にある竜巻に向かって、岡嶋先生に向かって投げた。
俺が投げた球体は竜巻に穴を空け、勢いは衰えることなく岡嶋先生の所に向かっていく。
「ぐわーっ」という声と空気が切り裂くような風切り音が聞こえたので恐らくヒットしたのだろう。
ちなみに岡嶋先生の放った竜巻は穴が一瞬空いただけで消えたわけではない。
つまりはその竜巻は俺にヒットし巻き込んでいく。
そしてそのまま俺は竜巻の風に切り刻まれ、飛ばされる。
そのまま上に吹き飛ばされ重力によって地面に激突、痛いけど俺はいろいろとあってタフということと瞬間的に『体氣』で全身を強化し防御力を高めたため平然と立ち上がった。
岡嶋先生は腹を中心に防具が切り刻まれたような跡を付けて気絶して倒れている。
今の技は『魔空技』の一つで『戦吼弾・風』である。球体状に凝縮した『空氣』に魔力のどれか一つの属性を込めた球体を相手に向かって投げつける技が主な使い方である。
使うまでに少し時間がかかるのと、軌道が直線的で読まれやすいので避けられやすいという欠点があるが威力は絶大。直接ぶつけてると自分に被害があるくらいだ。この技は個人的に気に入っている。
「勝負あり。勝者哲ちゃん」
キリッとした声音で告げた舞さんだが、「哲ちゃん」という響きのせいで台無しだ……
そんなことを考えながら俺は岡嶋先生に近づく。舞さんも俺の後に続く。
「岡嶋先生、大丈夫ですか?」
俺は岡嶋先生の意識を確認するが、反応はない。すると舞さんが「とう!」という掛け声とともに跳びあがり……
「がはっ」
岡嶋先生の腹の上に両足で体操選手顔負けの着地を決める。これは舞さんがいくら小柄で体重が軽いといっても痛いだろう……
「ごほ、ごほ……なに、しやがる」
「だって起きないんだもん」
その衝撃によって目が覚めた岡嶋先生はせき込みながら、ものすごい形相で舞さんを睨みつけ文句を言う。それを意に介した様子もなく飄々と屁理屈にもなってない言い訳を言う舞さん。
「それにしても思ったよりあっさりと終わちゃったね。哲ちゃんはまだまだ余力がありそうだし……まぁ面白かったからいっか。授業に遅れすぎるのもなんだし教室に戻ろっか」
さらには呆れた調子で岡嶋先生に向かってそう告げる。そして俺の手を掴んで引っ張っていく。手をつながれたことに、俺は少し狼狽してしまったが、それに抵抗することもなく、そのまま舞さんと共に闘技場から去っていった。
「おい、怪我は治してくれるんじゃないのか!?」
という岡嶋先生のつっこみは誰も反応することはなく闘技場にむなしく響いた。