第百二十四話 昔の話
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その女の子はとある六家の次女として生まれた。
勉学、性格ともに問題なく育ち、むしろ勉学に関しては素晴らしいものを感じるものがあった。また、彼女の姉も六家の一人として十分な才能があった。
そういうこともあり、彼女は自分の家だけに限らず様々な期待を受けた。その期待を背負いながら、六歳になり――魔力の測定が行われた。
魔力がほとんど感じられない。
ただそれだけの事、されど六家にとっては致命的な事実。彼女の期待は手のひらを反すような憐れみや嘲りで狂い始める。
今まで慕っていた人たちからは冷たくされ、嫉妬心が一段と強かった姉はざまあみろとばかりに彼女を罵った。
父や母に関しても今までが今までだっただけに、激励という名の罵倒が彼女へかける言葉になっていた。
そして次の年。
変わらない結果に、彼女は家から追い出され、森の中へと追放されることになった。
七歳の少女が森の中で一人ぼっち。
はっきり言って生きていけるわけがない。きっと誰もがそう思ったことだろう。
だが、彼女は自身の知識と森の自然を活かして、半年間自身の修業に努めながら何の問題もなく生活できていた。
そんな小さな少女に興味を持っていた精霊がいた。
その精霊が興味を持ったのは、自分の属性である魔力を異常なほど蓄えていたからだ。にもかかわらず一人で森にやってきた。自身の属性が特殊であるという自覚があったその精霊に興味を与えるには十分なものだった。
そして、その興味は彼女の生活ぶりと様々な修行によってさらに広がっていく。
かなりの人を見てきた精霊であれど、これほどの逸材で自分に合う人を見たことはなかった。
彼女なら契約してもいい。
精霊がそう思ったのは彼女を見かけて半年後のことだった。
森の中での活動の一つである修業。
彼女がそれを行っているときに精霊は接触を試ることにした。
ただ、契約するしないの話の前に不安要素が一つあった。それはその分野において才能がなければ、特殊であるその精霊の姿は全く見えず、声すら聞き取れるかも危ういということだ。
だが精霊の心配は全く以て無意味だった。逆に心配したことが馬鹿馬鹿しくなることになった。
精霊が彼女を呼びかけようとした瞬間、彼女は突然振り向き精霊に対して、あなたは誰だと問いかけたのだ。
声もかけていなければ目の前から姿を見せたわけでもない。気配を正確に察知し、その精霊の姿を発見する。それもまだまだ伸び盛りの少女が。そして言うに、森の中でいつも見ていたのはあなただったのねと、微笑んできたのだ。
恐るべき才能。その精霊は初めて人に対して恐ろしいという感情を抱いた。そしてやはり自分の見立ては正しかったと確信を持った。
精霊は自分が元の精霊、だということを告げ、特に何を言うでもなく彼女に契約をしないかと問いかけた。
彼女はその精霊と特に迷うことなく契約することを決意する。
自分の想像以上に簡単に物事が進んだことに拍子抜けをする精霊だったが、思い通りにいったことに不満などあるわけがない。
こうして彼女は元の精霊であるマクスウェルと契約し、共に生活していくことになった。
それから彼女は、マクスウェルを使役した修業も織り交ぜることになった。
その過程で自分の持つ魔力がすべての元となる『マナ』もしくは『元』の魔力であることを知る。そして、マクスウェルからの説明で自分に足りないのは変換する力であり、精霊を利用すれば全属性を扱えるだろうということも。
それからしばらくの時が経ち、年齢も十歳を超えた彼女の才能はさらに開花していく。
その中でも突出したのは、空氣を開発したことだ。
それらを発展させ魔空技や空気調和など、どんどんと自分の才能を伸ばしていく。
人とは比べ物にならないほど生きてきた精霊であるマクスウェルさえも、その才能を天才だと謳った。
ただそんな風に才能はあれど、時々感じる心の不安定さ。それだけが精霊にとって気にかかるところだった。
さらに時間が経ち、彼女が一つの決意をしたことで、その気がかりだった部分は明らかになる。
それは自分を認めてもらおうという名目の、自分の生まれた家に対する復讐。
彼女が力を伸ばし続けていたは、伸ばし続けるための支えの根本はきっとそこにあったのだろう。
マクスウェルはそれを止めようとは思わなかった。むしろ好意的に受け止めていた節すらあった。
というのも力あるものは認められて当然だと思っていたからであり、また一緒に過ごした日々が彼女に対する愛着を与えていてことで、彼女が捨てられたことを腹立たしく感じているところがあったからだ。
そして、彼女の復讐劇が始まる。
結果としては圧倒的な彼女の勝利。
自分を捨てた家を完全に潰すことに成功し、六家は彼女を認めざる負えない状況になっていた。
結果だけ見れば成功。
ただ、彼女の力は圧倒的すぎた。
過ぎた力は憧れを超え、恐れに変わる。
認られるどころか、目の上の瘤として捉えられ、六家は彼女を消そうと考えた。
考えは計画に変わり、すぐに行動として移される。
それも人による武力行使による殺害ではなく、勝てないと悟っているからこその卑劣な毒殺。
その計画に彼女は嵌り、殺されてしまった。
彼女は六家に逆らった反逆罪的な立場として扱われ、六家は一人の少女に圧倒されたという結果を隠すために、彼女の行為や自分たちの行為については完全に揉み消すことになった。
それを知るのはその当時の当主たちのみ。